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21章
異世界聖女⑭
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__数十分前。
ハガネが『聖女』の部屋に辿り着いた時、扉が開かずにどうしたもんか? と、迷ったが……【魅了】でドアの中に入りたがっていたササマキを見付け、ハガネが【幻惑】でササマキの魅了状態を解くと、アカリの髪をササマキの足に結び付けて、【魅了】に掛からない様にして、床に下ろすと天井からポスンと小鬼がササマキの上に落ちて来る。
「ん? 小鬼お前なにしてんだ?」
「どうも。僕は間に合わなくてココに入れなかったので別ルートから侵入しようとしていたんですが、手が疲れて落ちたのです」
「別ルート?」
「はい。設計図では天井のダクトから部屋に入れるはずなのですよ」
「アパー」
「うしっ、んじゃ、天井ダクトから行くか」
ハガネが獣化してアナグマになるとケイトとエデンが天井の通気ダクトまでハガネを運び、またケイトとエデンがササマキと小鬼を通気ダクトへと運び、四人と一匹はダクトから部屋へと侵入したのである。
「僕がテンさんに髪の毛を結びます!」
「んじゃ、ササマキも手伝ってやれ。いいか、なるべく派手に動き回れ。俺は【幻惑】でなるべく早めに正気に戻る様にサポートしてやるから」
「はい! 僕、頑張ります!」
眼下では、アリスとアカリが自分の夫を取り返そうと水魔法を放って騒いでいる最中で、ハガネも【幻惑】を展開させながら、【魅了】に干渉していく。
ササマキがテンの周りを走り、アカリ達の布を緩めて、再び、テンの周りを回った時に小鬼がテンの足首に拾ったアカリの髪の毛を結び付け、テンの様子が変わるまでハガネが見守っていると、テンが目線を上にあげて目が合うと、魅了が解けた事を確信して、テンの『10号室』が展開されると、再び【幻惑】で干渉して『10号室』にイノリだけを閉じ込める。
「アリス!」
布が解け落ちるとリロノスがアリスを抱き起こすと、アリスのポーチから魔力ポーションを取り出して口に含ませる。
「アリスさんは大丈夫ですか?」
「多分、魔力不足になっただけですから、しばらくしたら目を覚ますと思います」
「アカリこそ大丈夫か?」
「私は平気ですよ」
アカリとリロノスとルーファスがお互いに無事を確かめ合って、布に巻き疲れてテンとハガネの『10号室』の幻惑魔法にかかり唸っているイノリを見る。
「この聖女もどきをどうするかだな……」
テンの足元で小鬼が「ふぅ」と小さく息を吐いて、テンを見上げるとテンは自分の足首に巻かれた髪の毛を見てフッと笑って、小鬼を両手で抱き上げる。
「小鬼、ありがとうございます。おかげで助かりましたよ~」
「やっと、いつものテンさんです」
スリスリとテンの手に擦り付いて、小鬼が周りを見渡す。
部屋に侵入したハガネが手を3回叩くと、布がスルリと落ちて天井に吊るされていたリュエール達が落ちて来るのをエデンとケイトが空中で受け取り、アルビーとグリムレインが下で受け止める。
「アパーアパパパ」
「よしよし、ササマキよくやったぞ」
部屋の中を走り回っていたササマキがハガネの元へ走り込み、ハガネの頭の上に飛び乗るとドヤッとした顔をする。
「ハガネ、助かりましたぁ~」
「おう。テンが狂ってると面倒だかんな。流石に【幻惑】と『10号室』の干渉を重ねるのは大変だったけどな」
「皆さんもご迷惑お掛けしましたぁ~」
テンがいつも通りの穏やかな笑顔で頭を下げると、仕方がないなとう感じで受け入れる。
「テン、この布はどういう事だ? こんな物開発はしていなかっただろう?」
「ああ、それはぁー、アシュッヘルム都市で過去に作られていた物ですよ~。魔力が無くてただの布になっていたんですけど~、魔石が落ちてきた事で少しの間なら便利な布なんですよねぇ~」
「ふむ……開発に回しておくか」
「大旦那は何でも収拾しますねぇー」
ルーファスが布を拾って集めると、少し左右に尻尾を振りながら空間の鍵で布を収納してしまう。
それを見ていたアカリも眉を下げて、犬の収集癖の様だと少しだけ思ったりもする。
「しかし、この聖女どーすんだ?」
「そうですねぇ~、一応、利用は出来ると思うんですよ~」
「【魅了】なんて危険なだけじゃねぇか? 使えんのかよ?」
「調べた限り、番でも【魅了】に掛かるようですし、番消失の人へ【魅了】をかけて生きる活力を持ち上げる為に使ったり出来ると、思いますけどねぇ~」
「でも、こいつ自由にしたら不味くねぇか?」
「そこら辺は、【恐怖】で躾けていくしかないでしょうね」
「なんつーか、テンに任せると物騒な感じになりそうだけどな……」
「アハハ。まさか~」
テンが手を左右に振って「そんな事ないですよ~」と言っているが、十中八九ろくでもない事をしそうではある。
リュエールがようやく自由になると、イノリをテンとハガネで魔法を使えない様に精神魔法で拘束しておくように言い、【魅了】に掛かった人々を元に戻す為に、アカリとグリムレインを使い【聖域】の氷を大陸のドームに張り巡らせた。
シュトラールもテンが【魅了】から解けた事により、元の状態に戻り、旅館でグリムレインの氷で押しつぶされた従業員達を治療する為に駆け巡る事になる。
