627 / 960
21章
魔力の満ちた大地
しおりを挟む
魔獣の【王】が倒され、一時期はダークエルフは【怨嗟】騒ぎで迫害されていたものの、魔石を砕いた事で数百年ぶりの魔石が空から降ってくるという事態に世界中が沸き上がり、ダークエルフのサザンは【勇者】として世界に名を知られ渡る事となった。
少しずつ魔力が大地から薄れていた事もあり、魔石が世界中に降り注いだことは、世界にとって良い事であった。
恩恵は魔石の大きさにもよるが、魔力がほぼないとされていた人族の国にも少しは恩恵があった様で、活気づいていた。
各国で魔力が満ち溢れた大地になり、豊かな実りと、人々の魔力の向上は喜ばしく、『星降り祭り』は5月の頭に行われていた物は、『旧・星降り祭り』となり、今回の『星降り祭り』は1月に開催されることになるそうだ。
「温泉大陸の『星降り祭り』は変わらず5月に執り行う」
【刻狼亭】の大旦那であるルーファスの鶴の一声で、温泉大陸の『星降り祭り』は前と変わらない。
既に隠居したルーファスではあるが、発言権は未だに持っているので16代目のリュエールは逆らうことなく了承した。
「ルーファス、もう気にしなくてもいいと思うよ? 今回の魔石も、私は関わってるんだし、ね?」
「しかし、初代からの教えをここで途切れさせるわけにもいかんだろ?」
「うーん……そうなの、かなぁ?」
朱里が指を口に添えながら、首をかしげて少し眉間にしわを寄せる。
それに、初代からルーファスの代まで毎年行われた『星降り祭り』の利益は全て朱里が【刻狼亭】の初代ルーディクスから貰った財貨の袋に流れ込んでいる為に、時間移動を繰り返しても十分な金額になっている為、もう『星降り祭り』をしなくても大丈夫なのである。
この財貨の袋は時間移動の際、中身がループしてしまっているのか、一向に減らないのである……。
ある意味、危険な代物なので、存在はルーファスとアカリと財貨の番人である宝玉竜のファルヒュームのみが知っているだけである。
「それより、アカリ、体調はどうだ?」
「ふふっ、いつも通り元気ですよ」
お腹をポンポンと叩いて、朱里が笑うとルーファスが朱里のお腹に手を当てる。
朱里が時間移動の冒険から戻って5ヶ月、日に日に少しずつ大きくなるお腹に手を当てては、毎日のようにこの質問を繰り返している。
隠居生活を始めたものの、まだ隠居するには若いので一緒に旅行を計画していた為に、色々と予定を断っていて、さぁ行くぞ! と言う時に、妊娠で旅行は中止、そしてルーファスは暇を持て余しているというところなのである。
「そういえば、温泉大陸の使っていない土地を畑にして、魔力が豊富な野菜を売り出して欲しいって、商人さんが話を持ち掛けてきているって、リューちゃんが言ってたよ」
「リューに話を持って行く時点で、その商人はハズレだな」
「だよねぇ……。リューちゃんは【刻狼亭】の当主ではあるけど、温泉大陸の権利はルーファスだから、土地に関してはルーファスの許可が必要だもんねぇ」
「商人は正確な情報も物を言う世界だ。それが分かっていないようでは三流だからな」
少し半目になったルーファスは、欲の張った商人は商人らしくはあるが、温泉大陸という物を解ってはいないなとも思う。
この温泉大陸は別に金儲けがしたいという訳ではなく、一時の安らぎの場として提供している場だという事を理解していなければ、温泉大陸の人間は首を縦に振る者は少ない。
魔力が大地に満ち溢れている為に、他の大陸より恵まれた土地になってはいるが、それは全て、温泉大陸を訪れた人や住民たちの為のものであって、他の大陸に分け与える必要が無い限りは利益目的においそれとばら撒くつもりもない。
まぁ、今は世界中が魔石の恩恵に歓喜しているので当分は静かだろうが、そのうち欲を張った人間が土地を狙いに来る事も想定して、今のうちに魔力の多い野菜などは温泉大陸の住民に食べさせ、魔力を向上させて、いつ襲撃があってもいい様に備えさせておく方が得策だと、ルーファスは思っている。
それに、新しい家族が増える以上、護りは固めておくべきだ。
「アカリ、そろそろ眠いんじゃないか?」
「うん。少し眠いかな?」
カウチソファに獣化してルーファスが横になり、朱里がルーファスのお腹部分に頭を乗せて横になる。
最近の二人の昼寝スタイルで、二人はのんびりと夏の日差しの中でまどろみを楽しんでいる。
魔石のおかげで今年は猛暑にもならずに過ごしやすく、『出張・女将亭』のアイスとジュースの移動露店も今年は出しておらず、グリムレインが「アイスが食えぬ!」と、嘆いていた。
朱里が寝息を立て始めて、しばらくすると玄関を元気に開ける音がし、三つ子達が廊下を駆ける音がする。
「やれやれ、賑やかなのが帰ってきたな……」
ルーファスが獣化を解いて元に戻ると、朱里の体の上に薄掛けを掛けてから、三人の子供達の元へ行く。
「おかえり。三人共、今日の学校はどうだった?」
少し小麦色に日焼けした三人は尻尾を振りながら、ルーファスに今日の学校の出来事を聞いてくれと我先に喋り出す。
少しずつ魔力が大地から薄れていた事もあり、魔石が世界中に降り注いだことは、世界にとって良い事であった。
恩恵は魔石の大きさにもよるが、魔力がほぼないとされていた人族の国にも少しは恩恵があった様で、活気づいていた。
