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18章
里帰り
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「え?キリンちゃんは里帰り出産なの?」
森のリュエールとキリンの家で朱里が三つ子と散歩がてらに食事を持って訪れ、少し気怠そうなキリンに眉を下げる。
「いえ、1週間程両親の顔を見に帰るだけなんです。お腹が大きくなる前に会いに行こうと思ってて」
「そうだね。ご両親も心配しているものね。初めての妊娠は不安になる事も多いと思うし、やっぱりお母さんの所で色々聞くのも必要よね」
「それとつわりに効く薬草とかも自分で作りたいので聞いてこようかと思ってて」
「ドラゴン達に『祝福』が貰えたら良かったんだけどね。祝福の時期が過ぎてたのは痛いよねぇ」
「はい・・・とっても残念です」
キリンもフィリアもドラゴン達の祝福の時期が出来ない時期の2ヶ月を超えてしまった為に祝福が出来ないのでドラゴンのサポートなしの状態で出産になる。
個人差もあるが、妊娠して2ヶ月もすれば判るとは言われているのに、判らなかったらしい。
これに関しては朱里も自分がリュエール達を妊娠したのを知ったのが4ヶ月も過ぎていたので人の事は言えないのである。
グリムレインに出会った時は祝福を受けられる期間だったのが幸いだったとしか言えない。
今現在3ヶ月になるが、キリンはつわりが酷いらしく、骨盤が開く痛さにもぐったりしている事が多い。
逆にフィリアはつわりは軽いらしく、シュトラールが作る「おでん」にハマっているらしい。
キリンは匂いも駄目な様で温泉の匂いが落ち着かないらしく、温泉大陸で産むよりエルフの森の方が良いかもしれないとリュエールと話し合いもしているのだが、温泉大陸にはシュトラールが居るので万が一の時にシュトラールが居た方が安全かもしれないと、悩みに悩んでいるらしい。
せめて出産時期が被らなければ良かったのだが、ほぼ変わりない出産予定日だったりする。
「まぁ、ご両親の所で気分転換して、自分の体が落ち着く方で出産した方が良いかもしれないね。こればかりは妊婦さんはワガママ言って良いのよ?」
「お義母さんはワガママ言えました?」
「私は『祝福』があったせいか妊婦生活は普段と変わりなかったし、16代目がお腹に居るって事で周りがちやほやしてくれてて、ある意味甘やかされてたわ・・・キリンちゃんも17代目がお腹に居るから周りがちやほやしたいみたいなんだけど、リューちゃんがキリンちゃんに近寄ると怒るから、皆近寄れないのよね」
リュエールは番主義の狼の血が騒ぐのか、必要以上にキリンに他人が近付くのを良しとしない所がある。
妊娠したことで余計にそれは強くなっていて、朱里はよくてもルーファスにはあまり良い顔をしないぐらいに余裕がない。
ルーファスはそこら辺は解っているのでキリンの事は朱里に任せている。
「リュエールに大丈夫って言っても聞かなくて・・・」
「リューちゃんはキリンちゃんを守りたくて必死なのよね。まぁ、キリンちゃんが嫌じゃ無ければ付き合ってあげてね。ストレスになったら私が引き剥がしてあげるから言ってね」
胸にトンと拳をあてて朱里が「任せてね」と笑って見せる。
ティルナール達も朱里の真似をして「まかして」とフンスッと得意そうな顔をする。
「それにしても今日はリューちゃんお留守なのね」
「今日はリュエールは狩りに行ってて居ないんです」
「あらま。何かキリンちゃんに食べさせてあげたいのかしら?」
「食べ物は結構貰ってて、今日の狩りはベビーベッドに使うマットレスに居れる素材集めに行ってるんです」
「あー・・・リューちゃん綿花とか羊毛とかの素材集めて1から作るもんねぇ」
「凝り性ですよね」
「誰に似たんだろう?ってたまに思うのよね。ルーファスはそういう事はしないし・・・あああ!ギルさんだ!ギルさんがリューちゃん達が生まれる前に色々素材集めに行こうとしてた!」
