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15章
美味しいを探して①
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双子の兄リュエールに関しての番の話は母親である朱里に禁止されて、大人しく自分も出会いを求めて動こうとシュトラールが行動を開始した日は少し寒い1月の終わりだった。
討伐で貯めたお金を財布に入れ、ジャケットのポケットに温泉大陸の通行証を入れて、朱里が編んでくれた白いマフラーに黒い線と黄色い線の入った物を巻く。
持ち物はそれだけで、後は魔法通信の出来る腕輪だけ。
とてもラフな格好で出掛けるシュトラールに朱里が「人に先ずは美味しいお店を聞いて失敗しない様に行きなさい。聞いたところが判らなくなるといけないからメモ用紙も持って行きなさい」と、メモ用紙とペンをシュトラールに持たせて送り出す。
「母上、行ってきまーす!」
「変な人についていっちゃ駄目だからねー!」
元気に出ていくシュトラールに朱里が「番なんて早々見つからないって自分で言ってたのに行くんだから」と、少し息子達2人が自分の手から離れて行くのに不満げな顔をする。
足元に居る3つ子達に「3人の恋人は当分私ですからね?」と言い聞かせて、後ろにいつの間にか居たルーファスに捕まり「恋人はオレだけで十分だろ?」と大人気ない事を言われて、自分にはまだ大きなお子さんが居るなと苦笑いした。
冒険者ギルドで冒険者の人間に「今まで行った大衆食堂で美味しかった所を教えて」と、シュトラールが人懐っこい笑顔で聞いたところ、シュトラールの持っていたメモ用紙はすぐに書き込みでいっぱいになる。
冒険者達にお礼を言って、シュトラールが尻尾を振りながらとりあえず、大橋で渡ってすぐの大陸へ乗り合い馬車に乗って旅立つ。
馬車の中で腰の痛みを取るために温泉大陸に通っているという老人と話をしながら、「痛みならば回復魔法の方が利かないかな?」と聞けば、老人は「回復魔法も良いが温泉でじわじわーと治って体にしみていくのがおつなんだよ」と言われて成程と、頷く。
老人は2つ先の停留所で降りて、シュトラールは老人に「また温泉大陸に来てねー」と元気に手を振って別れる。
冒険者に聞いた大衆食堂はタンシム国の少し下にあるガゼリアという街にある『カモハル食堂』。
煮込み料理が絶品の冬にあれは一度は食いたい味!と、いう事らしい。
「らっしゃいませー!」
賑わう食堂の中は木造りの温かい場所という感じで、和気藹々としたオジサン店主と冒険者や土方の様な職人が所狭しとテーブルで飲み食いしている。
色んな匂いが入り混じり、シュトラールは空いている席に座って店の中に並んでいるメニューの書いてある木札を見る。
「メニュー沢山・・・煮込み料理ってどれだろ?」
「煮込み料理なら『トンドラ煮込み』が美味しいわよ」
後ろの席から女性の声がしてシュトラールが振り向くと、眼鏡を掛けたそばかす混じりのヤギ獣人の女性が居た。
見た目が考古学者にも見える大きなカバンに地図や丸めた書類が大量に顔を出している。
「そうなの?んじゃそれにしよ!おじさーん!『トンドラ煮込み』1つくださーい!」
食堂の店主に手を上げて注文をしてシュトラールが笑顔で「お姉さん有り難う!」と言うと女性は目を丸くする。
女性はシュトラールをまじまじと見て、嬉しそうに尻尾を振る様子に「おや?」と思う。
「もしかして、君は凄く若いのかな?」
「ん?オレ?15歳!」
「・・・なるほど、ならば許そう。『お姉さん』呼びなんて同じ年の男に言われたらそこら辺に埋めているところよ」
「母上にもよく「体が大きいから忘れがちだけど子供なのよね」って言われてる」
えへへーと、笑うシュトラールに女性も笑っていると、大衆食堂ならではの早さで注文の料理が運ばれる。
赤味噌で煮込んだスジ肉と大根に人参とコンニャクが入っている。
「いただきます!」
