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15章
美味しいを探して⑨
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冬の寒さに肩を寄せ合いながら、シュトラールとフィリアニルンが小さな小屋で布団の中で丸まって過ごす。
ここは人が少ない村で冬の間は村の若い人達が出稼ぎで居ない為に、村に残った老人達の世話をしてくれる人を募集とあり、ほぼボランティア状態になるが、住む場所が確保できるため、2人はこの村で過ごしている。
「明日は雪下ろしを4軒やるだけだから、終わったら狩りに行って何か獲って来るね」
「じゃあ、私はヨードンさんの所に繕い物に行ってきますね」
「無理しないでねフィリア」
「シューも頑張り過ぎないでね」
「うん。オレの可愛いお姫様もね」
フィリアニルンの頬にキスをしてシュトラールが幸せそうに微笑んで、フィリアニルンもそんなシュトラールに微笑んでみせる。
この半年の間にフィリアニルンの心に刺さったナイフをシュトラールは抜いてきた。
容姿を気にするフィリアニルンに「絵本で見た妖精みたいに可愛いよ。フィリアの方が可愛いけど」と言って毎日好きだと告げてキスをする。
フィリアニルンは小国の第6王女だと告げたが、シュトラールは「ならオレのお姫様だね」と笑って、輿入れ先のカイザー王国の王の第5夫人にされるところだったのだと告げれば、シュトラールは「オレは第一夫人からフィリア一択だよ!」と笑って言う。
フィリアニルンは珍しい髪と目の色で気味悪がられ、ずっと人も寄り付かない城の離れにある小屋で1人暮らしていた。忘れ去られた王女。
けれど、意地の悪い他の姉達に『醜い』『化け物』と言われ続け、1人暮らしであるにもかかわらず頭からヴェールを被って過ごしていた。
その事を話せばシュトラールは「フィリアが可愛いから嫉妬したんだね。でもフィリアは可愛いから仕方ないよ」と頭を撫でてくれる。
今は2人共、髪も目の色も変えている為にフィリアニルンを髪色で気味悪がる人も目の色で怖がる人間も居ない。
それでも長年の習性でフードを被ってしまうフィリアニルンにシュトラールは「可愛いのに勿体ない・・・でも、フィリアはオレのだからフィリアの可愛さはオレだけが独り占めすればいいからいっか!」と抱きしめてくれる。
幸せで胸がいっぱいに満たされていく。
これが『番』故の事なのか、シュトラールが本当にフィリアニルンを好きで言っているのかよくわからない。
それでも、シュトラールが「好き」と言ってくれるたびにどうしようもなく泣きたくて、切なくて、離れられない。
自分の為に家族を捨てて一緒に過ごしてくれる優しい人。
ただ、家族にちゃんと元気で居ると知らせた方が良いのではないだろうかと言ったら、婚姻の書類を出したのだ。
「これで父上達は直ぐにオレが元気でいるってわかってくれるから大丈夫。結婚もしたよって報告も兼ねてるから」
これに関してはフィリアニルンも目が点になった。
ちゃんと輿入れ先があって逃げてしまったと告げたのに、シュトラールはきょとんとして首を傾げて「でもフィリアはもうオレのだもん」と照れてみせた。
そこ照れてる場合じゃないですよ?と、婚姻の書類が受理され、慌ててフィリアニルンが「国同士の問題になる!」と騒いで、むすくれるシュトラールに書類を破棄しないと不味いと告げると、「嫌だ!」と珍しく怒った。
「じゃあ閲覧禁止の書類を提出して!直ぐに!誰にも気づかれる前に!」
「そのくらいなら・・・ちぇっ、オレのお嫁さんって宣伝したかったのに」
「シュー!もう!私達は逃亡してるの!」
そんなやり取りをして書類を閲覧禁止にしようと書類を提出したら、既に閲覧禁止になっていた。
「あー、父上にオレに関する書類とか監視されてたみたい。流石父上、仕事が早い」
「シューのお父様は何者なの・・・」
「えへへ。これで父上に結婚した事は報告出来たし良かったね」
「シュー・・・何かする時は先に私にも相談をしてね?」
「うん。分かった!」
こうしてフィリアニルンとシュトラールは書類上で夫婦になった。
「きっとこのコーデンの街で書類を出したのもバレてるから、直ぐに逃げちゃおっか!」
「えと、シューのご家族なのよね?ご家族から逃げるの?」
「だって、絶対怒られる・・・リューに・・・」
「リュー?」
「オレの双子の兄上でリュエールっていうの。滅茶苦茶怖いっ!」
ブルッと身を震わせてシュトラールがフィリアニルンの手を引いて歩きだし、コーデンの街を歩きながら、シュトラールが懐かしそうに色々話してくれた。
「あそこの屋台の『コパサヌ』っていうの美味しいんだよ!食べて行こっか!」
「このソーセージはリューと半分ずつ食べたんだよ!」
「父上と母上とリューとグリムレインと一緒にここで買い物したんだ」
楽しそうに家族の話をするシュトラールに心の中で何度も「ごめんなさい」と謝って、「シュトラールの家族もごめんなさい」と何度も心の中で頭を下げる。
