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20章
黒狼亭①
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広大な森の中で私は自分の身に起きた事を理解できずに言葉を失っていた。
腕に付けている時間移動を表す腕輪はカラカラと回り、数値が下がっていっていた。
残金を表す数値もどんどん下がり、予想以上の時間移動のお金の無くなり具合に、もう一度時間移動をするにはお金が危なくなっていた。
「うそ……、嘘でしょ⁉」
時間移動の魔道具は完成はしたけど……失敗した。
私は過去に飛ばされたけど、それは魔獣の【王】が出現した時では無かった。
時間移動の時代が判る腕輪は【一】を示していた。
この数値は【刻狼亭】の当主の代を表したもので、此処は【一】つまり当主初代の時代だった。
ついさっきまで【刻狼亭】でルーファスに「直ぐにチャッと行ってチャッと帰って来るよ!」と元気に言っていたのに、時間移動の魔道具に時間設定をしてもらい、魔力を通した瞬間、時間移動の魔道具の魔石が砕け散って「しまった!」「失敗だ!」という叫ぶ魔道具を作っていた従業員とドワーフの声に「え?」と思いながら弾き飛ばされてこの時代へ来ていた。
「お金……【十五】まで帰るには足りない……」
ルーファスの時代に帰れない……。
【十五】の[37]の[11]の数字に飛ばなくてはいけないのに、【十五】の[38][2]からの時間移動だからと所持金をそれ程入れていなかったのも問題だった。
今時間移動しても【五】くらいで所持金は尽きる。
「どうしよう……」
カイナ君を看病する間の食糧や【怨嗟】対策に特殊ポーションや服などはいっぱい持たされているけど、全部売り払っても全然足りない……。
しかもそれを売れば私はカイナ君を助けられないで終わるし……本末転倒になる。
「でもネルフィームが時間移動した私を見たなら私はどうにか出来たって事だよね……」
ああ、本当に時間移動したときの私なにかヒントや伝言を残して行こうよ!!
我ながら何してんのよ!!役に立たない大女将なんだから!
「……こんな事ならルーファスと未来なんか関係ないって突っぱねるべきだったのかな……」
胸に手を当てると、胸にストンと穴が開いてしまった様な感じがする。
ルーファスと私を繋ぐ番の繋がりも時代が違うから、感じ取れずに喪失感が酷い。
番喪失……ロストの人達はこんな気持ちで生きて行かなきゃいけないのは辛いだろうな……。
ルーファスも私が居なくなってこんな気持ちなんだろうか?
何度か私は死にかけたり心臓が止まったりしてルーファスにこんな思いをさせてるから、酷い番だよね。
「……ルーファスの所に帰らなきゃ」
ネリリスさんの魔法の知識があるし、色々出来るから考えるしかない。
取り敢えずは、初代の【刻狼亭】へ行って様子を見てこようかな?
ルーファスのご先祖様なら助けてもらえるかもしれない。
勿論、未来の事は言えないけど、私のエルフの魔法で【刻狼亭】の力になれたら少しはお金を融通してくれたりはしないかな?という打算もある。
「前向きに考えなきゃね」
そう、私が未来でカイナ君を助けていたなら私はルーファスの居る時代に帰れるはず。希望は持たなきゃ。私は【刻狼亭】の大女将なんだからドーンと構えていかなきゃ。
森の中をサクサク歩いているものの……温泉街に着かない……。
初代の温泉大陸って温泉街ないの?
それとも方向間違えたかな?太陽の位置からすると方角は合ってるんだけどなぁ……。
昔は太陽の位置が違ったりするのかな?
うーん……地図とか欲しい。
「なんか変な匂いがする……」
腐った魚に似た臭い匂いが漂っていて口元押さえながら歩いて行くと海岸線に出た。
此処が海岸の浜辺だとすると、花魁通りの近くを通ったわけで……温泉街自体が、もしかして無い?
「にしても、本当に臭い……」
浜辺に黒い毛の塊が落ちていて、においの原因はそれだった。
砂だらけで赤黒い内臓の様なものが出て腐っている……死骸かな?
にしても、大きい……バスくらいの大きさがあるかも?
「埋めるにしても大きすぎて私に出来るかなぁ……」
ネリリスさんの魔法に良い物があったかな?
流石に埋めてあげないと可哀想だしね。それに臭い。
「『森のエルフの声を聞け 大地の子よ 闇の様に深く大地を穿て』」
浜辺に穴がズモズモと開いていきゆっくりと黒い死骸が穴にずり落ちていく。
これで大丈夫かな?キチンと成仏してね。パンと手を合わせて拝む。
「う……、あ……」
ん?
砂に沈んでいく黒い死骸から声が聞こえた?
あれかな?死んだ後も喉に空気が溜まって喉が振動で声が出ちゃうとかいうやつ?
「ヴヴヴ……ッ」
ズバッと砂を掻き上げて黒い毛玉が唸り声をあげて穴から這い上がり、毛の間から金色の目が私を睨みつける。
「ひやぁぁああ!!ごめんなさい!!死んでると思ってたの!!悪気はなかったの!!」
死んでなかったよ!でも怒らせちゃったよ!
あわわわっ!!ルーファス助けてぇぇぇ!!!
涙目で脱兎のごとく砂浜を逃げ出した私を毛玉は追うことなく、その場でまた倒れ込んだ。
内臓出てるけど……大丈夫……じゃないよねぇ……?
