黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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20章

黒狼亭⑪

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 目を開けると旧女将亭のベッドじゃなくて、新しい自宅になった寝室のベッドの上で私の頭の下と腰に回されているのはルーファスの腕で……はて?
腕を上げてみれば、時間移動の魔道具は無くなっている。

「……あれ?」

 ルーファスの腕を指でつつくと、ルーファスの耳がピクッと動いて瞼が開くといつも通りの優しい目をしたルーファスの金色の目が見つめ返してくる。

「えーと、おはようございます?」
「ん……、ああ、おはよう。アカリ、これからはオレの居ない場所での酒は禁止だからな」

 あー……、やっぱりアルビーに絡んでたの夢じゃなかったっ!!
ルーファスが髪を掻き上げながら起きて、私も抱き起こすと膝の上に乗せて、おでこをコツンと合わせてくる。

「……まったく、アルビーまで巻き込んで時間を移動したから、最初の時間移動で魔石が割れて失敗したんだぞ? 反省はしているか?」
「はうっ、すいません……でもね、その……」

 ルーファスが唇を合わせて言葉を途切れさせると、唇から口の中に少しずつ番の甘さが広がって、食む様に口づけを交わすと、もうルーファスを離したく無くて、ギュッと抱きついてルーファスの口の中に舌を忍ばせると、伸ばした舌をルーファスの舌にギューっと吸われて、慌てて口を放す。

「ふぁっ、はふ……っ、ルーファス……」
「そんな物欲しそうな目をされると、襲いたくなる」

 いつもならここで首を横に振るところだけど、番の絆が時間移動で切れてしまった胸の中に空いた喪失感は覚えているから、ナイトガウンの紐を解くと左右に開いて素肌の胸をルーファスに押し付ける。

「私が襲ちゃう事も、あるんですよ?」
「……参ったな。オレの番はいつから狼になったんだ?」

 ククッと笑ってルーファスが私の頬に手を当てて目を細める。
私の大好きなルーファスだなぁ……うん。良かった。過去に飛んで少しでもルーファスに影響が出ていたらどうしようかと思っていたけど、大丈夫そう。

「ルーファス、寂しかったよぅ」
「ああ。オレには一瞬でアカリが目の前から消えた様に思えたが、アカリは冒険をしてきたようだな」
「解るの? 私、初代の【刻狼亭】にも行っちゃったんだよ?」
「初代にまでか? 随分と大冒険だな。でも匂いが色々混じっているから何となく解るよ」
 
 ルーファスが、唇を私の素肌に落としながら首筋を下から上に舐め上げる。

「ふぁぁっ、ゾクゾクする……んっ」
「ゾクゾクするなら、そこに快感を感じる場所があるんだろうな」
「それは……どうだろ?」

 チュウチュウとルーファスに首筋を吸われて、ゾワゾワしながらも、確かに下腹部にキュッとした熱が溜まっていく。もどかしいこの熱をいつも与えるのはルーファスで、満たしてくれるのもルーファスしかいない。

「あっ、過去から連れてきちゃったアルビーは何処に?」
「すぐにアカリの時間移動の魔道具を使って帰っていった。そろそろ預かってくれていた魔道具を返しに来るとは思うがな。アルビーいわく、時間移動は問題なく出来ているらしい」
「そうなんだ……」

 私が過去からアルビーを巻き込んで現在に戻った為に、時間移動に出発する私が巻き込まれてしまったのか……飛んでいった私頑張れ。

 肩口にルーファスの唇が触れて、「あっ、怪我どうしたんだろう?」と見れば、左肩は綺麗に治っていた。
シューちゃんが治してくれたんだろうか?

「ルーファス、肩の怪我……」
「ああ、オレが治した」
「え?」
「初めて番の儀をした時に言ったはずだ。オレと番えばオレの持っている魔法はアカリにも使えると。そしてアカリが魔法を覚えた今、オレにもアカリの使える魔法は使える」

 なるほど、ネリリスさんの魔法の全てはルーファスにも使えるわけだから、風竜スピナの主君のルーファスなら風魔法の癒し魔法は使える。
私だと回復・弱小回復だけど、ルーファスなら回復・大回復という事か……。

「ありがとう。ルーファス大好き!」
「ああ。オレも、アカリが世界で一番、愛してるし、好きだよ」
「私も世界で一番、ルーファスが好きだよ」

 ルーファスの首に腕を回してキスをすると、ルーファスがキスをしながら手でナイトガウンを脱がせて、お尻を触る手がそのまま太腿を左右に開かせて、お尻側から股の間を指でなぞられる。

「やんっ」
「アカリ、時間移動の間、浮気はしていないよな?」
「ふぇ? してないよ! 私はルーファスの番なんだから、するわけ無いじゃない?」

 ルーファスに首をかしげると、ルーファスが少し眉間にしわを寄せて目を閉じる。
どうしたんだろう? 時間移動で色んな人の匂いそんなについているんだろうか? まぁ、ほぼ【刻狼亭】の人々に目撃されたぐらいで『白い女の子』の幽霊騒ぎの元凶にはなるくらいの回数だとは思うけど……。

「アカリから匂う、オレじゃない男の匂いにどうしても嫉妬してしまう」
「心配しなくても、私はルーファスのお嫁さんだから、他の男にフラフラしません」
「いや……アカリにその気は無くても、アカリでは力づくで男に襲われたら抵抗できないだろ?」

 ゴツンと、ルーファスのおでこに自分のおでこをぶつけて痛さに少しクラッときたものの、おでこを摩りながらルーファスの頬を片手て引っ張る。

「もう。疑うなら確かめていいよ?」
「いや、疑っているわけじゃ……ただ、アカリから匂うニオイで一つやけに嫉妬深そうな絡みついた匂いがするのが気になってな……」

 該当者はルーディクスさんくらいしかいないけど、そんなに嫉妬深い匂いなんだろうか?
でも、ルーファスのこういうところは嫉妬深いから、ルーディクスさんの嫉妬深い匂いはルーファスの中に受け継がれてると思う。

「ふふっ、じゃあルーファスの匂いで一杯にしてね?」

 鼻先にキスをして笑うと、ルーファスの耳は下がったり上がったり忙しなく動いて、可愛い人だなと愛おしささえ感じてしまう。 
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