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18章
おでんとクッキー
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くつくつと出汁とお醤油の香りを吸い込みながら、土鍋の中のおでんを見つめながら朱里が足元で「味見」と言わんばかりに小皿を手に持つ3人のチビッ子達に「だーめ」と声を出す。
「ははうえーちょーだい」
「ははうえー」
「おでんほしー」
お昼間にシュトラールから美味しいおでんの作り方を聞いて試しに作っている朱里に三つ子は「欲しい欲しい攻撃」をずっとしている。
朱里としてはもう少し味が染みてから食べさせたいのだが、獣人故の鼻の良さで堪らない様で口の端からヨダレが出ている3人に「うーん」と唸る。
「ハンペンくらいなら良いかなぁ・・・」
お箸で大きいハンペンを3人分に分けて、3人の小皿に乗せていく。
ブンブンと尻尾を振る3人に「これだけですからね?」と言い聞かすが、既にハフハフと口に入れている事に必死で聞いてはいなさそうである。
ブルブルと腕輪に振動があり、朱里が魔力を通して出るとリュエールからだった。
「リューちゃん時間が掛かったみたいだけど、お土産と挨拶周りは終わりましたか?」
『今キリンのご両親の所だよ。お世話になったネリリスさんが亡くなって葬儀だったんだよ』
「あら・・・それは残念ね。キリンちゃんの側に居てあげなさいね?」
『それは言われなくても分かってるよ』
「ふふっ、そうね。キリンちゃんの体調は落ち着いているかな?」
『うん。やっぱりご両親の所だと落ち着くみたい』
「そう、なら少し長めに里帰りしてつわりが治まるまで居るのも良いかもしれないけど・・・」
『それはキリンと話して決めるよ。それより父上に伝えておいて欲しいんだ』
「なにを伝えればいいの?」
『温泉大陸の砲台全てを北へ向けておいて。ネリリスさんの最後の予言がそれなんだ』
「何だか危ない感じだけど、伝えておくね」
『うん、お願い。それじゃ、またね』
「はーい。キリンちゃんのご両親によろしくね」
通信を終えて、おでんの火を止めると保温魔法を掛けて「よし」と言うと、後ろで三つ子が小皿を朱里に向けて「もっと」と目をキラキラさせている。
「駄目ったらだーめ。お夕飯なんだから」
「おでん、いただきます?」
「ちょうだい?」
「ください?」
「・・・可愛く言っても駄目です。おやつあげるから大人しくしてなさい」
三つ子がおやつに耳をピンとさせて朱里の動きを目で追う。
朱里が手を上の戸棚にあげると三つ子が「オヤツは戸棚の上」とうんうん頷くが、残念ながら朱里の手は戸棚には届かず、すすすっと手は足元の戸棚に行く。
「今度こそはおやつは下の戸棚か!」と三つ子がジッと見るが、朱里が戸棚から出したのは出汁粉の瓶で三つ子はガックリと項垂れる。
「ははうえー、おやつー」
「まだー?」
「はやくくださいー」
「ああ、うん。待ってねー。先にリビングで待ってて、お料理終わらせて持って行くから」
むぅっと口を尖らせて三つ子がすごすごとキッチンから出て行くと、朱里がニンマリ笑って出汁粉の瓶の中からクッキーを出していく。
実は瓶の中に出汁粉の写真を張り付けて見た目は出汁粉に見せているオヤツ入れだったりする。
隠しても子供達にオヤツを漁られるので、朱里の苦心の策である。
匂いでバレない様に密封できる瓶にして、湿気すらもこもらない!オヤツにまさに打って付けのアイテムである。
お皿の上にクッキーを並べて、瓶を戸棚に戻し、リビングへ行くと三つ子が朱里にしがみ付いてくる。
育ち盛りの子供達は元気いっぱいのお腹減らしまくりなのである。
テーブルの上にクッキーを置くと、サッと手が伸びるのは素早いもので、朱里が1枚食べている間にリスの様に頬をパンパンに膨らませた三つ子に苦笑いをする。
「誰も取ったりしないのに」
そう朱里が言うと、三つ子はお互いの兄弟に指をさす。
弱肉強食。早い者勝ち。そんなところだろうか?三人が三人共お互いにライバルの様だ。
朱里がコップに温めたミルクとチョコを入れながらスプーンで溶かして3人に渡していく。
「ははうえ、あついよ?」
「ふーふーして?」
「のめないよ?」
「甘えないの。自分でふーふーして飲みなさい」
3人が「ガーン」とした顔で朱里を見ると、朱里が自分のコップに同じ物を作って「ふぅー」と息を吐いて冷ましながら飲むと3人が耳を下げる。
「んー、仕方ないなぁ」
パッと3人の顔がキラキラと期待した物に変わるが、朱里が出したのはマシュマロでコップに1個ずついれて「これでくるくるかき回せば少しは冷めるよ」と言って3人は耳をぺしゃっとさせる。
朱里にフーッと息を吹きかけて欲しいのだが、朱里はそろそろ3人も自分の事は自分でやるべきだと突き放しにかかっている。
「「「きゅ・・・キューン」」」
「くっ・・・母上は負けませんよ?」
3人と朱里のにらみ合いが少し続き、朱里が仕方がないなぁと折れかけた時、リビングにグリムレインがヒョッコリ現れ「なんだ?冷まして欲しいのか?」と冷気で冷まして行く。
3人がブルブルと震えて涙目になると朱里は耳を手で塞ぐ。