「本人が聞いたら全否定しそうですね」
「うふふふ。何だかんだで親戚なのねぇ」
妙なところでギルの良い物を用意しなければ!という質のアーバント家の血筋がリュエールにも流れている事に朱里が口元を押さえて笑う。
「さてと、そろそろ私は帰りますね。キリンちゃん体調に不安な事があれば直ぐに呼んでね。駆け付けるから」
「はい。ありがとうございます。お義母さん気を付けて帰って下さいね」
「はーい。お邪魔しました。ほら、ティル達もキリンちゃんにご挨拶して」
「きりんちゃ、ばいばい」
「またねー」
「おじゃましまたー」
三つ子と手を振りながら朱里が帰っていき、キリンがふぅと息を吐きながらクッションを敷き詰めたソファに横になる。
「うーん・・・体がぐるぐるするー・・・」
エルフは妊娠しにくい種族で若ければ若いほど妊娠の確率は低いのだが、相性が良かったのかタイミング良かったのか妊娠は嬉しい反面、自分には縁が無いと思っていただけに覚悟が余りなかった。
長寿のエルフのキリンはリュエールが年老いても自身の姿はそれ程変わらないまま死んでいくのだろうと思っている。
リュエールがもっと大人になった時にキリンの体が大人の成熟した物になり妊娠するかも?とは、思っていたが・・・子供が出来たのが思いのほか早すぎて予想外だった。
不安は尽きない。
だからこそ、エルフの森の両親、主に母親に色々聞いておきたかったのだ。
あとネリリスお婆ちゃんにも色々と聞きたいこともある。何だかんだでエルフの困った時のお婆ちゃん頼りは一風変わったネリリスお婆ちゃんなのだ。
「ネリリスお婆ちゃんにお土産持って行かなきゃ・・・」
あとは村の人へのお土産と、両親への手土産・・・そんな事を思いながらスヤスヤと眠りに付き、リュエールが帰って来てキリンが目を覚ますまで寝顔を見続けていた。
キリンがクッションで顔を隠して恥ずかしがるのを堪能してから、リュエールが一緒にエルフの森へ行く準備を始めた。
森のリュエールとキリンの家で朱里が三つ子と散歩がてらに食事を持って訪れ、少し気怠そうなキリンに眉を下げる。
「いえ、1週間程両親の顔を見に帰るだけなんです。お腹が大きくなる前に会いに行こうと思ってて」
「そうだね。ご両親も心配しているものね。初めての妊娠は不安になる事も多いと思うし、やっぱりお母さんの所で色々聞くのも必要よね」
「それとつわりに効く薬草とかも自分で作りたいので聞いてこようかと思ってて」
「ドラゴン達に『祝福』が貰えたら良かったんだけどね。祝福の時期が過ぎてたのは痛いよねぇ」
「はい・・・とっても残念です」
キリンもフィリアもドラゴン達の祝福の時期が出来ない時期の2ヶ月を超えてしまった為に祝福が出来ないのでドラゴンのサポートなしの状態で出産になる。
個人差もあるが、妊娠して2ヶ月もすれば判るとは言われているのに、判らなかったらしい。
これに関しては朱里も自分がリュエール達を妊娠したのを知ったのが4ヶ月も過ぎていたので人の事は言えないのである。
グリムレインに出会った時は祝福を受けられる期間だったのが幸いだったとしか言えない。
今現在3ヶ月になるが、キリンはつわりが酷いらしく、骨盤が開く痛さにもぐったりしている事が多い。
逆にフィリアはつわりは軽いらしく、シュトラールが作る「おでん」にハマっているらしい。
キリンは匂いも駄目な様で温泉の匂いが落ち着かないらしく、温泉大陸で産むよりエルフの森の方が良いかもしれないとリュエールと話し合いもしているのだが、温泉大陸にはシュトラールが居るので万が一の時にシュトラールが居た方が安全かもしれないと、悩みに悩んでいるらしい。
せめて出産時期が被らなければ良かったのだが、ほぼ変わりない出産予定日だったりする。
「まぁ、ご両親の所で気分転換して、自分の体が落ち着く方で出産した方が良いかもしれないね。こればかりは妊婦さんはワガママ言って良いのよ?」
