黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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16章

心配性なお父さん

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 シュトラールの獣騎ザックにルーファスとスピナが乗り、リュエールの獣騎イージーにテンと小鬼が乗り、ロックヘルへ行く事になった。
出発前にルーファスが注意を促す為に【刻狼亭】の料亭前でドラゴンと家族を前に話をしている。

「オレが居ない間は母上と妹達を頼んだぞ」
「わかってるよ。父上も気を付けて」
「任せてよ父上」

「・・・リュエールはアカリに間違えられんようにな?」
「父上、流石に最近はそんなに似てないよ」

 リュエールとシュトラールは自分の傍らにそれぞれの番の腰を抱いて、ルーファスに心配ないと言い、自分達の獣騎の頭を撫でる。
ザックとイージーは双子の獣騎の最速獣で15歳の時にルーファスが誕生日プレゼントにリュエール達に渡したもので、討伐や大陸を出る時に使っているが、最近は温泉大陸から出る事が無かったので2匹の運動も兼ねて今回のロックヘルへ行くのに使う事になった。

「ミルア、ナルア、最近はよく街の方で暴れていると聞くが、オレが帰って来るまではお転婆はするな」
「心外ですわ。暴れているのではありませんの」
「暴れている人を捕縛しているだけですの」

 ミルアとナルアはむぅっと口を尖らせながらも自分達の腕に光る腕輪を見てニンマリとする。

 11歳の誕生日に持たせるはずだった魔法通信の腕輪をミルアとナルアに渡したのである。
そしてローランドとニクストローブがミルアとナルアの警護の為につくことになった。
ニクストローブはルーファスのドラゴンではあるが、主命令とあって大人しく従っている。
外出禁止は一応範囲を決められ、兄のリュエールの家とシュトラールの家【刻狼亭】の行き来だけ許可された。
一応、リュエールの家以外は人目があるので危険は無いはずである。
リュエールの家は森の中なので行く時はキリンや他の大人と一緒に行く事を約束させられている。
シュトラールの家はイルマールとリリスの近所の新宅地で真新しい家が多く建っている場所で小洒落た家が並んでいる地区にある為、人通りも多い。

 今現在『女将亭』が休業で移転予定とあり、家の方には誰も住んでいない。
ギルが冒険に出ている為にギルの屋敷を借りて住んでいて、朱里やドラゴン達も屋敷で過ごしている。
ただ、小高い丘の上にあるのでその丘を越えるまでの道が人通りがないのが心配でルーファスが屋敷まではドラゴンに乗って帰って来るように2人には言っている。
とにもかくにも、双子姉妹を心配しているのである。

「父上は心配し過ぎですわ」
「第一、温泉大陸で誘拐まがいの事は起きませんわよ」

 きゃらきゃらと笑うミルアとナルアに朱里は「あわわ・・・」と手を彷徨わせてルーファスを見上げる。
温泉大陸で誘拐された・・・というか、召喚されて1ヶ月近く行方不明になった事がある為に、古傷を抉られているのもあるが、ルーファスの心配している事を娘達はピンポイントで狙い撃ちした。

 朱里似の男のリュエールですら多少の心配はされているくらいなので、朱里そっくりのミルアとナルアを心配するなというのが無理な話なのである。

「アカリ、オレは判断が甘かったようだ。ミルア、ナルア外出は禁止にした方がいいな」
「ルーファス、それは流石に可哀想ですよ?」

 ミルアとナルアが笑顔のまま固まると、朱里が「仕方がない子達ね。ルーファスを含めて」と、自分の過去の古傷をちゃんと2人に説明する。

「と、言う理由から、父上は温泉大陸の中と言えど、誘拐される可能性があるのを心配しているの。だからあなた達も楽観視しないで気を付けなさい。母上は父上が助け出してくれましたが、未だに竜人は怖いですし、震えてしまいます。もう克服したと思っても心の中に誘拐された時の恐怖は残っているの。そんな思いを2人にはしてほしくないの。お願いだからローランドやニクストローブから離れたりしないで」

 しゅんと耳を下げてミルアとナルアがルーファスに「父上、ちゃんとお約束は守りますの」としおらしく反省して、なんとか最初の条件で外出は多少は大目に見てもらえることになった。

「アカリは言わなくても分かっているな?」
「ちゃんと大人しくしています。それに、子供達が居ますからね。ティルやエルやルーシーと一緒に過ごしてたら1日なんてあっという間で、お買い物すら中々行けませんから、屋敷に籠ってていいなら、私はルーファスがロックヘルに言っている間、ずーっと屋敷に籠りたいぐらいです」

 ダメ人間の様な発言ではあるが、ルーファスにとっては100点満点の答えともいえる。
朱里をルーファスがグリグリとおでこに頭を擦り付けて「良く出来ました」と言わんばかりに尻尾をフリフリしているので、心配せずにロックヘルに行って手がかりになる様な物を探し出してさっさと帰って来て欲しいのもある。

「なら食材の買い出しはオレが戻って来るまではハガネに任せて、アカリは屋敷で大人しく子供達の相手をしていてくれ」
「任せてください。ああ、でも2日後に子供達の小児健診があるので産院に行かないといけないので、グリムレインとハガネと一緒に行ってきますね。それくらいしか出掛ける予定はないです」
「ふむ。それは仕方がないが、気を付けて行くんだぞ」
「はい。ルーファスも気を付けて行ってきてくださいね」

 ルーファスに頬とおでこと唇にキスをされて朱里が少し頬を染めながら、手を小さく振る。
三つ子達はまだ少し眠いのか乳母車の中で3人共うにうにと眠そうな顔をしているので、ルーファスは3人の顔を見てから微笑んでから「では、行ってくる」と、ザックを走らせる。
テンもイージーを走らせてルーファスについて出発した。



「さて、僕らは僕らのやる事をやらないとね」

 リュエールがもう姿の見えなくなったルーファスを背に各自に自分のすべきことをするよう言って【刻狼亭】にキリンを連れて戻っていく。その後をアルビーが追って飛んでいく。

「んじゃオレも仕事行かなきゃ。ミルもナルも変な人についていかないようにね」
「シュー兄様こそ、変な人についていかないで下さいまし」
「そうです!シュー兄様が一番ホイホイどこにでも行く悪い子なのです」
「フィリアー慰めてー!妹にいじめられた」
「シュー!もう、離して。歩きにくいわ」

 シュトラールがミルアとナルアに文句を言われながらフィリアにしがみ付いてフィリアにも邪魔者扱いを受けて騒いでいる。

「うちの子達は元気ねぇ・・・」

 朱里が騒いでいる子供達を見つめて乳母車を押すと、横からグリムレインとハガネが手を貸して乳母車を押す。

「嫁の細腕ではもうこの乳母車は押せんだろう?」
「アカリは大人しくしとけよ?」
「はーい。皆心配性ねぇ」

 朱里がクスッと笑うと乳母車の中からエデンとケイトが顔を出し、ケルチャはルーシーにしがみ付かれて出れないまま「逃げ遅れたわ」と困った声を出していた。

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