黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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15章番外編

箱入り黒狼と箱入り王女

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 仕事が終わり、これでフィリアの元へ帰れるとふにゃっとした締まりの無い顔をしたシュトラールをジト目で双子の兄リュエールが捕まえる。

「シュー、話があるからちょっと来ようか?」
「えー?明日じゃダメ?」

 耳と眉を下げてシュトラールが「キューン」と喉を鳴らせば、リュエールは「駄・目!!」と区切りながら駄目だしして、引きずる様にシュトラールを連れて露天温泉のある旅館へ連れて行く。
露天温泉の脱衣所にはルーファスも居て三つ子のうちの2人、ティルナールとエルシオンを連れて来ている。

「あれー?温泉?父上やティル達も?」
「ああ。女湯の方にはアカリやフィリア達も居る」
「うちのキリンも仕方なく参加してるけど、キリンはルーシーをお風呂に入れてるだけだから服は着てるからね」

 首を傾げながら「ふぅん?」とシュトラールが言って、ルーファスが「エルフは肌を見せるのを嫌う種族だから温泉街に来ないのは知っているだろう?」と言えば、「そうだっけ?」とシュトラールはきょとんとする。
小難しい医学書や魔法の文献は読むのにこうした常識にはとことん疎いトリニア家の次男に、ルーファスもリュエールもため息を吐く。

「まぁ、とりあえず風呂に入りながら話すか」
「はーい。露天なんて久々だねー」

 ババッと服を脱いで脱衣籠に入れるとシュトラールはティルナールとエルシオンの服を脱がせて「行くよー」と2人を連れて温泉に歩いて行く。

「・・・一応、下の方は問題ないみたいだな」
「何が悲しくて弟のモノなんか見なきゃいけないのやらだけどね」

 ルーファスとリュエールがハァ・・・とため息をついて、シュトラールの性知識についてどう切り出すかを考えた挙句、とりあえず体を見てみようと露天温泉に連れ出したのである。
キスで子供が出来ると思っている節があるとキリンがフィリアの言葉から判断し、こうなってしまったが、出来る事ならキリンの勘違いかフィリアの勘違いでいて欲しい2人だったりする。
何が悲しくて結婚まで勝手にした次男に教えなきゃいけないのかと・・・。

 ルーファスとリュエールが温泉の方へ入ると、シュトラールは鼻歌交じりにティルナールとエルシオンを洗っていて、2人はきゃっきゃっと声を上げている。

「シュトラールはいい父親になれそうだな」
「子供の作り方知ってればね」

 ルーファスもリュエールもどう切り出すか・・・と、ハァ・・・とまたため息をつく。
シーンとしたところで、隣りの女湯から声がしているのが耳の良い狼族の男性陣には聞こえてくる。

『あっ、そこの石けん取ってくれる?』
『はい。お義母さん』
『ありがとー、キリンちゃん』
『いえいえ。このくらいは・・・あっ!』

 バシャーン ザブッ

『きゃー!ごめんなさい!キリンさん!』
『大丈夫?!キリンちゃん!』
『プハッ、平気ですー・・・』

 ザバザバ ベシャッ・・・

『ごめんなさいぃぃ!!』
『気にしないで、フィリアは怪我ない?』
『ないです。キリンさん本当にごめんなさい!』
『気にしない、気にしない。でも、ずぶ濡れだから服脱いできます』

 ペシャペシャペシャ・・・ガララ・・・

 おそらくはフィリアがキリンにぶつかったか何かしてキリンが温泉に落ちたのだろう。
何となくわかるものの、リュエールとしてはキリン大丈夫かな?と、思いつつポーカーフェイスでやり過ごす。

「フィリアの声がするー」

 ブンブンと尻尾を振るシュトラールにやれやれとルーファスとリュエールが見ていると、目線はシュトラールの下半身に行って「・・・え?」と、なる。
何で声聞いただけで反り立ってんだ?!と、ツッコミを入れたいところをグッと2人は堪える。

