黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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16章

夏の試食会

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 猛暑もあと少しだと思わせる暑さが近付き、手にしている紙もじっとりと手汗でふやけてしまう事が多くなる日々に突入し、屋敷の方へ温泉街の店舗持ちの人達と集まってアイスとジュースの試作をしている。
我が『女将亭』は【風雷商】を急かせてアイスのコーンを作る型を作らせました!!と、三角の斬新な形の鉄板型を自信満々に集まった人々に見せる朱里に「何だその型は?」と眉を下げて困惑する人々に朱里は前日から火竜ローランドに散々作らせたコーンを見せる。

「このコーンにこの作り置きしたアイスを丸型スプーンでくり抜いて上にポンッと乗せます。これだけ!アイスも食べれるし、溶けたアイスもコーンの中!しかもコーンは食べれるのでゴミの心配無し!どうです?」
「おお~っ」
「流石【刻狼亭】の女将」
「しかもこのコーンは【乾燥】魔法でカラッとさせれば湿気てもパリパリ状態!つまり・・・作り置きが可能なのです!!」
「あ、女将それはあたしらの型の最中とかも同じです」

 朱里のドヤ顔を苦笑いで温泉街の店舗主達は流す。
しまったぁー!そうでした!と、朱里が小さく舌を出しながら、次はアイスの試食に移る。

「アイスはこの筒に入れて固めてあるんですけど、当日は作っている時間は無いと思うので、この筒に入ったアイスを動く氷室露店ごと出せないかと思っています」
「動く氷室露店・・・ですか?」
「そうです。氷室に車輪を付けた物をすでに【風雷商】に作らせていますので15露店分やろうと思ってますよー。ちなみにジュースも氷室付きなので冷たいのが可能なのです!」
「おおーっ」
「でも、値段はどうするんです?高くつくんじゃ?」
「ご安心ください!そこは【刻狼亭】と【風雷商】の仲なので試作品という事で無料提供してもらっています。この移動式氷室露店が上手くいけば【風雷商】の新しい売り物になるので気にせずいきましょう!」

 パチパチパチと拍手を貰い朱里が両手で親指を立てて「やった!」と笑顔で喜ぶ。
かなり【風雷商】に脅し・・・お願いした甲斐があったという物だと朱里はしみじみ思う。
 アイスの入った筒を開けて各自の店舗で作ってきてもらった『器』となる物にアイスを入れていく。
オーソドックスに最中の物から各自食べて「んー・・・」と唸る。

「何かこうもう少し捻りたいですね」
「美味しいですけど、何か足りないですね」
「餡子とか白玉団子入れてみます?」
「ああー、やってみよう。女将少し台所借りますよ」
「はーい、それならアンコはあるので、白玉だけ作れば良いと思います」

 白玉団子を作る店舗主が台所へ行ったところで、他の『器』の方へ移る。
【もんふぇ】のたい焼き型はアイス用にパリパリとした皮にして中を空洞になる様に焼いてきた物で、コーンと同じ様な味に朱里がこれはありですね!と、親指を立てる。

「これパリパリしてるし、見た目も魚で可愛いから女性受け良さそうですね」
「ただ、アイスの量がそれなりいるのが難点なんですよ」
「だったら、これも何かあんこや団子みたいに入れるとか?」
「はいはい!パフェ!パフェしましょうよ!たい焼きパフェ!」
「・・・女将それは盛り込み過ぎでは?」

 フルーツを入れて生クリームを入れてやってみた物の、盛り過ぎて手がべたべたになる上に食べづらい為、パフェは却下され、カステラとカスタードクリームにアイスを入れるだけの物に変わった物の、カステラが抹茶味、チョコ味、紅茶味と味がそれぞれ別れこれはお店でも売れますね?と、新メニュー開発にもなっていた。

「あと、味なんですが、ミッカを混ぜた物やクッキーを砕いて混ぜ込んだ物とか色々作ったんですけど、どれがいいですか?」

 朱里が小さな器にそれぞれのアイスの試食用に出すと意見はそれぞれ出た物の溶ける速さからオーソドックスのバニラが一番溶けるのが遅い為に猛暑を考えるとバニラ一択か?ともなったが、猛暑だからこそミッカアイスの様なシャーベット系が売れるという意見もあり、これも各店舗の『器』に合わせて味を確かめつつ合う物で対応となった。

「はーい。白玉と餡子のアイス!」
「あー、これは上手いな」
「ただ、白玉の水分をよく飛ばさないと最中がふやけるな」
求肥ぎゅうひでもいいんじゃないか?」
「あー、求肥いいですよね。むしろ求肥にアイスを包んで食べたいです」
「女将、アイディア出すのは良いですけどそういうのは早めに出しましょうよ?」
「ふふっ、食べてみないと意見なんて出ないですよ」

 アイスはそれなりに各店舗に希望を聞いて自分の店舗で作れるところにはアイスを固まらせる時にグリムレインが出張しにいく事を告げて、朱里の方で作っていい店舗には希望を聞いておいた。

「さて、お次はジュースです!」
「ミッカジュースと麦茶で良いんじゃないか?」
「無料配布で他の店がお茶は出すんだし、お金を取る露店では少し変わった物が良いな」
「ふふっ、そう言われると思ってました!考えました!小さなトゥートゼリー入りミッカジュース。あとアイスに牛乳を少し入れたシェイクも作りましたよ」
「ああ、トゥート感がそんなに無いですね。何だか不思議な味です。それに口で直ぐに溶ける」
「これは・・・ワインで味付けしてますか?」
「そうです。白ワインとお砂糖を混ぜ込んだトゥートのゼリーなんです」
「シェイクも良いですね。ただ、これストローは絶対ゴミで出ちゃいますね」
「そこが悩みです・・・」
「露店が15店出るんですし、ミッカジュースだけというのも味気ないですよね。色々ジュースを出してみましょうか?」
「そうですね。ただ、ミッカは各店確実にあればコストの方は気にせずに済みますから出しましょう」

 結局、各店舗ミッカジュースと梅ジュース、レモーネジュースなど色々出る事になりようやくまとまりを見せると各店舗に企画書の提出をお願いして解散となった。

「そういえば、今日はお子さんやドラゴン達見ませんでしたね」
「あー・・・それは・・・、試食を頼みまくっていたらお腹壊させちゃって・・・」

 何とも言えない悲し気な瞳を向けられたものの、既にお腹を痛くしている店舗主も出ているので「お大事に」という挨拶と共に別れの挨拶をした。

 屋敷で試食の片付けをして企画書の書類作成に移る時には夕方になっており、朱里は自分とグリムレインしか夕飯は食べないので簡単なご飯にしてしまい、グリムレインに「嫁の手抜き!」とブツブツ言われたのだった。
他の家族は1日断食なのでお腹の丈夫な朱里とグリムレインは夕飯の後で試食に作ったアイスを食べながら企画書を書いて過ごした。
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