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16章
聖堂
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【刻狼亭】に港からの荷物が届き、製薬部隊が荷物を受け取ると大忙しで製薬室へ戻って行った。
『熱病』の薬を大量に作る為に外に行っていた2人も戻り、5人での製薬作業が開始された。
「マグノリア室長が生き生きとしてますね」
「製薬部隊は薬作ってる時が一番輝いてるからな」
従業員達が製薬部隊の様子を見てそう言いながら、製薬部隊への差し入れはどうしようか?と相談し合って陰ながら応援をしている。
シュテンが荷物のチェックをする前に製薬部隊に荷物を持って行かれたので荷物をチェックしに製薬室へ行くと既に荷物は解かれ、薬草の匂いが充満する部屋で鼻を摘まむことになる。
「テッチ!換気はしろと言ってあるだろ!」
「すいません!でもそんなのしてる時間も無いんですよ!シュテンさん換気お願いします!」
ぐっとこらえて窓際の換気扇を回し、シュテンは解かれた荷物の個数を調べ「次に荷物を先に持って行ったら燃やすからな!」と言って鼻を摘まんだまま出て行く。
「これが納品書の確認書になる。あとは・・・おい、何をしている?」
シュテンが妹2人が縛り上げている黄緑色の髪の男を見れば、見た事のある顔に【風雷商】の息子かと胡散臭い物を見る目を向ける。
「すいません。納品確認ありがとうございます!ロケルト坊ちゃん行きますよ!」
「ここの従業員は皆可愛い子揃いでいいよね」
懲りないロケルトにヒリングが肩を落として引きずりながら確認書を手に料亭を出て行く。
「お塩をまく?」
「岩塩投げる?」
「一応、付き合いのある業者だから止めておけ」
タマホメとメビナが舌を出してロケルトとヒリングを見送り、ティルナールを連れて戻ったルーファスに仕方がない奴らだなと執務室の方へ戻っていく。
執務室ではリュエール以外の子供達が集まっている。
キリンとフィリアは水分補給とばかりに梅ジュースを一気飲みして「暑かったねー」とお互いに口にしてソファで並んで座っている。
「あっ、父上!あの人は何なのです!」
「追い出してくださいまし!」
「ミルア、ナルア、あれは【風雷商】の運び屋だ。今回の『熱病』対策に製薬部隊が注文した薬草を届けに来た。次の仕事があるだろうから、直ぐに出て行くだろう」
ミルアとナルアに腰にしがみ付かれてルーファスはティルナールを下ろすと2人の頭を撫でながら「ワガママばかり言うな」と苦笑いしながら諭す。
2人は少し異性に対し過剰反応気味なのが最近少し目立っている。
家族と知り合い以外には威嚇してしまうのはトラブルの元にもなるので注意をしなくてはいけないと心配もしている。
「そういえばさー、今回の熱病っていわば病気でしょ?」
「ああ、そうだな」
シュトラールがフィリアが座っているソファの後ろからフィリアを抱きしめながら思っている事を口にする。
「あのさ、今更なんだけど【聖堂】でどうにかなったんじゃないのかなって思うんだよね」
「・・・そうか、リリスの【聖堂】を忘れていたな」
ありすの娘リリスが持っている【聖堂】という特殊能力は朱里やありす同様に病気の治療も可能にする範囲魔法。
子供の頃は3メートル程の範囲魔法だったが、今では【聖堂】発動時の鐘の音が響く範囲まで拡大しているので、おそらく温泉大陸の四分の一は効果範囲になる。
イルマールとの結婚でイルマールも【聖堂】が使えるであろうから夫婦2人で【聖堂】を発動してもらえば朱里がジュースやお茶を作って配るより早かったかもしれない。
そして忘れていたが、ありすもこの温泉大陸に居るのでありすの体の【聖女】効果で広範囲にわたり病気は近付けない。
「もう温泉大陸の住民に配り終えた後だな・・・」
「だよねー。オレも思い出したのがさっきで・・・」
ルーファスとシュトラールがお互い似たような顔で「アカリには内緒にしておかないとな」「母上が聞いたら、私の時間が無駄にぃって叫びそう」と苦笑いする。
「温泉大陸に流行り病の報告が出ていない事にもう少し目を向けて考えていれば良かったな」
「近すぎて忘れちゃうことってあるよねー」
すでに後の祭り状態ではあるが、朱里の製薬室籠りを考えると少しだけ可哀想な気もしてしまう。
ちなみにありす自身もコロッと忘れて家に引き籠っていたり、リリスもイルマールに「熱病に気を付けて」と毎日手洗いとうがいを徹底させていた。
朱里の麦茶を持ってシュトラールが隣りのリリス宅へ行って話をした時に初めて「あっ」とリリスも自分の能力を思い出したぐらいだった。
「オレ達子供の頃から病気と無縁みたいなもんだったしねー」
