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16章
ナンパ
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ジリジリと照りつける太陽に大きな白いパラソルを付けて【刻狼亭】の横に露店を出しているキリンとフィリアは2人共白いワンピースにキリンは黄緑色のレースがある物を着ていて、フィリアは薄いピンクのレースのある物でお揃いの服を着て、白いエプロンをしている。
朱里が居れば、朱里は白いワンピースに黒のレースのある物を着ていただろう。
朱里が露店に出れなくなって2週間、初めの頃は2人共なかなかアイスの配分が判らずに大盛りにしてしまったり、アイスを上手くコーンに乗せれなかったりと苦労はしたものの、今は手慣れてきて余裕も出てきた。
「おっ、エルフだ!珍しいね温泉街にエルフなんて」
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
若い男の客の声にキリンは張り付けた様な笑顔で相手にせず、注文だけ聞く。
フィリアは少し眉を下げてオロオロとしながらも首からぶら下げている犬笛を握りしめる。
この犬笛は何かあったら吹く様にルーファスに言われており、犬笛の音で必ずリュエールかシュトラールか今は騎士学校が休みのミールが近くに居れば来るだろうと持たされた物。
「じゃあ、コーヒーゼリーアイス3つ。で2つは君とそっちの君に1個ずつ」
「かしこまりました。フィリア、コーヒー1個。お金は3人分」
「あれー?君達は食べないの?」
「後でいただきます。ありがとうございますねー」
笑顔のままのキリンはフィリアからコーヒーアイスを受け取ると客にアイスを渡して「お次のお客様どうぞ」と客の男を手で払う。
しかし、男が退けずに「休憩時間教えて」と聞いてきてキリンは笑顔のままこめかみに青筋を立てている。
「ちょっと、あなたしつこいのですわ!迷惑ですわよ!」
「お止めなさいまし!邪魔でしてよ!」
白のレースの日傘とクロのレースの日傘をビシッと男に突き付けてミルアとナルアが睨みつける。
男は2人を見るとパッと顔を笑顔にしてキリンからミルアとナルアの方へ向き直す。
「わぁ、双子ちゃんかよ。可愛いな!」
「お黙んなさい。口先男は嫌われますわよ」
「さっさと退いてくださいな。他のお客さんのお邪魔ですわ」
ペシペシと傘で男を列から退くように促し、男はヘラヘラっと笑ってキリンとフィリアに手を振るとミルアとナルアを興味深そうに見る。
「ちょっと!あなた、うちの義妹達に何かしたら潰すからね!」
「許しませんから!」
キリンとフィリアが露店から身を乗り出すと、男が「何もしないってば」とヘラッと笑ってナルアの頭を触った瞬間、悲鳴を上げてミルアとナルアが日傘で男をフルスイングして【刻狼亭】の壁に突き飛ばす。
「きゃぁああああ!!不潔ですの!」
「いやぁああああ!!ばっちいのですわ!」
大騒ぎする2人に男が「いてて」と言いながら体を起こすと2人は「きゃー!」とまた叫び声を上げると【刻狼亭】から黒い狼が飛び出してくる。
ミルアとナルアは黒い狼の後ろにパッと隠れてヴーッと唸り声をあげて尻尾を膨らませている。
「2人共何があったの?」
「キリン姉様とフィリア姉様に絡んだのですわ!」
「わたくしたちにも絡んできたのですわ!」
耳をピクッと動かして鼻にしわを寄せると大きな黒い体を一段と大きくしてグルルルルと声を出して男に近寄る。
「えーと、少し違わなくない?」
男が困った様な顔でキリン達に助けを求める様に見るがキリンは舌を出しフィリアは心配そうにオロオロしている。
「オレのフィリアに絡んだの?ねぇ?オレの番にっ!!」
ザリッと地面を鳴らしながら近付き威嚇するシュトラールに男がたじろぐと、温泉街を素早い速度で掛けて来る商人の姿があり、バッとシュトラールと男の前に割って入る。
「坊ちゃん!アンタまた何か仕出かしたのか!」
「ヒリングそんな事は無い!多分!」
男と商人の男が喚いているとシュトラールが前足で男達に振り下ろされると地面が抉られ、商人の男が若い男を抱えて横に避けていた。
「どう見ても怒ってますよ!坊ちゃんいい加減にしてくださいよ!」
「ちょっとナンパしただけだってば!怒んないでよ」
「このバカ坊ちゃん!頭に花でも湧いてんのか!毎回面倒起こして!」
「そんな事言うなよー」
2人はそんなやり取りをしながらシュトラールの攻撃から逃げ回っている。
「シュー、落ち着け。まったく、何事かと思えば【風雷商】の小僧か」
ルーファスがティルナールを腕に抱えて【刻狼亭】から出てきてシュトラールを諫め、地面でゼィゼィ息を上げている2人に目をやって片眉を上げる。
「でも父上、こいつフィリアとキリンさんとミルとナルにナンパしたんだよ!」
「わかった。その話は後でじっくりこいつの親を交えて説教しておこう」
「えっ!親父に言うの?!」
「そうしてください!ぜひ!坊ちゃんはバカなので!」
シュトラールは渋々という感じでフィリアの元へ行き獣化を解くと抱きついて「大丈夫だった?怖かったよね?もう大丈夫だからね!」とギュウギュウに絡みついていた。フィリアが困った顔をしていた為に、キリンが「お客さん待ってるからフィリアを返してね?」とニッコリ営業スマイルで言い、シュトラールもその笑顔に兄リュエールの静かな怒りの様な物を感じて「はいっ!」とフィリアから離れた。
