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21章
異世界聖女⑨
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バンッと『華淡の間』が開く、紅珊瑚で出来た欄間に火の魔石が綺麗なランプの様に珊瑚の装飾が燃えたつように彩られ、まさに炎の華の様である。
応接間に積み重ねられた桐の箱の蓋を開けて、中から白い着物を取り出す人物を見て、アカリが「あっ!」と声をあげる。
化粧をして、髪を装飾で着飾り、白い着物を手に持った人物もアカリを見て手を止める。
「母上……」
「リューちゃん……」
「「こんな所でなにしてるの?」」
見事にハモった二人に、アルビーがリュエールに飛びついて抱きしめる。
なんだかんだ言っても、アルビーはリュエールとシュトラールのドラゴンなのだ。
「リュー心配したよ!」
「アルビー、僕は大丈夫だよ。シューは大丈夫だった?」
「うん。まだ『10号室』の配下から抜け出てないから、後でテンを戻したらハガネと一緒に精神ケアさせないと駄目だと思う」
「そっか。……で、母上やアルビー達はどうしてここに?」
「いやいや、それは私達のセリフだよ! リューちゃん!」
少し困った顔でリュエールがアルビーとアカリとケルチャを見ると、アカリ達は逆に首をブンブン横に振りながら、化粧までしているリュエールを見つめ返す。
てっきり、聖女にでも自分の着物や装飾品が運び込まれているのかと思えば、運び込んだのもリュエールの親友たちで、着ようとしているのもリュエールの様な感じなのである。
「父上が、聖女に捕まってて助け出すのに、母上のフリをしてテンの目を欺こうと思ったら、母上が来た……ってところかな?」
「何んで私のフリ?」
「母上は妊婦だから、流石に聖女やテンも妊婦にいきなり襲い掛かったりはしないでしょ?」
「そういうものかなぁ?」
アカリが首をひねると、リュエールが肩をすくめる。
「妊婦がいきなり攻撃してくるとはあっちも思わないでしょ」
「攻撃する気、満々だけど?」
「はーはーうーえー……本当にやめて。アルビー達も止めてよ」
アルビーとケルチャが顔を見合わせて、首を振る。
こちらもこちらでアカリに無茶な事をさせる気はないが、敵の油断を誘うならばアカリは丁度いいとは思ってはいた。
流石に妊婦を攻撃してくる事は無いだろうという甘い考えもあるが、敵は少女だと言うので、そこまでは厳しくないはずなのである。
厄介なのは【魅了】魔法と言うだけで。
「それにしても、リューの友達は【魅了】効いてないんだね」
「ああ、彼等は僕と主従関係にあるからね。友達だからそんなの要らないとは思ったけど、【魅了】にはかからないから、やっといて良かったよ」
リュエールの友人たちは、シュトラールとアカリが眠っていた二年間でリュエールを支える為に、主君契約をしている程に、リュエールを心配して寄り添って今に至る。
気の良い友人達でもある。流石に、リュエールの命令とはいえ、アカリの着物を無断で持ち出したのは申し訳ないと思っている様で、アカリに頭を下げている。
「リューちゃん、ルーファスが捕まってるのは何処?」
「僕がどうにかするから、母上は此処で大人しくしててよ」
「私にだって、出来る事はあるんです。母上に任せなさいって」
「心配してるのは、お腹の子供の方だよ。ただでさえ高齢出……って、母上、足踏まないで」
ダムダムとアカリがリュエールの足を踏みつけながら、頬を膨らませて目を吊り上げる。
デリカシーの足りない所は子供の頃から、少しばかり多いリュエールとシュトラールなので教育を間違えたかとも思っていたりする。
「それにね、父上は【魅了】に掛かってるから母上はショックだと思うよ?」
「なっ! ルーファスには番の私が居るのに? 何で【魅了】されてるの!?」
「範囲を狭めて【魅了】に掛けると番も主君契約も関係ないみたい。それに、温泉大陸は魔力が豊富だから、あの聖女が温泉大陸に滞在が長ければ長いだけ、力を付けると思う」
「だったら、尚更、私が助けないと!」
「母上に何が出来るっていうの?」
