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21章
温泉大陸の刻狼亭
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世界の中心イルブールから南南西にある海に囲まれた大陸、温泉大陸。
山と森が大半を占めている様な大陸で、海岸線の港街から街が開けて温泉施設の多い観光地帯が広がっている。
遠目からも判る建物は【刻狼亭】の別館、温泉宿として建てられている外見は黒く聳え立つ背の高い木造りの建物で、広さも高さも温泉大陸随一を誇っている。
黒い壁で囲われてはいる物の、外面に面した渡り廊下はガラス張りで中の様子が外からも見える様になっている。
東風の建物仕様となっている為に、東風の着物のお仕着せを着た従業員が印象的で、泊まった際に出される室内着も浴衣である。
各部屋に温泉が完備されてはいるが、露天の大浴場が男女別に1つずつあり、混浴風呂も濁り湯で少し奥まった場所にある。
その他にも家族向けや団体客用に用意された室内用の温泉が幾つか用意されており、こちらは季節ごとに湯船の上に浮かぶものが違う。
花や実というかんじではあるが、魔力の多い温泉大陸の土地で育った植物は肌にもよく、こちらは貴婦人に人気が高い。
他にも温泉大陸の名にふさわしく、森の中に自然温泉などがわき出ている場所も幾つかある。
間欠泉の森もあり、こちらは足元に気を付けさえすれば、スチームの森ともいわれ、ぜんそくや肌にも良い場所といえる。
ただし、温泉大陸にしか生息しない温泉鳥という保護鳥達の住処でもあるので、気を付けないといけない。
この温泉鳥達は非常にドジな鳥達なので気を付けなければ、風に飛ばされて勝手に怪我をして、勝手に近くに居た人間に攻撃してくる事があるのだ。
温泉大陸の人間は慣れているので、治療所に連れて行くが、旅行客などは慌てふためいて逃げまどい、間欠泉の根元に足を突っ込んで火傷……と言う事もしばしばある。
この温泉大陸で有名処といえば、温泉大陸の当主の経営する【刻狼亭】の本館、料亭【刻狼亭】である。
こちらも、黒い建物で出来ており、中の内装も黒が基調とされた物になっている。
温泉街では黒を建物に使っているのは【刻狼亭】なので間違える事は早々無いだろう。
この料亭では、予約は必須というところだが、祭りや季節の催し事に休暇の多い時期さえぶつからなければ、昼間は予約が無くても入店できる。
「一昨日おいで! この三下がっ!」
「この【刻狼亭】で粋がりたきゃ、それ相応の実力付けて来るんだね!」
「またのお越しを お待ちしております」
【刻狼亭】の黒い【刻】と書かれた暖簾がバサッて開くと、冒険者風の男が外へ叩き出され、【刻狼亭】のお仕着せを着た従業員達が、叩き出した男を見下ろして手をはたきながら店内に戻っていく。
このような事も日常茶飯で起きているので、【刻狼亭】へ来店する場合は基本、粋がらずに大人しく食事と雰囲気を楽しんで一時を過ごす事をおススメしたい。
他の大陸や冒険者の上位ランクで少し名をもてはやされても、ここではそれは通じない事を肝に銘じておく事を心掛けなければ、恥をかくことになる。
何故なら、この大陸へ入国出来た貴族や上級ランクの冒険者などはそれを目にしてしまうので、噂が出回れば冒険者としては少々生き辛くなるからだ。
さて、他にも見どころがあるといえば【刻狼亭】の女将が経営している『女将亭』という建物がある。
こちらは『デパート』と最近呼ばれていて、色々な店が一つの建物に店舗を出している珍しいタイプの建物で、観光客のみならず、地元の人々も活用している場所になっている。
ここには土産物店からドレスから下着まで揃えられる洋品店もあり、巷で人気の製菓店も軒を連ねている。
他の大陸では味わえないご当地バージョンという限定品もあるので、是非とも一度は味わっておきたいものだろう。
マニアに人気の季節によって変わる温泉鳥の置物も毎月新しい物が出ている為に、最近では定期購入販売も開始されたという事で入手はしやすくはなってはいるが、しかし、この『女将亭』でしか買えない商品は多いのでマニアは足しげく通うしか無いだろう。
【刻狼亭】の当主の番アカリ・トリニアが最初に造った建物ではあったが、今では代替わりをして息子嫁のキリン・トリニアが女将亭を切り盛りしている。
【刻狼亭】も15代目ルーファス・トリニアから16代目のリュエール・トリニアに代替わりし、若い夫婦が中心となって新しい風が温泉大陸に吹いていく事だろう。
最後に忘れてはいけない、温泉大陸の一押しを紹介しておかなくてはいけないだろう。
旧・女将亭が温泉街より少し離れた反対側の海岸沿い付近にあり、そこには生きる伝説のドラゴン達が暮し、ドラゴン達の酒盛り場として店を構えている。
『悪友の集い』という名のバーがある。
店主は光竜のアルビーで酒の種類はかなりの数があり、中には珍しい物もあり酒の飲み比べをしたい方にはおススメの場所ともいえる。
ただ、ドラゴンは気まぐれなので、開店している日は決まっていない。
その事だけをご注意いただければ、楽しんでいただけるところだろう。
珍しいドラゴン達が出入りしているので、伝説のドラゴンから知恵を借りたい人も訪れてみてはいかがだろう?