各国で魔力が満ち溢れた大地になり、豊かな実りと、人々の魔力の向上は喜ばしく、『星降り祭り』は5月の頭に行われていた物は、『旧・星降り祭り』となり、今回の『星降り祭り』は1月に開催されることになるそうだ。
「温泉大陸の『星降り祭り』は変わらず5月に執り行う」
【刻狼亭】の大旦那であるルーファスの鶴の一声で、温泉大陸の『星降り祭り』は前と変わらない。
既に隠居したルーファスではあるが、発言権は未だに持っているので16代目のリュエールは逆らうことなく了承した。
「ルーファス、もう気にしなくてもいいと思うよ? 今回の魔石も、私は関わってるんだし、ね?」
「しかし、初代からの教えをここで途切れさせるわけにもいかんだろ?」
「うーん……そうなの、かなぁ?」
朱里が指を口に添えながら、首をかしげて少し眉間にしわを寄せる。
それに、初代からルーファスの代まで毎年行われた『星降り祭り』の利益は全て朱里が【刻狼亭】の初代ルーディクスから貰った財貨の袋に流れ込んでいる為に、時間移動を繰り返しても十分な金額になっている為、もう『星降り祭り』をしなくても大丈夫なのである。
この財貨の袋は時間移動の際、中身がループしてしまっているのか、一向に減らないのである……。
ある意味、危険な代物なので、存在はルーファスとアカリと財貨の番人である宝玉竜のファルヒュームのみが知っているだけである。
「それより、アカリ、体調はどうだ?」
「ふふっ、いつも通り元気ですよ」
お腹をポンポンと叩いて、朱里が笑うとルーファスが朱里のお腹に手を当てる。
朱里が時間移動の冒険から戻って5ヶ月、日に日に少しずつ大きくなるお腹に手を当てては、毎日のようにこの質問を繰り返している。
隠居生活を始めたものの、まだ隠居するには若いので一緒に旅行を計画していた為に、色々と予定を断っていて、さぁ行くぞ! と言う時に、妊娠で旅行は中止、そしてルーファスは暇を持て余しているというところなのである。
「そういえば、温泉大陸の使っていない土地を畑にして、魔力が豊富な野菜を売り出して欲しいって、商人さんが話を持ち掛けてきているって、リューちゃんが言ってたよ」
「リューに話を持って行く時点で、その商人はハズレだな」
「だよねぇ……。リューちゃんは【刻狼亭】の当主ではあるけど、温泉大陸の権利はルーファスだから、土地に関してはルーファスの許可が必要だもんねぇ」
「商人は正確な情報も物を言う世界だ。それが分かっていないようでは三流だからな」
少し半目になったルーファスは、欲の張った商人は商人らしくはあるが、温泉大陸という物を解ってはいないなとも思う。
この温泉大陸は別に金儲けがしたいという訳ではなく、一時の安らぎの場として提供している場だという事を理解していなければ、温泉大陸の人間は首を縦に振る者は少ない。
魔力が大地に満ち溢れている為に、他の大陸より恵まれた土地になってはいるが、それは全て、温泉大陸を訪れた人や住民たちの為のものであって、他の大陸に分け与える必要が無い限りは利益目的においそれとばら撒くつもりもない。
まぁ、今は世界中が魔石の恩恵に歓喜しているので当分は静かだろうが、そのうち欲を張った人間が土地を狙いに来る事も想定して、今のうちに魔力の多い野菜などは温泉大陸の住民に食べさせ、魔力を向上させて、いつ襲撃があってもいい様に備えさせておく方が得策だと、ルーファスは思っている。
それに、新しい家族が増える以上、護りは固めておくべきだ。
「アカリ、そろそろ眠いんじゃないか?」
「うん。少し眠いかな?」
カウチソファに獣化してルーファスが横になり、朱里がルーファスのお腹部分に頭を乗せて横になる。
最近の二人の昼寝スタイルで、二人はのんびりと夏の日差しの中でまどろみを楽しんでいる。
魔石のおかげで今年は猛暑にもならずに過ごしやすく、『出張・女将亭』のアイスとジュースの移動露店も今年は出しておらず、グリムレインが「アイスが食えぬ!」と、嘆いていた。
朱里が寝息を立て始めて、しばらくすると玄関を元気に開ける音がし、三つ子達が廊下を駆ける音がする。
「やれやれ、賑やかなのが帰ってきたな……」
ルーファスが獣化を解いて元に戻ると、朱里の体の上に薄掛けを掛けてから、三人の子供達の元へ行く。
「おかえり。三人共、今日の学校はどうだった?」
少し小麦色に日焼けした三人は尻尾を振りながら、ルーファスに今日の学校の出来事を聞いてくれと我先に喋り出す。
50
お気に入りに追加
4,628
あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する
アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。
しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。
理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で
政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。
そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。