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18章
三つ子
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少し熱がある朱里はぼぅとしながらソファの上でルーファスが三つ子に魔法を教えるのを見ていた。
ルーファスが雷属性で三つ子達も雷属性だった為、ハガネが教えるよりルーファスの方がこれに関しては説明しやすいものだったりする。
一応、基本はハガネが教えているのでルーファスが教えるのは雷属性の小手技で鍵を開けたり鉄を呼び寄せたりする物で、三つ子は錠前と小さなティースプーンを前に悪戦苦闘している。
「鍵開けは覚えておけ。何か不測の事態があった時に役に立つ」
「ふそく?」
キョトンとする三つ子に朱里が「不測っていうのはいきなり悪い事がおきた時の事だよ」と教えると三つ子が「ははえー」と朱里を見て目を輝かせる。尊敬の目である。
三つ子は朱里の状態を一応説明はされたがわからないので、「母上は体の調子が悪い」という説明で終わっている。
エルシオンが錠前を持ってきて朱里の手に渡す。
「ふそく。あけた、なおる?」
「開けられたの。偉いね。小さな魔法使いだね」
エルシオンの頭を撫でながら朱里がルーファスにエルシオンの開けた錠前を見ながら「凄いねぇ」とエルシオンに錠前を返すと、エルシオンは朱里の顔をキラキラした目で見ている。
朱里が不測の事態、悪い事が起きたのが錠前を開けた事で治ると思っているらしいが、朱里にはその意味は通じていないらしく、首を傾げてエルシオンを見つめ返す。
「エル、錠前開けではアカリは治らない。おいで」
「キュゥー・・・」
ぺしゃんと耳を下げてエルシオンがルーファスの所へ行くと「ひぃー・・・」と低く息を吸い込むような声を上げると「ひゃぁぁぁん」と泣き始め、釣られる様にティルナール達も「あーっ」と声を上げて泣き始める。
泣き声の大合唱に朱里がオロッと戸惑うと、ミルアとナルアがキッチンから戻ってきて三つ子達のお腹をくすぐり始める。
「ほら、泣き止むのですよ?」
「母上を困らせては駄目なのです」
「ミルア、ナルア、泣きたい時は泣かせておけ」
ルーファスが困った顔で止めるが2人は三つ子のお腹をワキワキとくすぐり、三つ子は逆に癇癪を起したように「ギィィィ」と金切り声をあげて朱里に抱きついてくる。
「もう!駄目って言ってますでしょ!」
「姉上達は怒りますよ?!」
「あの、大丈夫だから、ね?怒らないであげて」
朱里が三つ子を撫でながらミルアとナルアに「ね?」と言うと2人は「母上がそう言うなら」と少し口を尖らせながらまたキッチンへ戻っていく。
「アカリ、疲れてないか?大丈夫か?」
「平気だよ。私、一人っ子だから小さい子がいっぱい居るの憧れてたし、もうすぐお姉ちゃんになるから練習だよ」
「そうか・・・すまないな」
「ルーファスさんこそ大丈夫ですか?泣きそうだよ?疲れてるの?」
「いや、大丈夫だ・・・ああ、でも少しだけアカリに抱きしめて欲しいな」
「ふふっ、大きな子供みたい。いいですよー」
朱里が両手を広げるとルーファスが膝を折って朱里の胸に顔を埋めたまま朱里を抱きしめる。
あれ?抱きしめるというより、抱きしめられてないか?と、思いつつも朱里がルーファスの背中をポンポン叩きながら「良い子、良い子」と優しく声を掛ける。
しばらくすると、しがみ付いて泣いていた三つ子が静かに寝息を立て始めソファにコロンと横になってしまう。
寝付いた三つ子を見つめる朱里はいつもの母親の顔をしていて、小さく口元が微笑んでいる。
「アカリ、早くオレのところに帰って来てくれ」
「?私はここに居るよ?」
「ああ・・・これはオレの独り言だ。聞き流してくれ」
「んー、わかんないけど、私の心音は安心するって前言ってたでしょ?いっぱい聞いて良いよ?」
「・・・覚えているのか」
「あれ?んー、よくわかんないや」
少し首を傾げて楽しそうに笑う朱里に、リュエール達を妊娠したと解った時にしたやり取りが心音の話で、そんな些細な事を朱里が覚えている事に安堵と同時に少し寂しい気もしてしまう。
「あの時、アカリは胎動をお腹の消化する音だと言ってた」
「胎動・・・赤ちゃんの音だね?」
「オレはアカリのお腹に耳をつけてアカリの心音とリュエール達の胎動を聞いたのを覚えている」
「わかんないけど、私もね、お母さんのお腹に耳をあてて赤ちゃんの音聞いたんだよ。あとね、動いたのも分かったんだよ」
「ああ。赤ん坊が動くのを感じるのは感動するな」
「うん!あ、でも手とか足がお腹にハッキリ見えてお腹からバリって出てきそうな感じで・・・あれ?ルーファスさんと見てた気がする・・・なんでだろ?」
「うーん」と言いながら、朱里が「頭疲れちゃった」とルーファスの肩に顔を埋めて「帰りたいな・・・」と小さく呟いた。
親元と自分達家族の元、どちらに帰りたいのか、それを聞くには勇気が足りず、朱里の胸から顔を上げて「子供達に毛布を持ってくる」と言い残して部屋を出て行く。
