黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
上 下
447 / 960
15章

妖精の居ない大陸

しおりを挟む
 庭の『竜の癒し木』が1本酷い状態になったのでアルビーとケルチャと一緒に新しい苗木を持ってきて庭に植えたのだけど・・・。
毎日お水をあげてはいたんだけど、不思議な程成長が凄くて3人で「土が良いのかな?」とニクストローブのお蔭かな?と感謝しつつ過ごして、今日も水をあげに行くとリューちゃんが苗木の前に居た。

「リューちゃんどうしたの?」
「あ、母上。随分、苗木が大きくなったなって思っただけ」

 そう言ったリューちゃんの顔は少し優しい顔で、最近・・・というか、キリンちゃんを温泉大陸から追い出してから2ヶ月弱、触らぬ神に祟りなしという様にキリンちゃんの話題を出すとピリピリしていたけど、落ち着いてきたのかな?

「リューちゃん、ごめんね?あんなに皆で騒いじゃって、こういうの皆が周りで騒ぐと恥ずかしいし嫌だよね・・・ごめんね」
「・・・気にしてないよ。ただ、放っておいてくれたら有り難いかな?」
「でもねリューちゃん、番って大事な事だし一生物だから・・・心配っていうか・・・」
「母上、だから心配しないで良いってば」

 少し片眉を上げて迷惑そうな顔をするリューちゃんにこれ以上は言わない方が良いのは解っているんだけど、これで良いのかな?後悔しないかな?ってずっと思ってて、ルーファスも「リューの決める事だ」って言うだけだし。

「うーっ、リューちゃん。ならせめてシューちゃんを許してあげて欲しいの」

 あれ以来、リューちゃんはシューちゃんを「お節介焼き」と言ってキリンちゃんの事で必死になるシューちゃんに「いい加減にしてくれる?」と凄く冷たい態度を取るようになってしまって、シューちゃんはお耳ぺしゃんこにして「クゥーン」と悲しそうに背中を丸めてトボトボ歩くのを最近よく見る。

「許すも何も、別に怒ってないよ?ただ、シューがお節介しなきゃ良いの」
「シューちゃんはリューちゃんが心配なんだよ?『番消失ロスト』になったら助けてあげる事は難しいから」
「シューのお節介焼きは母上譲りだね。もぅ、これあげるから大人しくしてて」

 リューちゃんが薄い緑色の小瓶を押し付けてきて「植物の成長促進剤」って言うとスタスタと家の方へ帰って行った。

「リューちゃん・・・怒らせちゃった・・・」

 少ししつこかったかな?
薄い緑色の小瓶を持ってハァとため息を吐いて苗木に水やりをしていると、ケルチャとケイトが2階から飛んで降りて来る。

「今日も水やりお疲れ様ね」
「お疲れさま~」

「うん・・・」

「あら、元気ないわね?」
「だいじょうぶー?」

「ちょっとリューちゃん怒らせちゃって・・・」

 ケルチャとケイトがよしよしと私の頭を撫でて「どんまい」と声をかけてくれる。
言えば言うほどリューちゃんが拗らせてしまいそうなのは解ってるのに、口出ししちゃうのはお節介だよね・・・。
でも、本当に心配なんだよ?

「あら?アカリ良い物持ってるわね」
「ジュース?」
「これ?リューちゃんがくれたの。植物の成長促進剤なんだって、ジュースじゃないよ」

 チャポンと小瓶を揺らして見せるとケルチャが「へぇー」と言った後でニヤニヤしながら小瓶を開けて匂いを嗅いで指を回すと、小瓶から植物がポンポンと生えてくる。

「わっ!ケルチャなにこれ?!」
「ケイトもやって」
「はーい。兄さん」

 ケイトも指を回すと小瓶から生えた植物に花がポポポンと咲いて小瓶の中からあふれ出た草花でミッシリ状態。
ズシンと、上から黒い物が落下してきたと思ったら、リューちゃんが庭に降りて来ていた。

「キリン?!」

「・・・リューちゃん?」

「あっ・・・」

 リューちゃんの頬が少し赤くなると、ケルチャがニヤニヤしながら草花でミッシリになった小瓶をリューちゃんに振って見せる。

「アカリを苛めたら駄目よ?フフ」
「メッですよー」

 ケルチャとケイトがリューちゃんにニヤニヤ笑いをしてリューちゃんが少し唇を噛みしめるとハァとため息を吐く。

「母上・・・」
「はい!」
「ハァー・・・内緒、だからね?」

 よくわからないけど、コクコク頷くとリューちゃんがシャツのボタンを少し外して革紐にぶら下がった小さな皮袋を出して中身を見せてくれる。
綺麗なエメラルドの耳飾りが1つ。
何処かでみたような?

「キリンの耳飾りだよ」
「え?!」
「あれから何回かキリンと会ってる」
「えええ?!!」
「母上、声大きい」
「はわわ・・・ごめんなさい。でも、いつの間に?」

 口元に両手をつけながらリューちゃんを見上げると、リューちゃんが目線を逸らしながら「教えない」と頬を赤くしている。
あらまぁ・・・リューちゃん、可愛いっ!

「母上、何か変な事思ったでしょ?」
「・・・いえいえ。でも、少し驚いちゃった」
「母上、内緒だからね?」
「それは良いんだけど、上手くいってるの?」
「・・・それはどういう意味で?」

 少し胡散臭い物を見る様な目でリューちゃんにねめつけられて、ワタワタと手を振って「深い意味のあれじゃなくて」と慌てて言うと、リューちゃんが「プッ」と吹き出す。

「安心してよ。ちゃんと避妊はしてるから」
「へ?・・・ふぁぁああ!!リュ、リューちゃん?!」 

 わぁぁぁああ!!!
私の息子がぁあああ!!!
大人の階段上ってた・・・?

「冗談だよ。まぁ、キリンが『竜の癒し木』折ったお詫びにってソレくれたの」

 リューちゃんが小瓶を指さして「もう、それどうするの?」と笑ってケルチャに言うとケルチャが指を鳴らすと、液体状に戻って小瓶の中に戻っていく。

「リューちゃん・・・母上をあんまり揶揄わないで!もぅ!」
「ごめん。でも、母上、僕が今キリンとどうこうなったら大変でしょ?だから無理やりくっつけようとか色々してほしくないんだ。僕はまだまだ覚える事もいっぱいあるし、人1人の人生を背負える程大人じゃないよ?まだ父上や母上の庇護下にある以上は迷惑を掛けてまで一緒になりたいとか思わない」
「はわわ・・・リューちゃん大人だね」

 リューちゃんが少し眉を下げて「子供だって説明してるんだけどな」と、小さくため息を吐いて皮袋に耳飾りを仕舞うと、唇の上に人差し指をつける。

「内緒・・・だからね?そこの2人もね?」

 ケルチャとケイトは「言いふらす程野暮じゃないわよ」と肩をすくめてみせる。
リューちゃんは「話はお終い」と、再び家の中に戻って行った。


 私の息子さんは色々考えている様です・・・。
あ、でもシューちゃんがそれなら可哀想に思えるのは私だけかな?

 でも、内緒って約束しちゃったから・・・言うわけにもいかないし、今日はシューちゃんの好きな物を作ってぺしゃんこのお耳を慰めてあげよう。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する

アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。 しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。 理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で 政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。 そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた

黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」 幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。