腕に付けている時間移動を表す腕輪はカラカラと回り、数値が下がっていっていた。
残金を表す数値もどんどん下がり、予想以上の時間移動のお金の無くなり具合に、もう一度時間移動をするにはお金が危なくなっていた。
「うそ……、嘘でしょ⁉」
時間移動の魔道具は完成はしたけど……失敗した。
私は過去に飛ばされたけど、それは魔獣の【王】が出現した時では無かった。
時間移動の時代が判る腕輪は【一】を示していた。
この数値は【刻狼亭】の当主の代を表したもので、此処は【一】つまり当主初代の時代だった。
ついさっきまで【刻狼亭】でルーファスに「直ぐにチャッと行ってチャッと帰って来るよ!」と元気に言っていたのに、時間移動の魔道具に時間設定をしてもらい、魔力を通した瞬間、時間移動の魔道具の魔石が砕け散って「しまった!」「失敗だ!」という叫ぶ魔道具を作っていた従業員とドワーフの声に「え?」と思いながら弾き飛ばされてこの時代へ来ていた。
「お金……【十五】まで帰るには足りない……」
ルーファスの時代に帰れない……。
【十五】の[37]の[11]の数字に飛ばなくてはいけないのに、【十五】の[38][2]からの時間移動だからと所持金をそれ程入れていなかったのも問題だった。
今時間移動しても【五】くらいで所持金は尽きる。
「どうしよう……」
カイナ君を看病する間の食糧や【怨嗟】対策に特殊ポーションや服などはいっぱい持たされているけど、全部売り払っても全然足りない……。
しかもそれを売れば私はカイナ君を助けられないで終わるし……本末転倒になる。
「でもネルフィームが時間移動した私を見たなら私はどうにか出来たって事だよね……」
ああ、本当に時間移動したときの私なにかヒントや伝言を残して行こうよ!!
我ながら何してんのよ!!役に立たない大女将なんだから!
「……こんな事ならルーファスと未来なんか関係ないって突っぱねるべきだったのかな……」
胸に手を当てると、胸にストンと穴が開いてしまった様な感じがする。
ルーファスと私を繋ぐ番の繋がりも時代が違うから、感じ取れずに喪失感が酷い。
番喪失……ロストの人達はこんな気持ちで生きて行かなきゃいけないのは辛いだろうな……。
ルーファスも私が居なくなってこんな気持ちなんだろうか?
何度か私は死にかけたり心臓が止まったりしてルーファスにこんな思いをさせてるから、酷い番だよね。
「……ルーファスの所に帰らなきゃ」
ネリリスさんの魔法の知識があるし、色々出来るから考えるしかない。
取り敢えずは、初代の【刻狼亭】へ行って様子を見てこようかな?
ルーファスのご先祖様なら助けてもらえるかもしれない。
勿論、未来の事は言えないけど、私のエルフの魔法で【刻狼亭】の力になれたら少しはお金を融通してくれたりはしないかな?という打算もある。
「前向きに考えなきゃね」
そう、私が未来でカイナ君を助けていたなら私はルーファスの居る時代に帰れるはず。希望は持たなきゃ。私は【刻狼亭】の大女将なんだからドーンと構えていかなきゃ。
森の中をサクサク歩いているものの……温泉街に着かない……。
初代の温泉大陸って温泉街ないの?
それとも方向間違えたかな?太陽の位置からすると方角は合ってるんだけどなぁ……。
昔は太陽の位置が違ったりするのかな?
うーん……地図とか欲しい。
「なんか変な匂いがする……」
腐った魚に似た臭い匂いが漂っていて口元押さえながら歩いて行くと海岸線に出た。
此処が海岸の浜辺だとすると、花魁通りの近くを通ったわけで……温泉街自体が、もしかして無い?
「にしても、本当に臭い……」
浜辺に黒い毛の塊が落ちていて、においの原因はそれだった。
砂だらけで赤黒い内臓の様なものが出て腐っている……死骸かな?
にしても、大きい……バスくらいの大きさがあるかも?
「埋めるにしても大きすぎて私に出来るかなぁ……」
ネリリスさんの魔法に良い物があったかな?
流石に埋めてあげないと可哀想だしね。それに臭い。
「『森のエルフの声を聞け 大地の子よ 闇の様に深く大地を穿て』」
浜辺に穴がズモズモと開いていきゆっくりと黒い死骸が穴にずり落ちていく。
これで大丈夫かな?キチンと成仏してね。パンと手を合わせて拝む。
「う……、あ……」
ん?
砂に沈んでいく黒い死骸から声が聞こえた?
あれかな?死んだ後も喉に空気が溜まって喉が振動で声が出ちゃうとかいうやつ?
「ヴヴヴ……ッ」
ズバッと砂を掻き上げて黒い毛玉が唸り声をあげて穴から這い上がり、毛の間から金色の目が私を睨みつける。
「ひやぁぁああ!!ごめんなさい!!死んでると思ってたの!!悪気はなかったの!!」
死んでなかったよ!でも怒らせちゃったよ!
あわわわっ!!ルーファス助けてぇぇぇ!!!
涙目で脱兎のごとく砂浜を逃げ出した私を毛玉は追うことなく、その場でまた倒れ込んだ。
内臓出てるけど……大丈夫……じゃないよねぇ……?
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