屋敷のリビングで3人の泣き声が響き、グリムレインが「我が悪いのか?!」騒ぎ、不貞腐れた3人が泣き疲れてソファで寝ると、グリムレインを慰めるのに朱里が必死になり、こんな事なら素直に子供達にふーふーしてあげたら良かったと少し反省をした。
「ははうえーちょーだい」
「ははうえー」
「おでんほしー」
お昼間にシュトラールから美味しいおでんの作り方を聞いて試しに作っている朱里に三つ子は「欲しい欲しい攻撃」をずっとしている。
朱里としてはもう少し味が染みてから食べさせたいのだが、獣人故の鼻の良さで堪らない様で口の端からヨダレが出ている3人に「うーん」と唸る。
「ハンペンくらいなら良いかなぁ・・・」
お箸で大きいハンペンを3人分に分けて、3人の小皿に乗せていく。
ブンブンと尻尾を振る3人に「これだけですからね?」と言い聞かすが、既にハフハフと口に入れている事に必死で聞いてはいなさそうである。
ブルブルと腕輪に振動があり、朱里が魔力を通して出るとリュエールからだった。
「リューちゃん時間が掛かったみたいだけど、お土産と挨拶周りは終わりましたか?」
『今キリンのご両親の所だよ。お世話になったネリリスさんが亡くなって葬儀だったんだよ』
「あら・・・それは残念ね。キリンちゃんの側に居てあげなさいね?」
『それは言われなくても分かってるよ』
「ふふっ、そうね。キリンちゃんの体調は落ち着いているかな?」
『うん。やっぱりご両親の所だと落ち着くみたい』
「そう、なら少し長めに里帰りしてつわりが治まるまで居るのも良いかもしれないけど・・・」
『それはキリンと話して決めるよ。それより父上に伝えておいて欲しいんだ』
「なにを伝えればいいの?」
『温泉大陸の砲台全てを北へ向けておいて。ネリリスさんの最後の予言がそれなんだ』
「何だか危ない感じだけど、伝えておくね」
『うん、お願い。それじゃ、またね』
「はーい。キリンちゃんのご両親によろしくね」
通信を終えて、おでんの火を止めると保温魔法を掛けて「よし」と言うと、後ろで三つ子が小皿を朱里に向けて「もっと」と目をキラキラさせている。
「駄目ったらだーめ。お夕飯なんだから」
「おでん、いただきます?」
「ちょうだい?」
「ください?」
「・・・可愛く言っても駄目です。おやつあげるから大人しくしてなさい」
三つ子がおやつに耳をピンとさせて朱里の動きを目で追う。
朱里が手を上の戸棚にあげると三つ子が「オヤツは戸棚の上」とうんうん頷くが、残念ながら朱里の手は戸棚には届かず、すすすっと手は足元の戸棚に行く。
「今度こそはおやつは下の戸棚か!」と三つ子がジッと見るが、朱里が戸棚から出したのは出汁粉の瓶で三つ子はガックリと項垂れる。
「ははうえー、おやつー」
「まだー?」
「はやくくださいー」
「ああ、うん。待ってねー。先にリビングで待ってて、お料理終わらせて持って行くから」
むぅっと口を尖らせて三つ子がすごすごとキッチンから出て行くと、朱里がニンマリ笑って出汁粉の瓶の中からクッキーを出していく。
実は瓶の中に出汁粉の写真を張り付けて見た目は出汁粉に見せているオヤツ入れだったりする。
隠しても子供達にオヤツを漁られるので、朱里の苦心の策である。
匂いでバレない様に密封できる瓶にして、湿気すらもこもらない!オヤツにまさに打って付けのアイテムである。
お皿の上にクッキーを並べて、瓶を戸棚に戻し、リビングへ行くと三つ子が朱里にしがみ付いてくる。
育ち盛りの子供達は元気いっぱいのお腹減らしまくりなのである。
テーブルの上にクッキーを置くと、サッと手が伸びるのは素早いもので、朱里が1枚食べている間にリスの様に頬をパンパンに膨らませた三つ子に苦笑いをする。
「誰も取ったりしないのに」
そう朱里が言うと、三つ子はお互いの兄弟に指をさす。
弱肉強食。早い者勝ち。そんなところだろうか?三人が三人共お互いにライバルの様だ。
朱里がコップに温めたミルクとチョコを入れながらスプーンで溶かして3人に渡していく。
「ははうえ、あついよ?」
「ふーふーして?」
「のめないよ?」
「甘えないの。自分でふーふーして飲みなさい」
3人が「ガーン」とした顔で朱里を見ると、朱里が自分のコップに同じ物を作って「ふぅー」と息を吐いて冷ましながら飲むと3人が耳を下げる。
「んー、仕方ないなぁ」
パッと3人の顔がキラキラと期待した物に変わるが、朱里が出したのはマシュマロでコップに1個ずついれて「これでくるくるかき回せば少しは冷めるよ」と言って3人は耳をぺしゃっとさせる。
朱里にフーッと息を吹きかけて欲しいのだが、朱里はそろそろ3人も自分の事は自分でやるべきだと突き放しにかかっている。
「「「きゅ・・・キューン」」」
「くっ・・・母上は負けませんよ?」
3人と朱里のにらみ合いが少し続き、朱里が仕方がないなぁと折れかけた時、リビングにグリムレインがヒョッコリ現れ「なんだ?冷まして欲しいのか?」と冷気で冷まして行く。
3人がブルブルと震えて涙目になると朱里は耳を手で塞ぐ。
屋敷のリビングで3人の泣き声が響き、グリムレインが「我が悪いのか?!」騒ぎ、不貞腐れた3人が泣き疲れてソファで寝ると、グリムレインを慰めるのに朱里が必死になり、こんな事なら素直に子供達にふーふーしてあげたら良かったと少し反省をした。
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