黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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18章

ドーム

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 魔獣の異変は各国で冒険者を通じて報告が出され、温泉大陸でもそれなりに報告は上がったが、この温泉大陸で一番多いい魔獣は温泉鳥なので元々風で飛ばされて怪我をしてしまうような雑魚魔獣なのでそこまで被害が出なかったが、手付かずになっている温泉大陸の立ち入り禁止区域の魔獣はたまに街へ降りようとしてくる為に、禁止区域の周りにはバリケードが設置された。

 リリスとイルマールの【聖堂】を使ったものの、効果は無く、魔獣の異変は病気や災害という類では無いという事で、悪意に関しては【聖堂】の発動で魔獣が近付けなくなったので、魔獣除けにしかならなかった。

 【刻狼亭】の製薬室でありすが特殊ポーションを作り、製薬部隊がそのサポートに回っている。
今の所、魔獣にしか影響は出ていないが、万が一、人にも影響があった場合に備えての準備でもある。
ありすの夫リロノスは海の海獣達の影響を調べる為に海へ出ている。海の海獣にも少なからず影響があった様で、船が襲われるという報告が何件か冒険者ギルドへ上がっている。
元々、海獣は船を襲うので、その辺の見極めが難しい所ともいえる。


 夏の日射しの熱さの中で温泉大陸の空を飛行物体が2つ旋回している。

「アカリ、無理はするなよ?」
「はい!頑張ります!グリムレインお願いしますね!」
「嫁は思いっきり水玉を出せば良い。我にあとは任せればいい!」
「あたしもついてるし、アカリ頑張れ!」

 グリムレインの背中に朱里とルーファスが乗り、巨大な水玉を朱里が作り上げ、それをグリムレインが冬を降り撒く要領で温泉大陸に霧状にして撒き散らす。
地上に降り注いだ水玉の霧で地上からは黒いモヤが立ち上がり、風竜のスピナがそれを吹き飛ばして行く。

「アカリ、胸は痛くないか?平気か?」
「うん。大丈夫。黒いモヤここまで上がってこなかったし」
「嫁、この調子でドンドンいくぞ!」
「頑張れアカリ!あたしがついてる!」
「はい!頑張ります!」

 温泉大陸の立ち入り禁止の危険区域を重点的に魔獣の多い場所に降り注がせて、最後に温泉大陸の上に、冬場にグリムレインが寒さを凌がせる為に使うドーム状の氷で出来た膜を張る。
朱里がそのドームに触れて【聖域】の付与をさせる。

「これで温泉大陸に余計な黒いモヤは入れんだろう。我と嫁の合作ドームだ」
「ふひぃー・・・魔力がー・・・スッカラカンです」
「お疲れアカリ。特殊魔力ポーションを飲んでおけ」

 ありす特製の魔力回復のポーションに聖女効果を持たせた特殊ポーションを腰に手をあててグイーッと飲み干し、朱里が「ぷはぁー!」とオッサンくさい声を上げる。

「ふぇー・・・体の中にじわんじわんくるー。魔力ポーションって飲むの初めてかも?回復ポーションはぽかぽかって感じなのに、魔力ポーションはじわじわーって感じだね」
「そうか?まぁ、この気温だしな。体が水分も欲してたんだろう」
「ああ、そういえばグリムレインの背中でヒンヤリはしてたけど、太陽眩しいもんねぇ」

 グリムレインが尻尾を揺らしながら「帰るかの」と言って地上へ降りる為に降下を始める。
地上が近付き始めるとグリムレインが6メートルの体を徐々に小さくさせて、あと少しで地面にぶつかるという所でルーファスに抱き上げられて地面に降りる。

 夏の定番、朱里の頭の上にグリムレインが30cm程の小ささになってへばりつく。
ルーファスの腕から降ろしてもらい、ルーファスの肩にスピナが止まりながら足をバタバタさせて「ルー、アイス食べにいこー」と誘い、グリムレインも「我も食べたい!」と言って4人でそのままアイスを食べに小料理屋の【もんふぇ】まで足を運ぶ。

【もんふぇ】の竹で出来た扉を開くとカウンターから店主のリグリスと妻のカシューが愛想よく「いらっしゃいませ」と声を掛けてくる。

「大旦那に大女将、暑い中お疲れ様です」
「こんにちはー。一仕事終わったので冷たいの食べにきました!」
「今日はアカリとグリムレインとスピナが頑張ったからこの店のアイスを全部食い尽くす勢いで注文すると思うから覚悟してくれ」

 席にパッと座った朱里とグリムレインとスピナに苦笑いしながらルーファスも席に着く。
グリムレインは朱里とメニュー表を見ながら「嫁、これはどんなのだ?」と朱里にパフェの説明をさせながら「とりあえず、まずは普通のアイスを先に」と、まるで「とりあえず生ビール」とでも言う様に注文している。

「私は抹茶の3色アイス!」
「あたしはミッカパフェ!」
「我はこのメニューのココからココまで全部」
「オレは冷やし小豆」

 4人が注文して甘味を食べ始めた所でルーファスの腕輪が振動し、魔獣の異常を調査していたリュエールから魔獣が正常になったと報告を受ける。
これで温泉大陸内だけはとりあえず危険は無いはずだと、安堵の息を付く。
抹茶アイスをグリムレインに横取りされてスプーンでグリムレインのアイスを奪っている朱里に目を向ける。

 相変わらず自分の番は規格外の能力持ちだと目を細める。
おそらく、この後自分の番はありすと交替でポーションを作成し始めるのだろうとも思っている。
他の大陸の魔獣に関しても、同じ様にしていけば魔獣達は正常に戻るだろう・・・予言がこの事なら助かるが、きっとこの事では無いのだろう。
この幸せが壊れない様に、手の届く範囲に自分は居なくてはいけない。
予言に振り回されたくはないが、もう予言の中に入り込んだ、そんな気分がしていた。 
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