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21章
異世界聖女⑫
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いつも通りの穏やかな表情のテンに、いつも通りに助けに来たようにも思えたが、体に巻き付いた布がそうではないと告げていた。
「テン! しっかりしろ!」
「テンっち! 後で絶対後悔するやつだかんね!」
「なにこれ? 抜け出せないんだけど!」
「ぬっ……、本当だ。何だこの布は?」
ワーッと騒ぐルーファスやアリス、アルビーとグリムレインに対して、大人しいのはリロノスとアカリだった。アカリとリロノスの目は小さな侵入者を捉えていた。
それは丸くてふわふわした素早い温泉鳥ササマキ。
何でこんな所に居るのだろう? と、アカリとリロノスが思うものの、気付かれていないようなら騒ぎ立てずに見守るしかない。
「テン、私のイケオジパラダイスにバグが出ちゃった」
「大丈夫ですよ~。髪を解けばあなたの玩具に直ぐなりますよ~」
「そうなの? よく判んないけど、良かったぁ。ゲームのバグとか最悪だしね。テンが私のサポートキャラで良かったぁ」
ニコッと笑うテンに、イノリが肩を左右に振りながらクネクネと歩いて腕を絡みつかせる。「おぇー」と声を出したのはアリスである。
「気持ち悪っ! どこのブリッ子だっつーの! クラスで痛い子扱いされるタイプっしょ!」
アカリも確かに学年に1人はこういう子居たなぁ……と、思いつつ、ササマキの行動を目で追う。ササマキの背中に小鬼が乗っていて、アカリと目が合うと、小鬼が頭を指さし、地面を指さす。アカリが小さく頷くと、アリスとイノリが口論を始めていた。
「オバサンは黙ってなさいよ!」
「誰がオバサンっしょ! この痛い子ちゃん!」
「何でライバルがこんなオバサンなのよ! イケオジだからライバルがオバサンなのかしら?」
「何言ってるっしょ! この世界はゲームじゃ無いし! 痛い子ちゃんの能力で皆変になってるだけだし! 勘違いも甚だしいっしょ!」
「何言ってんのよ! こんなの現実にあるわけないじゃない!」
イノリの感情が上がると部屋の中に広がる甘い香りは強くなる。感情に左右される様で安定した物では無いらしいのが見て取れる。
「アーパーパー!」
「え?」
「きゃあ! 何? 今の何!?」
スタタ……と、ササマキがテンの足元を周り、アカリ達の周りを床を蹴ってジャンプしながら回り、アカリが布から腕を出すと自分の髪の毛を引き抜いて床に落とし、それを小鬼が拾い上げると、再びササマキに飛び乗ってササマキはまた、自由な走りで部屋を走り回り、テンの足元を一周すると部屋の何処かへ消えて行った。
「テン! 今の何なの!?」
「大丈夫ですよ~。心配には及びませんよ~。ただの鳥ですよぉ~」
「テン、このオバサン達どうにかして! イノリのお願い、聞いてくれるでしょ?」
一々、イノリの喋りはアリスとアカリにはカチンとくる言い方で、ササマキが緩めてくれた布の隙間から手を動かして、アカリが水玉を作るとテンが手をあげた瞬間、布が巻き付いて水玉が弾け散る。
「この布、特殊な布でして~。魔法封じも出来るんですよぉ~」
「そんな物どこから仕入れてきた!」
「それは、秘密です~」
ルーファスがチッと舌打ちをして、テンは変わらずニコニコしている。
トサッと音がすると、アリスが床に倒れていた。
「アリス!」
「ありすさん!」
アリスに声を掛けるアカリとリロノスに、イノリの声は何処か別次元の声にも聞こえた。
「ああ、アリスさんは魔力が足りなくなったみたいですねぇ~。この布、魔力も吸い取るんですよ~。これで聖女様の敵は一人居なくなりましたねぇ」
「やったぁ! ステータス画面とかあれば判りやすいのに」
テンの声はいつも通りなのに対し、イノリはあくまでゲーム感覚でいる。
元の世界から異世界へ来てしまった為に、逃げ場をゲームの中だと思い込んでいるのはアカリにも判るが、イノリはゲームでも人が倒れても何とも思わないのだろうか? それは凄く、人としての感情が抜けていないだろうかと不安にもなる。
「テン、早く『10号室』やっちゃおうよ!」
「いいんですかぁ? あなたも巻き込まれますよぉ?」
「私の事を拷問したりはしないんでしょ? それにあの部屋、ホラー映画みたいでワクワクする!」
「それなら、まぁ良いですかねぇ~」
『10号室』の言葉にルーファスとアルビーが青ざめた顔をし、アカリも困った顔をする。アカリは『10号室』を使っている所を見た事はあっても掛けられたことは無いが、掛けられた人が漏れなく、戦闘不能になるのは見た事があるので、『10号室』の恐ろしさは知っている。
『10号室』を知らないリロノスとグリムレインは眉間にしわを寄せて、布に巻かれながらも身構えている。
「『10号室』」
