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18章
予言
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「予言?」
キリンが首を傾げるとユークリッドとエリーゼナの目線はキリンのお腹へと向き、キリンがお腹に手をあてて笑うとリュエールがキリンの肩を抱き寄せて微笑む。
「子供の事・・・かな?」
「ああ。ネリリスさんは最後にキリンの子供の予言をしたよ」
「とりあえず何か食べながら話しましょうか」
エリーゼナが丸い木をそのままテーブルにしたものの上に軽い食事を用意して、木の実と肉を混ぜ込んで小麦の皮で包んだお焼きを口に頬張りながら、キリンが「はぅ~っ、この味が恋しかった」と幸せそうに目を細める。
リュエールが手土産の果実酒とアンゴラータ族の毛織物を手渡してユークリッドとエリーゼナに「流石うちの娘婿」とギュッと抱擁を受ける。
エルフの森でも果実酒は作られるが、やはり外の国で作られている果実酒の方が飲み口が良いらしい。
アンゴラータ族の毛織物は手に入りにくいものなので、冬場は重宝する為に喜ばれる品でもある。
母親の朱里プロデュースの毛織物産業は今も尚人気を博している為に価値が高く都会の流行物が森の中にあるのはある意味ステータスでもある。
「そういえば、ダークエルフが来てたけど、予言は結局聞けなかったって・・・ネリリスお婆ちゃん何を言おうとしてたんだろう?」
「ああ、教えても良かったんだが、ダークエルフは間に合わなかったのだから、それも運命だと思って言わなかった。近いうちダークエルフの中から王を食らう者が現れるという予言でね、詳しい事はネリリスさんが言わなかったから判らず仕舞いさ」
「物騒な感じだったし、戦火に巻き込まれるのも困るからね、下手に言うのはやめておいたのよー」
随分と抽象的で訳が分からない予言だなと思いながら、キリンとリュエールが顔を見合わせる。
ユークリッドとエリーゼナは首を横に振りながら「ダークエルフに関わっちゃ駄目」と言って眉を顰める。
「んー、じゃあわたしへの予言は?」
エリーゼナがポンッと手を叩いて「赤ちゃん!」と嬉しそうに声を出す。
「キリンがリュエール君の子供を宿したから、私の役目はもう終わりってネリリスさんが言ってて、キリンの助けになる『異世界の女』が魔法を使える様に手助けをしておいたから、安心して過ごしなさいって。あとは、よくわからないんだけど、4の砲は常に北へ向けなさいって言ってたけど、これは分んないのよね?キリン何だかわかる?」
「あー、もしかすると『異世界の女』ってアカリさんかな?まさかとは思うけど・・・ネリリスお婆ちゃんのせいでお義母さん記憶喪失にさせられたのかも?移動魔法で入り込んで油を床にばら撒くくらいネリリスお婆ちゃんには造作もない事だろうし・・・」
「うーん。これは僕等だけの心の中に仕舞っておこうね。4の砲は温泉大陸に設置してる固定砲台の事かも?北の方角に帰ったら向けておくよ」
キリンの頭の中にネリリスが小気味よく笑い杖を突きながら歩く姿が浮かび、困ったお婆ちゃんだと眉が下がる。
やる事なす事無茶ばかり突拍子もない事を仕出かして行くんだから・・・と、肩を落とす。
キリン達の様子にエリーゼナがワクワクした顔をして「以上です」とニッコリ笑う。
「で?キリン、予言の赤ちゃんはお腹に居るの?」
「それ!お父さんそれが凄く気になっていた!どうなんだ?!」
両親にすごまれる様に近付かれてキリンが困った顔で「あと7ヶ月後にはお父さんもお母さんもお祖父ちゃんとお祖母ちゃんです」と告げて、ユークリッドとエリーゼナがハイタッチして拳でガッツポーズをする。
とても体育会系のノリの両親なのだ。この2人は・・・。
「ネリリスさんにキリンを任せて良かったよ!変わり者だったから心配してたけど」
