黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
上 下
446 / 960
15章

帰って来た妖精

しおりを挟む
 座敷牢でふかふかのお布団で寝ていたところをポコポコと杖で叩かれて起こされるという最悪の目覚めをした後、転移魔法でネリリスお婆ちゃんが座敷牢に現れていた事に気付き「うわぁあ!」と声を上げると、ネリリスお婆ちゃんが「まだ運命の伴侶を見つけてないのかい?駄目な娘だ」と移転魔法で飛ばされたわたし・・・。

 再び落下して木をバッキリ折って地面にお尻をついて着地。
目の前には昨日、わたしが転移魔法を使って現れてしまったリュエール達の家。

 ネリリスお婆ちゃん何て事するんだー!!!と、心で叫びつつも、物音で起きてきたリュエールとシュトラールに「何してんだこいつ?」という目をされていたたまれない・・・。

 ネリリスお婆ちゃんがまだ座敷牢に居るかもしれないという話になり、リュエールに腕を掴まれていきなりの全力疾走をさせられたけど、家族の人が見えなくなった途端、態度が変わった。

「ちょっと失礼するよ」
「へっ?」

 いきなり抱き上げられて、フッと爽やかにリュエールが笑うと走り出す。
なに?何今の笑顔???
ひぇぇ~っ!!!胸がっ!!胸がドキドキするのは全力疾走の後だからだよね??
うわぁ・・・、お肌綺麗・・・。

「何かついてる?」

 顔を左右にブンブン振ると、また爽やかな笑顔で目を細めて笑ってくる。
何なのー?!!昨日とさっきと態度違う気がするんだけど・・・。

「あ・・・」
「ん?どうかした?」
「えと、ハーブと柑橘系になんかいい香りがするなって・・・」
「ああ、母上の店でハーブとミッカジュースとか扱ってるからね。それかな?」
「そうなんだ。なんか森みたいな良い香りだなって」

 リュエールが少し立ち止まって「んーっ・・・」と声を出してチラッとわたしを見る。

「キリンも良い香りしてるよ。会った時から番の匂いだなって分かってたんだけどね」
「えと、それは、その・・・」
「ふふっ。でも、キリンが温泉鳥襲ってるし、可愛いし、可笑しくて・・・ふふっ」
「あれの何処が可愛いって思った態度なの?!」
「あはは。ごめん。でも、ああしないとキリンは確実に温泉鳥殺してたでしょ?」
「うっ・・・その、ゴメンナサイ」

 楽しそうにリュエールが笑って顔をわたしのお腹に押し付けて笑いを堪えている。
ううっ・・・アレはなんの意味がある演技なの??

「あー、笑った。キリン、意地悪してごめんね?」

 そう言ってリュエールが顔を近付けてきた。
何だろう?しっとりした感触が唇に広がって、甘い・・・?

「番同士のキスは甘いって、本当だね」

 へっ?
キス?今の、キス??!!!

「ふぁっ!!えっ!!キス?!」
「わかんなかった?んじゃ、もう1回」
「ふぇっ!わっぷっ・・・んっ」

 唇、重なった!!
うわーっうわぁああっ!!!!
ドキドキし過ぎて心臓が口から飛び出しそうなんですけど?!
あ・・・っ、やっぱり甘い。
口の中、甘くて・・・、顔が熱くなる・・・。
力が抜けていきそう。何だろうこれ?泣きそうな気持ちがする。
悲しいわけじゃない、胸がすごく痛くなる。

 唇が離れた時、あっ、離れちゃ嫌だなって思った。
こんなの・・・おかしいよ・・・。
会ったばかりだし、よく知らないし、ううーっ。
でも、好きかも・・・?

「キリン、顔真っ赤。可愛いね」
「ううっ、恥ずかしい・・・」

 リュエールは余裕ある顔してるけど、リュエールはこんなに心臓ドキドキしてないのかな?
耳をリュエールの胸に当てると、ドキドキと早い音が聞こえる。
わたしだけじゃない・・・同じなのかな?
リュエールを見上げると、笑顔で返される。

「あの、リュエールはわたしの番で、いいんだよね?」
「うん。そうだよ」
「えーと、じゃあ、昨日怖かったりしたのは・・・」
「あー、アレはね。まだキリンを閉じ込めたくなかったから早めにこの大陸から追い出したかったんだ」
「閉じ込める?」
「キリンを一度手に入れたら二度とキリンの故郷には返してあげられない。だから早く追い出したかったのと、僕がまだキリンに相応しくないから」

 番に相応しいとか相応しくないとかあるのかな?
首を傾げると、リュエールがおでこにキスをしてくる。

「僕はこの大陸を引き継ぐのに今は勉強中で、まだ修行中だからね。中途半端にキリンを迎え入れたくないんだ。これは僕のワガママなんだけどね」
「わたしの意思は無視・・・?」
「キリンが良いなら良いけど、でもキリンは番どうこうってあんまり考えずにここに飛ばされてきて、自分の家に帰りたかったりするんじゃない?」
「それは、まぁ、帰れるなら帰りたい・・・」
「だよね。それにキリンはまだ番の匂いそんなに嗅ぎ分けられてないから、まだキリンの体は番に対応出来てないんだと思う」

 そういう物なのかな?
まぁ、家に帰りたいとはすごく思ってるけど・・・。

「本当は誰にも知られずにキリンを帰してあげたかったんだけど、シューが気付いちゃうし、キリンは母上に弓放っちゃうし、まあ、僕がシュー呼ぶのに遠吠えしたのがいけないんだけどね。コレは僕のミスだね。少しゴタついたけど、座敷牢にお婆さんが居るなら帰った方がいいよ」
「リュエールはそれで、いいの?」
「本当は手放したくないけど、キリンは転移魔法が使えるみたいだし、早めにお婆さんに転移魔法の使い方を覚えさせてもらわないと中途半端に使える状態は困るでしょ?」

 確かに、転移魔法なんて使えるとは思わなかったから、早めに教えてもらわないと困る。
それにもし、この大陸で暮らす事になったら、まだ教えてもらってない魔法や技術は一生覚えられない。
覚えなきゃいけない事は沢山あるし、もし次に来るなら色々自分の持ち物も持ってきたい。

「わたしもまだ修行しないといけない。うん。帰らないと」
「寂しいけど、お互いにまだ早いからね」

 そう言ってもう一度だけキスをするとリュエールが走り出して、座敷牢まで戻るとネリリスお婆ちゃんはわたしが使っていた布団の中で寝てた・・・。

「ネリリスお婆ちゃん、起きて!」
「おや、もう帰るかい?」
「そうだよ。ネリリスお婆ちゃん」

 ネリリスお婆ちゃんが転移魔法を唱え始めると、リュエールが温泉大陸の通行手形とヒドラの回復クリスタルをくれた。

「それがあれば今度は密入国じゃないから。あとヒドラの回復クリスタルは自動回復してくれるから、森で狩りをする時に身に着けておけばキリンを守ってくれるよ」

「ありがとう!また会える?」
「うん。暇を見つけて会いに行くから」
「なら、またね。リュエール」
「またね。キリン」 


 少し寂しそうに笑ったリュエールにキスをして、笑って移転魔法の穴に入ってネリリスお婆ちゃんと自分の村に帰って来た。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する

アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。 しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。 理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で 政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。 そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。