黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
上 下
701 / 960
22章

魔国の学園祭2

しおりを挟む
 魔国のエグザドルの港は温泉大陸と違って、洋風な建物が多い。
あと、全体的に中世の服に近い感じで、中流層は地味な感じの色合いの服装が多くて、中流より上の人々はドレスを着ている感じかな?
まぁ、温泉大陸でもどこでも冒険者なんかはいるから、服装はそれほど基準にはならないのだけど。

 私達は今回は動きやすい様に洋服できている。着物を着ていたら温泉大陸だと言わんばかりだし、ルーファスが黒狼に金眼だから、トリニア家だといっているようなものだしね。

 うちの子供でルーファスと同じなのはティルナール、エルシオン、ルーシーで、リュエールやミルア達はオッドアイ。そしてスクルードだけ、私と同じ黒目で微妙に金色の粒子のような光があり、それほどトリニア家には結び付けられてはいないわけだけど、やはり、ルーファスとエルシオンが揃っていると目立つ。

「馬車のご用意はお済ですか!?」
「お宿などの手配はお済ですか!?」

 商魂たくましい人々から先程から声をかけられる事が多く、ルーファスは仕事用の黒メガネをかけて目元を隠して事前に用意していた馬車に乗り込んで、宿泊するホテルへ移動する。
本当はホテルも庶民的な感じのお宿にして、家族で色々食べに出掛けたかったのに、マデリーヌさんが張り切って準備してくれて……魔国でも指折りの高級ホテルになった。

 ホテルは英国のお城のような感じで宮殿のようでナルアのテンションが上がっていて、カメラで撮っては「ミル姉様に自慢できますわ!」と目を輝かせていた。
ミルアは温泉大陸でハガネに家事を教えてもらっている。
あの子はあの子で嫁入り前の修行をしているから、今回はミールとのデートも許可しておいた。
まぁ、ミルアの作った手料理を屋敷で一緒に食べるくらいだろうけどね。うちのハガネはそこら辺はルーファスより厳しいから。

「あぎゅー、あぐぐ……んむぅ」
「ん? スーも歩くのか?」

 ルーファスの腕からスクルードがぐずって動くと腕から下ろしてもらい、ルーファスの足に掴まって地面に立つと尻尾を振って足をヨタヨタ動かしては、後ろに下がり、ぺたんと尻もちをついて座り込んで手を叩いている。

「スーは前に歩くことを覚えんとな」
「でも、掴まり立ちも出来る様にだんだんなったし、もう少し頑張れば前にも歩けるよ」
「んふーぅ」
「得意げな顔だな」
「スーちゃん、少し歩けたんだものね。偉い偉い」

 得意げな顔をして笑うスクルードは自分の耳に手を伸ばして、くしくしと耳を撫でつけている。
これは自分で自分を撫でて褒めているポーズで、なかなかに可愛い自画自賛だったりする。
ルーファスと二人でスクルードの手を持って、少し歩く練習を手伝ったりしていると、ドアがノックされる音がして開けると、燃える様な赤い髪をして赤いドレスに身を包んだマデリーヌさんがドレスの端を摘まんで挨拶をしてくれた。

「お久しぶりです。おや? その子が末のスクルードくんですか?」
「ああ、久しぶりだな。五男のスクルードだ」
「ふふっ、マデリーヌさんお久しぶりです。毎年色々と贈り物をありがとうございます」
「アカリ様もご健勝でなによりです。こちらこそ、色々と贈って頂いてありがとうございます。陛下も喜んでいます。ぜひ、今日の晩餐を陛下と共にと思いまして」
「随分と急だな。今回は子供達の学園祭に来ただけなんだが……」

 昔と比べて笑顔が自然と出る様になったマデリーヌさんは、リロノスさんの弟であり、この魔国の王様と結婚したいわば、女王でもある。
……が、マデリーヌさんも王様も、貴族然として居なくて、どちらかといえば、庶民派に近い為に、仰々しい挨拶とかはない。

「うちの子まだ小さいからテーブルマナーとか出来ないんですけど、大丈夫ですか?」
「そんなもの気にしないで大丈夫です。うちの子も陛下も気にしませんし、むしろ戦場ですからね」
「オレはナルアとエルシオンに声をかけてくる」

 ルーファスが隣りの続き部屋に行き、ナルアとエルシオンが部屋に来て、マデリーヌさんを見て挨拶をすると、マデリーヌさんが用意した馬車でそのまま夕飯に御呼ばれする事になった。

 到着した場所は魔国の中央にそびえる魔王城……と、いっても【刻狼亭】の様に黒い建物でも禍々しい建物でもなく、普通の洋風なお城で、どちらかといえば、海外の法廷とか美術館のような感じにも見える。
広い廊下を歩くとマデリーヌさんのヒールの音が響き渡る。

「あの、お城の騎士はいないのですか?」

 ナルアが上目遣いでマデリーヌさんに聞くと、マデリーヌさんは優しく微笑んで「騎士団の者達もこの城にいるから、後程会う事もできるでしょう」と言い、ナルアがふにゃっとした顔で頬を染めて笑ったのを見て、ルーファスが片眉を上げていた。困ったお父さんだ。

 そういえば、シノリアくんの勤務している騎士団もお城の中だとかなんとか言っていた気もする。
さすがに前国王の息子だからお城勤務は頷けるけど、自分が王様や王女様達と知り合いでこんな場所に居るのも驚きかもしれない。

「さぁ、どうぞ」

 マデリーヌさんが大きな扉を開くと、ホールの中は玉座まで赤い絨毯が敷かれ、玉座には金髪にアメジスト色の目をしたがっしりした感じの美丈夫が座っていた。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する

アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。 しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。 理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で 政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。 そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。