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18章
料理
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もし、この世界に火災報知器や煙感知機があったのなら、今頃警報がジリジリ鳴り響いていただろう。
モクモクとあがる屋敷に充満した煙に驚いて半冬眠のハガネが起き上がるほどに屋敷に充満した煙は凄まじかった。
「何だこりゃ?!アカリ!!皆無事か?!」
真っ白い煙が立ち込める中でハガネがゲホゲホという声がする方へ行くとキッチンからミルアとナルアがむせ返りながら出てきた。
「エホッ、何なんですの?ゲホッ」
「ケホッ、煙がすごいんですのー、ゲホッ」
「お前等無事か?どうしたんだ?!」
「ああ、ハガネ・・・お料理が爆発しましたの、ケホッ」
「ゲホッ、煙がひどいのですー」
「ハァ?!なんで料理が爆発するんだよ!!」
2人の説明に訳が判んねぇと言いながらキッチンに入り様子を見れば、換気をしておらず、揚げ物をしたらしいが炭化して慌てて消化したのか水がぶちまけられて余計に火をまき散らしてそれを消そうとまた水を・・・と、いう感じの事が見て取れ、煙の元はオーブンでなにやら炭と化した何かからモクモクと出ている。
「お前等・・・お菓子は作れたよな?」
「はい!お菓子は得意ですの!」
「お菓子と同じ様にやりましたのに・・・」
「ハァー・・・菓子の時は換気扇回してねぇのは判るが、さてはお前等、菓子と同じで時間に合わせりゃいいと思ってキッチンから目ぇ離しただろ?」
2人は耳を下げながら手をもじもじと動かして小さく「はいですの・・・」と上目遣いでハガネを見上げる。
換気しながらハガネが「掃除道具持ってこい」と言ってミルアとナルアが「はーい」とパタパタと走って行く。
勝手口を開けて煙を外へ分散させながら「寒みぃ!」と勝手口や窓から入って来る風に鳥肌を立たせた。
「ったく、アカリは何やってんだか・・・」
ブツブツと文句を言っていると、玄関で「何だこれは!」とルーファスの声が響き、ハガネがキッチンから顔を出すと、ルーファスと朱里と三つ子が外出帰りなのかコートを着て立っていた。
「何か料理に失敗したみてぇだぞ?」
「ハガネ起きたのか?」
「まぁな。煙がすごくて寝てらんねぇしな」
「参ったな・・・やはり料理はハガネに頼った方が良いか」
「ん?アカリが居んだろ?なっ?アカリ」
ポンポンとハガネが朱里の頭を叩くと、朱里がビクッとしてルーファスの後ろに隠れるとハガネを見上げて不審者を見る様な目で見る。
「お兄さん・・・誰?」
「はぁ?」
「アカリ、オレはおじさんで何でハガネがお兄さんなんだ・・・」
ハガネが朱里とルーファスを見ながら眉間にしわを寄せて「何言ってんだよアカリも旦那も」と頭をガシガシ撫でると朱里が迷惑そうな顔をして「うーっ」と眉間にしわを寄せている。
「ハガネ。アカリの頭を弄り回すな」
「旦那、アカリなんか変じゃねぇか?」
「ああ、だから頭を触るな。説明はするから、とりあえずこの惨状をどうにかしてもらえるか?」
「まぁそりゃいいけどよ・・・アカリ、お前どうしちまったんだ?」
まるで他人を見る様な警戒心のある顔で自分を見上げて来る朱里にハガネも眉を下げる。
パタパタと箒とモップを持ってミルアとナルアが戻ってくると、ルーファスを見て小さく舌を出す。
「お料理、失敗してしまいましたわ」
「やっちゃいましたわ」
「ああ。まぁ努力は認めるが、次にやる時はちゃんと人が居る時にやってくれ」
「はいですの」
「次があるかはわかりませんの」
ハガネと一緒にミルアとナルアが掃除を始め、ルーファス達は屋敷に充満した煙を排出する為に窓を開けて回る。
三つ子は朱里の後ろをちょこちょこついて歩きながら、朱里に隙あらば抱きついている。
