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19章
本当の星降り祭り
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胸に針で刺した様な痛みがチクチクとし始め、【怨嗟】が出始めている事に気付く。
ありすを見ればありすも胸を押さえている。
時間が無い事だけは確かな様で、シュトラールも自分を回復しながらの魔石崩し切りに疲労の色は隠せていない。
ケルチャが木々でバリケードを再度してくれているおかげで黒い魔獣達と戦う事はひとまず回避できている。
倫子はひたすら魔石を斬っているがありすや朱里ほど上手く切り取れているわけではないので疲れが出てきていた。
「嫁、どうする?聖水を今作り直すか?」
「私が水玉を出すから、ありすさんにそれを混合してもらって聖水にしてもらえればお互いに、効果が付くだろうから少しは時間稼ぎできるかも?」
グリムレインと朱里が水玉を作っている間に、ありすが胸を押さえて蹲って倒れ、リロノスが朱里の特性ポーションを飲ませて【怨嗟】の浄化をしたものの、気を失っていて聖水作りでは無さそうだと朱里のみで聖水作りをしてグリムレインが再びドームを巡らす。
「アカリは大丈夫か?」
「大丈夫です。ありすさんは【聖女】の力がいつも漏れている状態だから少なくとも私はその影響を受けてありすさんより持ちがいいんです」
ルーファスの耳が心配そうに下に下がり始めているのを笑顔で大丈夫だと言い切る。
自分はまだ頑張れる大丈夫、そう思っている矢先にシュトラールが「なにこれ⁉」と声を上げた。
「どうしたのシューちゃん⁉」
「何かあったのか⁉」
朱里とルーファスの声にシュトラールが耳を下げて魔石を指さす。
大分、小さくなってきた魔石ではあるが、まだ4,5メートルは高さがある。
流石に上に登らねばわからないとグリムレインが朱里とルーファスを手に持って飛び上がると、二人の眼下には魔石の上に立つシュトラールの足元に赤黒い1メートル程の石が魔石の中にあった。
「あれは、魔石の核だな……」
「魔石の核?」
「おそらくアレを壊せば魔石も壊れる」
「シューちゃん!それ切れる?」
シュトラールが首を振って「無理!硬くて切れない!」と両手を上げる。
魔石の上にルーファスと朱里が立つとキィィンとシュトラールが持っていた刀が鳴り始めは激しく動き、シュトラールが慌てて両手で押さえる。
「母上、どうしよう⁉オレじゃそろそろ限界なのかも?」
「わかった。母上に刀を貸して」
「いいの?大丈夫?」
「大丈夫じゃないけど、大丈夫!シューちゃんの腕が切られちゃうよりマシ!」
刀の刃先を見ない様に柄だけを見て手に取り、昔切られた腕が違和感の様に疼くのを朱里が顔を歪めながら自分を抑え込む。
恐怖心はもう心の中にずっとある。
乗り越える勇気が無いのは乗り越えなくても周りが自分を助けてくれていた環境に置いてもらっていたからだと思いながら、なけなしの勇気を振り絞って刀の柄を両手で握りしめると、ルーファスが手の上に手を乗せてきた。
「アカリの手の上からならオレでも協力は出来る」
「ルーファス……」
「アカリは目を瞑っていろ。刀の型は覚えたからアカリの負担にならない程度に動かす。アカリは刀を握って力を抜いていろ」
「私も、私も頑張ります!」
「……無理はするな。わかったな?」
「はい」
刀を構えて赤黒い核を薙ぎ払う様に一閃入れると、刀が砕け、それと同時に周りの魔石が砕けて勢いよく飛び散りそれは規模を広げて雪樹の森から外へ、空へと飛び散りギルが「これが本当の星降り祭りですよ!!歴史的瞬間です!!」と一人はしゃいだ声を上げた。
魔石は約二時間飛び散り続け、残ったのは半分欠けた赤黒い核だった。
「刀……折れちゃった」
「核どうする?」
核を前に朱里が折れた刀の柄を持ちながら「あちゃー」と言い、倫子が持っている刀で核を切ろうと倫子が切りつけたが、刀が砕け散り「あわわわ」と声を上げ、残ったのは朱里の持つ小刀だけとなった。
