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22章
魔国の学園祭4
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エグザドル学園は、マデリーヌさんが孤児にも貴族社会で生きて行けるように紳士淑女の様に礼儀作法や勉強、騎士としての基礎の運動などが出来る様にと作られた学園である。
しかし、いつの間にか、紳士淑女を生み出す学園として貴族の子息や令嬢が数多く入学する様になってしまい、少しばかり困った事にもなっている。
格差をつける貴族の子供達に学園内では上下関係は関係がない。親の権力を振りかざしてはいけない。と、散々言って聞かせているらしいが、そう上手くいかないようで自分の子供には、そうした差別のようなものが無い学園生活を作り上げる様にと、言って聞かせていたらしい。
そして、どう自分達にとってより良い学園生活ができるかを考え、生徒会執行部としてマデリーヌさんの子供は動いているらしい。
「ようこそ! エグザドル学園へ」
赤い髪にアメジスト色の目をした白い角に赤い角が絡まる様に生えている少年、イースター・ディア・ロードミリオンくんは、マデリーヌさん譲りのキリッとした顔立ちで優雅に私達に挨拶をしてきた。
「母上、父上、エルも来てくれたんだ!」
そしてイースターくんの後ろでティルナールが学園の白い制服に、首からはカメラを提げて手を振る。
「ご挨拶ありがとう。今日は楽しませてもらいますね」
「ええ、存分に我々生徒の祭りを楽しんで行って下さい」
イースターくんが微笑んでティルナールに私達の案内を任せると、他の生徒にせっつかれる様に騒ぎながら忙しそうに学園祭の指示を出していく。
マデリーヌさんは馬車で迎えを寄越してくれたものの、出掛けに急用が入り、後で合流すると伝言があった。
「ティル、招待状ありがとうね」
「ううん。まぁ母上達にぼく等の学園祭を見て欲しかったからね」
「あぐぅー。なんなふー、ぶぅー」
「わっ、スー。なんでボクの顔に張り付くのさ」
スクルードに顔面に張り付かれてティルナールがぐるぐる回って、エルシオンに笑われながら学園祭の出し物を説明しながら歩く。
「ティル! 写真係じゃなかったの?」
「ティル、ルーシーが探してたよー」
「ティールー、演劇種目にでるの?」
学園の子供達がすれ違うたびにエルシオンに「ティル」と声をかけて、エルシオンがスクルードに張り付かれているティルナールを半目で見る。
「人気者だねぇ」
「ボクくらいになると人が放っておかないんだよ」
「顔にスーちゃんが張り付いてるけどね」
「ボクがティルの代わりに声掛けられてるけどね」
「そりゃあ、三つ子だもん!」
後ろからルーシーがタックルするようにティルナールとエルシオンの間に入り込み抱き込んで行く。
ニッコリ笑って二人に擦りつくと、スクルードをティルナールから剥がして「スーは可愛いのですわー!」とギュウギュウと抱きついて、スクルードに「ううううっ」と唸られていた。
「コラッ。スーは玩具ではない。ったく、うちの子達は赤ん坊を玩具にする癖でもあるのか」
ルーファスがルーシーからスクルードを取り上げて、少し眉間にしわが寄っている。おそらく、ミルアとナルアがルーシーが生まれた時に玩具にしようとしていたのを思い出しているのだろう。
ちなみにナルアはシノリアくんとデート中で、騎士団の仲間が何故か二人のデートのあとをつけているらしく、「自分達が見張っておくので安心して下さいねー」と言われてしまった。
それにしても、スクルードの唸り声を初めて聞いたかもしれない。
「ああん。父上~っ」
「駄目だ。スーがすっかり怯えている」
「うーっ、うーっ」
「あらら。ルーシー嫌われちゃったわね」
しっかりとルーファスにしがみついて威嚇するスクルードにルーシーは嫌われてしまったようだ。
廊下で騒いでいると、数人の生徒を引き連れた女生徒が白い扇子で口元を押さえながら歩いてやってきた。
金髪の縦ロールに青い瞳……なんというかマンガから出てきたような、貴族のご令嬢という少女に私は一瞬「おお、凄い」と思ってしまった。流石、紳士淑女が集まる学園なだけはある。
