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17章
氷竜と樽酒を2
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「やはり田舎の小島出身は礼儀がなっていませんわね!」
「そうですわ!田舎の温泉島出身はやはり田舎者ですわね!」
「ただの観光地ごとき田舎者はさっさと田舎に帰るといいのですわ!」
口々に田舎者扱いを受けて朱里もムッとして口を開く。
「礼儀知らずはどっちでしょうね?目上の者に対する礼儀は田舎者でも知っていますよ?あなた達はそれ以下なのでは?」
ギロッと朱里が睨むとお嬢様達も朱里を睨みつける。
バチバチと小さな火花が走ったところで「控えなさい、この無礼者共!」とミルアが朱里の元へ駆けつけて来る。
「母上、何ですか?この無礼な方々は」
「いきなり話し掛けてきて、田舎者呼ばわりされちゃったわ」
「まぁ、母上。悪意は自分が言われて嫌だと思った事を人にぶつける物ですから、この方々『田舎者』なのでしょうね」
バサッと扇子を出してミルアが「嫌ですわね。徒党を組まないと物も言えない田舎者は」と挑発する様に笑う。
「なんですって!」
「ユーリ様、冷静になって下さいませ」
「私達誤解があるようですわ」
取り巻き達は既に勘違いに気付きユーリと呼ばれたお嬢様に引くよう言うが、ミルアが既に臨戦態勢でやり合うつもりらしく「あらあら、謝罪がまだでしてよ?」とニッコリ笑う。
「ミルア、それくらいになさい。あなた方、私達が温泉大陸から来たと何故知っていたのですか?私はそこが一番気になります」
朱里も何か誤解があった事は取り巻きの言葉からわかったので、ミルアを止めに入り肝心な事を聞く。
あるとすれば、この予約した『フルール・フレー』が怪しいわけで、客の情報を漏らしていたとすれば、そこはキチンとさせておかなくてはいけない。
「先程のオリオン殿下の花嫁選びに、この『フルール・フレー』を訪れた者は名前も出身地も明白になっている事を知りませんの?」
「はい?」
「何ですの?その頭の悪そうな話、情報漏洩ですわ!パンフレットには載っておりませんでしたわよ?」
朱里とミルアが同じ顔をして眉間にしわを寄せると、お嬢様方も2人の表情に「え?」という怪訝な顔をする。
「毎年この時期には花嫁選びに王家の方やご親戚の方がここに訪れて、意中の方に『チョコレート』を持って求愛し、受け取られると結婚するのですわよ?まさか知らないなんて白々しいのではなくて?」
ユーリお嬢様も眉間にしわを寄せるが、朱里とミルアは渋い顔をして首を横に振る。
「わたくし達はスイーツバイキングに来ただけですもの。第一、母上には父上が居ますのよ?しかも小さな弟たちまで連れて花嫁に選ばれたいなんて誰が思うのです?」
コクコクと朱里もミルアの言葉に頷き、ユーリお嬢様達は益々困惑した顔でお互いを見つめ合う。
「もぅ、姉上~わたくし1人じゃティル達を面倒見切れませんのよー」
「あら、ナルちゃんごめんなさいですの」
ナルアがティル達を連れて戻ってくると、ユーリお嬢様達を見て「何ですの?この人達」と少し迷惑そうな顔をして席に着く。
「説明なさいませ。1から10まで全部!!」
ユーリお嬢様達の誤解が解けると直ぐさまミルアが『フルール・フレー』の店員に詰め寄る。
客商売をしている者として朱里もそこは詰め寄り、予約した客の情報を王族であろうと漏らした上に他の客にまで漏らす必要性等を問い詰めていった。
この王家の花嫁選びは200年以上前から続いているもので、この地域では有名な話らしい。
しかし、パンフレットにもそんな事は書かれていない上に、やはり観光客の情報を流しているのは悪質だと滾々と説教をしてくる朱里達に店の方も「伝統の様なものでして・・・」とのらりくらりとする為に「なら情報としてマスカン地区の『フルール・フレー』は王族の花嫁選びで有名って知れ渡っても良いんですよね?」と言った後、「まぁ噂程度なら」とこれまた、のらりくらりというので、腕輪を使って小鬼に情報を流させた。
きっと目の色を変えたお嬢様達がこぞって来ることだろう。
「スイーツはバイキングで楽しむ物ではありませんわね。やはり1つ1つ吟味して選んで食べるのがおつですわ!」
「レストランに行ってデザートでも食べましょう!こんな情報漏洩する様な店最低です!」
ミルアと朱里がプリプリ怒りながら三つ子を連れて出て行き、ナルアは「あらあら~お騒がせしましたの」とスカートを摘まんでカーテシーをしてから出て行く。
レストランで普通に食事をしてデザートのコッチルックを口にした瞬間に2人は怒りを忘れていた。
ビスケットに樽酒を染み込ませた物にカスタードプリンと生チーズクリームとホイップが乗ったケーキの様なプリンの様な絶妙の味わいはまさしく『大人味』でアルコール成分はすでに無く甘さだけが残った味わいのある物だった。
「はふぅー。これは美味しいですわね」
「これ、私好きです」
「お2人の機嫌が直って良かったですの」
ナルアだけが母親と姉を見つめて「意外と気が強いのですわ」と小さく溜め息を漏らす。
三つ子達はデザートバイキングに心残りはあった物のレストランでメニューを見ている間に記憶からポンッと抜けた事だろう。
帰りにお土産屋により樽酒の入ったチョコレートを買いながら「そういえば、あれは求愛されていたのかな?」と今更気付いて朱里が「私もまだまだ捨てた物じゃないのかな?でもルーファスが一番だから無理なのよね~」と心の中で惚気ながら、従業員のお土産は樽酒チョコレートよね~と大量購入をした。
