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18章
討たれた王
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横からの衝撃のあった事件の全容がわかったのは、家の中の片付けも終わり日常に戻り始めた頃だった。
情報の鬼な小鬼がやっとこさ手に入れた情報に「えっ!」と声を上げたのはキリンとリュエールだった。
「ダークエルフが災害級の魔獣の【王】を討ち取った?!」
「ネリリスお婆ちゃんの言ってた予言の通りだね」
2人が顔を見合わせてレーネルの顔を見て少しだけ眉を下げる。
災害級の魔獣というのは何十年かに1度程現れる突然変異の様な強い魔獣で被害が災害と変わらない魔獣の事で、冒険者ギルドから依頼が出ると有名な討伐ギルドや名のある冒険者が半年以上かけて準備をして挑む極大討伐クエストと言われている。
ちなみにスタンピードなどの魔獣の暴走も災害級になりやすいが、数には数で対応するスタンピードは迅速対応な為に準備などしてなくてもとにかく参加して倒せ!数で押せ!と言われるので極大討伐では無く、集団討伐という事らしい。
「魔獣の【王】を討ち取った衝撃波がここまで届いた様でな。だから討伐した爆心地はかなり酷い状態らしい」
「じゃあダークエルフの人無事だったんでしょうか?」
「一応報告が上がっているという事は大丈夫だったんだろうな」
「凄い人がいるものなんだね」
お昼ご飯を食べながら、ルーファスの話に皆で「でも衝撃波で酷い目にあったよね」と、この1週間の片付けを思うと、少しだけ何とかならなかったんだろうか?と他人事なので文句を心の中で言っていたりもする。
災害級の魔獣を放置しておくと大変な事になるから退治してくれた事は素直に感謝はするけど、遠い場所の知らない話すぎてついていけない感じでもある。
「ネリリスお婆ちゃんの予言は絶対当たるから知ってはいたけど、王が魔獣の王だったのには驚きだね」
「だね。ネリリスさんが母上がキリンを手助けしてくれるって言ってたのも今のとこ当たってるしね」
「うう・・・お母さんが仕事で森に帰っちゃったのは本当に申し訳ないです」
キリン達が朱里に謝りながら、朱里が「気にしないで」と言いつつ、ネリリスのもう一つの『異世界の者だけが悪夢を再び終わらせる』という予言に魚の骨が喉に引っ掛かる様な微妙な感じがしていた。
キリンを手助けするのは『異世界の女性』・・・そう女性とあったのに対し、こちらの方は『異世界の者』となっている。
性別が無い分、朱里を示唆しているかと言えば、違う気もするのだ。
ルーファスとその話をして今は保留になっている。
「まぁ、温泉大陸に酷い被害が無くて良かったがな」
「皆の安全が一番だものね」
「家族が無事ならそれに越したことは無いな」
「そうだね。あれ?そういえばハガネは?」
「ハガネは温泉鳥達が妙だと言って調べに行っている」
「ふぅーん・・・」
小首をかしげて、そういえば最近、温泉鳥の卵の数が減ったと聞いた気もする事を思い出していた。
あの横の衝撃のあった日からなので、温泉鳥達も衝撃で木にぶつかったりして怪我でもしてしまったのだろうか?だとしたら、ハガネが心配するのも頷けると、朱里も製薬室で少しポーションでも作って温泉鳥にあげてこようかな?と考えていた。
「さて、そろそろ仕事に戻る。シュー行くぞ」
「ルビス、行ってくるよー。フィリア行ってきます」
「行ってらっしゃい。シュー、お仕事頑張ってね」
「わかってるよ。もう、最近オレ、サボり魔って皆に思われ過ぎじゃない?」
「それは前科があるからな・・・」
「シュー兄様は信用を回復するまでは無理なのですわ」