甘辛く煮込んであり、スジ肉は柔らかく、でも大根と人参は煮崩れない程の柔らかさ。
シュトラールが「おにぎり!おにぎり欲しいかも!」と騒ぐと、女性がうんうんと頷く。
「お姉さんコレ美味しいね!教えてくれてありがとー!」
「どういたしましてよ。私はこう見えて食の食べ歩きをしているから、君みたいに美味しそうに食べている子を見ると、やっぱり美味しい物は笑顔で食べて欲しいって思うわね」
「へぇー。お姉さん食べ物研究家かなにかなの?」
首を傾げるシュトラールに女性は1冊の本を手渡す。
『世界の食堂ランキング』著:アーネス・ネイト
「この人の本に書いてある食堂を食べ歩きしてるうちに自分でも美味しい食堂を探したくなっちゃったの」
「そうなんだ。お姉さんのカバンの地図とかも全部食べ歩きのやつなの?」
「そうよ。見てみる?」
「良いの?見たい!」
地図とメモ用紙に手帳にぎっしりと絵と場所と料理名が書いてある。
書き込みの凄さにシュトラールが「すごい!」と言うと女性は目を細めて笑う。
「私はカシュー・ヘイゲル。良かったら他の店も案内しましょうか?」
「本当!嬉しいな!オレはシュトラール!よろしくね、カシューさん」
それからカシューとシュトラールは2軒ほど店をはしごをして、カシューが温泉大陸の手前の街で宿を取るというので一緒に馬車に乗り、明日の朝は温泉大陸の通行証の発行手続きをして温泉大陸に入る予定だと言うカシューに明日も会う約束をする。
「温泉大陸なら美味しい所いっぱい知ってるから案内させて!」
「問題は入れるかなんだけどね」
「そこはオレも応援してる!カシューさん悪い人じゃないし大丈夫だよ」
カシューが温泉大陸の手前の街で降りてシュトラールは手を振りながら「また明日ねー!」と元気に声を出した。
カシューも笑顔で手を振って2人は別れた。
シュトラールがご機嫌で家に戻ると心配して家で待っていた朱里に今日食べた料理の話とカシューの話をして、「明日も会うんだー」と、嬉しそうに報告すると朱里も笑ってシュトラールに「明日も楽しく過ごせると良いね」と笑う。
シュトラールの番探しは初日から食べ物に行ってしまった事に朱里が「色気より食い気かぁー・・・心配して損しちゃった」と小さく苦笑いする。
討伐で貯めたお金を財布に入れ、ジャケットのポケットに温泉大陸の通行証を入れて、朱里が編んでくれた白いマフラーに黒い線と黄色い線の入った物を巻く。
持ち物はそれだけで、後は魔法通信の出来る腕輪だけ。
とてもラフな格好で出掛けるシュトラールに朱里が「人に先ずは美味しいお店を聞いて失敗しない様に行きなさい。聞いたところが判らなくなるといけないからメモ用紙も持って行きなさい」と、メモ用紙とペンをシュトラールに持たせて送り出す。
「母上、行ってきまーす!」
「変な人についていっちゃ駄目だからねー!」
元気に出ていくシュトラールに朱里が「番なんて早々見つからないって自分で言ってたのに行くんだから」と、少し息子達2人が自分の手から離れて行くのに不満げな顔をする。
足元に居る3つ子達に「3人の恋人は当分私ですからね?」と言い聞かせて、後ろにいつの間にか居たルーファスに捕まり「恋人はオレだけで十分だろ?」と大人気ない事を言われて、自分にはまだ大きなお子さんが居るなと苦笑いした。
冒険者ギルドで冒険者の人間に「今まで行った大衆食堂で美味しかった所を教えて」と、シュトラールが人懐っこい笑顔で聞いたところ、シュトラールの持っていたメモ用紙はすぐに書き込みでいっぱいになる。
冒険者達にお礼を言って、シュトラールが尻尾を振りながらとりあえず、大橋で渡ってすぐの大陸へ乗り合い馬車に乗って旅立つ。
馬車の中で腰の痛みを取るために温泉大陸に通っているという老人と話をしながら、「痛みならば回復魔法の方が利かないかな?」と聞けば、老人は「回復魔法も良いが温泉でじわじわーと治って体にしみていくのがおつなんだよ」と言われて成程と、頷く。
老人は2つ先の停留所で降りて、シュトラールは老人に「また温泉大陸に来てねー」と元気に手を振って別れる。