シュトラールがグルルルと威嚇しながらミルアとナルアを連れて【刻狼亭】の中に入り、ルーファスは父親アシュレイによく似た【風雷商】の三男坊をハァとため息交じりに見下ろした。
朱里が居れば、朱里は白いワンピースに黒のレースのある物を着ていただろう。
朱里が露店に出れなくなって2週間、初めの頃は2人共なかなかアイスの配分が判らずに大盛りにしてしまったり、アイスを上手くコーンに乗せれなかったりと苦労はしたものの、今は手慣れてきて余裕も出てきた。
「おっ、エルフだ!珍しいね温泉街にエルフなんて」
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
若い男の客の声にキリンは張り付けた様な笑顔で相手にせず、注文だけ聞く。
フィリアは少し眉を下げてオロオロとしながらも首からぶら下げている犬笛を握りしめる。
この犬笛は何かあったら吹く様にルーファスに言われており、犬笛の音で必ずリュエールかシュトラールか今は騎士学校が休みのミールが近くに居れば来るだろうと持たされた物。
「じゃあ、コーヒーゼリーアイス3つ。で2つは君とそっちの君に1個ずつ」
「かしこまりました。フィリア、コーヒー1個。お金は3人分」
「あれー?君達は食べないの?」
「後でいただきます。ありがとうございますねー」
笑顔のままのキリンはフィリアからコーヒーアイスを受け取ると客にアイスを渡して「お次のお客様どうぞ」と客の男を手で払う。
しかし、男が退けずに「休憩時間教えて」と聞いてきてキリンは笑顔のままこめかみに青筋を立てている。
「ちょっと、あなたしつこいのですわ!迷惑ですわよ!」
「お止めなさいまし!邪魔でしてよ!」
白のレースの日傘とクロのレースの日傘をビシッと男に突き付けてミルアとナルアが睨みつける。
男は2人を見るとパッと顔を笑顔にしてキリンからミルアとナルアの方へ向き直す。
「わぁ、双子ちゃんかよ。可愛いな!」
「お黙んなさい。口先男は嫌われますわよ」
「さっさと退いてくださいな。他のお客さんのお邪魔ですわ」
ペシペシと傘で男を列から退くように促し、男はヘラヘラっと笑ってキリンとフィリアに手を振るとミルアとナルアを興味深そうに見る。
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「許しませんから!」
キリンとフィリアが露店から身を乗り出すと、男が「何もしないってば」とヘラッと笑ってナルアの頭を触った瞬間、悲鳴を上げてミルアとナルアが日傘で男をフルスイングして【刻狼亭】の壁に突き飛ばす。
「きゃぁああああ!!不潔ですの!」
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ミルアとナルアは黒い狼の後ろにパッと隠れてヴーッと唸り声をあげて尻尾を膨らませている。
「2人共何があったの?」
「キリン姉様とフィリア姉様に絡んだのですわ!」
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耳をピクッと動かして鼻にしわを寄せると大きな黒い体を一段と大きくしてグルルルルと声を出して男に近寄る。
「えーと、少し違わなくない?」
男が困った様な顔でキリン達に助けを求める様に見るがキリンは舌を出しフィリアは心配そうにオロオロしている。
「オレのフィリアに絡んだの?ねぇ?オレの番にっ!!」
ザリッと地面を鳴らしながら近付き威嚇するシュトラールに男がたじろぐと、温泉街を素早い速度で掛けて来る商人の姿があり、バッとシュトラールと男の前に割って入る。
「坊ちゃん!アンタまた何か仕出かしたのか!」
「ヒリングそんな事は無い!多分!」
男と商人の男が喚いているとシュトラールが前足で男達に振り下ろされると地面が抉られ、商人の男が若い男を抱えて横に避けていた。
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「ちょっとナンパしただけだってば!怒んないでよ」
「このバカ坊ちゃん!頭に花でも湧いてんのか!毎回面倒起こして!」
「そんな事言うなよー」
2人はそんなやり取りをしながらシュトラールの攻撃から逃げ回っている。
「シュー、落ち着け。まったく、何事かと思えば【風雷商】の小僧か」
ルーファスがティルナールを腕に抱えて【刻狼亭】から出てきてシュトラールを諫め、地面でゼィゼィ息を上げている2人に目をやって片眉を上げる。
「でも父上、こいつフィリアとキリンさんとミルとナルにナンパしたんだよ!」
「わかった。その話は後でじっくりこいつの親を交えて説教しておこう」
「えっ!親父に言うの?!」
「そうしてください!ぜひ!坊ちゃんはバカなので!」
シュトラールは渋々という感じでフィリアの元へ行き獣化を解くと抱きついて「大丈夫だった?怖かったよね?もう大丈夫だからね!」とギュウギュウに絡みついていた。フィリアが困った顔をしていた為に、キリンが「お客さん待ってるからフィリアを返してね?」とニッコリ営業スマイルで言い、シュトラールもその笑顔に兄リュエールの静かな怒りの様な物を感じて「はいっ!」とフィリアから離れた。
シュトラールがグルルルと威嚇しながらミルアとナルアを連れて【刻狼亭】の中に入り、ルーファスは父親アシュレイによく似た【風雷商】の三男坊をハァとため息交じりに見下ろした。
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