「一応、嫁の声には反応してるなら、問題は無いんじゃないか?」
「そう思いたいね。仕方ないなー・・・シュー!こっちに来て!」
「なにー?」

 ティルナールとエルシオンを両脇に抱えて温泉にザバザバと入って来ると、ニコニコと弟2人を膝の上に乗せながら「ふぃー・・・」とへにゃっとした顔をする。

「あのね、シューに聞きたいことがあるんだけど・・・」

 リュエールが意を決して子供の作り方を知っているか聞こうと口を開きかけると、女湯からまた声がする。

『エルフって肌見せないって聞いたけど大丈夫なの?』
『お肌綺麗なのに見せないの?』
『エルフは家族以外には見せないってだけです。家族なので良いかなって』
『うんうん。今日は貸し切りだから家族だけだよー』

『キリンちゃん、キスマーク凄い・・・』
『ふぁっ!キリンさん凄い』
『一応、まぁ、その、新婚だから。でもお義母さんも凄いですね』
『んー、これでも新婚の頃に比べれば少なくなった方なのよ?』
『やっぱり、キスいっぱいした方が赤ちゃん出来やすいですか?』

『キスの回数で子供が出来るわけじゃないけど、キスされると愛されてるとは思うよね』
『わたしもお義母さんの意見と一緒。キスされると幸せって思う』
『あの、えと・・・キス以外でどうやって赤ちゃん出来るのでしょうか・・・?』

『え?』
『やっぱり・・・』

 ルーファスとリュエールがシュトラールを見るときょとんと首を傾げている。

「シュー、キスで子供が出来るとは思って無いよね?」
「シュー、流石に大丈夫だろ?」
「流石にそれくらいは知ってるよー」

 あはは。と、笑うシュトラールにルーファスとリュエールが「女湯の会話は何だ!」と、問い詰めると、シュトラールが少し眉を下げて笑う。

「前に挿入しようとしたら痛がって泣くから、仕方が無いからフィリアをキスで意識を飛ばして、自分を慰めてる・・・」

「はっ?」
「えっ?」

「だって、痛いのは可哀想だし・・・」

「いやいや、そこはよく解していけばいいだろう?」
「時間かけて馴染ませていきなよ?」

「あ、うん。だから指で徐々に慣らそうと思って、毎回する時に指で弄り回してるんだけど、途中で泣かれて毎回そんな感じで・・・嫌われたくはないし、ね?」

 ハァー…とルーファスとリュエールがシュトラールの肩に手を置くと首を振る。
女湯から「えええええ?!」とフィリアの声が響き、シュトラールが声を出そうとするのをルーファスとリュエールが止める。

『あのね、流石にそれはシューちゃんが可哀想だと思うの・・・』
『最初は痛いけど、慣れてくると痛くなくて気持ち良くなるしね』
『だって、指だけでも痛いし・・・くすん・・・』
『うん、だからね。指とかで愛撫してもらって・・・』
『それにそのままじゃ一生赤ちゃんなんて出来ないよ?』

 女湯の会話にいたたまれなくなったシュトラールが「頑張ってみるよ・・・」と言いヨロヨロとティルナールとエルシオンを連れて出ていくと、ルーファスとリュエールはお互いに顔を見合わせて首を振る。
同じ様にフィリアもフラフラしながら温泉から出ていき、女湯も男湯もそれぞれのパートナーが残っただけになった。

『仕方がない・・・下着部門のあの3人を呼んじゃおうかしら?』
『下着部門?この間のベビードールくれた人達ですか?』
『そう。あの3人なら色々アドバイスしてくれると思うから』

 朱里の言葉にルーファスが【刻狼亭】の従業員の3人娘を思い出し、頭痛を覚えるが、あれぐらいの荒療治をするぐらいの人間が口出しする方がいいのか?と、とりあえず黙っておく。

『キリンちゃんはそのキスマークからして赤ちゃん早そう。ふふっ』
『んー・・・エルフは長寿な分、妊娠しにくいので何とも言えないです・・・』
『でも蜜籠り期とか数多くなるし、あとはドラゴンの『祝福』で妊娠しやすくしてもらったりも出来るから、どうしても悩んだら相談してね』
『はい。お義母さん』
『跡継ぎとか深く考えずにリューちゃんと仲良く暮らしていってくれたら満足だからね』
『お義母さんは森の女神さまですか!』
『普通のお母さんです。ふふっ』

 2人のやり取りにルーファスとリュエールも『うちのお嫁さん可愛い。帰ったら可愛がろう』と思いながら温泉から上がっていく。
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