黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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17章

氷竜と氷の城3

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「アカリ、流石にこれは駄目だ」
「でも部屋自体は寒くないんだよ?」
 部屋に置いた荷物を手に持つともう片方の手で朱里の腰を抱えてルーファスは「変な意地を張るな」と少し怒りながら歩き、後ろにふわふわ飛んでいる雪の妖精達はオロオロとどうすればいいのか困惑気味にルーファスの周りをウロついてピリッとくる静電気の様な雷魔法を当てられて、ビクビクと距離をとっていく。
ちなみに、この雷魔法は腕に抱えられた朱里にもバッチリと効いたが、静電気程度なので大人しく涙目になるだけに留まった。

 ルーファスの部屋には三つ子が雪の妖精を手にびぃびぃ泣いていて、ルーファスと朱里を見ると走ってしがみ付いてきた。
見知らぬ所に来て親と離れれば不安で泣くというもので、ルーファスから手を離して下ろしてもらうと三つ子に手を広げるとそのまま3人の勢いに押し倒されて「4歳児強い・・・」と、朱里が手を上げて降参ポーズをとりルーファスに起き上がらせてもらった。

「ほら、お前達も何時までも泣くな。目が零れ落ちるぞ」
 ぐしゅー・・・っと鼻水をかませながらルーファスと朱里が3人の顔を拭いていく。
顔を拭き終わると、泣いたカラスが何とやらで3人は二パッと笑顔で尻尾を振っている。
3人は自分達のリュックサックを漁るとそれぞれ小さな本を持ってやってきて「あい!」と朱里に手渡していく。

「あら、読んで欲しいの?でもまだお風呂に入ってないから寝る前に読もうね?」
「やーっ、あい!」
「あい!」
「あい!」
「仕方がないな。1度読んでやらないと聞かん気だぞ」
「じゃあ、母上と父上、どっちに読んで欲しいかなー?」
「「「ははえー」」」
「・・・お前達、オレを一人ぐらい選ぶものだろ・・・」

 ルーファスが複雑そうな顔をして部屋にビクビクしながら付いてきた雪の妖精と元からこの部屋にいる雪の妖精にお茶を用意するように言い、床に敷いてある白い毛皮の敷物の上にクッションを置いて朱里を座らせると三つ子は朱里の前で座って絵本が読まれるのを待つ。

「じゃあ、ティルの『くろねこさんのしろいくつしたのふしぎ』から読むよ~」

 朱里の絵本読みが始まり、朱里が絵本を読みながら手振り身振りで3人に聞かせていく。
たまに「にゃーお」と猫の声真似をしながら遊びも入れて3人を話の中に引き込んで行くと、気付けば雪の妖精達も絵本を読む朱里の周りに座ったり肩に座り聞いて、三つ子の様に驚いたり笑ったりしている。

「はい。お終い・・・次はどれにしようか?」

 朱里が1冊目を読み終わると、雪の妖精達がティルナールの絵本をまた読んで欲しいと指をさす。
子供達を見れば、尻尾を振っているのでアンコールの様である。

「じゃあ、もう一度読もっか」

 パチパチパチと雪の妖精が手を叩くと、部屋から妖精達が出て行き朱里が首を傾げると他の部屋の雪の妖精達を連れて戻り、朱里にお茶を淹れて三つ子とルーファスにもクッキーを渡し、自分達もクッキーを1枚ずつ持って朱里の周りに座る。

「大昔の紙芝居みたい・・・ふふっ。ではでは、皆さんいいですかー?読みますよー」

 朱里がもう一度読み始め、雪の妖精達が朱里が「にゃーお」と言いながら両手で覆いかぶさる様な身振りをすると、「ぉぉぉ」と言いながら子供達と一緒に抱き合って絵本の世界に引き込まれて楽しんでいる。
そんな様子をルーファスが口元だけ笑って見つめながら、1人だけ毛色の違う雪の妖精を見つけて片眉を上げながらジッと目で観察する。

 毛色の違う雪の妖精は他の妖精より少し色が濃く、顔立ちもほんわりした他の雪の妖精に比べてキツい感じで紛れてしまえば分かりづらいが、それでも注意深く見れば全然違う物だと解る。
たまに小さく手を動かしては、聞こえるか聞こえない程度のカコンという音が耳に届く。

「そこで大きな洞窟に黒猫さんは入ったのです!洞窟の中は真っ暗!ビュービュー風が中から吹いてきます!」

 朱里が声のトーンを落として少し脅しつける様に話すと雪の妖精達は「キャッ」と声を上げながら朱里が意地の悪そうな顔をするのを見てプルプル震えて固まる。
集中している彼等に気付かれない様にルーファスは毛色の違う雪の妖精を結界に閉じ込めて捕まえてソッと部屋を出て行く。

 部屋を出ると結界を解いて毛色の違う雪の妖精を出すと、ルーファスの予想通りヴァレリーがムッとした顔で姿を現す。

「何をするのじゃ!」
「こちらの台詞だ。人の番に何をしている」
「わらわは何もしておらん!」
 フンッと横を向くヴァレリーにルーファスが手の平の上で雷をバチバチと球体にして出すとヴァレリーがビクッと肩を揺らす。

「アカリに氷魔法で攻撃をしていただろう?アカリには魔法は直接は効かないから弾かれていた様だが」
「わらわは・・・っ、ハァ・・・。バレているなら仕方がないのぅ。わらわとてしたくてしているわけでは無い」
「何だそれは?脅されているとでもいうのか?」
「違う。わらわはどうしてこんな気持ちになるのか分からん!自分では抑えが利かんのじゃ!」
「・・・嫉妬か」
 嫉妬と言う言葉にしっくりきたが、認めるのも悔しい気がしてヴァレリーは眉間にしわを寄せる。

「わらわはあの女が好かん!グリムレインも何故わらわの所へあんな女を連れて来たのじゃ!」
「お前を紹介したかったのだろうさ。しかし、当のお前がアカリに魔法で攻撃をしていると知ればグリムレインに嫌われるのはお前も分かっているだろう?オレは既にお前には怒りしかないが、アカリが手を出すなと言うからココまでしかしないが、次に攻撃したら砕くぞ?」

 悲痛な声を出すヴァレリーにルーファスは難儀なものだと少し思いつつも部屋に戻ろうと後ろを振り返ると困惑した顔でグリムレインが立っていた。
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