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22章
夏の旅行
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グラスアス森林は大きな滝のある場所。
私達がプチ旅行で来ているところ、ここから半日ばかり行った場所にキリンちゃんのエルフの里がある。
しかし、私達は森の中でキャンプをしている。
キリンちゃんが折角親元へ里帰りしているのに義両親が行ってしまっては、折角の里帰りに水を差すだろう。
「レーネルは祖父母のところで楽しんでいるかな?」
「きっと楽しんでいるよ。キリンちゃんのお母さん達も喜んでいるでしょうしね」
私達夫婦は義両親に挨拶したり、近所に住んでいたり、という事は無かったから、義両親から解放されるというものかは想像する事しか出来ない。
たまには義両親から解放されたいだろう……まぁ、こんなに近くにいるから「一緒にどうですか?」と声は掛けられて少し困った顔はしていた。
申し訳ないとは思うけど、ぜひとも気にせずに羽を伸ばして欲しい。
「エル、お肉焼けたよー」
「はーい。ニクストローブ一緒に食べよー」
川の近くでバーベキューをしつつ、満点の星空を見上げる。
本日の宿はこの川べりでニクストローブが石で固めて作ったレンガの宿で一泊となる。
帰る時には元の土に戻せばいい。便利である。
バーベキューも石のレンガでニクストローブが作ってくれている。石のレンガの上に網と石プレートを置いて上でお肉と野菜を焼いている。
このお野菜はハガネの畑から貰ってきた物。お肉はお昼間にルーファスとエルシオンが狩りで捕まえた魔獣ライノピポカのお肉。
角煮にしたりすると美味しい豚肉に近い味のものだったりする。
もちろんカリッと表面を焼いて食べるのも美味しい。
「はふっ、表面がカリカリで美味しい」
「いっぱい食べてね。タレも甘辛醤油とバーベキューソースがあるからね」
「アカリも食べろ」
「うん。ルーファスもいっぱい食べてね」
「キュルル」
お皿の上にお肉とトウモロコシとニンジンを乗せてニクストローブに渡すと、小さな亀の様な口でモシャモシャと食べている。
卵孵りして幼竜になったニクストローブは亀の顔のドラゴンの様な感じだ。丸い目がとても可愛い。
「んーっ、美味しいっ」
焼いた玉ねぎも甘みがあって美味しい。石プレートの上で焼きそばも作るとルーファスとエルシオンが競争の様にもっさり取っていってしまう。
男の子はいつでも食べ盛りだなぁという感じでクスッと笑ってしまう。
スクルードにも離乳食用に作ったリンゴとサツマイモのプリンを木匙で入れる。
「あんあー、あー……ぶぅー」
「ふぇー、スーちゃん。ご飯をブーしたら、メッ」
子供にご飯を食べさせるのは意外と難しい。とても気分屋さんでもあるから。
作るのに時間をかけても、こんな事はよくある。素直に食べてくれる時と、ご飯で遊んじゃう時もある。
「仕方がないな。スー、母上を困らせたら駄目だぞ」
「あぶーっ」
「んーっ、利かん坊だな」
「ぶーぶぅ、あーきゃ」
ルーファスがスクルードを腕に抱いて口周りを布巾で拭くと、スクルードは口から舌を出して手を叩いている。これはお遊びモードに入っているようだ。
困ったお子さんにルーファスも苦笑いして相手をしている。
「父上がスーに遊ばれてる」
「オレが、スーと遊んでやっているんだ」
布巾を引っ張り合いっこいて遊んでいる。ルーファスはリュエール達が生まれる前は、親に育てられた記憶が薄いと子育てに不安を覚えていたけど、こうして子煩悩なお父さんをしているのを見ると杞憂だったんだなぁと思う。
「スーちゃん、父上に遊んでもらえて良いねぇ」
「あふー。あう、あう」
「スーはアカリが良いみたいだな」
手を伸ばすスクルードをルーファスから受け取ると、うにうにぐずっているスクルードに今日は離乳食は諦めてお乳かな? と浴衣の前を開けて胸の前にスクルードの口を持っていくと勢いよく口に含まれた。
お腹は空いていたけど、離乳食は嫌だったというところか、遊びたかっただけなのか? そこはよくはわからないけど、ぢゅぢゅっと吸われていく。
「まだ離乳食は早いのか?」
「もうお乳と混合で大丈夫って言われたんだけどね」
「しかし、うっとりした顔で飲むな」
「んーっ、うっとりし始めると寝ちゃうから、齧られそうなんだよね……って、あきゃっ! 噛まれたぁ~」
小さな歯でガジと噛んだらスライドしてくるという……とても私の胸によろしくない噛み癖なのだ。
しかも眠そうにしているから、私が騒ぎ過ぎたら泣いてしまうし、まさに母親泣かせ。
胸からスクルードを離してルーファスにゲップを任せると、濡れ布巾で胸を押さえた後で浴衣を直して、ルーファスとスクルードを見ると、ケフッとルーファスの肩でゲップをして、幸せそうな顔で直ぐにぷぅぷぅ寝息を立てている。
「相変わらずスーは寝つきが良いな」
「寝る前のひと噛みが無きゃ、とっても良い子なんだけね」
ルーファスにおでこにキスをされて、川辺の岩の上に座るとルーファスとエルシオンも岩の上に座って来る。
エルシオンの頭の上にニクストローブが乗って、皆で一緒に星空を見上げる。
星は地球とは違う星座の位置で、輝きもこっちの世界の方が綺麗に見える。