シュトラールの温かい手が手放せなくて月日だけが流れていっていた。
ここは人が少ない村で冬の間は村の若い人達が出稼ぎで居ない為に、村に残った老人達の世話をしてくれる人を募集とあり、ほぼボランティア状態になるが、住む場所が確保できるため、2人はこの村で過ごしている。
「明日は雪下ろしを4軒やるだけだから、終わったら狩りに行って何か獲って来るね」
「じゃあ、私はヨードンさんの所に繕い物に行ってきますね」
「無理しないでねフィリア」
「シューも頑張り過ぎないでね」
「うん。オレの可愛いお姫様もね」
フィリアニルンの頬にキスをしてシュトラールが幸せそうに微笑んで、フィリアニルンもそんなシュトラールに微笑んでみせる。
この半年の間にフィリアニルンの心に刺さったナイフをシュトラールは抜いてきた。
容姿を気にするフィリアニルンに「絵本で見た妖精みたいに可愛いよ。フィリアの方が可愛いけど」と言って毎日好きだと告げてキスをする。
フィリアニルンは小国の第6王女だと告げたが、シュトラールは「ならオレのお姫様だね」と笑って、輿入れ先のカイザー王国の王の第5夫人にされるところだったのだと告げれば、シュトラールは「オレは第一夫人からフィリア一択だよ!」と笑って言う。
フィリアニルンは珍しい髪と目の色で気味悪がられ、ずっと人も寄り付かない城の離れにある小屋で1人暮らしていた。忘れ去られた王女。
けれど、意地の悪い他の姉達に『醜い』『化け物』と言われ続け、1人暮らしであるにもかかわらず頭からヴェールを被って過ごしていた。
その事を話せばシュトラールは「フィリアが可愛いから嫉妬したんだね。でもフィリアは可愛いから仕方ないよ」と頭を撫でてくれる。
今は2人共、髪も目の色も変えている為にフィリアニルンを髪色で気味悪がる人も目の色で怖がる人間も居ない。
それでも長年の習性でフードを被ってしまうフィリアニルンにシュトラールは「可愛いのに勿体ない・・・でも、フィリアはオレのだからフィリアの可愛さはオレだけが独り占めすればいいからいっか!」と抱きしめてくれる。
幸せで胸がいっぱいに満たされていく。
これが『番』故の事なのか、シュトラールが本当にフィリアニルンを好きで言っているのかよくわからない。
それでも、シュトラールが「好き」と言ってくれるたびにどうしようもなく泣きたくて、切なくて、離れられない。
自分の為に家族を捨てて一緒に過ごしてくれる優しい人。
ただ、家族にちゃんと元気で居ると知らせた方が良いのではないだろうかと言ったら、婚姻の書類を出したのだ。
「これで父上達は直ぐにオレが元気でいるってわかってくれるから大丈夫。結婚もしたよって報告も兼ねてるから」
これに関してはフィリアニルンも目が点になった。
ちゃんと輿入れ先があって逃げてしまったと告げたのに、シュトラールはきょとんとして首を傾げて「でもフィリアはもうオレのだもん」と照れてみせた。
そこ照れてる場合じゃないですよ?と、婚姻の書類が受理され、慌ててフィリアニルンが「国同士の問題になる!」と騒いで、むすくれるシュトラールに書類を破棄しないと不味いと告げると、「嫌だ!」と珍しく怒った。
「じゃあ閲覧禁止の書類を提出して!直ぐに!誰にも気づかれる前に!」
「そのくらいなら・・・ちぇっ、オレのお嫁さんって宣伝したかったのに」
「シュー!もう!私達は逃亡してるの!」
そんなやり取りをして書類を閲覧禁止にしようと書類を提出したら、既に閲覧禁止になっていた。
「あー、父上にオレに関する書類とか監視されてたみたい。流石父上、仕事が早い」
「シューのお父様は何者なの・・・」
「えへへ。これで父上に結婚した事は報告出来たし良かったね」
「シュー・・・何かする時は先に私にも相談をしてね?」
「うん。分かった!」
こうしてフィリアニルンとシュトラールは書類上で夫婦になった。
「きっとこのコーデンの街で書類を出したのもバレてるから、直ぐに逃げちゃおっか!」
「えと、シューのご家族なのよね?ご家族から逃げるの?」
「だって、絶対怒られる・・・リューに・・・」
「リュー?」
「オレの双子の兄上でリュエールっていうの。滅茶苦茶怖いっ!」
ブルッと身を震わせてシュトラールがフィリアニルンの手を引いて歩きだし、コーデンの街を歩きながら、シュトラールが懐かしそうに色々話してくれた。
「あそこの屋台の『コパサヌ』っていうの美味しいんだよ!食べて行こっか!」
「このソーセージはリューと半分ずつ食べたんだよ!」
「父上と母上とリューとグリムレインと一緒にここで買い物したんだ」
楽しそうに家族の話をするシュトラールに心の中で何度も「ごめんなさい」と謝って、「シュトラールの家族もごめんなさい」と何度も心の中で頭を下げる。
シュトラールの温かい手が手放せなくて月日だけが流れていっていた。
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