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18章
記憶
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暮れに差し掛かった多忙な毎日が続く中でギルの屋敷でトリニア家の『女将』にして当主の嫁、朱里が「やったぁー!!!」と大声を上げて書類から顔を上げる。
手に持っているのは電子辞書で、以前ありすが朱里にお土産にとくれた物だった。
そして書類はケンジ・タナカが残した『時間移動』の機械に関する書類で、やたらと英語で書かれていた物だった。
この世界には平仮名やカタカナに漢字はあるが、ローマ字は無い。発音としてはあるが『字』としては無い為に異世界人が残した辞書を片手に中3レベルの英語で今まで必死に頑張っていた朱里の救世主がありすのお土産の電子辞書。
電子辞書のおかげで一応すべての翻訳が終わったのである。
「これで私の長年の苦労が終わったーーーー!!!!」
今まで技術部と言われている【刻狼亭】の機械いじりの好きな少し変人と呼ばれる人達に任せてはいたが、説明書の翻訳が進まない限りほとんど状態としては進んでいない状態だった。
苦節10年・・・翻訳に掛かったのである。
「長かった・・・本当に長かったよぅ~っ!!!」
ちなみにありすも手伝ってくれてはいたが、朱里と英語レベルは同じだった為に「日本語で書けやって話っしょ!」と、書類をパシーンと叩いていた。
ケンジの性格の悪さの滲み出た書類だったと言わざるを得ない。
書類をテーブルの上で一纏めにして風呂敷に包み込むと、子供達の手の届かない場所を求めて書斎の棚に大事に仕舞い込む。
まぁ、朱里の後ろをカルガモの雛の様に三つ子がついて歩いているが、要は三つ子が手を出せなければいいのである。
「ははえー、あそぼー」
「おえかきしるー」
「ルーもするー」
「お絵描きなら別の紙をあげるからコレは駄目です。コレに手を出されたら母上泣いちゃうし、父上にお尻を叩いてもらいますからね?」
三つ子は自分達のお尻に手をあてて首を横に振る。
何度か悪い事をしてルーファスにお尻を叩かれた事がある三つ子は流石にルーファスに怒られるのには懲りている。
いや、何度か叩かれた時点で懲りてはいないのかもしれない。
「それより、あなた達に母上からお願いがあります。実はオヤツがキッチンに隠されているのだけど、それを見つけてくれないかしら?」
「おやつ!」
「さがす!」
「ルーも!」
トテテテと軽い音を立てて三つ子が書斎を出ていき、よしよし。と朱里が頷いて隠し場所を変える為に風呂敷を持って別の場所へ移動した。
朱里が三つ子を見にキッチンへ行き、三人が床をジッと眺めている事に気付く。
「どうしたの?あなた達」
そして気付く、予備の調味料が置かれている戸棚が開き、瓶が横倒しになっている事に。
「あっ」
ツィーと足が滑った時にはキッチンの天井を見上げてゴチンと頭を打っていた。
オリーブオイル勿体ない・・・と、朱里が最後に思ったのはそんな事だった。
「・・・っ、あれ?頭がズキズキする・・・ってか、何かヌルヌルする?!」
ガバッと朱里が起き上がり、床のオリーブオイルでまた手が滑りズベシャッと横に倒れる。
「ぎゃいっ!ッッ!!痛ぁーい!」
脇腹を押さえながら薄暗いキッチンを見渡し、転ばない様にゆっくりと起き上がる。
広いキッチンに散乱した調味料と、オリーブオイルが広がる床。
「あれ?ここ何所だろ?」
頭を少し横に下げるが特に思い出せる事も無い。
そして「あっ、家に帰らなきゃ」と、それだけが頭にあった。
キッチンを出て廊下に出るとフカッとした床の絨毯に思わず、足が驚く。
「なにこれ、凄い・・・。それにしても、広い廊下・・・美術館・・・じゃないよねぇ?」
ふかふかした絨毯を歩いて大きな玄関のドアを開けて外に出ると、広がる庭に「え?」と、声を上げる。
手入れされた庭園にガラスハウスがあり、噴水もある。
木々の騒めきにビクッとしながらも風の冷たさに自分の腕を抱きながらブルッとして歩き出す。
自分の記憶の無い場所に不安を覚えながら、長い庭園を歩いてようやく門がある場所が見えて来る。
「どんだけ広いのよココ!」
そして何故自分はこんな場所に紛れ込んでいるのかが判らない。
早く帰りたい。家に帰って着替えないと、まずはお風呂に入ってベタベタのオリーブオイルをどうにか洗い落とさなきゃいけないと考え、髪までぐっしょりオイルで濡れている事に「うわぁ・・・」と声を漏らす。
ハァっと息を吐くと白く、季節は12月くらいだろうか?それとも1月ぐらい?と寒さに震えながら考える。
今が何月かすら分からない。
門を出て明るい場所を見つめると、街灯はなにやら薄ぼんやりとしている感じで、色もそんなに多くない。
背の高いビルは1つしか見当たらず、森に囲まれた様な場所に驚く。
騒がしいはずの街中の音もほとんどしない。車の音も一切聞こえないのは少し不気味だった。
「私、山奥にでも来ちゃったの?」
頭を過るのは誘拐事件。
どうしよう?うちは貧乏では無いけれど裕福でもない。
