黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
上 下
442 / 960
15章

移転魔法と妖精

しおりを挟む
「父上、キリンさんはリューの番だから温情をあげてほしいな」

「はぁ?」
「ちょっ!シュー!」

 シュトラールを父親が変な顔で見て、リュエールは迷惑そうな顔で怒っている。
わたしも多分、変な顔になっていたと思う。父親が私とリュエールの顔を見比べる様に見てから、シュトラールの顔を見ると、シュトラールはニコニコとしている。
悪びれも無い顔・・・と、いうより得意げな顔という感じで。

「あー、リュエール、本当なのか?」
「ハァー・・・逆に僕が聞きたいよ?番の匂いも何もしてない。シューが騒いでるだけ」

 父親がシュトラールを片眉を上げながら見れば、シュトラールは腕を組んで首を傾げる。

「シュトラール・・・説明を」
「オレの鼻がビビビッと、リューとキリンさんは同じ匂いだなって!キリンさん凄くいい香りするし、リューと似てるんだよ」
「シュトラール・・・お前はどうも抽象的だな。でもお前の鼻はバカに出来ん所もあるからな・・・」
「それに番じゃなくても、こんなにいい匂いの人なら悪い事は無いよ。リューだってキリンさんから嫌な匂いしないでしょ?」
「悪い人間の匂いはしないけど、それとこれとは話が別だからね?大体、シュー・・・僕自身が番の匂いって思ってないのに、どうして番になるのさ」

 人に指をさしながらリュエールが迷惑千万とシュトラールに詰め寄る。
まぁ、わたしもそう思います。リュエールのわたしが嫌いっていう態度は嫌という程この数時間待たされている間に味わいましたから!無理です!

「えー・・・じゃあ、このお茶、リューは飲んだ?」
「一口飲んだけど?」
「じゃあ、キリンさんこのお茶1口飲んでみて」
「え?」

 目の前にリュエールが飲んだお茶が差し出されて、思わず眉間にしわが寄る。

「番が口にした物なら味が甘く感じるって母上が言ってたから、試してみてよ」
「ええー・・・」

 凄く嫌なんだけど・・・、シュトラールの目がキラキラと早くと言わんばかりに期待していて、おずおずと手を伸ばすと、パンッと扇子で手を遮られる。

「待て」

 少し不機嫌そうな父親が扇子を元に戻し、眉間に指を置いてため息を吐く。

「茶は冷たくなっている分、甘みと渋みが混ざっている。味のあるものでやっても意味がない」

「あー!そうだね!んじゃ、コップ新しいの用意して水でやろうか!」
「えー、いいよ。別に・・・」

 嫌がるリュエールに既にコップを準備して笑顔なシュトラール。
何とも言えない顔をして息子2人を見る父親・・・なんてカオスな状態なんだろう・・・。

「まぁ、それはともかくだ。君は転移魔法で飛ばされてきたと聞いているが、転移魔法は君の村では普通に使われているのか?」
「えと、使えるのはネリリスお婆ちゃんだけで、占いの水晶で出た座標に空間が繋がるとかなんとか・・・」
「ふむ。そうか・・・呪文などはあるのか?」
「呪文は・・・『海を歩く妖精は森を潜る妖精と道を侍れ回れ道の印は帰路へ至れ』だったかな・・・っとぉおおおお!!!」

 移転魔法の穴がポッカリと開き、「はい?」と、思った時にはフワッと体が浮くと穴に吸い寄せられる。

「なっ!これを早く消せ!」
「ひぃぃっ!消えて!消えて!わぁああああ!」
「何してんのさ!」
「わっ!シュー!キリンさん!!」

 わたしの手をリュエールが掴み、父親が手を伸ばすのが見えた。
移転魔法に吸い込まれると、わたしは再び浮遊感と一緒に落下していく。

「ひぃぃぃいっ!!」
「うわぁああああ!!」

 横を見たら、リュエールも巻き込んでしまったらしく、一緒に落下していた。
バササーッと、木々の間に落下して、枝や草でベシベシと体に細かくぶつかっていく。
ようやく落下が止まると、不機嫌が不機嫌を着ているという感じのリュエールがわたしを睨みながら見下ろしていた。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する

アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。 しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。 理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で 政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。 そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた

黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」 幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。