安藤祈の処遇が決まったのはそれから3日後の事だった。
ハガネが『聖女』の部屋に辿り着いた時、扉が開かずにどうしたもんか? と、迷ったが……【魅了】でドアの中に入りたがっていたササマキを見付け、ハガネが【幻惑】でササマキの魅了状態を解くと、アカリの髪をササマキの足に結び付けて、【魅了】に掛からない様にして、床に下ろすと天井からポスンと小鬼がササマキの上に落ちて来る。
「ん? 小鬼お前なにしてんだ?」
「どうも。僕は間に合わなくてココに入れなかったので別ルートから侵入しようとしていたんですが、手が疲れて落ちたのです」
「別ルート?」
「はい。設計図では天井のダクトから部屋に入れるはずなのですよ」
「アパー」
「うしっ、んじゃ、天井ダクトから行くか」
ハガネが獣化してアナグマになるとケイトとエデンが天井の通気ダクトまでハガネを運び、またケイトとエデンがササマキと小鬼を通気ダクトへと運び、四人と一匹はダクトから部屋へと侵入したのである。
「僕がテンさんに髪の毛を結びます!」
「んじゃ、ササマキも手伝ってやれ。いいか、なるべく派手に動き回れ。俺は【幻惑】でなるべく早めに正気に戻る様にサポートしてやるから」
「はい! 僕、頑張ります!」
眼下では、アリスとアカリが自分の夫を取り返そうと水魔法を放って騒いでいる最中で、ハガネも【幻惑】を展開させながら、【魅了】に干渉していく。
ササマキがテンの周りを走り、アカリ達の布を緩めて、再び、テンの周りを回った時に小鬼がテンの足首に拾ったアカリの髪の毛を結び付け、テンの様子が変わるまでハガネが見守っていると、テンが目線を上にあげて目が合うと、魅了が解けた事を確信して、テンの『10号室』が展開されると、再び【幻惑】で干渉して『10号室』にイノリだけを閉じ込める。
「アリス!」
布が解け落ちるとリロノスがアリスを抱き起こすと、アリスのポーチから魔力ポーションを取り出して口に含ませる。
「アリスさんは大丈夫ですか?」
「多分、魔力不足になっただけですから、しばらくしたら目を覚ますと思います」
「アカリこそ大丈夫か?」
「私は平気ですよ」
アカリとリロノスとルーファスがお互いに無事を確かめ合って、布に巻き疲れてテンとハガネの『10号室』の幻惑魔法にかかり唸っているイノリを見る。
「この聖女もどきをどうするかだな……」
テンの足元で小鬼が「ふぅ」と小さく息を吐いて、テンを見上げるとテンは自分の足首に巻かれた髪の毛を見てフッと笑って、小鬼を両手で抱き上げる。
「小鬼、ありがとうございます。おかげで助かりましたよ~」
「やっと、いつものテンさんです」
スリスリとテンの手に擦り付いて、小鬼が周りを見渡す。
部屋に侵入したハガネが手を3回叩くと、布がスルリと落ちて天井に吊るされていたリュエール達が落ちて来るのをエデンとケイトが空中で受け取り、アルビーとグリムレインが下で受け止める。
「アパーアパパパ」
「よしよし、ササマキよくやったぞ」
部屋の中を走り回っていたササマキがハガネの元へ走り込み、ハガネの頭の上に飛び乗るとドヤッとした顔をする。
「ハガネ、助かりましたぁ~」
「おう。テンが狂ってると面倒だかんな。流石に【幻惑】と『10号室』の干渉を重ねるのは大変だったけどな」
「皆さんもご迷惑お掛けしましたぁ~」
テンがいつも通りの穏やかな笑顔で頭を下げると、仕方がないなとう感じで受け入れる。
「テン、この布はどういう事だ? こんな物開発はしていなかっただろう?」
「ああ、それはぁー、アシュッヘルム都市で過去に作られていた物ですよ~。魔力が無くてただの布になっていたんですけど~、魔石が落ちてきた事で少しの間なら便利な布なんですよねぇ~」
「ふむ……開発に回しておくか」
「大旦那は何でも収拾しますねぇー」
ルーファスが布を拾って集めると、少し左右に尻尾を振りながら空間の鍵で布を収納してしまう。
それを見ていたアカリも眉を下げて、犬の収集癖の様だと少しだけ思ったりもする。
「しかし、この聖女どーすんだ?」
「そうですねぇ~、一応、利用は出来ると思うんですよ~」
「【魅了】なんて危険なだけじゃねぇか? 使えんのかよ?」
「調べた限り、番でも【魅了】に掛かるようですし、番消失の人へ【魅了】をかけて生きる活力を持ち上げる為に使ったり出来ると、思いますけどねぇ~」
「でも、こいつ自由にしたら不味くねぇか?」
「そこら辺は、【恐怖】で躾けていくしかないでしょうね」
「なんつーか、テンに任せると物騒な感じになりそうだけどな……」
「アハハ。まさか~」
テンが手を左右に振って「そんな事ないですよ~」と言っているが、十中八九ろくでもない事をしそうではある。
リュエールがようやく自由になると、イノリをテンとハガネで魔法を使えない様に精神魔法で拘束しておくように言い、【魅了】に掛かった人々を元に戻す為に、アカリとグリムレインを使い【聖域】の氷を大陸のドームに張り巡らせた。
シュトラールもテンが【魅了】から解けた事により、元の状態に戻り、旅館でグリムレインの氷で押しつぶされた従業員達を治療する為に駆け巡る事になる。
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