黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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18章

恋ですか?③

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 ふぁぁ~っと欠伸をしながら、口を手で押さえてルーファスが業者の人と『女将亭』の設計で話し合いを始めたのでお茶を淹れて持って行く。

「木材に関しては船の輸送でやっていくが、港からここまでの運搬はうちのドラゴン達に任せれば良いな」
「そうですね。結構な量がありますが大丈夫ですか?」
「まぁ何とかなるだろう」

 ルーファスが業者とそんな話をしながら私と目が合うとフッと笑って設計図を見せてくれる。
今回の女将亭は前の女将亭よりも大きい。竜の癒し木がもう少し大きくなるらしいので、最大の大きさになってもぶつからない様に作られるのだけど、竜の癒し木を中心に円を描く様なホール型の建物を建てる事になった。
かなり大きな物になる。
私のお城パート2はスケールが違う・・・。

 理由としては東国に今まで【刻狼亭】が契約して取り入れた着物や染め物等の職人をこちらに呼び寄せ、店を構えさせて、温泉大陸独自での発展を目標としている。
今までは注文をして東国で作らせて・・・と、手間がかかる上に船での輸送だったので、瀬戸物は割れるし、輸送量もバカにならない。
そしてなにより、【刻狼亭】の『女将亭』ブランドという訳の分からない高級志向が旅行で『女将亭』を訪れる人達に求められていたからと言うのもある。

 他にもレストランの場所もあれば、【刻狼亭】での縁で知り合った人達の店も出店される。
小さなショッピングモールに近いかもしれない?アンゴラータ族の人達の毛織物も相変わらずデザインを考えては作って行って貰っているので、アンゴラータ族の専用服売り場も用意されている。

「結構時間かかりそうだね」
「規模が大きいからな。その分、家は先に建てるが」 
「新しいお家も楽しみだねー」
「ティル達の部屋も作るしな。きっと喜ぶぞ」

 『女将亭』の規模が大きいので自宅は別に建てる事になり、温泉街の一等地と言われている場所に構えることになりました。
まぁ、元々トリニア一族の土地なので好きな場所に建てれるのだけれど、まさかの・・・【刻狼亭】料亭裏に建てる事に・・・。

料亭の裏側はミッカの木が生えていたり、竹が生えていたりと少し木々が生い茂った場所ではあったのだけど、広い土地もあるし、ドラゴン達が大きくなっても大丈夫な場所で、尚且つ安全な場所なのである。
ナナメ横が従業員宿舎ですからね。

 今回の自宅は【刻狼亭】の外観を損ねない様に和風・・・というか東風な感じで合わせていく感じになる。
もう既に土地の確保をする為に木々は撤去されて今は更地にされている。
こちらは春を待たずに建てる事が決まっていて、ドワーフの方々も手伝ってくれるのでかなり早く出来上がりそう。

「さて、私はティルとグリムレインを連れてお夕飯のお買い物に行ってきますね」
「わかった。気を付けて行っておいで」
「はい。ルーファスもお話頑張ってね」

 軽く頬にキスをして、業者の人へ頭を下げてからキッチンにトレイを戻して三つ子達を迎えに行く。
グリムレインに3人にコートを着せておいてと頼んでいたので直ぐに出掛けられるはずだ。

「グリムレイン、お買い物に行きますよー」
「おっ、嫁遅いぞ。我はチビッ子共に絵本を何度聞かされるのかと思ったわ」
「あはは。最近自分達で絵本読んで聞かせてくれるの得意だからね」
「我はイチゴの大冒険がどんな冒険をしてもどうでもよい・・・」
「ああ、『イチゴのとんで跳ねて大冒険』だね。私も内容覚えちゃったよ」

 3人から絵本を受け取って本棚に戻して「買い物だよー!」と言うと3人が背中を向ける。
このポーズはリュックサックを背負わせてのポーズなのでティルナールには黄色のヒヨコさんリュックを背負わせて、エルシオンには水色のヒヨコのリュックサックを背負わせ、ルーシーには薄いピンクのヒヨコのリュックサックを背負わせて、いざ、お買い物に出撃です。

 応接間に居るルーファスに一応声を掛けて屋敷を出ると、まだ寒い2月中旬の寒さに「ひぇっ」と声は出るけれど、他の大陸ではグリムレインのドーム魔法が無い分寒いのでこれはマシな方だと言い聞かせて5人でしりとりをしながら温泉街まで歩いて行く。

 青果売り場の近くを通っている時にありすさんの息子シノリア君が温泉大陸に帰って来ていたらしく、いつもの騎士学校の服では無く、普通のラフな格好で立っていた。
流石リロノスさんの息子なだけあって、顔が良い・・・まぁ、子供なのでキッズモデルみたいな感じではあるのだけど。

 声を掛けようかと思っていたら、シノリア君の所にナルアが駆け寄っていく。
おやおや?と、思いながら少しだけ近付き、三つ子達に「シーッだからね?」とグリムレインにもそう言って聞き耳を立てる。

「シノリア、お待たせしましたわ」
「待ってないよ。じゃあ行こうか」

 シノリアに手を伸ばされて、ナルアが耳を下げて手を取るかどうかを悩んでいる。

「ううっ・・・でも怖いのです!初めてなのです!痛いのは嫌なのです!」
「大丈夫。信用してよ、痛くしないから」
「絶対に、絶対に痛くないのですか?絶対ですよ?!」 

 なななななんの会話ですか?!あわわっと騒いでいると、シノリア君がナルアに「口を開けて」と言って、ナルアが顔を赤くしながら小さく開けてて・・・うわっ!それ以上は駄目!早すぎ!!

