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15章
美味しいを探して⑩
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____ドササーッ。
雪の積もった屋根の上から雪をおろして、屋根の上からフィリアニルンがヨードンの家に行くのを見つけてシュトラールが手を振る。
「フィリアー!」
「シュー、危ないわ。手を振り過ぎよー」
言った側からシュトラールがツルりと滑って屋根の上でワタワタと両手を振りながら足を踏ん張って耐えている。
シュトラールが「大丈夫!」と言って白い歯を見せて笑う。
フィリアニルン笑って「仕方がない人ね」と手を振りながらサクサクと雪を踏みながらヨードンの家に入っていく。
それを見届けてシュトラールは雪をおろす作業の続きをする。
「あと1軒やって狩りに行かなきゃ・・・たまにはお肉ガッツリ食べたい」
そう思った時に『シューちゃん唐揚げいっぱい作ったよ』と、朱里の声が聞こえた気がして、少しだけ鼻の奥がツーンとして泣きそうになると、シュトラールは頭を振る。
胸に詰まるような痛みにシュトラールは空に向かって遠吠えする。
ワォォオオオォォン
「・・・はぁ。スッキリした」
フィリアニルンとの生活は毎日が忙しいけれど、2人で居られたら幸せで、それ以上を望んでいないのに、たまに無性に寂しくもなる。母上や父上やリュー達は元気でいるだろうか?そんな事を思っては、連絡をした方が良いのか迷い、答えが出せないままフィリアニルンの元へ帰っていく。
「早く狩りに行かないと冬は陽が落ちるの早いから」
白い息を吐きながらシュトラールが木のスコップを使って雪をおろす手を急がせ、最後の一軒の雪下ろし作業を終えて、シュトラールは狩りをする為に山の中へ入っていく。
耳を澄ませて魔獣の足音を聞き分け、ガサッという音に集中して見付けたのは白い鹿スノーバンビでそこそこ大きくて危険度Cクラスの一般魔獣。
シュトラールは獣化すると風向きを読みながら体を低くして詰め寄り、一気に加速してスノーバンビの喉を前足で引き裂くととどめを刺す。
獣化を解いて雪で手に付いた血を拭き取ってスノーバンビの後ろ脚を持って雪の上に血の跡をつけながら戻っていく。
ゥォオオオオオォォン
「え・・・?リュー・・・?」
リュエールの遠吠えが聞こえスノーバンビから手を離すとシュトラールは声のする方へ駆け出す。
幻聴かとも思ったが、ハッキリとした声に自分を探しにきた可能性の方が高かった。
リュエールの匂いが近付き、走った先は、村だった。
「シュー、このバカッ!」
リュエールの怒る声が上からして上を見上げればグリムレインに乗ってリュエールが見下ろしていた。
「どうして、リューがココに居るの?」
「どうしても何も無いよ!この村にボランティアみたいな仕事を募集させたのは僕だからだよ!」
「なんで?なんでリューがそんな事してるの?」
「シューならこういうお金にもならないお人好ししかしない仕事を請け負うと思ったからだよ!まったく!住むとこさえあれば良いなんて呆れちゃうよ!」
耳の痛い言葉にシュトラールが耳を下げると、クスクス笑う声がしてリュエールの後ろからハチミツ色の髪が煌めいて長い耳の少女キリンが顔を出す。
「キリンさん・・・?どうしてリューと一緒に居るの?」
「久しぶり・・・かな?修行が終わったから今温泉大陸に移り住んでるの」
キリンがリュエールに笑ってリュエールもキリンに微笑むと軽くキスをしたのを見てシュトラールが「ええええ!!」と声を上げる。
「えーっ!リューどうして?なんで?意味わかんないんだけど?!」
「シューが居なくなったせいで母上が倒れて、父上が【刻狼亭】の仕事を放棄して僕が実質、今現在【刻狼亭】を動かしてるからね。『女将亭』も母上の代わりが必要でキリンが若女将として切り盛りしてるの。わかった?」
「うっ・・・ごめんなさい」
「まったく、わかったらさっさと帰るよ!」
その言葉にシュトラールは首を振る。
