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17章
氷竜と氷の城2
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氷の城の中は温かく普通の部屋の中と変わらない。
朱里は城の中を歩きながらミルアの部屋をノックするとミルアが直ぐに出て来る。
雪の妖精達に可愛く髪の毛をまとめてもらったのか髪の毛がアップされて氷の飾りを着けられていた。
「母上どうかしたのですか?」
朱里の服装を見てミルアが首を傾げると朱里が『眠りの賛華』をミルアの前に出す。
「ミルア、これに火の魔法を入れて欲しいの」
「・・・もしかしてヴァレリー様に何かされたのですか?」
「あら、判る?」
「まぁ、あれだけ敵視されていればわかりますわ」
「なら話が早いです。なるべく使わなくて良いならそれに越したことは無いんだけどね。念には念といきたいですからね」
「わたくし達は母上の味方ですから」
ミルアがニコッと笑って朱里も同じ様に笑うと髪型以外はよく似た2人はふふっと笑って口元に手を当てる。
この後ナルアも呼んで3人で作戦会議とばかりに話し合いをした。
__つるん。
宴の準備が出来たと呼ばれて大広間に行けば、朱里の歩いていた場所だけがよく滑った。
「のぁっ!!」
朱里がわたわたと手を動かしながら、何とか杖を使って踏みとどまるとヴァレリーと目が合う。
くすくすと笑い声が聞こえそうな口元に朱里がムッと眉を上げる。
「大丈夫か?アカリ」
「平気平気。あっ、アレは何かな?」
ルーファスに手を引かれながら朱里は大広間の窓の外を指さして、全員が窓の外を見上げた瞬間に『眠りの賛華』を振ってヴァレリーの周りに火魔法で熱魔法を出して威嚇する。
「何かあったか?」
「あら父上見逃しましたの?キラッて何か光りましたわ」
「何でしたのでしょうね?凄くキラキラしてましたのに」
朱里の嘘をミルアとナルアが誤魔化し、ルーファスは少し首を捻りながら「ふむ」と窓の外を見つつ、朱里に「さぁ座りましょう」と手を引かれて用意された席に座る。
宴が始まると雪の妖精達が踊りながら給仕をしていく。
それは可愛らしい物で目を楽しませながらの給仕なので皆の目は雪の妖精に行くが、朱里だけはそういう訳にもいかなかった。
カロンカロンと氷の音がしてグラスの中には四角い氷の中に飲み物が入れられている。
周りを見ればそうされているのは朱里だけなので大人しく熱魔法で溶かして水で薄まった飲み物にする。
他の料理もロールキャベツの様な料理にフォークを入れたらジャリッと中だけがシャーベット状と、チマチマした嫌がらせをされている。
熱魔法で温めながら食事をしつつ、隙を見てはヴァレリーのグラスの中の酒を沸騰させたりと地味な反撃はしている。
「それにしても嫁は何でそんな冒険者の服なんだ?」
「冒険者服は熱も寒さも通しにくいからこっちの方が動きやすいの。色々とね」
「この城は人族もおるから温かい筈なんだがの。嫁にはちと寒いのか」
「ふふっ。気にしないで。折角、元妻のヴァレリーさんの所に来たんだから」
「うむ。嫁にもこの城を見せたくての。お楽しみはまぁ夜遅くだ。楽しみにしておれよ」
嬉しそうに言うグリムレインに朱里もうんうんと頷いて笑顔で返す。
朱里としてはグリムレインの厚意で連れて来てもらった場所なのでヴァレリーと自分の醜い争いは隠したまま楽しく過ごしてもらいたい所だったりする。
「そういえば、元妻とは言うが、どういう意味での『元』なんだ?」
ルーファスが何となく気になった事を口にし、朱里達もそれは気になっていたのでグリムレインとヴァレリーの方へ目線を向ける。