「お義母さんはワガママ言えました?」
「私は『祝福』があったせいか妊婦生活は普段と変わりなかったし、16代目がお腹に居るって事で周りがちやほやしてくれてて、ある意味甘やかされてたわ・・・キリンちゃんも17代目がお腹に居るから周りがちやほやしたいみたいなんだけど、リューちゃんがキリンちゃんに近寄ると怒るから、皆近寄れないのよね」
リュエールは番主義の狼の血が騒ぐのか、必要以上にキリンに他人が近付くのを良しとしない所がある。
妊娠したことで余計にそれは強くなっていて、朱里はよくてもルーファスにはあまり良い顔をしないぐらいに余裕がない。
ルーファスはそこら辺は解っているのでキリンの事は朱里に任せている。
「リュエールに大丈夫って言っても聞かなくて・・・」
「リューちゃんはキリンちゃんを守りたくて必死なのよね。まぁ、キリンちゃんが嫌じゃ無ければ付き合ってあげてね。ストレスになったら私が引き剥がしてあげるから言ってね」
胸にトンと拳をあてて朱里が「任せてね」と笑って見せる。
ティルナール達も朱里の真似をして「まかして」とフンスッと得意そうな顔をする。
「それにしても今日はリューちゃんお留守なのね」
「今日はリュエールは狩りに行ってて居ないんです」
「あらま。何かキリンちゃんに食べさせてあげたいのかしら?」
「食べ物は結構貰ってて、今日の狩りはベビーベッドに使うマットレスに居れる素材集めに行ってるんです」
「あー・・・リューちゃん綿花とか羊毛とかの素材集めて1から作るもんねぇ」
「凝り性ですよね」
「誰に似たんだろう?ってたまに思うのよね。ルーファスはそういう事はしないし・・・あああ!ギルさんだ!ギルさんがリューちゃん達が生まれる前に色々素材集めに行こうとしてた!」
「本人が聞いたら全否定しそうですね」
「うふふふ。何だかんだで親戚なのねぇ」
妙なところでギルの良い物を用意しなければ!という質のアーバント家の血筋がリュエールにも流れている事に朱里が口元を押さえて笑う。
「さてと、そろそろ私は帰りますね。キリンちゃん体調に不安な事があれば直ぐに呼んでね。駆け付けるから」
「はい。ありがとうございます。お義母さん気を付けて帰って下さいね」
「はーい。お邪魔しました。ほら、ティル達もキリンちゃんにご挨拶して」
「きりんちゃ、ばいばい」
「またねー」
「おじゃましまたー」
三つ子と手を振りながら朱里が帰っていき、キリンがふぅと息を吐きながらクッションを敷き詰めたソファに横になる。
「うーん・・・体がぐるぐるするー・・・」
エルフは妊娠しにくい種族で若ければ若いほど妊娠の確率は低いのだが、相性が良かったのかタイミング良かったのか妊娠は嬉しい反面、自分には縁が無いと思っていただけに覚悟が余りなかった。
長寿のエルフのキリンはリュエールが年老いても自身の姿はそれ程変わらないまま死んでいくのだろうと思っている。
リュエールがもっと大人になった時にキリンの体が大人の成熟した物になり妊娠するかも?とは、思っていたが・・・子供が出来たのが思いのほか早すぎて予想外だった。
不安は尽きない。
だからこそ、エルフの森の両親、主に母親に色々聞いておきたかったのだ。
あとネリリスお婆ちゃんにも色々と聞きたいこともある。何だかんだでエルフの困った時のお婆ちゃん頼りは一風変わったネリリスお婆ちゃんなのだ。
「ネリリスお婆ちゃんにお土産持って行かなきゃ・・・」
あとは村の人へのお土産と、両親への手土産・・・そんな事を思いながらスヤスヤと眠りに付き、リュエールが帰って来てキリンが目を覚ますまで寝顔を見続けていた。
キリンがクッションで顔を隠して恥ずかしがるのを堪能してから、リュエールが一緒にエルフの森へ行く準備を始めた。
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