きっと前者の元へ帰りたいと言っているのは判るのに、帰る事が出来ない場所を恋しがるより、自分達の方へ記憶が戻る事を朱里が思って帰りたいと言ってくれていればと願わずにはいられなかった。
ルーファスが雷属性で三つ子達も雷属性だった為、ハガネが教えるよりルーファスの方がこれに関しては説明しやすいものだったりする。
一応、基本はハガネが教えているのでルーファスが教えるのは雷属性の小手技で鍵を開けたり鉄を呼び寄せたりする物で、三つ子は錠前と小さなティースプーンを前に悪戦苦闘している。
「鍵開けは覚えておけ。何か不測の事態があった時に役に立つ」
「ふそく?」
キョトンとする三つ子に朱里が「不測っていうのはいきなり悪い事がおきた時の事だよ」と教えると三つ子が「ははえー」と朱里を見て目を輝かせる。尊敬の目である。
三つ子は朱里の状態を一応説明はされたがわからないので、「母上は体の調子が悪い」という説明で終わっている。
エルシオンが錠前を持ってきて朱里の手に渡す。
「ふそく。あけた、なおる?」
「開けられたの。偉いね。小さな魔法使いだね」
エルシオンの頭を撫でながら朱里がルーファスにエルシオンの開けた錠前を見ながら「凄いねぇ」とエルシオンに錠前を返すと、エルシオンは朱里の顔をキラキラした目で見ている。
朱里が不測の事態、悪い事が起きたのが錠前を開けた事で治ると思っているらしいが、朱里にはその意味は通じていないらしく、首を傾げてエルシオンを見つめ返す。
「エル、錠前開けではアカリは治らない。おいで」
「キュゥー・・・」
ぺしゃんと耳を下げてエルシオンがルーファスの所へ行くと「ひぃー・・・」と低く息を吸い込むような声を上げると「ひゃぁぁぁん」と泣き始め、釣られる様にティルナール達も「あーっ」と声を上げて泣き始める。
泣き声の大合唱に朱里がオロッと戸惑うと、ミルアとナルアがキッチンから戻ってきて三つ子達のお腹をくすぐり始める。
「ほら、泣き止むのですよ?」
「母上を困らせては駄目なのです」
「ミルア、ナルア、泣きたい時は泣かせておけ」
ルーファスが困った顔で止めるが2人は三つ子のお腹をワキワキとくすぐり、三つ子は逆に癇癪を起したように「ギィィィ」と金切り声をあげて朱里に抱きついてくる。
「もう!駄目って言ってますでしょ!」
「姉上達は怒りますよ?!」
「あの、大丈夫だから、ね?怒らないであげて」
朱里が三つ子を撫でながらミルアとナルアに「ね?」と言うと2人は「母上がそう言うなら」と少し口を尖らせながらまたキッチンへ戻っていく。
「アカリ、疲れてないか?大丈夫か?」
「平気だよ。私、一人っ子だから小さい子がいっぱい居るの憧れてたし、もうすぐお姉ちゃんになるから練習だよ」
「そうか・・・すまないな」
「ルーファスさんこそ大丈夫ですか?泣きそうだよ?疲れてるの?」
「いや、大丈夫だ・・・ああ、でも少しだけアカリに抱きしめて欲しいな」
「ふふっ、大きな子供みたい。いいですよー」
朱里が両手を広げるとルーファスが膝を折って朱里の胸に顔を埋めたまま朱里を抱きしめる。
あれ?抱きしめるというより、抱きしめられてないか?と、思いつつも朱里がルーファスの背中をポンポン叩きながら「良い子、良い子」と優しく声を掛ける。
しばらくすると、しがみ付いて泣いていた三つ子が静かに寝息を立て始めソファにコロンと横になってしまう。
寝付いた三つ子を見つめる朱里はいつもの母親の顔をしていて、小さく口元が微笑んでいる。
「アカリ、早くオレのところに帰って来てくれ」
「?私はここに居るよ?」
「ああ・・・これはオレの独り言だ。聞き流してくれ」
「んー、わかんないけど、私の心音は安心するって前言ってたでしょ?いっぱい聞いて良いよ?」
「・・・覚えているのか」
「あれ?んー、よくわかんないや」
少し首を傾げて楽しそうに笑う朱里に、リュエール達を妊娠したと解った時にしたやり取りが心音の話で、そんな些細な事を朱里が覚えている事に安堵と同時に少し寂しい気もしてしまう。
「あの時、アカリは胎動をお腹の消化する音だと言ってた」
「胎動・・・赤ちゃんの音だね?」
「オレはアカリのお腹に耳をつけてアカリの心音とリュエール達の胎動を聞いたのを覚えている」
「わかんないけど、私もね、お母さんのお腹に耳をあてて赤ちゃんの音聞いたんだよ。あとね、動いたのも分かったんだよ」
「ああ。赤ん坊が動くのを感じるのは感動するな」
「うん!あ、でも手とか足がお腹にハッキリ見えてお腹からバリって出てきそうな感じで・・・あれ?ルーファスさんと見てた気がする・・・なんでだろ?」
「うーん」と言いながら、朱里が「頭疲れちゃった」とルーファスの肩に顔を埋めて「帰りたいな・・・」と小さく呟いた。
親元と自分達家族の元、どちらに帰りたいのか、それを聞くには勇気が足りず、朱里の胸から顔を上げて「子供達に毛布を持ってくる」と言い残して部屋を出て行く。
きっと前者の元へ帰りたいと言っているのは判るのに、帰る事が出来ない場所を恋しがるより、自分達の方へ記憶が戻る事を朱里が思って帰りたいと言ってくれていればと願わずにはいられなかった。
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