リュエールに会えて嬉しい反面、フィリアニルンと引き離されるのが怖い。
フィリアニルンが王女で自分は【刻狼亭】の人間ではあるけれど、身分違いは分かっているし、結婚相手のいる人を攫って逃げた様なものだとシュトラールも判っているから、どうしても家族の元へは帰れなかった。
国に関する事は解らないけれど、問題がある事は解るから、引き離されるのは目に見えていた。
「オレは、帰らない!オレはフィリアを連れて逃げるって約束した!だから帰らない!」
「その事でも話があるよ。どうして相談もせずにこんなバカやったの!」
唇を噛みしめた後でシュトラールは逃げる様に走ってヨードンの家の扉を開ける。
そこにはヨードンという名のお婆さんが1人暖炉の前で鍋を温めていた。
「ヨードンさん!フィリアは?!」
老女は首を振り、シュトラールは外に出ると、リュエールがグリムレインから降りてシュトラールに近付いていく。
耳を下げながらシュトラールがヴヴヴヴッと唸ると、リュエールがグルルルと唸り返す。
「子供みたいな駄々こねてないで帰るよ!」
「嫌だ!」
チッとリュエールが舌打ちをすると、地面を蹴ると顔面を狙ってリュエールの足が襲ってくる。
「ちょっ!リュー、なっ!わっ!」
「このっ、ちょこまか、するなっ!」
蹴り技を顔面だけを狙ってくるリュエールにシュトラールはギリギリに交わして腕でガードする。
毎朝、体術の訓練を2人でしていたが、リュエールに勝った事は1度も無い。
それでも、今はフィリアを探さないといけない。
その一心でリュエールに拳を放つと、ほんの少し髪にかすった後、リュエールがニッと笑って目の前まで来ると「技が大振り過ぎって、前から言ってるよね?」と腹にカウンターを貰い、ポーションを掛けられた。
「安心しなよ。ただの睡眠ポーションだから」
「待って・・・リュー・・・フィリア探さなきゃ・・・」
倒れたシュトラールを担いでリュエールが小さくため息を吐く。
「グリムレイン帰るよ」
「我を獣騎扱いするな。まったく」
グリムレインがブツブツ文句を言いながら温泉大陸に向かって飛び立った。
雪の積もった屋根の上から雪をおろして、屋根の上からフィリアニルンがヨードンの家に行くのを見つけてシュトラールが手を振る。
「フィリアー!」
「シュー、危ないわ。手を振り過ぎよー」
言った側からシュトラールがツルりと滑って屋根の上でワタワタと両手を振りながら足を踏ん張って耐えている。
シュトラールが「大丈夫!」と言って白い歯を見せて笑う。
フィリアニルン笑って「仕方がない人ね」と手を振りながらサクサクと雪を踏みながらヨードンの家に入っていく。
それを見届けてシュトラールは雪をおろす作業の続きをする。
「あと1軒やって狩りに行かなきゃ・・・たまにはお肉ガッツリ食べたい」
そう思った時に『シューちゃん唐揚げいっぱい作ったよ』と、朱里の声が聞こえた気がして、少しだけ鼻の奥がツーンとして泣きそうになると、シュトラールは頭を振る。
胸に詰まるような痛みにシュトラールは空に向かって遠吠えする。
ワォォオオオォォン
「・・・はぁ。スッキリした」
フィリアニルンとの生活は毎日が忙しいけれど、2人で居られたら幸せで、それ以上を望んでいないのに、たまに無性に寂しくもなる。母上や父上やリュー達は元気でいるだろうか?そんな事を思っては、連絡をした方が良いのか迷い、答えが出せないままフィリアニルンの元へ帰っていく。
「早く狩りに行かないと冬は陽が落ちるの早いから」
白い息を吐きながらシュトラールが木のスコップを使って雪をおろす手を急がせ、最後の一軒の雪下ろし作業を終えて、シュトラールは狩りをする為に山の中へ入っていく。
耳を澄ませて魔獣の足音を聞き分け、ガサッという音に集中して見付けたのは白い鹿スノーバンビでそこそこ大きくて危険度Cクラスの一般魔獣。
シュトラールは獣化すると風向きを読みながら体を低くして詰め寄り、一気に加速してスノーバンビの喉を前足で引き裂くととどめを刺す。