「シュー兄様しっかりお仕事してくださいまし」
シュトラールが耳を下げながら「皆酷い」と口をムニムニ動かしながらルーファスに連れられて仕事に戻ると、ミルアとナルアも「午後も頑張るのです!」と、元気に飛び出して行った。
残ったのはリュエールで、リュエールは午後から温泉の地質調査をする為に出掛ける為、別行動の為にゆっくりしている。
「レーネルも結構重くなってきたよね」
「毎日少しずつ重くなってるのにビックリだね」
リュエールがレーネルを抱っこしながらキリンと話しているのを見て、お父さんの顔をしている息子に朱里が目を細めつつ、ドラゴン達に洗濯物が乾いたから取り込んでおこうと誘われてベランダに上がっていく。
洗濯籠に洗濯物を取り込んで、夏の洗濯物の乾きやすさにこの時期が一番好きかもしれないと洗い立てのふかふかタオルに頬を寄せる。
「嫁、ハガネがボロ雑巾だぞ」
「何ですかそれ?」
「ほれ、庭でヨロヨロしておるぞ」
「あっ、本当だ!ハガネー!どうしたの?!」
庭に着物も髪もボロボロになったハガネがヨロヨロしながら入ってきていた。
朱里とドラゴン達がベランダから手を振るのを見上げると、ハガネの後ろをササマキがウロウロと走り回っている。
「アカリ!ササマキにそこから水玉を掛けてやってくれ!」
「え?ここから?」
「ああ!絶対に下に降りてくんな!」
「わかんないけど、わかりましたー!いくよー!【水玉】」
水玉を手の平に出してササマキの方へ投げつけるとウロウロするササマキに当たらずに地面に水たまりを作ったが、ハガネがササマキを捕まえて水たまりにササマキを浸けると、クロの時の様に小さな黒いモヤが出て空気に掻き消えた。
「アパー・・・」
「ほれ、水玉で洗ってやるから落ち込むなよ」
ササマキを自分の出した水玉で洗いながらハガネが、ベランダで首をかしげる朱里に親指を立てる。
「アカリ助かった!」
「今のなんだったのー?黒いの出てたけど」
「オレにも判んねぇけど、ちょいヤバそうだぜー!」
情報の鬼な小鬼がやっとこさ手に入れた情報に「えっ!」と声を上げたのはキリンとリュエールだった。
「ダークエルフが災害級の魔獣の【王】を討ち取った?!」
「ネリリスお婆ちゃんの言ってた予言の通りだね」
2人が顔を見合わせてレーネルの顔を見て少しだけ眉を下げる。
災害級の魔獣というのは何十年かに1度程現れる突然変異の様な強い魔獣で被害が災害と変わらない魔獣の事で、冒険者ギルドから依頼が出ると有名な討伐ギルドや名のある冒険者が半年以上かけて準備をして挑む極大討伐クエストと言われている。
ちなみにスタンピードなどの魔獣の暴走も災害級になりやすいが、数には数で対応するスタンピードは迅速対応な為に準備などしてなくてもとにかく参加して倒せ!数で押せ!と言われるので極大討伐では無く、集団討伐という事らしい。
「魔獣の【王】を討ち取った衝撃波がここまで届いた様でな。だから討伐した爆心地はかなり酷い状態らしい」
「じゃあダークエルフの人無事だったんでしょうか?」
「一応報告が上がっているという事は大丈夫だったんだろうな」
「凄い人がいるものなんだね」
お昼ご飯を食べながら、ルーファスの話に皆で「でも衝撃波で酷い目にあったよね」と、この1週間の片付けを思うと、少しだけ何とかならなかったんだろうか?と他人事なので文句を心の中で言っていたりもする。
災害級の魔獣を放置しておくと大変な事になるから退治してくれた事は素直に感謝はするけど、遠い場所の知らない話すぎてついていけない感じでもある。
「ネリリスお婆ちゃんの予言は絶対当たるから知ってはいたけど、王が魔獣の王だったのには驚きだね」
「だね。ネリリスさんが母上がキリンを手助けしてくれるって言ってたのも今のとこ当たってるしね」
