黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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15章

帰って来た妖精

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 座敷牢でふかふかのお布団で寝ていたところをポコポコと杖で叩かれて起こされるという最悪の目覚めをした後、転移魔法でネリリスお婆ちゃんが座敷牢に現れていた事に気付き「うわぁあ!」と声を上げると、ネリリスお婆ちゃんが「まだ運命の伴侶を見つけてないのかい?駄目な娘だ」と移転魔法で飛ばされたわたし・・・。

 再び落下して木をバッキリ折って地面にお尻をついて着地。
目の前には昨日、わたしが転移魔法を使って現れてしまったリュエール達の家。

 ネリリスお婆ちゃん何て事するんだー!!!と、心で叫びつつも、物音で起きてきたリュエールとシュトラールに「何してんだこいつ?」という目をされていたたまれない・・・。

 ネリリスお婆ちゃんがまだ座敷牢に居るかもしれないという話になり、リュエールに腕を掴まれていきなりの全力疾走をさせられたけど、家族の人が見えなくなった途端、態度が変わった。

「ちょっと失礼するよ」
「へっ?」

 いきなり抱き上げられて、フッと爽やかにリュエールが笑うと走り出す。
なに?何今の笑顔???
ひぇぇ~っ!!!胸がっ!!胸がドキドキするのは全力疾走の後だからだよね??
うわぁ・・・、お肌綺麗・・・。

「何かついてる?」

 顔を左右にブンブン振ると、また爽やかな笑顔で目を細めて笑ってくる。
何なのー?!!昨日とさっきと態度違う気がするんだけど・・・。

「あ・・・」
「ん?どうかした?」
「えと、ハーブと柑橘系になんかいい香りがするなって・・・」
「ああ、母上の店でハーブとミッカジュースとか扱ってるからね。それかな?」
「そうなんだ。なんか森みたいな良い香りだなって」

 リュエールが少し立ち止まって「んーっ・・・」と声を出してチラッとわたしを見る。

「キリンも良い香りしてるよ。会った時から番の匂いだなって分かってたんだけどね」
「えと、それは、その・・・」
「ふふっ。でも、キリンが温泉鳥襲ってるし、可愛いし、可笑しくて・・・ふふっ」
「あれの何処が可愛いって思った態度なの?!」
「あはは。ごめん。でも、ああしないとキリンは確実に温泉鳥殺してたでしょ?」
「うっ・・・その、ゴメンナサイ」

 楽しそうにリュエールが笑って顔をわたしのお腹に押し付けて笑いを堪えている。
ううっ・・・アレはなんの意味がある演技なの??

「あー、笑った。キリン、意地悪してごめんね?」

 そう言ってリュエールが顔を近付けてきた。
何だろう?しっとりした感触が唇に広がって、甘い・・・?

「番同士のキスは甘いって、本当だね」

 へっ?
キス?今の、キス??!!!

「ふぁっ!!えっ!!キス?!」
「わかんなかった?んじゃ、もう1回」
「ふぇっ!わっぷっ・・・んっ」

 唇、重なった!!
うわーっうわぁああっ!!!!
ドキドキし過ぎて心臓が口から飛び出しそうなんですけど?!
あ・・・っ、やっぱり甘い。
口の中、甘くて・・・、顔が熱くなる・・・。
力が抜けていきそう。何だろうこれ?泣きそうな気持ちがする。
悲しいわけじゃない、胸がすごく痛くなる。

 唇が離れた時、あっ、離れちゃ嫌だなって思った。
こんなの・・・おかしいよ・・・。
会ったばかりだし、よく知らないし、ううーっ。
でも、好きかも・・・?

「キリン、顔真っ赤。可愛いね」
「ううっ、恥ずかしい・・・」

 リュエールは余裕ある顔してるけど、リュエールはこんなに心臓ドキドキしてないのかな?
耳をリュエールの胸に当てると、ドキドキと早い音が聞こえる。
わたしだけじゃない・・・同じなのかな?
リュエールを見上げると、笑顔で返される。

「あの、リュエールはわたしの番で、いいんだよね?」
「うん。そうだよ」
「えーと、じゃあ、昨日怖かったりしたのは・・・」
「あー、アレはね。まだキリンを閉じ込めたくなかったから早めにこの大陸から追い出したかったんだ」
「閉じ込める?」
「キリンを一度手に入れたら二度とキリンの故郷には返してあげられない。だから早く追い出したかったのと、僕がまだキリンに相応しくないから」

 番に相応しいとか相応しくないとかあるのかな?
首を傾げると、リュエールがおでこにキスをしてくる。

「僕はこの大陸を引き継ぐのに今は勉強中で、まだ修行中だからね。中途半端にキリンを迎え入れたくないんだ。これは僕のワガママなんだけどね」
「わたしの意思は無視・・・?」
「キリンが良いなら良いけど、でもキリンは番どうこうってあんまり考えずにここに飛ばされてきて、自分の家に帰りたかったりするんじゃない?」
「それは、まぁ、帰れるなら帰りたい・・・」
「だよね。それにキリンはまだ番の匂いそんなに嗅ぎ分けられてないから、まだキリンの体は番に対応出来てないんだと思う」

 そういう物なのかな?
まぁ、家に帰りたいとはすごく思ってるけど・・・。

「本当は誰にも知られずにキリンを帰してあげたかったんだけど、シューが気付いちゃうし、キリンは母上に弓放っちゃうし、まあ、僕がシュー呼ぶのに遠吠えしたのがいけないんだけどね。コレは僕のミスだね。少しゴタついたけど、座敷牢にお婆さんが居るなら帰った方がいいよ」
「リュエールはそれで、いいの?」
「本当は手放したくないけど、キリンは転移魔法が使えるみたいだし、早めにお婆さんに転移魔法の使い方を覚えさせてもらわないと中途半端に使える状態は困るでしょ?」

 確かに、転移魔法なんて使えるとは思わなかったから、早めに教えてもらわないと困る。
それにもし、この大陸で暮らす事になったら、まだ教えてもらってない魔法や技術は一生覚えられない。
覚えなきゃいけない事は沢山あるし、もし次に来るなら色々自分の持ち物も持ってきたい。

「わたしもまだ修行しないといけない。うん。帰らないと」
「寂しいけど、お互いにまだ早いからね」

 そう言ってもう一度だけキスをするとリュエールが走り出して、座敷牢まで戻るとネリリスお婆ちゃんはわたしが使っていた布団の中で寝てた・・・。

「ネリリスお婆ちゃん、起きて!」
「おや、もう帰るかい?」
「そうだよ。ネリリスお婆ちゃん」

 ネリリスお婆ちゃんが転移魔法を唱え始めると、リュエールが温泉大陸の通行手形とヒドラの回復クリスタルをくれた。

「それがあれば今度は密入国じゃないから。あとヒドラの回復クリスタルは自動回復してくれるから、森で狩りをする時に身に着けておけばキリンを守ってくれるよ」

「ありがとう!また会える?」
「うん。暇を見つけて会いに行くから」
「なら、またね。リュエール」
「またね。キリン」 


 少し寂しそうに笑ったリュエールにキスをして、笑って移転魔法の穴に入ってネリリスお婆ちゃんと自分の村に帰って来た。
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