小鬼をテーブルの上から拾い上げるアカリをリュエールが腕を掴んで止める。
「放して! 私はルーファスを助けるの!」
「だから、僕が助けるから、母上は大人しくしてて!」
「私なら【魅了】を解けるの! だから、私が行かないといけないの!」
「母上の【聖域】でもまた【魅了】されたら直ぐに解けちゃうでしょ!」
「私の髪の毛をルーファスの体の何処かに結び付ければいいだけだもの!」
リュエールがアカリの髪をプチッと引き抜いて「痛っ!」とアカリが文句を言うと、リュエールがアルビーに「母上を捕まえておいて」と命令して、アルビーがアカリを捕まえると、アカリがアルビーとリュエールを睨みつける。
「アルビー、離して! ケルチャどーにかして!」
「アカリ、それは主君命令? 流石に、アタシもリュエールの作戦で行った方が、アカリの為でもあるし、お腹の子の為でもあると思うけど?」
恨みがましい目でアカリがケルチャを見てブスッとへの字口をして、プイッとそっぽを向くと、リュエールもケルチャもやれやれという顔をする。
アカリがむすくれている間に、リュエールが体に詰め物をして着物を着ると、少し背の高いアカリの出来上がりである。
片方目の色が違うのを光彩の魔法で色を変えると、ケルチャに付いてくるように言い、ケルチャを連れて『華淡の間』を出て行く。
小鬼が隙を見て飛び出すと、小鬼も部屋から出て行った。
「アルビーもういいでしょ? 放して」
「そんなに怒らないでよ。私だって、アカリには安全でいて欲しいんだし……」
アルビーがアカリから手を放すと、アカリはプリプリ怒りながら部屋を出て行こうとして、アルビーにまた捕まり、チッとらしからぬ舌打ちをする。
「アーカーリー」
「だって、心配だもの! アリスさんやハガネも動いてるし、アリスさん達の様子見るだけだから!」
「もう! 危ない事はしないでよ!」
「分かってる! 約束するから、だからアルビーも一緒にアリスさん達の所に行こう?」
「……本当に、アカリは前に出たりしないでよ?」
「分かってる!」
少しモメながらも二人は『華淡の間』を出て廊下に出て行った。
結局のところ、二人共仲間外れは嫌なだけだったりする。勿論、心配はしているが。
応接間に積み重ねられた桐の箱の蓋を開けて、中から白い着物を取り出す人物を見て、アカリが「あっ!」と声をあげる。
化粧をして、髪を装飾で着飾り、白い着物を手に持った人物もアカリを見て手を止める。
「母上……」
「リューちゃん……」
「「こんな所でなにしてるの?」」
見事にハモった二人に、アルビーがリュエールに飛びついて抱きしめる。
なんだかんだ言っても、アルビーはリュエールとシュトラールのドラゴンなのだ。
「リュー心配したよ!」
「アルビー、僕は大丈夫だよ。シューは大丈夫だった?」
「うん。まだ『10号室』の配下から抜け出てないから、後でテンを戻したらハガネと一緒に精神ケアさせないと駄目だと思う」
「そっか。……で、母上やアルビー達はどうしてここに?」
「いやいや、それは私達のセリフだよ! リューちゃん!」
少し困った顔でリュエールがアルビーとアカリとケルチャを見ると、アカリ達は逆に首をブンブン横に振りながら、化粧までしているリュエールを見つめ返す。
てっきり、聖女にでも自分の着物や装飾品が運び込まれているのかと思えば、運び込んだのもリュエールの親友たちで、着ようとしているのもリュエールの様な感じなのである。
「父上が、聖女に捕まってて助け出すのに、母上のフリをしてテンの目を欺こうと思ったら、母上が来た……ってところかな?」
「何んで私のフリ?」
「母上は妊婦だから、流石に聖女やテンも妊婦にいきなり襲い掛かったりはしないでしょ?」
「そういうものかなぁ?」
アカリが首をひねると、リュエールが肩をすくめる。
「妊婦がいきなり攻撃してくるとはあっちも思わないでしょ」
「攻撃する気、満々だけど?」
「はーはーうーえー……本当にやめて。アルビー達も止めてよ」
アルビーとケルチャが顔を見合わせて、首を振る。
こちらもこちらでアカリに無茶な事をさせる気はないが、敵の油断を誘うならばアカリは丁度いいとは思ってはいた。
