黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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16章

氷竜と木竜の防衛線

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 ギルの屋敷に着くと朱里が電車ごっこの紐を三つ子に持たせて「行くよー」と、三人を連れて屋敷の中へ入っていく。
ギルの屋敷は大理石の床をしている為に3人が3人共バラバラに動くとあちらこちらでコケてしまうので電車ごっこの紐は手放せないのである。

 ハガネは屋敷の外で乳母車を片付けて、ケイトとエデンは朱里の後をついて飛んでいる。
グリムレインとケルチャは屋敷を一周して飛ぶと温泉大陸が見下ろせる上空まで一気に飛ぶ。

「婿の居ない間は海岸は我が担当だな」
「アタシは森ね。まぁリューの森はキリンが居るからリューの担当だろうけど」
「リューは婿より怖いからな」
「そうなのよねー。見た目は可愛いのに性格が獰猛なのよね」

 グリムレインとケルチャは性別が雄というだけでキリンに近付くとリュエールに威嚇されるので、必要以上にはキリンに近づいたりはしない。
グリムレインはリュエールが生まれる前から『祝福』したりしてリュエールを見守って来たのに、酷い仕打ちであると思う。
それだけ番が大事なのは分からなくもないのだが、弟のシュトラールに比べると扱いの違いに「本当に双子か?」とも思ってしまう。

 シュトラールの場合は「オレの番のフィリアだよ!見て見て!可愛いでしょ!オレのだからね!」と自慢し回ってお気に入りの玩具を咥えて歩く犬の様で可愛いものだったりする。
フィリアが重い物を持って歩いていたら手伝うとシュトラールは「フィリア良かったね!でもオレを頼ってー!オレ重い物持つよー!皆フィリア助けてくれてありがとー!」と元気に言ってくる。
あまり威嚇という物をしてこないので可愛いのである。

「まぁ、キリンの近くはリュエールに任せれば問題ないだろう?」
「そうよね。それにキリンもリューも移転魔法使えるしね」

 キリンと番った為にキリンの能力が半分リュエールにも渡され、リュエールも転移魔法が使える。何かあれば転移魔法で逃げる事が出来るので心配はそれ程しなくてもいい夫婦なのである。
リュエールの【破壊】をキリンも使えるが「怖いから使わない」と使った事は無い。
 シュトラール夫婦はフィリアが未知数な為にまだ魔法がどうこうといった話は聞いた事がない。
今の所、フィリアは羽が生えるだけで魔法に関しては勉強中なのである。魔法を使いこなせるようになれば【全回復】を使えるようになるので、色んな意味でお役立ち夫婦になるだろうと言われている。


 朱里とルーファスは言わずもがな、朱里は魔法を使えないし、自分の能力は体の中の血肉なのでルーファスには何の能力も受け渡すことは出来ていない。しいて言うならば、朱里のおかげでルーファスは病気知らずの様な感じだろうか?17年も一緒に居るのだから【聖域】漬けの様な状態にはなっていそうではある。

「さて、我はさっさと仕事をして嫁の所へ帰るかの」
「アタシも早くアカリの所に帰りたいからさっさとやりましょ」
「嫁は我のだぞ?」
「やぁーねぇ、アカリはアタシ達全員の物よ」
「我の方が先に嫁と契約したのだ。新参者たちめ」
「・・・アンタも十分、リューと同じで心が狭いわよ?」
「嫁に関しては婿に半分持って行かれている。我は半分で我慢しているのだ」
「・・・あー、もうアンタは面倒くさい性格ね」
「フンッ」
「じゃあ、また後でね」

 ケルチャは面倒くさいグリムレインの性格に付き合ってられないと温泉大陸の外側にある木々に自分の能力を使い、隙間なく壁を作っていく。木々が絡まり合い、外側からの侵入が出来ない様に隙間なく巡らせた後、外側の木々に棘を生やしていく。
ルーファスが居ない間は不法侵入者が居ない様にケルチャなりの防衛を手伝っているのである。
いきなり温泉大陸に木々の壁が出来た事で驚く声はあるだろうが、ケルチャの命令1つで元に戻せるのでルーファスが帰って来るまでの間の事である。
 屋敷の周りの木々にも不法侵入者対策に食虫植物を仕掛けて行く。
トリニア家と従者以外に襲い掛かる様に改良した可愛い食虫植物にケルチャは満足すると、屋敷に持って行く。


 グリムレインは海岸からの不審船などが温泉大陸に侵入しない様に崖には鼠返しを氷で作り崖からの侵入を出来ない様にして、海には決められた航路でなければ出入りできない様に氷を張り巡らせていく。
一見、ただの氷なのだが、氷の上を歩いて侵入しようとすれば10秒と持たずに心臓が凍ってしまう絶対零度の氷なのである。
自分がミシマリーフ国へ行っている間に温泉大陸が襲撃に遭ってからというもの、海からの侵入に関してはグリムレインは気を配ってきている。
守るべきはたった一人の小さくて死にやすい主の朱里だけ。
朱里を守るうえで朱里の家族はオマケの様な物だが、朱里が笑ってくれるなら喜んで守ってやろうというところなのだ。

「こんなもんかの。さて帰るか」

 屋敷に向かって帰ると、すでにケルチャが帰っていて朱里がお茶を淹れている間に三つ子の世話を頼まれたらしく三つ子に襲い掛かられていた。
それを見てバッチリ目はあったが、そのまま朱里を追ってキッチンに行き、朱里が用意している茶菓子を横からつまみ食いしていく。

「あっ、こらぁ。グリムレイン駄目だよ。お茶と一緒に出してあげるから我慢しなさい」
「茶請けなどアイスでいいだろうに」
「あー、アイス良いですね。よし、後で一緒に卵アイスでも作りましょうか!」
「嫁は我をコキ使う気だな?」
「ふふっ、グリムレイン頼りにしてますよー」
「まぁ、嫁が喜ぶなら良いか・・・我は大盛りアイスだからな?」
「はーい。卵いっぱいあるからいっぱい作ろうね!」

 茶器をお盆の上に乗せてお茶菓子も乗せると朱里が鼻歌交じりにリビングに戻っていく。
グリムレインもそんな朱里の後ろを嬉しそうに尻尾を緩やかに動かしながら付いていくのだった。
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