「ねー!お婿さんも見つけて貰えたし、孫まで!」
「あー、うん?わたしは2人が普通に狩りだマッピングだで忙しくてネリリスお婆ちゃんくらいしか相手にしてくれなかっただけだと思うんだけど?」
両親にジト目でキリンが非難の目を向けると両親はサッと目を逸らす。
この村はエルフの数はいるが子供に関してはここ40年生まれたのはキリンだけで同年代の子供が居なかった分、遊び相手はネリリスしかいなかったのだ。
「だってー、ネリリスさんが私達夫婦に子を成すなら今日!とかいきなり言ってきて、キリンが出来たけど、丁度私達も仕事が忙しい時だったから、ネリリスさんが任せろって言うしね?」
「赤ん坊のキリンを連れて狩りには行けないしな」
この放置親め!と、恨みがましく思いながらも、ネリリスが子を成せと言わなければ恐らくキリンは居なかっただろう。エルフ同士の夫婦は子供を成す行為を積極的にするのは恥ずかしい事だと考えている節があるので、それもエルフの数の少なさともいえる。
ただでさえ妊娠しにくいエルフなのに、困った常識が根づいている物だと思う。
まぁ、子供が出来たら出来たで村でも歓迎されたりするので、実は妊娠しにくい為に毎日頑張ってるのになかなか授からない為の言い訳として、恥ずべき事だと言って引っ込みがつかなくなっているのでは?とも思ってしまう所もある。
「とりあえず、予言はアカリさんを頼れって事と砲台を北に向けろ・・・で良いのかな?」
「多分、まぁ未来は予測不可能なものだし、心に留め置くだけにしておこうね。キリンは無事に産む事だけ考えて」
キリンのおでこにキスをしながらリュエールが尻尾を振るのを見て、エリーゼナが「キリン良いなぁ」と少しむくれる。
「ユークリッドもリュエール君を見習えば良いのに」
「うっ・・・、エリーそうは言ってもね新婚じゃないんだし」
タジタジしながらユークリッドが困った顔でキリンに助けを求める様な顔をするが、笑顔で「新婚とか関係ないよ?」とバッサリ一蹴される。
キリンが首を傾げるとユークリッドとエリーゼナの目線はキリンのお腹へと向き、キリンがお腹に手をあてて笑うとリュエールがキリンの肩を抱き寄せて微笑む。
「子供の事・・・かな?」
「ああ。ネリリスさんは最後にキリンの子供の予言をしたよ」
「とりあえず何か食べながら話しましょうか」
エリーゼナが丸い木をそのままテーブルにしたものの上に軽い食事を用意して、木の実と肉を混ぜ込んで小麦の皮で包んだお焼きを口に頬張りながら、キリンが「はぅ~っ、この味が恋しかった」と幸せそうに目を細める。
リュエールが手土産の果実酒とアンゴラータ族の毛織物を手渡してユークリッドとエリーゼナに「流石うちの娘婿」とギュッと抱擁を受ける。
エルフの森でも果実酒は作られるが、やはり外の国で作られている果実酒の方が飲み口が良いらしい。
アンゴラータ族の毛織物は手に入りにくいものなので、冬場は重宝する為に喜ばれる品でもある。
母親の朱里プロデュースの毛織物産業は今も尚人気を博している為に価値が高く都会の流行物が森の中にあるのはある意味ステータスでもある。
「そういえば、ダークエルフが来てたけど、予言は結局聞けなかったって・・・ネリリスお婆ちゃん何を言おうとしてたんだろう?」
「ああ、教えても良かったんだが、ダークエルフは間に合わなかったのだから、それも運命だと思って言わなかった。近いうちダークエルフの中から王を食らう者が現れるという予言でね、詳しい事はネリリスさんが言わなかったから判らず仕舞いさ」
「物騒な感じだったし、戦火に巻き込まれるのも困るからね、下手に言うのはやめておいたのよー」
随分と抽象的で訳が分からない予言だなと思いながら、キリンとリュエールが顔を見合わせる。
ユークリッドとエリーゼナは首を横に振りながら「ダークエルフに関わっちゃ駄目」と言って眉を顰める。
