黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
上 下
491 / 960
16章

小鬼と小人

しおりを挟む
「10分間の間に訪れた客は、15人」
「15人分の情報を僕ら小鬼が今から集めます」

 小人に恩が売れるとあって小鬼達はネットワーク内ではしゃいで回る声がする。
きっとギルドにある小鬼達の家では大騒ぎしている事だろう。
 小人から客の名前が書いてある書類を受け取ると小鬼は他の小鬼と分担しながら客の名前の一致する人物たちの情報を出していく。

 ロックヘルの修復は小人達が石化を解き動き出した事で休む暇なく修繕されて行き、今はエフリの都市の修繕に取り掛かり、岩喰虫に食い荒らされた銀行の中の金貨を戻す作業をしている。
世界中の金貨を扱っているだけあって復旧も素早く対応していくが、統率のとれた動きは何やら小さな部隊の様で無駄な動きが無い。

「やっぱり、小鬼の方が可愛いですねぇ~」
「テンは小人も可愛いと言い出すかと思っていたが、そうでもないんだな」

 穏やかに笑ってテンが「人をマニアックな人みたいに言わないで下さいよぅ」と肩を少し上にあげて小鬼の小さなティーカップに紅茶とジャムを入れている。
ルーファスは「やれやれ甘やかしたがりめ」と言いながら【刻狼亭】の借りているロックヘルの部屋を整頓していく。
部屋に収められているのは【刻狼亭】の当主達の思い出ばかりで財貨という財貨では無いが財貨には代えられない物達で、いつか自分の物もここに置かれるのだろうと思うと感慨深いものもある。

 踏み荒らされてしまった着物に【清浄】魔法を掛けて元に戻して桐の箱に戻す。
女性用の着物は朱里と同じ丈なので小柄ないつかの時代の女将の着ていた着物なのだろう。整頓して気付くが、収められている女性用の着物は割りと小さめの物が多く、自分の家系は番婚ばかりなので小柄なタイプと番になる運命にでもあるのかと思ってしまう。

 次期当主のリュエールの番キリンも背丈が小さいのが何とも言えない。
逆に男物の着物は丈が長く背丈の大きさに、リュエールはこの先背が伸びるか?と少し心配になる。
一応、リュエールも168cmと伸びた方ではあるが、ルーファスやシュトラールに比べると低いのは否めない。


「はい!はいはーい!僕、犯人見付けましたぁー!!」

 小鬼がピョンピョンとテーブルの上で飛び跳ね、小人達がザッと音を立てて小鬼に注目する。
小鬼は嬉しそうに今も情報が頭の中に流れているのか、手だけはネットワーク内に流れている情報を紙に書き記している。

「犯人は誰だ!」
「お幾ら出ますか?」

 小人にフフーンと小鬼が指で輪っかを作り、小人がギリッと唇を噛む。
ファルヒュームが小鬼のテーブルに古代金貨を20枚積み上げる。

「これで足りるか?」
「毎度ありっ!僕、満足です!」
「ああっ!ファルヒューム様!こいつ等にそんな貴重な金貨を!!」
「よい。ロックヘルの信用と警備に関わる事だからな」

 ファルヒュームと小人のやり取りを無視して小鬼は古代金貨を財布に仕舞うと、入れた筈の古代金貨はファルヒュームの前にチャリンチャリンと積み上げられる。

「なっ!」
「安心しろ。お前の古代金貨ではある。ただ、収納場所が私の前なだけだ」
「ぐぬぬ・・・僕、騙された気がすごくするのです・・・」
「流石ファルヒューム様!」

 むぎゅぅ・・・と眉間にしわを寄せながら小鬼が渋顔をするとテンが「古代金貨だけ財布に入れるのを止めてカバンに入れておいてはぁ~?」と言うと小鬼がニコッと笑って財布に手を入れて再び古代金貨を自分の手元に出し、カバンに仕舞い込むと、チッとファルヒュームと小人が次は渋い顔をした。

「さて、犯人ですが、最新の情報と照らし合わせても怪しいのは1人なのです!」
「勿体ぶるな!この小鬼め!金貨分早く言え!」
「むきぃ!蹴ったの誰です!」
「あー、止めよ。小人達、小鬼に手を出すでない」

 ファルヒュームに小人が少し下がる様に手で小鬼から離され、お互いに舌を出して子供の様な喧嘩をしてプリプリしている。

「新聞社の『ソルダック』が【魔果】騒ぎで大損失で廃業寸前なのです。新聞記者の不祥事と、元新聞記者が脅していた有名な人々からの訴えで顧客はほぼ居ません。むしろ新聞すら今は作れない程に大打撃…という感じで、このロックヘルに来た理由も『解約』手続きです。訴えられている金額大白金貨6枚分相当、このお金の値段に聞き覚えが最近ありますよね?旦那さん」

 小鬼がルーファスを見上げて「褒めて」と言わんばかりに腰に手を当ててドヤ顔をするとルーファスが小鬼に金貨1枚を手渡し、小鬼が「キャー」と声を上げてピョンピョン飛び跳ねながら金貨にしがみ付く。

「成程、新聞社ならアカリの写真はあるだろうからな。そしてアカリが公の場で慈善活動のパーティーに参加するとなると下調べとして家族構成も調べ上げ、娘達の事も調べられていたのだろう・・・」

「それに、最近の情報ではこの新聞社の編集長が怪しい金貸し達に追われて居たはずなのに、それがピタッと止まって金回りが良くなった様ですから、何か匂いますよね?」
「ロックヘルから持ち出された財貨の一部を売った・・・と、見るのが妥当か?」
「ロックヘルから盗まれた財貨によりますが、さばき切れない物は闇オークションに流れるかもしれませんから、闇オークションの小鬼に連絡を取って見張らせますので、盗まれた財貨が何だったのかの情報を下されば、直ぐにでもお調べいたしますよ?」

 小鬼が小人を見ると「もう金貨は払わないからな!」と盗まれた財貨の書いてある書類を小鬼に渡し「なら貸しにしておきます。フフーン」と言われて、キィィと小人が感情を露わにしていた。

「無表情な小人をココまで怒らせる小鬼は流石よのぅ」
「うちの小鬼は可愛いですからぁ~」

 ルーファスが、少し呆れながらも魔法通信の腕輪に魔力を通して【刻狼亭】へ連絡を取る。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。