冒険者に聞いた大衆食堂はタンシム国の少し下にあるガゼリアという街にある『カモハル食堂』。
煮込み料理が絶品の冬にあれは一度は食いたい味!と、いう事らしい。
「らっしゃいませー!」
賑わう食堂の中は木造りの温かい場所という感じで、和気藹々としたオジサン店主と冒険者や土方の様な職人が所狭しとテーブルで飲み食いしている。
色んな匂いが入り混じり、シュトラールは空いている席に座って店の中に並んでいるメニューの書いてある木札を見る。
「メニュー沢山・・・煮込み料理ってどれだろ?」
「煮込み料理なら『トンドラ煮込み』が美味しいわよ」
後ろの席から女性の声がしてシュトラールが振り向くと、眼鏡を掛けたそばかす混じりのヤギ獣人の女性が居た。
見た目が考古学者にも見える大きなカバンに地図や丸めた書類が大量に顔を出している。
「そうなの?んじゃそれにしよ!おじさーん!『トンドラ煮込み』1つくださーい!」
食堂の店主に手を上げて注文をしてシュトラールが笑顔で「お姉さん有り難う!」と言うと女性は目を丸くする。
女性はシュトラールをまじまじと見て、嬉しそうに尻尾を振る様子に「おや?」と思う。
「もしかして、君は凄く若いのかな?」
「ん?オレ?15歳!」
「・・・なるほど、ならば許そう。『お姉さん』呼びなんて同じ年の男に言われたらそこら辺に埋めているところよ」
「母上にもよく「体が大きいから忘れがちだけど子供なのよね」って言われてる」
えへへーと、笑うシュトラールに女性も笑っていると、大衆食堂ならではの早さで注文の料理が運ばれる。
赤味噌で煮込んだスジ肉と大根に人参とコンニャクが入っている。
「いただきます!」
甘辛く煮込んであり、スジ肉は柔らかく、でも大根と人参は煮崩れない程の柔らかさ。
シュトラールが「おにぎり!おにぎり欲しいかも!」と騒ぐと、女性がうんうんと頷く。
「お姉さんコレ美味しいね!教えてくれてありがとー!」
「どういたしましてよ。私はこう見えて食の食べ歩きをしているから、君みたいに美味しそうに食べている子を見ると、やっぱり美味しい物は笑顔で食べて欲しいって思うわね」
「へぇー。お姉さん食べ物研究家かなにかなの?」
首を傾げるシュトラールに女性は1冊の本を手渡す。
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「この人の本に書いてある食堂を食べ歩きしてるうちに自分でも美味しい食堂を探したくなっちゃったの」
「そうなんだ。お姉さんのカバンの地図とかも全部食べ歩きのやつなの?」
「そうよ。見てみる?」
「良いの?見たい!」
地図とメモ用紙に手帳にぎっしりと絵と場所と料理名が書いてある。
書き込みの凄さにシュトラールが「すごい!」と言うと女性は目を細めて笑う。
「私はカシュー・ヘイゲル。良かったら他の店も案内しましょうか?」
「本当!嬉しいな!オレはシュトラール!よろしくね、カシューさん」
それからカシューとシュトラールは2軒ほど店をはしごをして、カシューが温泉大陸の手前の街で宿を取るというので一緒に馬車に乗り、明日の朝は温泉大陸の通行証の発行手続きをして温泉大陸に入る予定だと言うカシューに明日も会う約束をする。
「温泉大陸なら美味しい所いっぱい知ってるから案内させて!」
「問題は入れるかなんだけどね」
「そこはオレも応援してる!カシューさん悪い人じゃないし大丈夫だよ」
カシューが温泉大陸の手前の街で降りてシュトラールは手を振りながら「また明日ねー!」と元気に声を出した。
カシューも笑顔で手を振って2人は別れた。
シュトラールがご機嫌で家に戻ると心配して家で待っていた朱里に今日食べた料理の話とカシューの話をして、「明日も会うんだー」と、嬉しそうに報告すると朱里も笑ってシュトラールに「明日も楽しく過ごせると良いね」と笑う。
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