テンの声が静かに聞こえ、目を開ければ暗がりの部屋に赤いランプが1つあるだけの椅子のある部屋が目の前にある。
コツコツと足音が響き、軍服姿のテンが扉を開いて中に入って来る。
「テン! しっかりしろ!」
「テンっち! 後で絶対後悔するやつだかんね!」
「なにこれ? 抜け出せないんだけど!」
「ぬっ……、本当だ。何だこの布は?」
ワーッと騒ぐルーファスやアリス、アルビーとグリムレインに対して、大人しいのはリロノスとアカリだった。アカリとリロノスの目は小さな侵入者を捉えていた。
それは丸くてふわふわした素早い温泉鳥ササマキ。
何でこんな所に居るのだろう? と、アカリとリロノスが思うものの、気付かれていないようなら騒ぎ立てずに見守るしかない。
「テン、私のイケオジパラダイスにバグが出ちゃった」
「大丈夫ですよ~。髪を解けばあなたの玩具に直ぐなりますよ~」
「そうなの? よく判んないけど、良かったぁ。ゲームのバグとか最悪だしね。テンが私のサポートキャラで良かったぁ」
ニコッと笑うテンに、イノリが肩を左右に振りながらクネクネと歩いて腕を絡みつかせる。「おぇー」と声を出したのはアリスである。
「気持ち悪っ! どこのブリッ子だっつーの! クラスで痛い子扱いされるタイプっしょ!」
アカリも確かに学年に1人はこういう子居たなぁ……と、思いつつ、ササマキの行動を目で追う。ササマキの背中に小鬼が乗っていて、アカリと目が合うと、小鬼が頭を指さし、地面を指さす。アカリが小さく頷くと、アリスとイノリが口論を始めていた。
「オバサンは黙ってなさいよ!」
「誰がオバサンっしょ! この痛い子ちゃん!」
「何でライバルがこんなオバサンなのよ! イケオジだからライバルがオバサンなのかしら?」
「何言ってるっしょ! この世界はゲームじゃ無いし! 痛い子ちゃんの能力で皆変になってるだけだし! 勘違いも甚だしいっしょ!」
「何言ってんのよ! こんなの現実にあるわけないじゃない!」
イノリの感情が上がると部屋の中に広がる甘い香りは強くなる。感情に左右される様で安定した物では無いらしいのが見て取れる。
「アーパーパー!」
「え?」
「きゃあ! 何? 今の何!?」
スタタ……と、ササマキがテンの足元を周り、アカリ達の周りを床を蹴ってジャンプしながら回り、アカリが布から腕を出すと自分の髪の毛を引き抜いて床に落とし、それを小鬼が拾い上げると、再びササマキに飛び乗ってササマキはまた、自由な走りで部屋を走り回り、テンの足元を一周すると部屋の何処かへ消えて行った。
「テン! 今の何なの!?」
「大丈夫ですよ~。心配には及びませんよ~。ただの鳥ですよぉ~」
「テン、このオバサン達どうにかして! イノリのお願い、聞いてくれるでしょ?」
一々、イノリの喋りはアリスとアカリにはカチンとくる言い方で、ササマキが緩めてくれた布の隙間から手を動かして、アカリが水玉を作るとテンが手をあげた瞬間、布が巻き付いて水玉が弾け散る。
「この布、特殊な布でして~。魔法封じも出来るんですよぉ~」
「そんな物どこから仕入れてきた!」
「それは、秘密です~」
ルーファスがチッと舌打ちをして、テンは変わらずニコニコしている。
トサッと音がすると、アリスが床に倒れていた。
「アリス!」
「ありすさん!」
アリスに声を掛けるアカリとリロノスに、イノリの声は何処か別次元の声にも聞こえた。
「ああ、アリスさんは魔力が足りなくなったみたいですねぇ~。この布、魔力も吸い取るんですよ~。これで聖女様の敵は一人居なくなりましたねぇ」
「やったぁ! ステータス画面とかあれば判りやすいのに」
テンの声はいつも通りなのに対し、イノリはあくまでゲーム感覚でいる。
元の世界から異世界へ来てしまった為に、逃げ場をゲームの中だと思い込んでいるのはアカリにも判るが、イノリはゲームでも人が倒れても何とも思わないのだろうか? それは凄く、人としての感情が抜けていないだろうかと不安にもなる。
「テン、早く『10号室』やっちゃおうよ!」
「いいんですかぁ? あなたも巻き込まれますよぉ?」
「私の事を拷問したりはしないんでしょ? それにあの部屋、ホラー映画みたいでワクワクする!」
「それなら、まぁ良いですかねぇ~」
『10号室』の言葉にルーファスとアルビーが青ざめた顔をし、アカリも困った顔をする。アカリは『10号室』を使っている所を見た事はあっても掛けられたことは無いが、掛けられた人が漏れなく、戦闘不能になるのは見た事があるので、『10号室』の恐ろしさは知っている。
『10号室』を知らないリロノスとグリムレインは眉間にしわを寄せて、布に巻かれながらも身構えている。
「『10号室』」
テンの声が静かに聞こえ、目を開ければ暗がりの部屋に赤いランプが1つあるだけの椅子のある部屋が目の前にある。
コツコツと足音が響き、軍服姿のテンが扉を開いて中に入って来る。
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