屋敷の煙がようやく納まると、ハガネが浄化魔法を掛けながら屋敷を清掃して回り、ようやく腰を落ち着ける頃には屋敷の中は随分と冷え切っていた。
お茶を淹れてリビングに行くと朱里と三つ子達はおらず、ルーファスだけがリビングのテーブルに座って書類に目を通していた。
「旦那、アカリは?」
「アカリならティル達と部屋で昼寝している」
「まぁ屋敷中寒くしちまったから、部屋で大人しくしてくれてる方がいいか」
「そうだな。今日は病院にも行ってきたしな。疲れたんだろう」
「病院ってアカリやっぱどっか悪いのか?」
ハガネがお茶をルーファスに出しながら椅子に座り、自分用に淹れたお茶に口を付ける。
ルーファスもお茶に口を付けながら、ふぅと息を吐く。
「どうも頭を打ったらしくてな。7歳ぐらいの記憶に戻っていて記憶をなくしている。たまに思い出したりはするんだが、断片的な感じで1から家族としてやり直しているような感じだ」
「おいおい。アカリもまた難儀な事になってんなぁ。グリムレイン辺りが騒いでんじゃねぇのか?」
「騒ぎそうだからまだ言っていない。グリムレインは冬を降り巻き中で新年会までは居ないからな」
「まだ新年会前か。でも、それまでにアカリは戻んのか?」
「こればかりは分らんな・・・」
「だよなぁ・・・まぁ、アカリがそんな様子なら俺も寝てる場合じゃねぇな」
「悪いが家の事を頼めるか?アカリにはまだ家事を全部させるのは危なそうだからな」
「ああ。ミルア達にも無理そうだしな」
「それはそのうちアカリが元に戻った時にでも教えて行ってもらうしか無いだろうな」
2人は反省という事で、温泉街の青果売り場の方まで買い物に出掛けている。
お菓子作り以外にもやる気を見せたのは良いが、流石に料理に関してはまだ人の目が無いと危ないらしい。
子供の頃から朱里の手伝いをしていたので安心していたが、どうも2人はレシピノートの「揚げ時間は7分」という様な数字をそのままにやってしまっているらしく、7分は目を離しても大丈夫だと思っていたようで、ここら辺を教え込んでいかなければいけないらしい。
モクモクとあがる屋敷に充満した煙に驚いて半冬眠のハガネが起き上がるほどに屋敷に充満した煙は凄まじかった。
「何だこりゃ?!アカリ!!皆無事か?!」
真っ白い煙が立ち込める中でハガネがゲホゲホという声がする方へ行くとキッチンからミルアとナルアがむせ返りながら出てきた。
「エホッ、何なんですの?ゲホッ」
「ケホッ、煙がすごいんですのー、ゲホッ」
「お前等無事か?どうしたんだ?!」
「ああ、ハガネ・・・お料理が爆発しましたの、ケホッ」
「ゲホッ、煙がひどいのですー」
「ハァ?!なんで料理が爆発するんだよ!!」
2人の説明に訳が判んねぇと言いながらキッチンに入り様子を見れば、換気をしておらず、揚げ物をしたらしいが炭化して慌てて消化したのか水がぶちまけられて余計に火をまき散らしてそれを消そうとまた水を・・・と、いう感じの事が見て取れ、煙の元はオーブンでなにやら炭と化した何かからモクモクと出ている。
「お前等・・・お菓子は作れたよな?」
「はい!お菓子は得意ですの!」
「お菓子と同じ様にやりましたのに・・・」
「ハァー・・・菓子の時は換気扇回してねぇのは判るが、さてはお前等、菓子と同じで時間に合わせりゃいいと思ってキッチンから目ぇ離しただろ?」
2人は耳を下げながら手をもじもじと動かして小さく「はいですの・・・」と上目遣いでハガネを見上げる。
換気しながらハガネが「掃除道具持ってこい」と言ってミルアとナルアが「はーい」とパタパタと走って行く。
勝手口を開けて煙を外へ分散させながら「寒みぃ!」と勝手口や窓から入って来る風に鳥肌を立たせた。
「ったく、アカリは何やってんだか・・・」
ブツブツと文句を言っていると、玄関で「何だこれは!」とルーファスの声が響き、ハガネがキッチンから顔を出すと、ルーファスと朱里と三つ子が外出帰りなのかコートを着て立っていた。