「うう・・・お母さんが仕事で森に帰っちゃったのは本当に申し訳ないです」
キリン達が朱里に謝りながら、朱里が「気にしないで」と言いつつ、ネリリスのもう一つの『異世界の者だけが悪夢を再び終わらせる』という予言に魚の骨が喉に引っ掛かる様な微妙な感じがしていた。
キリンを手助けするのは『異世界の女性』・・・そう女性とあったのに対し、こちらの方は『異世界の者』となっている。
性別が無い分、朱里を示唆しているかと言えば、違う気もするのだ。
ルーファスとその話をして今は保留になっている。
「まぁ、温泉大陸に酷い被害が無くて良かったがな」
「皆の安全が一番だものね」
「家族が無事ならそれに越したことは無いな」
「そうだね。あれ?そういえばハガネは?」
「ハガネは温泉鳥達が妙だと言って調べに行っている」
「ふぅーん・・・」
小首をかしげて、そういえば最近、温泉鳥の卵の数が減ったと聞いた気もする事を思い出していた。
あの横の衝撃のあった日からなので、温泉鳥達も衝撃で木にぶつかったりして怪我でもしてしまったのだろうか?だとしたら、ハガネが心配するのも頷けると、朱里も製薬室で少しポーションでも作って温泉鳥にあげてこようかな?と考えていた。
「さて、そろそろ仕事に戻る。シュー行くぞ」
「ルビス、行ってくるよー。フィリア行ってきます」
「行ってらっしゃい。シュー、お仕事頑張ってね」
「わかってるよ。もう、最近オレ、サボり魔って皆に思われ過ぎじゃない?」
「それは前科があるからな・・・」
「シュー兄様は信用を回復するまでは無理なのですわ」
「シュー兄様しっかりお仕事してくださいまし」
シュトラールが耳を下げながら「皆酷い」と口をムニムニ動かしながらルーファスに連れられて仕事に戻ると、ミルアとナルアも「午後も頑張るのです!」と、元気に飛び出して行った。
残ったのはリュエールで、リュエールは午後から温泉の地質調査をする為に出掛ける為、別行動の為にゆっくりしている。
「レーネルも結構重くなってきたよね」
「毎日少しずつ重くなってるのにビックリだね」
リュエールがレーネルを抱っこしながらキリンと話しているのを見て、お父さんの顔をしている息子に朱里が目を細めつつ、ドラゴン達に洗濯物が乾いたから取り込んでおこうと誘われてベランダに上がっていく。
洗濯籠に洗濯物を取り込んで、夏の洗濯物の乾きやすさにこの時期が一番好きかもしれないと洗い立てのふかふかタオルに頬を寄せる。
「嫁、ハガネがボロ雑巾だぞ」
「何ですかそれ?」
「ほれ、庭でヨロヨロしておるぞ」
「あっ、本当だ!ハガネー!どうしたの?!」
庭に着物も髪もボロボロになったハガネがヨロヨロしながら入ってきていた。
朱里とドラゴン達がベランダから手を振るのを見上げると、ハガネの後ろをササマキがウロウロと走り回っている。
「アカリ!ササマキにそこから水玉を掛けてやってくれ!」
「え?ここから?」
「ああ!絶対に下に降りてくんな!」
「わかんないけど、わかりましたー!いくよー!【水玉】」
水玉を手の平に出してササマキの方へ投げつけるとウロウロするササマキに当たらずに地面に水たまりを作ったが、ハガネがササマキを捕まえて水たまりにササマキを浸けると、クロの時の様に小さな黒いモヤが出て空気に掻き消えた。
「アパー・・・」
「ほれ、水玉で洗ってやるから落ち込むなよ」
ササマキを自分の出した水玉で洗いながらハガネが、ベランダで首をかしげる朱里に親指を立てる。
「アカリ助かった!」
「今のなんだったのー?黒いの出てたけど」
「オレにも判んねぇけど、ちょいヤバそうだぜー!」
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