「ヴァレリーは四季を司る女王。四季が変わる度に一度消えて生まれる精霊に近いが精霊ではない。我が今の我になる2回程前の卵孵りで番だった事がある。お互いに卵に孵る前と消える時に出会ったからの、番であった時間は1日も無いが、だからこそ『夫と妻』に拘った」
グリムレインとヴァレリーは少し目線を合わせて口元だけ笑い「お互い若かったのぅ」と声を合わせる。
「今は何とも思っていませんの?」
「卵に孵れば番の縁も切れるからの、あの時の感情は無いな。冬の間は居心地のいい場所の1つではあるな」
「ヴァレリー様もそうですの?」
「わらわも四季ごとに生まれ変わるからの、番などあの時限りだの・・・まぁ冬のわらわには相性が良いから心地よい相手じゃな。それ以外の感情は無いのう」
そんな事を言いつつも朱里に対する嫌がらせは何なのか?と、ミルアとナルアは思う物のヴァレリー達の話を顔に笑顔を張り付けたまま聞いている朱里の表情からは伺い知ることは出来ない。
宴が終わり、それぞれの部屋に案内されてまた部屋に戻る時にルーファスが朱里を引き留める。
「アカリ、何かあったのか?」
「んーっ、秘密です」
「アカリ・・・さっきからヴァレリーとやり合っているのは見ていたが、オレが話をつけるか?」
「駄目です。これは女同士の戦いですよ?野暮ってものです」
「しかし、アカリそうは言っても心配なんだが?」
「でもやり合って分かったんですけど、子供の喧嘩と同じなんです。だから実害はほぼ無いんですよ?」
「それでも自分の番が害されていて気にしない奴は居ないだろ?それにグリムレインの元妻とやり合っているのがモヤっとするんだが?」
「ならルーファスも過去の女性を私に紹介してみます?ふふっ、冗談です。でも明日には出発してしまうのだし大丈夫ですよ?」
ルーファスが眉を下げて溜め息を吐くとそのまま朱里の後をついていく。
朱里の部屋にまでついて行くと部屋の狭さと簡素さに「独房か?」と声を漏らす。朱里もそれに関しては同意見だったので「ですよねー」という目で乾いた笑う。
朱里は城の中を歩きながらミルアの部屋をノックするとミルアが直ぐに出て来る。
雪の妖精達に可愛く髪の毛をまとめてもらったのか髪の毛がアップされて氷の飾りを着けられていた。
「母上どうかしたのですか?」
朱里の服装を見てミルアが首を傾げると朱里が『眠りの賛華』をミルアの前に出す。
「ミルア、これに火の魔法を入れて欲しいの」
「・・・もしかしてヴァレリー様に何かされたのですか?」
「あら、判る?」
「まぁ、あれだけ敵視されていればわかりますわ」
「なら話が早いです。なるべく使わなくて良いならそれに越したことは無いんだけどね。念には念といきたいですからね」
「わたくし達は母上の味方ですから」
ミルアがニコッと笑って朱里も同じ様に笑うと髪型以外はよく似た2人はふふっと笑って口元に手を当てる。
この後ナルアも呼んで3人で作戦会議とばかりに話し合いをした。
__つるん。
宴の準備が出来たと呼ばれて大広間に行けば、朱里の歩いていた場所だけがよく滑った。
「のぁっ!!」
朱里がわたわたと手を動かしながら、何とか杖を使って踏みとどまるとヴァレリーと目が合う。
くすくすと笑い声が聞こえそうな口元に朱里がムッと眉を上げる。
「大丈夫か?アカリ」
「平気平気。あっ、アレは何かな?」
ルーファスに手を引かれながら朱里は大広間の窓の外を指さして、全員が窓の外を見上げた瞬間に『眠りの賛華』を振ってヴァレリーの周りに火魔法で熱魔法を出して威嚇する。
「何かあったか?」
「あら父上見逃しましたの?キラッて何か光りましたわ」
「何でしたのでしょうね?凄くキラキラしてましたのに」
朱里の嘘をミルアとナルアが誤魔化し、ルーファスは少し首を捻りながら「ふむ」と窓の外を見つつ、朱里に「さぁ座りましょう」と手を引かれて用意された席に座る。