流石に妊婦を攻撃してくる事は無いだろうという甘い考えもあるが、敵は少女だと言うので、そこまでは厳しくないはずなのである。
厄介なのは【魅了】魔法と言うだけで。
「それにしても、リューの友達は【魅了】効いてないんだね」
「ああ、彼等は僕と主従関係にあるからね。友達だからそんなの要らないとは思ったけど、【魅了】にはかからないから、やっといて良かったよ」
リュエールの友人たちは、シュトラールとアカリが眠っていた二年間でリュエールを支える為に、主君契約をしている程に、リュエールを心配して寄り添って今に至る。
気の良い友人達でもある。流石に、リュエールの命令とはいえ、アカリの着物を無断で持ち出したのは申し訳ないと思っている様で、アカリに頭を下げている。
「リューちゃん、ルーファスが捕まってるのは何処?」
「僕がどうにかするから、母上は此処で大人しくしててよ」
「私にだって、出来る事はあるんです。母上に任せなさいって」
「心配してるのは、お腹の子供の方だよ。ただでさえ高齢出……って、母上、足踏まないで」
ダムダムとアカリがリュエールの足を踏みつけながら、頬を膨らませて目を吊り上げる。
デリカシーの足りない所は子供の頃から、少しばかり多いリュエールとシュトラールなので教育を間違えたかとも思っていたりする。
「それにね、父上は【魅了】に掛かってるから母上はショックだと思うよ?」
「なっ! ルーファスには番の私が居るのに? 何で【魅了】されてるの!?」
「範囲を狭めて【魅了】に掛けると番も主君契約も関係ないみたい。それに、温泉大陸は魔力が豊富だから、あの聖女が温泉大陸に滞在が長ければ長いだけ、力を付けると思う」
「だったら、尚更、私が助けないと!」
「母上に何が出来るっていうの?」
小鬼をテーブルの上から拾い上げるアカリをリュエールが腕を掴んで止める。
「放して! 私はルーファスを助けるの!」
「だから、僕が助けるから、母上は大人しくしてて!」
「私なら【魅了】を解けるの! だから、私が行かないといけないの!」
「母上の【聖域】でもまた【魅了】されたら直ぐに解けちゃうでしょ!」
「私の髪の毛をルーファスの体の何処かに結び付ければいいだけだもの!」
リュエールがアカリの髪をプチッと引き抜いて「痛っ!」とアカリが文句を言うと、リュエールがアルビーに「母上を捕まえておいて」と命令して、アルビーがアカリを捕まえると、アカリがアルビーとリュエールを睨みつける。
「アルビー、離して! ケルチャどーにかして!」
「アカリ、それは主君命令? 流石に、アタシもリュエールの作戦で行った方が、アカリの為でもあるし、お腹の子の為でもあると思うけど?」
恨みがましい目でアカリがケルチャを見てブスッとへの字口をして、プイッとそっぽを向くと、リュエールもケルチャもやれやれという顔をする。
アカリがむすくれている間に、リュエールが体に詰め物をして着物を着ると、少し背の高いアカリの出来上がりである。
片方目の色が違うのを光彩の魔法で色を変えると、ケルチャに付いてくるように言い、ケルチャを連れて『華淡の間』を出て行く。
小鬼が隙を見て飛び出すと、小鬼も部屋から出て行った。
「アルビーもういいでしょ? 放して」
「そんなに怒らないでよ。私だって、アカリには安全でいて欲しいんだし……」
アルビーがアカリから手を放すと、アカリはプリプリ怒りながら部屋を出て行こうとして、アルビーにまた捕まり、チッとらしからぬ舌打ちをする。
「アーカーリー」
「だって、心配だもの! アリスさんやハガネも動いてるし、アリスさん達の様子見るだけだから!」
「もう! 危ない事はしないでよ!」
「分かってる! 約束するから、だからアルビーも一緒にアリスさん達の所に行こう?」
「……本当に、アカリは前に出たりしないでよ?」
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少しモメながらも二人は『華淡の間』を出て廊下に出て行った。
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