カイナが既に頭を抱え「月刀ー山茶花ーがぁあぁぁ」と蒼白な顔で先祖の刀に悲鳴を上げているが、三等分にされた時点で月刀ー山茶花ーは砕けていたともいえる。
「えいっ!」
「「「え?」」」
朱里が核に小刀を刺したのを見て一同が声を上げると、核がミシミシと音を立てて砕け散り、小刀も砕け散った。
小さくカリンカリンと何かがこすれ合うような音を立てて核が空気に消えていく。
「私の小刀も砕けちゃいました」
「でもまぁ、核も砕けたから相打ちじゃないの?」
朱里が小刀の柄を持ちながら言い、シュトラールの呑気な言葉に一同が唸る。
ギルの話では数百年単位で魔獣の王は現れ、世界の浄化をするのだとしたら、遠い未来で再び現れるのだろう。
しかし、伝説の刀は砕け散っている。
子孫の為に残せるのは砕けた刀を集めれるだけ集めて、未来の技術で復元してもらうしかないだろう。
温泉大陸のドワーフ達が直せると良いが、流石に三等分にしただけでも大変だったのに、これを復元は難しいだろう。
「まぁ、とりあえず……もう【怨嗟】も無いし、魔石も世界に飛び散った。魔獣達も時期に治るだろう。魔石もまた元に戻るだろうしな」
「一件落着だね」
「じゃあ、皆帰ろうか!」
ローランドとグリムレインとケルチャの背中に従業員やリロノス達が乗り、ネルフィームに朱里とルーファスとギルが乗り込んだ。
「私は寄りたい場所があるから、ローランドとグリムレインとケルチャは先に行っていろ。私の飛ぶ速さなら直ぐに追い越すしな」
ネルフィームが同朋三人に先に行けと急かし、三人、というより、グリムレインとケルチャが「嫁が」「アカリが」と騒いでいたが、追い抜かされる前に温泉大陸に行って、帰って来た朱里を待ち構える準備をした方が朱里が喜ぶだろうとネルフィームに言われてすごすごと飛び立って行った。
「ネルフィーム、寄りたい所ってどこなんです?」
「主は何となく察しはついているだろう?」
「まぁ、何となくはね」
ネルフィームがゆっくりと飛びながら、カイナが寝かされていたダークエルフが昔住んでいた小屋へと朱里達を連れて行った。
ありすを見ればありすも胸を押さえている。
時間が無い事だけは確かな様で、シュトラールも自分を回復しながらの魔石崩し切りに疲労の色は隠せていない。
ケルチャが木々でバリケードを再度してくれているおかげで黒い魔獣達と戦う事はひとまず回避できている。
倫子はひたすら魔石を斬っているがありすや朱里ほど上手く切り取れているわけではないので疲れが出てきていた。
「嫁、どうする?聖水を今作り直すか?」
「私が水玉を出すから、ありすさんにそれを混合してもらって聖水にしてもらえればお互いに、効果が付くだろうから少しは時間稼ぎできるかも?」
グリムレインと朱里が水玉を作っている間に、ありすが胸を押さえて蹲って倒れ、リロノスが朱里の特性ポーションを飲ませて【怨嗟】の浄化をしたものの、気を失っていて聖水作りでは無さそうだと朱里のみで聖水作りをしてグリムレインが再びドームを巡らす。
「アカリは大丈夫か?」
「大丈夫です。ありすさんは【聖女】の力がいつも漏れている状態だから少なくとも私はその影響を受けてありすさんより持ちがいいんです」
ルーファスの耳が心配そうに下に下がり始めているのを笑顔で大丈夫だと言い切る。
自分はまだ頑張れる大丈夫、そう思っている矢先にシュトラールが「なにこれ⁉」と声を上げた。
「どうしたのシューちゃん⁉」
「何かあったのか⁉」
朱里とルーファスの声にシュトラールが耳を下げて魔石を指さす。
大分、小さくなってきた魔石ではあるが、まだ4,5メートルは高さがある。
流石に上に登らねばわからないとグリムレインが朱里とルーファスを手に持って飛び上がると、二人の眼下には魔石の上に立つシュトラールの足元に赤黒い1メートル程の石が魔石の中にあった。
「あれは、魔石の核だな……」
「魔石の核?」