宴が始まると雪の妖精達が踊りながら給仕をしていく。
それは可愛らしい物で目を楽しませながらの給仕なので皆の目は雪の妖精に行くが、朱里だけはそういう訳にもいかなかった。
カロンカロンと氷の音がしてグラスの中には四角い氷の中に飲み物が入れられている。
周りを見ればそうされているのは朱里だけなので大人しく熱魔法で溶かして水で薄まった飲み物にする。
他の料理もロールキャベツの様な料理にフォークを入れたらジャリッと中だけがシャーベット状と、チマチマした嫌がらせをされている。
熱魔法で温めながら食事をしつつ、隙を見てはヴァレリーのグラスの中の酒を沸騰させたりと地味な反撃はしている。
「それにしても嫁は何でそんな冒険者の服なんだ?」
「冒険者服は熱も寒さも通しにくいからこっちの方が動きやすいの。色々とね」
「この城は人族もおるから温かい筈なんだがの。嫁にはちと寒いのか」
「ふふっ。気にしないで。折角、元妻のヴァレリーさんの所に来たんだから」
「うむ。嫁にもこの城を見せたくての。お楽しみはまぁ夜遅くだ。楽しみにしておれよ」
嬉しそうに言うグリムレインに朱里もうんうんと頷いて笑顔で返す。
朱里としてはグリムレインの厚意で連れて来てもらった場所なのでヴァレリーと自分の醜い争いは隠したまま楽しく過ごしてもらいたい所だったりする。
「そういえば、元妻とは言うが、どういう意味での『元』なんだ?」
ルーファスが何となく気になった事を口にし、朱里達もそれは気になっていたのでグリムレインとヴァレリーの方へ目線を向ける。
「ヴァレリーは四季を司る女王。四季が変わる度に一度消えて生まれる精霊に近いが精霊ではない。我が今の我になる2回程前の卵孵りで番だった事がある。お互いに卵に孵る前と消える時に出会ったからの、番であった時間は1日も無いが、だからこそ『夫と妻』に拘った」
グリムレインとヴァレリーは少し目線を合わせて口元だけ笑い「お互い若かったのぅ」と声を合わせる。
「今は何とも思っていませんの?」
「卵に孵れば番の縁も切れるからの、あの時の感情は無いな。冬の間は居心地のいい場所の1つではあるな」
「ヴァレリー様もそうですの?」
「わらわも四季ごとに生まれ変わるからの、番などあの時限りだの・・・まぁ冬のわらわには相性が良いから心地よい相手じゃな。それ以外の感情は無いのう」
そんな事を言いつつも朱里に対する嫌がらせは何なのか?と、ミルアとナルアは思う物のヴァレリー達の話を顔に笑顔を張り付けたまま聞いている朱里の表情からは伺い知ることは出来ない。
宴が終わり、それぞれの部屋に案内されてまた部屋に戻る時にルーファスが朱里を引き留める。
「アカリ、何かあったのか?」
「んーっ、秘密です」
「アカリ・・・さっきからヴァレリーとやり合っているのは見ていたが、オレが話をつけるか?」
「駄目です。これは女同士の戦いですよ?野暮ってものです」
「しかし、アカリそうは言っても心配なんだが?」
「でもやり合って分かったんですけど、子供の喧嘩と同じなんです。だから実害はほぼ無いんですよ?」
「それでも自分の番が害されていて気にしない奴は居ないだろ?それにグリムレインの元妻とやり合っているのがモヤっとするんだが?」
「ならルーファスも過去の女性を私に紹介してみます?ふふっ、冗談です。でも明日には出発してしまうのだし大丈夫ですよ?」
ルーファスが眉を下げて溜め息を吐くとそのまま朱里の後をついていく。
朱里の部屋にまでついて行くと部屋の狭さと簡素さに「独房か?」と声を漏らす。朱里もそれに関しては同意見だったので「ですよねー」という目で乾いた笑う。
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