「あっ、シノリア!何してるの?あら?ミルアちゃん・・・いや、ナルアちゃんね。こんにちは」

 ナイスタイミングでリリスちゃんが2人に声を掛ける。
2人はパッ離れてリリスちゃんに「姉さんには関係ない」とシノリア君がそっぽを向き、ナルアは口元を両手で押さえている。

 あ・・・怪しい現場を目撃してしまいました!!!
ルーファスの予感は的中でしょうか?うーん・・・でもまだ12歳だし、キスとか早くない?しかも初めてとかなんとか・・・それは流石に早すぎだから!!!お母さんは心配ですよー!!!

「ははうえ?」
「おかいものー」
「ははうえ、はやくいこ?」
「嫁、出歯亀してないで買い物に行くぞ」
「あっ、引っ張らないで、待ってー!!」

 グリムレインにコートを引っ張られながらティル達にも行こうと急かされてズルズルと商店の建ち並ぶ場所で、モヤモヤしつつ歩いていると、手前からミルアがミールと一緒に歩いてくる。

「酷いのですわ!ミール痛くないって言ったじゃないですか!」
「多少痛いのは仕方がない」
「多少じゃありませんの!すごく痛かったのです!」
 
 ペシペシとミールを叩きながら涙目でミルアが騒いでいる。
ここでも痛いとか何とか・・・会話にデジャブを感じてしまう・・・。

「血がいっぱい出ましたの!責任取って下さいませ!」
「ミルアが必要以上に暴れるから・・・」

 血がいっぱい・・・?責任をとる・・・?
あわわわわっ!!!うちの娘が何か言ってるぅぅぅ!!!!

「あら?母上にティル達お買い物ですの?」
「女将、こんにちは」
「ああああ、ミルア、う、うん。買い物なの、うんそうなの!」
「母上どうしたんですの?」
「あわわわっ、ミルアこそ!な、なにをしているの!」
「わたくしはお仕事の休憩時間にミールと会っていただけですの」

 ケロッとした顔でそういうミルアは朝の憂いた表情は何所へやらと言う感じで・・・。
もしかして、一線を越えた事で憂いは無くなった・・・と、いう事なのかしら?
ううっ・・・頭痛がしてきたかも?驚き過ぎてお母さん口から心臓出そうです!!

「血がどうのと言っていたが、ミルア怪我でもしたのか?」
「ちょっ、グリムレイン?!」

 ヒィッ!グリムレインそういう事聞いちゃうの?!ストレート過ぎでは?!
あわあわしているとミルアが「あー」と声を出す。

「ミールに牙を削ってもらいましたの。少し尖り過ぎて・・・兄上達に聞いたら父上は力加減が下手だから頼んだら地獄を見ると思うという話で、シュー兄様も手加減下手ですし、リュー兄様は今居ませんし、それでミールに頼んだのですわ。同じ種族の方がやり方がわかっていますでしょ?まぁ、痛かったのですけど、ポーションで口をゆすいで血は止まりましたわ」

 ミルアが自分の唇を少し上にあげて犬歯を見せてニコッと笑う。
お母さん・・・とっても誤解して恥ずかしい!ゴメンナサイッ!!!心から土下座の気分ですよ・・・。

「あら?だとしたらナルアも?」
「ナルアはシノリアにやってもらうそうですわ。ミールの牙をシノリアが削ってくれたらしいのですが、良い感じらしいのですよ?まぁ、お仕事の休憩時間の関係上、シノリアをナルアに譲りましたの」

 なるほど・・・納得しました。
あの会話も牙の話だったのね・・・私の心が穢れすぎててゴメンナサイッ!!!!
穴があったら入りたいとはこの事かと実感しました・・・はい。

「今日からこれでご飯が美味しく頂けますわ!」

 嬉しそうにミルアが言って「今日はお肉増し増しでお願いしますの!」と両手を広げてピョンピョンしている。
ティルナール達も真似してピョンピョン飛びながら足元でキャッキャッとはしゃいでいる。

「うん。母上、今日はお肉いっぱい買いますね」

 ええ、罪滅ぼしの為に・・・こんな幼気な我が子を不純な目で見てすいませんでしたッ!!! 
夕飯は勿論お肉たっぷり用意しました。ルーファスにも2人の憂鬱そうな原因が牙である事を話したら、少し苦笑いをしながら「まだ2人には恋煩いなんて無いか」と安心したような少し残念なような声が返って来た。
これで寂しくないだろうと思ったら、夜また抱かれて、どうやらこっちの方は蜜籠りのすごくしたい時期というだけだった様です。
 私、明日の朝起きれるかな・・・?そんな事を思いながら夜は更けていった。
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