誘拐に思考が思い当たると早くこの場所から逃げて早く街に着いて人に助けを求めなければと、必死に走って街の明かりのある方へ駆け出した。
手に持っているのは電子辞書で、以前ありすが朱里にお土産にとくれた物だった。
そして書類はケンジ・タナカが残した『時間移動』の機械に関する書類で、やたらと英語で書かれていた物だった。
この世界には平仮名やカタカナに漢字はあるが、ローマ字は無い。発音としてはあるが『字』としては無い為に異世界人が残した辞書を片手に中3レベルの英語で今まで必死に頑張っていた朱里の救世主がありすのお土産の電子辞書。
電子辞書のおかげで一応すべての翻訳が終わったのである。
「これで私の長年の苦労が終わったーーーー!!!!」
今まで技術部と言われている【刻狼亭】の機械いじりの好きな少し変人と呼ばれる人達に任せてはいたが、説明書の翻訳が進まない限りほとんど状態としては進んでいない状態だった。
苦節10年・・・翻訳に掛かったのである。
「長かった・・・本当に長かったよぅ~っ!!!」
ちなみにありすも手伝ってくれてはいたが、朱里と英語レベルは同じだった為に「日本語で書けやって話っしょ!」と、書類をパシーンと叩いていた。
ケンジの性格の悪さの滲み出た書類だったと言わざるを得ない。
書類をテーブルの上で一纏めにして風呂敷に包み込むと、子供達の手の届かない場所を求めて書斎の棚に大事に仕舞い込む。
まぁ、朱里の後ろをカルガモの雛の様に三つ子がついて歩いているが、要は三つ子が手を出せなければいいのである。
「ははえー、あそぼー」
「おえかきしるー」
「ルーもするー」
「お絵描きなら別の紙をあげるからコレは駄目です。コレに手を出されたら母上泣いちゃうし、父上にお尻を叩いてもらいますからね?」
三つ子は自分達のお尻に手をあてて首を横に振る。
何度か悪い事をしてルーファスにお尻を叩かれた事がある三つ子は流石にルーファスに怒られるのには懲りている。
いや、何度か叩かれた時点で懲りてはいないのかもしれない。
「それより、あなた達に母上からお願いがあります。実はオヤツがキッチンに隠されているのだけど、それを見つけてくれないかしら?」
「おやつ!」
「さがす!」
「ルーも!」
トテテテと軽い音を立てて三つ子が書斎を出ていき、よしよし。と朱里が頷いて隠し場所を変える為に風呂敷を持って別の場所へ移動した。
朱里が三つ子を見にキッチンへ行き、三人が床をジッと眺めている事に気付く。
「どうしたの?あなた達」
そして気付く、予備の調味料が置かれている戸棚が開き、瓶が横倒しになっている事に。
「あっ」
ツィーと足が滑った時にはキッチンの天井を見上げてゴチンと頭を打っていた。
オリーブオイル勿体ない・・・と、朱里が最後に思ったのはそんな事だった。
「・・・っ、あれ?頭がズキズキする・・・ってか、何かヌルヌルする?!」
ガバッと朱里が起き上がり、床のオリーブオイルでまた手が滑りズベシャッと横に倒れる。
「ぎゃいっ!ッッ!!痛ぁーい!」
脇腹を押さえながら薄暗いキッチンを見渡し、転ばない様にゆっくりと起き上がる。
広いキッチンに散乱した調味料と、オリーブオイルが広がる床。
「あれ?ここ何所だろ?」
頭を少し横に下げるが特に思い出せる事も無い。
そして「あっ、家に帰らなきゃ」と、それだけが頭にあった。
キッチンを出て廊下に出るとフカッとした床の絨毯に思わず、足が驚く。
「なにこれ、凄い・・・。それにしても、広い廊下・・・美術館・・・じゃないよねぇ?」
ふかふかした絨毯を歩いて大きな玄関のドアを開けて外に出ると、広がる庭に「え?」と、声を上げる。
手入れされた庭園にガラスハウスがあり、噴水もある。
木々の騒めきにビクッとしながらも風の冷たさに自分の腕を抱きながらブルッとして歩き出す。
自分の記憶の無い場所に不安を覚えながら、長い庭園を歩いてようやく門がある場所が見えて来る。
「どんだけ広いのよココ!」
そして何故自分はこんな場所に紛れ込んでいるのかが判らない。
早く帰りたい。家に帰って着替えないと、まずはお風呂に入ってベタベタのオリーブオイルをどうにか洗い落とさなきゃいけないと考え、髪までぐっしょりオイルで濡れている事に「うわぁ・・・」と声を漏らす。
ハァっと息を吐くと白く、季節は12月くらいだろうか?それとも1月ぐらい?と寒さに震えながら考える。
今が何月かすら分からない。
門を出て明るい場所を見つめると、街灯はなにやら薄ぼんやりとしている感じで、色もそんなに多くない。
背の高いビルは1つしか見当たらず、森に囲まれた様な場所に驚く。
騒がしいはずの街中の音もほとんどしない。車の音も一切聞こえないのは少し不気味だった。
「私、山奥にでも来ちゃったの?」
頭を過るのは誘拐事件。
どうしよう?うちは貧乏では無いけれど裕福でもない。
誘拐に思考が思い当たると早くこの場所から逃げて早く街に着いて人に助けを求めなければと、必死に走って街の明かりのある方へ駆け出した。
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