「んー、じゃあわたしへの予言は?」
エリーゼナがポンッと手を叩いて「赤ちゃん!」と嬉しそうに声を出す。
「キリンがリュエール君の子供を宿したから、私の役目はもう終わりってネリリスさんが言ってて、キリンの助けになる『異世界の女』が魔法を使える様に手助けをしておいたから、安心して過ごしなさいって。あとは、よくわからないんだけど、4の砲は常に北へ向けなさいって言ってたけど、これは分んないのよね?キリン何だかわかる?」
「あー、もしかすると『異世界の女』ってアカリさんかな?まさかとは思うけど・・・ネリリスお婆ちゃんのせいでお義母さん記憶喪失にさせられたのかも?移動魔法で入り込んで油を床にばら撒くくらいネリリスお婆ちゃんには造作もない事だろうし・・・」
「うーん。これは僕等だけの心の中に仕舞っておこうね。4の砲は温泉大陸に設置してる固定砲台の事かも?北の方角に帰ったら向けておくよ」
キリンの頭の中にネリリスが小気味よく笑い杖を突きながら歩く姿が浮かび、困ったお婆ちゃんだと眉が下がる。
やる事なす事無茶ばかり突拍子もない事を仕出かして行くんだから・・・と、肩を落とす。
キリン達の様子にエリーゼナがワクワクした顔をして「以上です」とニッコリ笑う。
「で?キリン、予言の赤ちゃんはお腹に居るの?」
「それ!お父さんそれが凄く気になっていた!どうなんだ?!」
両親にすごまれる様に近付かれてキリンが困った顔で「あと7ヶ月後にはお父さんもお母さんもお祖父ちゃんとお祖母ちゃんです」と告げて、ユークリッドとエリーゼナがハイタッチして拳でガッツポーズをする。
とても体育会系のノリの両親なのだ。この2人は・・・。
「ネリリスさんにキリンを任せて良かったよ!変わり者だったから心配してたけど」
「ねー!お婿さんも見つけて貰えたし、孫まで!」
「あー、うん?わたしは2人が普通に狩りだマッピングだで忙しくてネリリスお婆ちゃんくらいしか相手にしてくれなかっただけだと思うんだけど?」
両親にジト目でキリンが非難の目を向けると両親はサッと目を逸らす。
この村はエルフの数はいるが子供に関してはここ40年生まれたのはキリンだけで同年代の子供が居なかった分、遊び相手はネリリスしかいなかったのだ。
「だってー、ネリリスさんが私達夫婦に子を成すなら今日!とかいきなり言ってきて、キリンが出来たけど、丁度私達も仕事が忙しい時だったから、ネリリスさんが任せろって言うしね?」
「赤ん坊のキリンを連れて狩りには行けないしな」
この放置親め!と、恨みがましく思いながらも、ネリリスが子を成せと言わなければ恐らくキリンは居なかっただろう。エルフ同士の夫婦は子供を成す行為を積極的にするのは恥ずかしい事だと考えている節があるので、それもエルフの数の少なさともいえる。
ただでさえ妊娠しにくいエルフなのに、困った常識が根づいている物だと思う。
まぁ、子供が出来たら出来たで村でも歓迎されたりするので、実は妊娠しにくい為に毎日頑張ってるのになかなか授からない為の言い訳として、恥ずべき事だと言って引っ込みがつかなくなっているのでは?とも思ってしまう所もある。
「とりあえず、予言はアカリさんを頼れって事と砲台を北に向けろ・・・で良いのかな?」
「多分、まぁ未来は予測不可能なものだし、心に留め置くだけにしておこうね。キリンは無事に産む事だけ考えて」
キリンのおでこにキスをしながらリュエールが尻尾を振るのを見て、エリーゼナが「キリン良いなぁ」と少しむくれる。
「ユークリッドもリュエール君を見習えば良いのに」
「うっ・・・、エリーそうは言ってもね新婚じゃないんだし」
タジタジしながらユークリッドが困った顔でキリンに助けを求める様な顔をするが、笑顔で「新婚とか関係ないよ?」とバッサリ一蹴される。
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