「そうですわ!田舎の温泉島出身はやはり田舎者ですわね!」
「ただの観光地ごとき田舎者はさっさと田舎に帰るといいのですわ!」
口々に田舎者扱いを受けて朱里もムッとして口を開く。
「礼儀知らずはどっちでしょうね?目上の者に対する礼儀は田舎者でも知っていますよ?あなた達はそれ以下なのでは?」
ギロッと朱里が睨むとお嬢様達も朱里を睨みつける。
バチバチと小さな火花が走ったところで「控えなさい、この無礼者共!」とミルアが朱里の元へ駆けつけて来る。
「母上、何ですか?この無礼な方々は」
「いきなり話し掛けてきて、田舎者呼ばわりされちゃったわ」
「まぁ、母上。悪意は自分が言われて嫌だと思った事を人にぶつける物ですから、この方々『田舎者』なのでしょうね」
バサッと扇子を出してミルアが「嫌ですわね。徒党を組まないと物も言えない田舎者は」と挑発する様に笑う。
「なんですって!」
「ユーリ様、冷静になって下さいませ」
「私達誤解があるようですわ」
取り巻き達は既に勘違いに気付きユーリと呼ばれたお嬢様に引くよう言うが、ミルアが既に臨戦態勢でやり合うつもりらしく「あらあら、謝罪がまだでしてよ?」とニッコリ笑う。
「ミルア、それくらいになさい。あなた方、私達が温泉大陸から来たと何故知っていたのですか?私はそこが一番気になります」
朱里も何か誤解があった事は取り巻きの言葉からわかったので、ミルアを止めに入り肝心な事を聞く。
あるとすれば、この予約した『フルール・フレー』が怪しいわけで、客の情報を漏らしていたとすれば、そこはキチンとさせておかなくてはいけない。
「先程のオリオン殿下の花嫁選びに、この『フルール・フレー』を訪れた者は名前も出身地も明白になっている事を知りませんの?」
「はい?」
「何ですの?その頭の悪そうな話、情報漏洩ですわ!パンフレットには載っておりませんでしたわよ?」
朱里とミルアが同じ顔をして眉間にしわを寄せると、お嬢様方も2人の表情に「え?」という怪訝な顔をする。
「毎年この時期には花嫁選びに王家の方やご親戚の方がここに訪れて、意中の方に『チョコレート』を持って求愛し、受け取られると結婚するのですわよ?まさか知らないなんて白々しいのではなくて?」
ユーリお嬢様も眉間にしわを寄せるが、朱里とミルアは渋い顔をして首を横に振る。
「わたくし達はスイーツバイキングに来ただけですもの。第一、母上には父上が居ますのよ?しかも小さな弟たちまで連れて花嫁に選ばれたいなんて誰が思うのです?」
コクコクと朱里もミルアの言葉に頷き、ユーリお嬢様達は益々困惑した顔でお互いを見つめ合う。
「もぅ、姉上~わたくし1人じゃティル達を面倒見切れませんのよー」
「あら、ナルちゃんごめんなさいですの」
ナルアがティル達を連れて戻ってくると、ユーリお嬢様達を見て「何ですの?この人達」と少し迷惑そうな顔をして席に着く。
「説明なさいませ。1から10まで全部!!」
ユーリお嬢様達の誤解が解けると直ぐさまミルアが『フルール・フレー』の店員に詰め寄る。
客商売をしている者として朱里もそこは詰め寄り、予約した客の情報を王族であろうと漏らした上に他の客にまで漏らす必要性等を問い詰めていった。
この王家の花嫁選びは200年以上前から続いているもので、この地域では有名な話らしい。
しかし、パンフレットにもそんな事は書かれていない上に、やはり観光客の情報を流しているのは悪質だと滾々と説教をしてくる朱里達に店の方も「伝統の様なものでして・・・」とのらりくらりとする為に「なら情報としてマスカン地区の『フルール・フレー』は王族の花嫁選びで有名って知れ渡っても良いんですよね?」と言った後、「まぁ噂程度なら」とこれまた、のらりくらりというので、腕輪を使って小鬼に情報を流させた。
きっと目の色を変えたお嬢様達がこぞって来ることだろう。
「スイーツはバイキングで楽しむ物ではありませんわね。やはり1つ1つ吟味して選んで食べるのがおつですわ!」
「レストランに行ってデザートでも食べましょう!こんな情報漏洩する様な店最低です!」
ミルアと朱里がプリプリ怒りながら三つ子を連れて出て行き、ナルアは「あらあら~お騒がせしましたの」とスカートを摘まんでカーテシーをしてから出て行く。
レストランで普通に食事をしてデザートのコッチルックを口にした瞬間に2人は怒りを忘れていた。
ビスケットに樽酒を染み込ませた物にカスタードプリンと生チーズクリームとホイップが乗ったケーキの様なプリンの様な絶妙の味わいはまさしく『大人味』でアルコール成分はすでに無く甘さだけが残った味わいのある物だった。
「はふぅー。これは美味しいですわね」
「これ、私好きです」
「お2人の機嫌が直って良かったですの」
ナルアだけが母親と姉を見つめて「意外と気が強いのですわ」と小さく溜め息を漏らす。
三つ子達はデザートバイキングに心残りはあった物のレストランでメニューを見ている間に記憶からポンッと抜けた事だろう。
帰りにお土産屋により樽酒の入ったチョコレートを買いながら「そういえば、あれは求愛されていたのかな?」と今更気付いて朱里が「私もまだまだ捨てた物じゃないのかな?でもルーファスが一番だから無理なのよね~」と心の中で惚気ながら、従業員のお土産は樽酒チョコレートよね~と大量購入をした。
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