黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
上 下
448 / 960
15章

腹ペコ妖精

しおりを挟む
 大きな滝のあるグラシアス森林はわたしの暮らしているエルフの森から半日程行ったところにある場所。
滝に生えているコケを採りに行くと、二虹が掛かっていた。
二虹はピンクと黄色の2つしか掛かっていない虹で、二虹の下をくぐると良い事があるのだとか言われている。

「良い事あると良いなぁ」

 ニ虹の下をくぐって、ブーツを脱いで服を脱ぐとハーフタンクトップとパンツ姿で小さなポーチを腰に巻いて滝の中に入る。
岩場に生えているコケをポーチの中に入れておいたガラス瓶に入れて蓋をするとポーチにまた入れて滝を潜って出ると、目の前を大きな魚が飛び跳ねた。

「お昼ご飯!発見!!」

 急いで服と一緒に置いておいた弓を手に取り、矢に細い紐をくくり付けると耳を澄ませて弓を構える。
風がザワッと吹いて耳飾りが揺れる。
リュエールに貰ったヒドラの回復クリスタルの欠片を耳飾りにしている物で、リュエールの言う様に多少の怪我は直ぐに治る優れもの。
わたしの片方の耳飾りはエメラルド色のまま。もう片方はリュエールに渡してある。

 と、集中。

 パシャンと水音が弾き、魚が水面から飛び跳ね、矢を放つ。
水中に潜る魚と矢に付いた紐を引いて緩めての攻防を繰り返し、再び水面に上がって来たところを一気に糸を引き寄せる。

「やったー!お昼ご飯ー!!」

 まだビチビチと暴れる魚を岸に引き上げて鼻歌まじりに火を起こす準備をしようと石を積み上げていると、後ろからフワッと風が身に纏わりついて濡れた体が乾いていく。
振り向くとリュエールが少し困った顔でわたしを見て自分の着てるシャツを掛けて来る。

「コラ。服を着替えてからお昼ご飯にしないと駄目でしょ?」
「へっ?わわっ!~っ!!!」

 慌ててしゃがみ込むとリュエールがクスッと笑って「火を起こしておくからキリンは着替えてていいよ」と石を積み上げ始める。
ううっ、下着見られた~っ!!
でもリュエールすごく涼しい顔してるし・・・気にし過ぎかな?
背中向いてるし、大丈夫かな?

 胸がドキドキするーっ!!!
トキメキとかではなく、普通に恥ずかしい!!

「今回は随分早く来たんだね」
「うん。キリンに教えてもらった風魔法で速度増加させたからね。それに、キリンに早く会いたかったから」
「そ、そうなんだー風魔法便利だよね」

 ひぃっ!リュエールはどうしてそう甘ったるい言葉が直ぐに出るの?!
ううっ、早く着替えたいのに指が震えるっ!!!
落ち着け!落ち着くのよキリン!!

「キリンは僕に会いたかった?」

 首筋に息が掛かる距離にリュエールがいつの間にか居て、驚きのあまり思わず飛び跳ねそうになったら、リュエールが笑っていて、心臓が本当に口から出そう・・・。

「相変わらず、キリンは直ぐに赤くなるんだから。本当に可愛いなぁ」
「うぐっ・・・恥ずかしい・・・」
「んーっ、そういう所も可愛い」

 リュエールに後ろから抱きしめられて、ひぇぇっと思っているとビチビチビチと魚が滝の中へ戻ろうと岸辺で大暴れしていて、慌てて糸を引っ張る。

「お昼ご飯!逃げちゃダメぇー!!」
「あはは。魚も僕が何とかしとくから、本当に早く服着て?」
「ふっ、わぁぁぁ!!」

 慌てて魚の糸を引っ張ったから羽織っていたリュエールのシャツが地面に落ちてた・・・。
ええ、もうわたし下着状態再びですよ?!
穴があったら入りたい。本当に・・・。

 ようやく服を着替え終えて、リュエールにシャツを返すと、リュエールがシャツを着ながら「キリンの匂いがする」と、幸せそうな顔をして目を伏せるから、思わず変な声が出そうになった。

「・・・・っ!!!!」

 エルフは美形が多いけど、リュエールは別の意味で美人だから困る。
あ、でも、細い割りには筋肉がしっかりあるんだ。エルフは筋力が付きにくいからこんな風に筋肉がある肉体って見るの初めてかもしれない。
獣人って筋肉付きやすいのかな?
そういえば、リュエールのお父さんのルーファスさんも腕、がっしりしてたなぁ。

「何?見惚れてた?」
「ふわぁっ!!」

 ひぇっ、ジロジロ見過ぎてた。
あれ?リュエールが目の前に来たけど、少し違和感。

「リュエール、もしかして、背が伸びた?」
「どうだろ?ああ、でもキリンと会った時は同じくらいだったけど、今はキリンより少し高いかな?」
「う・・・羨ましいっ」
「ふふっ、キリンはそのままでいてよ」
「えーっ、私、エルフの中で小人って言われてるのに・・・」
「僕だけの可愛い小人でいて」

 金色と黒い目のオッドアイが優しく笑って頬に手が添えられると優しく唇が重なって、トクンと胸が小さく高鳴る。甘い口の中の味に心の中の乾いた様な物が潤う気がする。
これが番の魂の引き合う感じなのかな?

 パチンと、火を起こした木の枝が爆ぜる音がして、ゆっくりと唇が離れる。
その途端、くぅ~っと、お腹の音が鳴って別の意味で恥ずかしさのあまり真っ赤になる。
もぉーわたしのお腹ここは鳴っちゃいけないところだってばぁあ!!
リュエールが小さく笑って自分のカバンから料理の入ったガラス容器を出す。

「母上が色々作って持たせてくれたから、魚と一緒に食べよう」
「うん!アカリさんのご飯大好きー!」

 2人で今修行してる事や近所の人の事を喋りながら二虹を見ながらお昼ご飯を一緒に食べて一緒にわたしの村に夜遅くに戻り、わたしの家でネリリスお婆ちゃんにリュエールは温泉大陸に送ってもらって帰る。
早くわたしが転移魔法を使える様になれば送ってあげられるんだけど、わたしにはまだ無理だから、転移魔法が使える様になるのがわたしの一番の目標。

 早く魔法を覚えて行き来出来るようになればもっと会えるんだけどな。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する

アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。 しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。 理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で 政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。 そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。