「おそらくアレを壊せば魔石も壊れる」
「シューちゃん!それ切れる?」
シュトラールが首を振って「無理!硬くて切れない!」と両手を上げる。
魔石の上にルーファスと朱里が立つとキィィンとシュトラールが持っていた刀が鳴り始めは激しく動き、シュトラールが慌てて両手で押さえる。
「母上、どうしよう⁉オレじゃそろそろ限界なのかも?」
「わかった。母上に刀を貸して」
「いいの?大丈夫?」
「大丈夫じゃないけど、大丈夫!シューちゃんの腕が切られちゃうよりマシ!」
刀の刃先を見ない様に柄だけを見て手に取り、昔切られた腕が違和感の様に疼くのを朱里が顔を歪めながら自分を抑え込む。
恐怖心はもう心の中にずっとある。
乗り越える勇気が無いのは乗り越えなくても周りが自分を助けてくれていた環境に置いてもらっていたからだと思いながら、なけなしの勇気を振り絞って刀の柄を両手で握りしめると、ルーファスが手の上に手を乗せてきた。
「アカリの手の上からならオレでも協力は出来る」
「ルーファス……」
「アカリは目を瞑っていろ。刀の型は覚えたからアカリの負担にならない程度に動かす。アカリは刀を握って力を抜いていろ」
「私も、私も頑張ります!」
「……無理はするな。わかったな?」
「はい」
刀を構えて赤黒い核を薙ぎ払う様に一閃入れると、刀が砕け、それと同時に周りの魔石が砕けて勢いよく飛び散りそれは規模を広げて雪樹の森から外へ、空へと飛び散りギルが「これが本当の星降り祭りですよ!!歴史的瞬間です!!」と一人はしゃいだ声を上げた。
魔石は約二時間飛び散り続け、残ったのは半分欠けた赤黒い核だった。
「刀……折れちゃった」
「核どうする?」
核を前に朱里が折れた刀の柄を持ちながら「あちゃー」と言い、倫子が持っている刀で核を切ろうと倫子が切りつけたが、刀が砕け散り「あわわわ」と声を上げ、残ったのは朱里の持つ小刀だけとなった。
カイナが既に頭を抱え「月刀ー山茶花ーがぁあぁぁ」と蒼白な顔で先祖の刀に悲鳴を上げているが、三等分にされた時点で月刀ー山茶花ーは砕けていたともいえる。
「えいっ!」
「「「え?」」」
朱里が核に小刀を刺したのを見て一同が声を上げると、核がミシミシと音を立てて砕け散り、小刀も砕け散った。
小さくカリンカリンと何かがこすれ合うような音を立てて核が空気に消えていく。
「私の小刀も砕けちゃいました」
「でもまぁ、核も砕けたから相打ちじゃないの?」
朱里が小刀の柄を持ちながら言い、シュトラールの呑気な言葉に一同が唸る。
ギルの話では数百年単位で魔獣の王は現れ、世界の浄化をするのだとしたら、遠い未来で再び現れるのだろう。
しかし、伝説の刀は砕け散っている。
子孫の為に残せるのは砕けた刀を集めれるだけ集めて、未来の技術で復元してもらうしかないだろう。
温泉大陸のドワーフ達が直せると良いが、流石に三等分にしただけでも大変だったのに、これを復元は難しいだろう。
「まぁ、とりあえず……もう【怨嗟】も無いし、魔石も世界に飛び散った。魔獣達も時期に治るだろう。魔石もまた元に戻るだろうしな」
「一件落着だね」
「じゃあ、皆帰ろうか!」
ローランドとグリムレインとケルチャの背中に従業員やリロノス達が乗り、ネルフィームに朱里とルーファスとギルが乗り込んだ。
「私は寄りたい場所があるから、ローランドとグリムレインとケルチャは先に行っていろ。私の飛ぶ速さなら直ぐに追い越すしな」
ネルフィームが同朋三人に先に行けと急かし、三人、というより、グリムレインとケルチャが「嫁が」「アカリが」と騒いでいたが、追い抜かされる前に温泉大陸に行って、帰って来た朱里を待ち構える準備をした方が朱里が喜ぶだろうとネルフィームに言われてすごすごと飛び立って行った。
「ネルフィーム、寄りたい所ってどこなんです?」
「主は何となく察しはついているだろう?」
「まぁ、何となくはね」
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