「だよね。ママやアカリさんのおかげで病気知らずなところあったし」
そんな会話をしたのはシュトラールがルーファスと話をした夕方の事だった。
『熱病』の薬を大量に作る為に外に行っていた2人も戻り、5人での製薬作業が開始された。
「マグノリア室長が生き生きとしてますね」
「製薬部隊は薬作ってる時が一番輝いてるからな」
従業員達が製薬部隊の様子を見てそう言いながら、製薬部隊への差し入れはどうしようか?と相談し合って陰ながら応援をしている。
シュテンが荷物のチェックをする前に製薬部隊に荷物を持って行かれたので荷物をチェックしに製薬室へ行くと既に荷物は解かれ、薬草の匂いが充満する部屋で鼻を摘まむことになる。
「テッチ!換気はしろと言ってあるだろ!」
「すいません!でもそんなのしてる時間も無いんですよ!シュテンさん換気お願いします!」
ぐっとこらえて窓際の換気扇を回し、シュテンは解かれた荷物の個数を調べ「次に荷物を先に持って行ったら燃やすからな!」と言って鼻を摘まんだまま出て行く。
「これが納品書の確認書になる。あとは・・・おい、何をしている?」
シュテンが妹2人が縛り上げている黄緑色の髪の男を見れば、見た事のある顔に【風雷商】の息子かと胡散臭い物を見る目を向ける。
「すいません。納品確認ありがとうございます!ロケルト坊ちゃん行きますよ!」
「ここの従業員は皆可愛い子揃いでいいよね」
懲りないロケルトにヒリングが肩を落として引きずりながら確認書を手に料亭を出て行く。
「お塩をまく?」
「岩塩投げる?」
「一応、付き合いのある業者だから止めておけ」
タマホメとメビナが舌を出してロケルトとヒリングを見送り、ティルナールを連れて戻ったルーファスに仕方がない奴らだなと執務室の方へ戻っていく。
執務室ではリュエール以外の子供達が集まっている。
キリンとフィリアは水分補給とばかりに梅ジュースを一気飲みして「暑かったねー」とお互いに口にしてソファで並んで座っている。
「あっ、父上!あの人は何なのです!」
「追い出してくださいまし!」
「ミルア、ナルア、あれは【風雷商】の運び屋だ。今回の『熱病』対策に製薬部隊が注文した薬草を届けに来た。次の仕事があるだろうから、直ぐに出て行くだろう」
ミルアとナルアに腰にしがみ付かれてルーファスはティルナールを下ろすと2人の頭を撫でながら「ワガママばかり言うな」と苦笑いしながら諭す。
2人は少し異性に対し過剰反応気味なのが最近少し目立っている。
家族と知り合い以外には威嚇してしまうのはトラブルの元にもなるので注意をしなくてはいけないと心配もしている。
「そういえばさー、今回の熱病っていわば病気でしょ?」
「ああ、そうだな」
シュトラールがフィリアが座っているソファの後ろからフィリアを抱きしめながら思っている事を口にする。
「あのさ、今更なんだけど【聖堂】でどうにかなったんじゃないのかなって思うんだよね」
「・・・そうか、リリスの【聖堂】を忘れていたな」
ありすの娘リリスが持っている【聖堂】という特殊能力は朱里やありす同様に病気の治療も可能にする範囲魔法。
子供の頃は3メートル程の範囲魔法だったが、今では【聖堂】発動時の鐘の音が響く範囲まで拡大しているので、おそらく温泉大陸の四分の一は効果範囲になる。
イルマールとの結婚でイルマールも【聖堂】が使えるであろうから夫婦2人で【聖堂】を発動してもらえば朱里がジュースやお茶を作って配るより早かったかもしれない。
そして忘れていたが、ありすもこの温泉大陸に居るのでありすの体の【聖女】効果で広範囲にわたり病気は近付けない。
「もう温泉大陸の住民に配り終えた後だな・・・」
「だよねー。オレも思い出したのがさっきで・・・」
ルーファスとシュトラールがお互い似たような顔で「アカリには内緒にしておかないとな」「母上が聞いたら、私の時間が無駄にぃって叫びそう」と苦笑いする。
「温泉大陸に流行り病の報告が出ていない事にもう少し目を向けて考えていれば良かったな」
「近すぎて忘れちゃうことってあるよねー」
すでに後の祭り状態ではあるが、朱里の製薬室籠りを考えると少しだけ可哀想な気もしてしまう。
ちなみにありす自身もコロッと忘れて家に引き籠っていたり、リリスもイルマールに「熱病に気を付けて」と毎日手洗いとうがいを徹底させていた。
朱里の麦茶を持ってシュトラールが隣りのリリス宅へ行って話をした時に初めて「あっ」とリリスも自分の能力を思い出したぐらいだった。
「オレ達子供の頃から病気と無縁みたいなもんだったしねー」
「だよね。ママやアカリさんのおかげで病気知らずなところあったし」
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