「何か料理に失敗したみてぇだぞ?」
「ハガネ起きたのか?」
「まぁな。煙がすごくて寝てらんねぇしな」
「参ったな・・・やはり料理はハガネに頼った方が良いか」
「ん?アカリが居んだろ?なっ?アカリ」
ポンポンとハガネが朱里の頭を叩くと、朱里がビクッとしてルーファスの後ろに隠れるとハガネを見上げて不審者を見る様な目で見る。
「お兄さん・・・誰?」
「はぁ?」
「アカリ、オレはおじさんで何でハガネがお兄さんなんだ・・・」
ハガネが朱里とルーファスを見ながら眉間にしわを寄せて「何言ってんだよアカリも旦那も」と頭をガシガシ撫でると朱里が迷惑そうな顔をして「うーっ」と眉間にしわを寄せている。
「ハガネ。アカリの頭を弄り回すな」
「旦那、アカリなんか変じゃねぇか?」
「ああ、だから頭を触るな。説明はするから、とりあえずこの惨状をどうにかしてもらえるか?」
「まぁそりゃいいけどよ・・・アカリ、お前どうしちまったんだ?」
まるで他人を見る様な警戒心のある顔で自分を見上げて来る朱里にハガネも眉を下げる。
パタパタと箒とモップを持ってミルアとナルアが戻ってくると、ルーファスを見て小さく舌を出す。
「お料理、失敗してしまいましたわ」
「やっちゃいましたわ」
「ああ。まぁ努力は認めるが、次にやる時はちゃんと人が居る時にやってくれ」
「はいですの」
「次があるかはわかりませんの」
ハガネと一緒にミルアとナルアが掃除を始め、ルーファス達は屋敷に充満した煙を排出する為に窓を開けて回る。
三つ子は朱里の後ろをちょこちょこついて歩きながら、朱里に隙あらば抱きついている。
屋敷の煙がようやく納まると、ハガネが浄化魔法を掛けながら屋敷を清掃して回り、ようやく腰を落ち着ける頃には屋敷の中は随分と冷え切っていた。
お茶を淹れてリビングに行くと朱里と三つ子達はおらず、ルーファスだけがリビングのテーブルに座って書類に目を通していた。
「旦那、アカリは?」
「アカリならティル達と部屋で昼寝している」
「まぁ屋敷中寒くしちまったから、部屋で大人しくしてくれてる方がいいか」
「そうだな。今日は病院にも行ってきたしな。疲れたんだろう」
「病院ってアカリやっぱどっか悪いのか?」
ハガネがお茶をルーファスに出しながら椅子に座り、自分用に淹れたお茶に口を付ける。
ルーファスもお茶に口を付けながら、ふぅと息を吐く。
「どうも頭を打ったらしくてな。7歳ぐらいの記憶に戻っていて記憶をなくしている。たまに思い出したりはするんだが、断片的な感じで1から家族としてやり直しているような感じだ」
「おいおい。アカリもまた難儀な事になってんなぁ。グリムレイン辺りが騒いでんじゃねぇのか?」
「騒ぎそうだからまだ言っていない。グリムレインは冬を降り巻き中で新年会までは居ないからな」
「まだ新年会前か。でも、それまでにアカリは戻んのか?」
「こればかりは分らんな・・・」
「だよなぁ・・・まぁ、アカリがそんな様子なら俺も寝てる場合じゃねぇな」
「悪いが家の事を頼めるか?アカリにはまだ家事を全部させるのは危なそうだからな」
「ああ。ミルア達にも無理そうだしな」
「それはそのうちアカリが元に戻った時にでも教えて行ってもらうしか無いだろうな」
2人は反省という事で、温泉街の青果売り場の方まで買い物に出掛けている。
お菓子作り以外にもやる気を見せたのは良いが、流石に料理に関してはまだ人の目が無いと危ないらしい。
子供の頃から朱里の手伝いをしていたので安心していたが、どうも2人はレシピノートの「揚げ時間は7分」という様な数字をそのままにやってしまっているらしく、7分は目を離しても大丈夫だと思っていたようで、ここら辺を教え込んでいかなければいけないらしい。
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