黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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16章

岩喰虫

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 金貨がぁ・・・とガクガク震える小鬼に対し、小人はしてやったりと腰に手を当てて、また無表情な顔に戻ると岩喰虫を無視してサクサクと奥へと進んでいく。
小鬼をよしよしと手で撫でながらテンが先を歩き、その後をルーファスがついて歩く。

「小鬼、岩喰虫とはその名の通りと言う感じか?」
「ええ。この頑丈なロックヘルですらバリバリ食べる魔虫です。小人の石化状態もバリバリ・・・いくんですけどね。何で食べられてないんです?」

 小鬼が小人をテンの肩から見下ろしながら、ジト目で見れば小人は「ハンッ」と鼻で笑う。

「何世紀も前の話をしているんです?情報情報と小うるさいわりに情報が古いのではないですか?我ら小人は岩喰虫に食べられない様に対虫魔法を常にしているのですよ?」
「ほうほう。その魔法をロックヘルにしていなかったのですか?岩喰虫に荒らされているところを見ると」
「うるさい小鬼ですね。手違いがあったのです」

 奥の大広間に入り鍵束を持って小人が小鬼にシッシッと手を振ると小鬼は食い入るように小人の手を見ながら小鬼が弄る鍵束の数字を目に焼き付けて行く。

「どんな手違いが起きたと言うんだ?」
「手違い・・・と、言って良いのか判断が付きかねますが、ロックヘルの中で預かっている財貨の中に岩喰虫の卵が入っていた様なのです。しかし、預かっている財貨を我々小人が勝手に調べることは出来ません。なので財貨の持ち主に連絡を取ろうとしていたのですが、気付けば岩喰虫に食い荒らされ、我々は岩喰虫を止めるので精一杯で、業務が滞っていました」

 小人は鍵束でロックヘルの奥にあるエレベーターを開くと「一緒に来ますか?」とルーファス達に声を掛けルーファス達が頷いてエレベータの中へ入ると最深部までのボタンを押す。

「まだ石化している小人が居るがそのままでいいのか?」
「我々は1人が動いていれば全員同じ物が見えていますから、数人動いていれば事足りています。どこかの小鬼達の様に一斉に喋って情報が交錯する方が統率が取れない。それに岩喰虫を自分達で止めているので『虫殺し』が無ければ対処できません」
「『虫殺しバグスキラー』は『竜殺しドラゴンキラー』と同じ殺傷能力が特化した武器ですね!僕知ってます!」
「小鬼は物知りですねぇ」

 小鬼を撫でながらテンが褒めると小鬼が「もっと褒めるのです」と口元を緩めているのを見て小人が「ケッ」とらしくない態度でプリプリと怒っている。
仲が悪い種族というより、子供のケンカをしているような種族にも見えるのは気のせいかとルーファスは思いつつ、小鬼といい小人といい特化武器を何故か所持しているのは何故なのかと不思議にも思う。
しかも割りと管理はいい加減でギルドの天井でホコリを被らせているぐらいの管理。

「この部屋の財貨には一切手を触れないで下さい。特に小鬼、お前です」
「ムッ!僕らを馬鹿にしないで下さい!僕らは対価に合わない物に手を出したりしないのです!」

 エレベーターが停止すると暗い空間の中に所狭しと金銀財宝が無造作に積み上げられている。
そして歩いて行くと中央には全身を玉虫色に光らせるドラゴンが欠伸をしながら横になっている。

 ルーファスの肩からスピナが顔を出して「アーッ!」と声を出す。

「宝玉竜のファルヒューム!」

「ん・・・?お前は風竜のスピナか」

 ファルヒュームと言われたドラゴンが立ち上がると6メートル程の体をゆっくりと縮めて人型を取る。
玉虫色の髪に金の目。ドラゴンは全員、金の目をしているのでそこだけは変わらない。

「ルー、ネルフィームの兄竜のファルヒュームだよ。宝石に目のないドラゴンで何ていうか宝石の側から離れないドラゴン」
「ふむ。どことなく似ていると言えば似ている気もするな」

 人の姿がネルフィームの人型と似通っているのは兄妹竜だからなのかと見ていると、小人がファルヒュームの元まで走って行く。

「ファルヒューム様、岩喰虫が出てロックヘルが襲われました!被害は今現在調査中です!『虫殺し』をお貸しくださいませ!」
「何?財貨に被害はあったか?!」
「まだ調査中です。エフリの都市はかなり破壊されていました!」
「仕方がないな。私が自ら出て財貨を元に戻すしか無いな」
「良いのですか!ファルヒューム様!」
「良い良い。私の目を楽しませる財貨が減るのは私にも損失だからな」

 ファルヒュームが宝石の中から小さな箱を取り出すと小人に渡し、小人が中から剪定ハサミの様な物を取り出す。

「これが『虫殺し』です。そこの小鬼余計な情報は流すなよ。お前の所の『竜殺し』の情報を流すからな?」
「うぐっ!そんな事は知らないのですよ!僕は僕の情報を管理しているだけなのです!」

 目をくるくるさせながら、小鬼が部屋全体を見渡しながら情報収集をしているのは明らかで他の小鬼にも情報が随時発信されている事だろう。
宿敵の弱みを見たからには情報共有はいの一番に全員で共有させてしまう。それが小鬼である。
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