森の小さな騒めきと虫の声、そして小さなぷぅぷぅという寝息を聞きながら、夏の涼を楽しんで過ごした。
私達がプチ旅行で来ているところ、ここから半日ばかり行った場所にキリンちゃんのエルフの里がある。
しかし、私達は森の中でキャンプをしている。
キリンちゃんが折角親元へ里帰りしているのに義両親が行ってしまっては、折角の里帰りに水を差すだろう。
「レーネルは祖父母のところで楽しんでいるかな?」
「きっと楽しんでいるよ。キリンちゃんのお母さん達も喜んでいるでしょうしね」
私達夫婦は義両親に挨拶したり、近所に住んでいたり、という事は無かったから、義両親から解放されるというものかは想像する事しか出来ない。
たまには義両親から解放されたいだろう……まぁ、こんなに近くにいるから「一緒にどうですか?」と声は掛けられて少し困った顔はしていた。
申し訳ないとは思うけど、ぜひとも気にせずに羽を伸ばして欲しい。
「エル、お肉焼けたよー」
「はーい。ニクストローブ一緒に食べよー」
川の近くでバーベキューをしつつ、満点の星空を見上げる。
本日の宿はこの川べりでニクストローブが石で固めて作ったレンガの宿で一泊となる。
帰る時には元の土に戻せばいい。便利である。
バーベキューも石のレンガでニクストローブが作ってくれている。石のレンガの上に網と石プレートを置いて上でお肉と野菜を焼いている。
このお野菜はハガネの畑から貰ってきた物。お肉はお昼間にルーファスとエルシオンが狩りで捕まえた魔獣ライノピポカのお肉。
角煮にしたりすると美味しい豚肉に近い味のものだったりする。
もちろんカリッと表面を焼いて食べるのも美味しい。
「はふっ、表面がカリカリで美味しい」
「いっぱい食べてね。タレも甘辛醤油とバーベキューソースがあるからね」
「アカリも食べろ」
「うん。ルーファスもいっぱい食べてね」
「キュルル」
お皿の上にお肉とトウモロコシとニンジンを乗せてニクストローブに渡すと、小さな亀の様な口でモシャモシャと食べている。
卵孵りして幼竜になったニクストローブは亀の顔のドラゴンの様な感じだ。丸い目がとても可愛い。
「んーっ、美味しいっ」
焼いた玉ねぎも甘みがあって美味しい。石プレートの上で焼きそばも作るとルーファスとエルシオンが競争の様にもっさり取っていってしまう。
男の子はいつでも食べ盛りだなぁという感じでクスッと笑ってしまう。
スクルードにも離乳食用に作ったリンゴとサツマイモのプリンを木匙で入れる。
「あんあー、あー……ぶぅー」
「ふぇー、スーちゃん。ご飯をブーしたら、メッ」
子供にご飯を食べさせるのは意外と難しい。とても気分屋さんでもあるから。
作るのに時間をかけても、こんな事はよくある。素直に食べてくれる時と、ご飯で遊んじゃう時もある。
「仕方がないな。スー、母上を困らせたら駄目だぞ」
「あぶーっ」
「んーっ、利かん坊だな」
「ぶーぶぅ、あーきゃ」
ルーファスがスクルードを腕に抱いて口周りを布巾で拭くと、スクルードは口から舌を出して手を叩いている。これはお遊びモードに入っているようだ。
困ったお子さんにルーファスも苦笑いして相手をしている。
「父上がスーに遊ばれてる」
「オレが、スーと遊んでやっているんだ」
布巾を引っ張り合いっこいて遊んでいる。ルーファスはリュエール達が生まれる前は、親に育てられた記憶が薄いと子育てに不安を覚えていたけど、こうして子煩悩なお父さんをしているのを見ると杞憂だったんだなぁと思う。
「スーちゃん、父上に遊んでもらえて良いねぇ」
「あふー。あう、あう」
「スーはアカリが良いみたいだな」
手を伸ばすスクルードをルーファスから受け取ると、うにうにぐずっているスクルードに今日は離乳食は諦めてお乳かな? と浴衣の前を開けて胸の前にスクルードの口を持っていくと勢いよく口に含まれた。
お腹は空いていたけど、離乳食は嫌だったというところか、遊びたかっただけなのか? そこはよくはわからないけど、ぢゅぢゅっと吸われていく。
「まだ離乳食は早いのか?」
「もうお乳と混合で大丈夫って言われたんだけどね」
「しかし、うっとりした顔で飲むな」
「んーっ、うっとりし始めると寝ちゃうから、齧られそうなんだよね……って、あきゃっ! 噛まれたぁ~」
小さな歯でガジと噛んだらスライドしてくるという……とても私の胸によろしくない噛み癖なのだ。
しかも眠そうにしているから、私が騒ぎ過ぎたら泣いてしまうし、まさに母親泣かせ。
胸からスクルードを離してルーファスにゲップを任せると、濡れ布巾で胸を押さえた後で浴衣を直して、ルーファスとスクルードを見ると、ケフッとルーファスの肩でゲップをして、幸せそうな顔で直ぐにぷぅぷぅ寝息を立てている。
「相変わらずスーは寝つきが良いな」
「寝る前のひと噛みが無きゃ、とっても良い子なんだけね」
ルーファスにおでこにキスをされて、川辺の岩の上に座るとルーファスとエルシオンも岩の上に座って来る。
エルシオンの頭の上にニクストローブが乗って、皆で一緒に星空を見上げる。
星は地球とは違う星座の位置で、輝きもこっちの世界の方が綺麗に見える。
森の小さな騒めきと虫の声、そして小さなぷぅぷぅという寝息を聞きながら、夏の涼を楽しんで過ごした。
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