「ご機嫌よう。ティルナール様にルーシー様……あら? ご家族かしら? ティルナール様のご兄弟? そっくりですのね」
少しティルナールとルーシーが苦虫をかみつぶしたような表情をした後で、「ご機嫌よう」と返していた。
「あら? ご紹介してくださいませんの?」
「……ボク等の両親と弟達だよ」
「あら? それだけですの?」
「そっちこそ、挨拶くらいしたらどう?」
仲が悪いのか良いのか分からないやり取りのあとで、少女がスカートを少し摘まんで挨拶をする。
「わたくし、メルデリカ・フィオ・レシャン・パディオンと申しますの。以後お見知りおきくださいませ」
「丁寧な挨拶痛み入る。私はルーファス・トリニア。ティルナールとルーシーの父親、そしてこちらが番のアカリ、ティルナールの三つ子の弟のエルシオンに、末の子スクルードだ」
「よろしくお願いしますね」
ルーファスが余所行きの丁寧な挨拶をしているのが珍しくて、私はルーファスの横でちょこんと挨拶して大人しくしておいた。
「彼女は魔国では有名な騎士団長のご令嬢ですのよ。何故かティルとわたしによく話し掛けてくるの」
「仲は良いの?」
「良くも悪くもないのだけど、なんだかゾワゾワするのですわ」
コソッとルーシーがメルデリカちゃんについて教えてくれたけれど、ゾワゾワするというのは一体全体なんなのやら?
「エルシオン様はティルナール様によく似てらっしゃいますわ。三つ子だなんてティルナール様教えて下さらなかったじゃないですか」
「そんなの言う必要も無いしね」
「酷いですわ。わたくし、ティルナール様達の事は何でも知りたいのに」
「悪いけど、ボク等はこれから父上と母上に学園祭を案内するから、じゃあね」
ティルナールにグイグイと背中を押されて私達は歩き始めると、スクルード以外がブルッと体を震わせて耳をパタパタ動かした。
「あの子は本当に人の子か? 妙に気配がザワついた」
「だよね。父上もそう思うよね?」
「わたしもあの子は背筋がザワついて苦手なの」
「なにあの子? 丸のみにされそうな嫌な感じがする」
ルーファス筆頭に四人で身震いを起こしながら、「近寄りたくない」という意見らしい。私にはわからない感覚だけど、多分、五感の鋭いルーファス達だからこそ感じる物があるのだろう。
しかし、いつの間にか、紳士淑女を生み出す学園として貴族の子息や令嬢が数多く入学する様になってしまい、少しばかり困った事にもなっている。
格差をつける貴族の子供達に学園内では上下関係は関係がない。親の権力を振りかざしてはいけない。と、散々言って聞かせているらしいが、そう上手くいかないようで自分の子供には、そうした差別のようなものが無い学園生活を作り上げる様にと、言って聞かせていたらしい。
そして、どう自分達にとってより良い学園生活ができるかを考え、生徒会執行部としてマデリーヌさんの子供は動いているらしい。
「ようこそ! エグザドル学園へ」
赤い髪にアメジスト色の目をした白い角に赤い角が絡まる様に生えている少年、イースター・ディア・ロードミリオンくんは、マデリーヌさん譲りのキリッとした顔立ちで優雅に私達に挨拶をしてきた。
「母上、父上、エルも来てくれたんだ!」
そしてイースターくんの後ろでティルナールが学園の白い制服に、首からはカメラを提げて手を振る。
「ご挨拶ありがとう。今日は楽しませてもらいますね」
「ええ、存分に我々生徒の祭りを楽しんで行って下さい」
イースターくんが微笑んでティルナールに私達の案内を任せると、他の生徒にせっつかれる様に騒ぎながら忙しそうに学園祭の指示を出していく。
マデリーヌさんは馬車で迎えを寄越してくれたものの、出掛けに急用が入り、後で合流すると伝言があった。
「ティル、招待状ありがとうね」
「ううん。まぁ母上達にぼく等の学園祭を見て欲しかったからね」
「あぐぅー。なんなふー、ぶぅー」
「わっ、スー。なんでボクの顔に張り付くのさ」
スクルードに顔面に張り付かれてティルナールがぐるぐる回って、エルシオンに笑われながら学園祭の出し物を説明しながら歩く。