温泉ガイドブック・トワライト社・ビーナ記者。
「あらまぁ、ガイドブックですか?」
「ああ。ゲラが刷り上がったと言うので貰った」
「ふふっ、『カメラ』が大分浸透してきて、カラーの本も増えましたから、こうしたガイドブックも見やすくなりますね」
朱里がくすくす笑ってお茶を手渡す。
ルーファスはそんな朱里の顔を見た後で少し膨らんできた朱里のお腹に目をやり、朱里に隣に座る様にソファにクッションを置く。
朱里が横に座って、ルーファスに頭を寄っかからせるとゲラ刷りを覗き見しながら目を細める。
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黒い壁で囲われてはいる物の、外面に面した渡り廊下はガラス張りで中の様子が外からも見える様になっている。
東風の建物仕様となっている為に、東風の着物のお仕着せを着た従業員が印象的で、泊まった際に出される室内着も浴衣である。
各部屋に温泉が完備されてはいるが、露天の大浴場が男女別に1つずつあり、混浴風呂も濁り湯で少し奥まった場所にある。
その他にも家族向けや団体客用に用意された室内用の温泉が幾つか用意されており、こちらは季節ごとに湯船の上に浮かぶものが違う。
花や実というかんじではあるが、魔力の多い温泉大陸の土地で育った植物は肌にもよく、こちらは貴婦人に人気が高い。
他にも温泉大陸の名にふさわしく、森の中に自然温泉などがわき出ている場所も幾つかある。
間欠泉の森もあり、こちらは足元に気を付けさえすれば、スチームの森ともいわれ、ぜんそくや肌にも良い場所といえる。
ただし、温泉大陸にしか生息しない温泉鳥という保護鳥達の住処でもあるので、気を付けないといけない。
この温泉鳥達は非常にドジな鳥達なので気を付けなければ、風に飛ばされて勝手に怪我をして、勝手に近くに居た人間に攻撃してくる事があるのだ。
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こちらも、黒い建物で出来ており、中の内装も黒が基調とされた物になっている。
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「一昨日おいで! この三下がっ!」
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「またのお越しを お待ちしております」
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他の大陸や冒険者の上位ランクで少し名をもてはやされても、ここではそれは通じない事を肝に銘じておく事を心掛けなければ、恥をかくことになる。
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こちらは『デパート』と最近呼ばれていて、色々な店が一つの建物に店舗を出している珍しいタイプの建物で、観光客のみならず、地元の人々も活用している場所になっている。
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マニアに人気の季節によって変わる温泉鳥の置物も毎月新しい物が出ている為に、最近では定期購入販売も開始されたという事で入手はしやすくはなってはいるが、しかし、この『女将亭』でしか買えない商品は多いのでマニアは足しげく通うしか無いだろう。
【刻狼亭】の当主の番アカリ・トリニアが最初に造った建物ではあったが、今では代替わりをして息子嫁のキリン・トリニアが女将亭を切り盛りしている。
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店主は光竜のアルビーで酒の種類はかなりの数があり、中には珍しい物もあり酒の飲み比べをしたい方にはおススメの場所ともいえる。
ただ、ドラゴンは気まぐれなので、開店している日は決まっていない。
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