黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
上 下
596 / 960
19章

合体技

しおりを挟む
「グリムレイン!一斉掃射!」
朱里の声にグリムレインが海岸の魔獣に向かって氷を尖らせたものを口から吹いて倒していく。
「どうだ!嫁よ、我の完全勝利であろう?」
「偉い!グリムレインは流石ですよ!ドンドンやっちゃえー!」

 グリムレインの背中で朱里が弾んだ声を上げてグリムレインも朱里の声に尻尾を揺らしながら、海岸から海の上で戦っている海上戦闘をしている方へ飛んでいく。

「大女将何してるんですか!?」
「船の周りがあんまりにも多いからせめて海面を凍らせて足場を作ろうかって事でね、来ましたー!」
「来ましたじゃないですよ!!危ないから大女将は撤退してくださいよ!」
「凍らせたら戻りますよー!グリムレインお願いします!」
「凍りたくなくば、皆、海面から離れておれよ!」

 海面を凍らせるという荒業にリロノス達がホエールデビルから船上へ飛び移り、ホエールデビルに深くまで潜り沖合に行くように命令する。
それを見計らったグリムレインが海面を凍らせていき、身動きの取れなくなった魔獣達を見て「どうだ!」と背中の朱里に顔を向けると、朱里が両手で親指を上げて「バッチリ!」と声を上げる。

「私のグリムレインがいっちばーん!」
「そうであろう!我が一番だ!」
 
 ハイテンションな二人に少し海上の人々は「大女将は仕方ないな」と苦笑いして、海面の凍っているうちに魔獣と海獣の始末だと凍った海面の上を駆ける。

「母上!父上に怒られてしまいますわよ!」
「母上は直ぐに避難してくださいませ!」
「ええ。最後にルーファスの所に行ってから戻るから心配要らないわ。あなた達も無理しないでね」

 ミルアとナルアが「「わたくし達はちゃんと注意しましたからねー!」」と声を揃えて空に飛び立つグリムレインと朱里に向かって叫ぶ。

「母上は困った人ですの」
「父上が雷を落としますの」
 左右に頭を振りながらミルアとナルアは火竜ローランドにも自由行動で攻撃を開始する様に言って三人はバラバラに動き出す。
海面に火柱が3ヵ所で上がり、拳に炎を纏わせてミルアとナルアが魔獣と海獣に飛び掛かり殴って沈めていく。

 そんな娘達と火竜の様子に朱里が「攻撃的なところは狼族特有なのかな?」と言うと、「そうじゃない。普通に自分のテリトリーに入って来たものを排除しているだけだ」とため息交じりに声が答える。

「アカリ、何故こんな所まで来たんだ!」
「そうだよ!アカリは私達の寿命を縮める気なの!」

 ルーファスとアルビーが朱里を嗜めるように小言を口にするが朱里とグリムレインは少し得意な顔をして「お手伝いに来たんだよ」と答える。

「第一、ここは黒いモヤが渦巻いている。アカリは自分の体に害のある物だと分かっているだろう?直ぐにココから離れろ」
「大丈夫です。よく見て、私の体の周り」
「体の周り?何だコレは?」

 ルーファスが朱里の体の周りに薄っすらと膜が張っているのをいぶかしげな顔で見る。

「グリムレインのドームを私の体に合わせて作ってもらって、私が内側からドームを触っているから黒いモヤは中には入ってこないの。物を1枚通せば私にも自分の聖域が利用できるから安全なんだよ」
「我のドームのおかげだな」
「グリムレインにはいつも感謝してますよ」

 二人のやり取りにルーファスは黒いモヤが朱里に影響が無い物になった事には安心はするが、危ない場所に来たことに関しては、許してはいない。

「アカリ、ともかくここはオレ達に任せてアカリは非難をしていろ!」
「うん。最後に1回だけ試したいことを試したら撤収するよ」
「試したい事?」
「はい。グリムレインと私の合体技です!」
「嫁と我の必殺技だ!」

 まるで子供の様なノリの朱里とグリムレインにルーファスが困った顔をして二人に言い聞かせる。

「遊びでは無いんだぞ?分かっているのか?」
「私達は真剣ですよ!」
「我達は遊びで必殺技を編み出したのではない!」
「まぁ、ルーファス見ていてください!」

 朱里が巨大な水玉を出すと、グリムレインが空気を吸い込み水玉に向けて息を吐きかけると、水玉から幾つもの氷のつぶてが飛び出し、空を飛ぶ魔獣達を貫いて黒いモヤが吹き出していく。
それはさながらガトリング砲の様で朱里のイメージする物でもあった。
朱里とグリムレインの必殺技で空を飛ぶ魔獣達が次々と撃ち落され姿を消して行く。
ルーファスとアルビーも周りの残った魔獣達を薙ぎ払って、空の魔獣がほぼ居なくなると、そこでようやく空に残っていた筈のシュトラールとケルチャの姿が見えない事に気付く。

「シュー?シュトラール!何処にいる!?」
「え?シューちゃん居ないの!?」

 ルーファスがシュトラールを探して目を凝らすが、シュトラールの姿を見つけることが出来ずに声を張り上げる。
朱里もシュトラールの名前を呼んで海面の方を目を凝らして探す。海面の方でも魔獣と海獣の討伐が片付き始め、凍った海面の上には魔獣と海獣の死骸が山になっていた。

「嫁よ、腕輪で呼びかけてみればいいのではないかの?」

 グリムレインの言葉に朱里とルーファスがバッと自分達の腕輪に手を掛ける。
「アカリはシューを、オレはリューに連絡を取る」
「はい!わかりました!」

 お互いに腕輪通信で息子達に連絡を取ると、お互いに2人の息子は直ぐに応答した。

「リュー、空の魔獣は撃退した。大陸の方はどうだ?」
『お疲れさま。こっちの方は怪我人を治療するのにごった返してるよ』
「死者は出ているか?」
『死者は今の所居ないよ。まぁ皆殺しても死にそうにない人達ばかりだけどね』
 リュエールの軽口にルーファスも少し安堵しつつ、海の方を片付けたら戻る旨を伝えて通信を切る。

「シューちゃん!あなた何所に居るの!?大丈夫なの!?」
『オレもケルチャも大丈夫。ただ、魔獣に飲み込まれた人が居て、戦闘離脱して治療中』
「そう。無事なら良いの。空の方は終わったから、海の方が終われば何とかなるから、その人の治療に専念して」
『うん。温泉大陸の近くの小島で治療してるから、直ぐに戻るよ』
 息子の無事に朱里もホッと息を付いて、ルーファスに頷いて見せるとルーファスも頷いてみせる。
シュトラールに早めに戻る様に言い、ルーファスが朱里にも早く戻って特殊ポーションを一応飲んでおくように言って二人は別れた。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する

アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。 しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。 理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で 政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。 そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。