獣化を解いて雪で手に付いた血を拭き取ってスノーバンビの後ろ脚を持って雪の上に血の跡をつけながら戻っていく。
ゥォオオオオオォォン
「え・・・?リュー・・・?」
リュエールの遠吠えが聞こえスノーバンビから手を離すとシュトラールは声のする方へ駆け出す。
幻聴かとも思ったが、ハッキリとした声に自分を探しにきた可能性の方が高かった。
リュエールの匂いが近付き、走った先は、村だった。
「シュー、このバカッ!」
リュエールの怒る声が上からして上を見上げればグリムレインに乗ってリュエールが見下ろしていた。
「どうして、リューがココに居るの?」
「どうしても何も無いよ!この村にボランティアみたいな仕事を募集させたのは僕だからだよ!」
「なんで?なんでリューがそんな事してるの?」
「シューならこういうお金にもならないお人好ししかしない仕事を請け負うと思ったからだよ!まったく!住むとこさえあれば良いなんて呆れちゃうよ!」
耳の痛い言葉にシュトラールが耳を下げると、クスクス笑う声がしてリュエールの後ろからハチミツ色の髪が煌めいて長い耳の少女キリンが顔を出す。
「キリンさん・・・?どうしてリューと一緒に居るの?」
「久しぶり・・・かな?修行が終わったから今温泉大陸に移り住んでるの」
キリンがリュエールに笑ってリュエールもキリンに微笑むと軽くキスをしたのを見てシュトラールが「ええええ!!」と声を上げる。
「えーっ!リューどうして?なんで?意味わかんないんだけど?!」
「シューが居なくなったせいで母上が倒れて、父上が【刻狼亭】の仕事を放棄して僕が実質、今現在【刻狼亭】を動かしてるからね。『女将亭』も母上の代わりが必要でキリンが若女将として切り盛りしてるの。わかった?」
「うっ・・・ごめんなさい」
「まったく、わかったらさっさと帰るよ!」
その言葉にシュトラールは首を振る。
リュエールに会えて嬉しい反面、フィリアニルンと引き離されるのが怖い。
フィリアニルンが王女で自分は【刻狼亭】の人間ではあるけれど、身分違いは分かっているし、結婚相手のいる人を攫って逃げた様なものだとシュトラールも判っているから、どうしても家族の元へは帰れなかった。
国に関する事は解らないけれど、問題がある事は解るから、引き離されるのは目に見えていた。
「オレは、帰らない!オレはフィリアを連れて逃げるって約束した!だから帰らない!」
「その事でも話があるよ。どうして相談もせずにこんなバカやったの!」
唇を噛みしめた後でシュトラールは逃げる様に走ってヨードンの家の扉を開ける。
そこにはヨードンという名のお婆さんが1人暖炉の前で鍋を温めていた。
「ヨードンさん!フィリアは?!」
老女は首を振り、シュトラールは外に出ると、リュエールがグリムレインから降りてシュトラールに近付いていく。
耳を下げながらシュトラールがヴヴヴヴッと唸ると、リュエールがグルルルと唸り返す。
「子供みたいな駄々こねてないで帰るよ!」
「嫌だ!」
チッとリュエールが舌打ちをすると、地面を蹴ると顔面を狙ってリュエールの足が襲ってくる。
「ちょっ!リュー、なっ!わっ!」
「このっ、ちょこまか、するなっ!」
蹴り技を顔面だけを狙ってくるリュエールにシュトラールはギリギリに交わして腕でガードする。
毎朝、体術の訓練を2人でしていたが、リュエールに勝った事は1度も無い。
それでも、今はフィリアを探さないといけない。
その一心でリュエールに拳を放つと、ほんの少し髪にかすった後、リュエールがニッと笑って目の前まで来ると「技が大振り過ぎって、前から言ってるよね?」と腹にカウンターを貰い、ポーションを掛けられた。
「安心しなよ。ただの睡眠ポーションだから」
「待って・・・リュー・・・フィリア探さなきゃ・・・」
倒れたシュトラールを担いでリュエールが小さくため息を吐く。
「グリムレイン帰るよ」
「我を獣騎扱いするな。まったく」
グリムレインがブツブツ文句を言いながら温泉大陸に向かって飛び立った。
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