「ティル! 写真係じゃなかったの?」
「ティル、ルーシーが探してたよー」
「ティールー、演劇種目にでるの?」
学園の子供達がすれ違うたびにエルシオンに「ティル」と声をかけて、エルシオンがスクルードに張り付かれているティルナールを半目で見る。
「人気者だねぇ」
「ボクくらいになると人が放っておかないんだよ」
「顔にスーちゃんが張り付いてるけどね」
「ボクがティルの代わりに声掛けられてるけどね」
「そりゃあ、三つ子だもん!」
後ろからルーシーがタックルするようにティルナールとエルシオンの間に入り込み抱き込んで行く。
ニッコリ笑って二人に擦りつくと、スクルードをティルナールから剥がして「スーは可愛いのですわー!」とギュウギュウと抱きついて、スクルードに「ううううっ」と唸られていた。
「コラッ。スーは玩具ではない。ったく、うちの子達は赤ん坊を玩具にする癖でもあるのか」
ルーファスがルーシーからスクルードを取り上げて、少し眉間にしわが寄っている。おそらく、ミルアとナルアがルーシーが生まれた時に玩具にしようとしていたのを思い出しているのだろう。
ちなみにナルアはシノリアくんとデート中で、騎士団の仲間が何故か二人のデートのあとをつけているらしく、「自分達が見張っておくので安心して下さいねー」と言われてしまった。
それにしても、スクルードの唸り声を初めて聞いたかもしれない。
「ああん。父上~っ」
「駄目だ。スーがすっかり怯えている」
「うーっ、うーっ」
「あらら。ルーシー嫌われちゃったわね」
しっかりとルーファスにしがみついて威嚇するスクルードにルーシーは嫌われてしまったようだ。
廊下で騒いでいると、数人の生徒を引き連れた女生徒が白い扇子で口元を押さえながら歩いてやってきた。
金髪の縦ロールに青い瞳……なんというかマンガから出てきたような、貴族のご令嬢という少女に私は一瞬「おお、凄い」と思ってしまった。流石、紳士淑女が集まる学園なだけはある。
「ご機嫌よう。ティルナール様にルーシー様……あら? ご家族かしら? ティルナール様のご兄弟? そっくりですのね」
少しティルナールとルーシーが苦虫をかみつぶしたような表情をした後で、「ご機嫌よう」と返していた。
「あら? ご紹介してくださいませんの?」
「……ボク等の両親と弟達だよ」
「あら? それだけですの?」
「そっちこそ、挨拶くらいしたらどう?」
仲が悪いのか良いのか分からないやり取りのあとで、少女がスカートを少し摘まんで挨拶をする。
「わたくし、メルデリカ・フィオ・レシャン・パディオンと申しますの。以後お見知りおきくださいませ」
「丁寧な挨拶痛み入る。私はルーファス・トリニア。ティルナールとルーシーの父親、そしてこちらが番のアカリ、ティルナールの三つ子の弟のエルシオンに、末の子スクルードだ」
「よろしくお願いしますね」
ルーファスが余所行きの丁寧な挨拶をしているのが珍しくて、私はルーファスの横でちょこんと挨拶して大人しくしておいた。
「彼女は魔国では有名な騎士団長のご令嬢ですのよ。何故かティルとわたしによく話し掛けてくるの」
「仲は良いの?」
「良くも悪くもないのだけど、なんだかゾワゾワするのですわ」
コソッとルーシーがメルデリカちゃんについて教えてくれたけれど、ゾワゾワするというのは一体全体なんなのやら?
「エルシオン様はティルナール様によく似てらっしゃいますわ。三つ子だなんてティルナール様教えて下さらなかったじゃないですか」
「そんなの言う必要も無いしね」
「酷いですわ。わたくし、ティルナール様達の事は何でも知りたいのに」
「悪いけど、ボク等はこれから父上と母上に学園祭を案内するから、じゃあね」
ティルナールにグイグイと背中を押されて私達は歩き始めると、スクルード以外がブルッと体を震わせて耳をパタパタ動かした。
「あの子は本当に人の子か? 妙に気配がザワついた」
「だよね。父上もそう思うよね?」
「わたしもあの子は背筋がザワついて苦手なの」
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