黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
上 下
586 / 960
18章

衝撃

しおりを挟む
「そういえば今年はレーネルとルビスが生まれたのでバタバタしていて忘れていたが2人共誕生日が過ぎていたな」
 ルーファスの一言に「あ」と誰が発した言葉だったのか・・・夕飯の食事で箸が止まる状況になった。
リュエールとシュトラールの誕生日を忘れていた一同はお互いに目線を彷徨わせる。

「あはは。別にもう祝ってもらう歳でもないし、むしろもう祝う側だしね」
「だねー。流石に子供が生まれたしね」

 リュエールとシュトラールの大人な発言に一同も「そっかー」と言いつつも、少しだけ罪悪感もある。
ルーファスが着物の裾から「ならこれで最後か」と2つ細長い箱を出すと、リュエールとシュトラールの前に置く。
2人が箱を開けると調整できるチェーン付きの魔法通信の小さなブレスレットだった。

「えーと・・・父上?」
「レーネルとルビスの腕輪だ。子供は直ぐに大きくなるから調整できるチェーンタイプにしておいた」
「オレ達の誕生日プレゼントっていうより、レーネルとルビスへのプレゼントだね」
「ありがとう、父上・・・まぁ、流石に赤ん坊には持たせないからそのうちね」

 朱里とドラゴン達が何とも言えない顔をしつつも、ルーファスがすました顔をして尻尾を振っているので、孫フィーバーだなぁと生暖かい視線を送る。
しかし、ティルナール達よりも先に孫に魔法通信の腕輪を上げてしまう辺りどうなのかとも思うが、あと1ヶ月もしない間にティルナールの5歳の誕生日で同じ月にミルアとナルアも13歳になり2月後にはエルシオンとルーシーも5歳になる。
それを思うと三つ子にも5歳の誕生日に渡すのかとも思ってしまう。

「リューちゃんもシューちゃんも18歳かぁ・・・私がルーファスに出会った年齢ですね」
「あの頃とアカリは変わりないな」
「もう、お上手ですね。こう見えて7人の子持ちの2人の孫持ちなんですよ」
「それを言うならオレもだ」
 
 2人で隣り合わせで頭をコツコツと擦り付け合っていると子供達の痛い者を見る目に見つめられつつ、夕飯の時間が過ぎていき、夕飯の片付けを朱里が1人でしているとカタカタと小さく振動があり、また子供達かドラゴンが騒いで暴れているのかな?と、気にせずにお皿に乾燥魔法を掛けていると、ガタガタと振動が床から伝わり、地震?と、思った瞬間ズシンと横から衝撃がきてそのまま床から足が離れる。
横なぎにされるように倒れると足元に衝撃で食器がガシャガシャと音を立てて落ちてきて、ギクリと体が硬直する。

「ヒッ!」

 小さく息を呑み目をつぶると大きな音を立てて上の棚が開く音がして、ガコンガコン音を立てて床に落ちて来る。
身を縮こまらせて物が落ちて来るのが納まるのを待ってから目を開けると、ちょっとした惨状だった。
収納していた鍋や食器や調味料が床に散乱して、その下で割れてしまっているお皿に関しては少し考えたくないものがある。

「地震じゃない・・・よね?」

 横から風圧の様な衝撃で飛ばされた感じだった事から地震とは違うだろうと思っていると、キャーという声と子供の泣き声に慌てて台所から大広間へ戻ると、家具が横なぎで倒れている。

「レーネルくんとルビスちゃんは大丈夫?!」
「多分大丈夫!丁度抱っこしてたから!皆は無事?!」
「ははうえー!!ぶぇえええん」
「皆、大広間に集まれ!」
「アカリは?!」

 お互いに声を上げながら無事を確かめようと大広間に集まると、とりあえず全員無事ではあるが、家具で体を打ち付けたりはあったのでシュトラールが回復魔法を全員に掛けて見えない所まで治療をした。

「【回復・大ヒーリングオーバー】」

「はぁ・・・今の一体何だったんでしょうね?」
「わからんが、【刻狼亭】の方を見て来る。リューは料亭を、オレは旅館の方に行く。シューはいつでも回復魔法が出来る様にここで待機。怪我人が居たら腕輪で連絡する」
「わかったよ。キリン、子供を頼むね」
「うん。気を付けてね」
「アカリ、家の事を頼む」
「はい。わかりました」

 ルーファスとリュエールが出掛け、ハガネの指示の元ドラゴン達と一緒に家具の片付けが始まり、安全第一という事でキリンとフィリアに赤ん坊と三つ子はハガネの結界の中で片付けが終わるまでは居てもらい、それぞれ片付けて行っていたが、引っ越したばかりだというのに、色々と家具で家が傷ついてしまったのは少し痛い所だ。

「母上、怪我人が居る様だから少し旅館の方に行ってくるね」
「うん。気を付けていってらっしゃい」

 シュトラールが出掛け、3時間後にようやく一息ついた時にはもう少しで日付けが変わろうとしていた。
まだ細々とした物の片付けは終わってないが、もう明日にするしか無いと諦めて台所から出ようとした時、台所のお勝手口をガリガリと引っ掻く爪音に扉を開けるとクロが「ゥナー・・・」と力なく舌を出していた。

「クロどうしたの?」
「ナーァー・・・ゥゥー」
「クロ、大丈夫?」

 ガブッとクロに初めて噛みつかれ血が滲み、ビックリしてクロを見るとクロが必死に傷を舐めるとクロの体から黒いモヤの様な物が出て四散する。
クラッとした眩暈に胸がギュッと苦しくなると胸を押さえて身を丸め込む。

 何だろう・・・今の?

 クロが必死に頭を擦り付けて、心配そうに「ナウーナーン」といつもの声で甘えた様に鳴く。
いつものクロだと思いながら、胸の痛さが治まり、さっきの衝撃でクロも少し調子がおかしかったのかな?とクロを撫でながら台所を出ると、ルーファス達が帰ってきたところだった。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する

アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。 しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。 理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で 政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。 そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。