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15章
黒狼兄弟と妖精
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湯気を立てていたお茶も今ではすっかり冷めて、不機嫌な顔の黒狼族の【刻狼亭】16代目当主予定の『若』と呼ばれているリュエール・トリニアに睨まれたまま時間だけが過ぎていく。
15代目の現当主はわたしが放った矢で背中に傷が出来ているらしく、治療中で来るのが遅くなっているらしい。
掠っただけだと思うのに、何でこんなに何時間も待たされるのか・・・。
あれか・・・たとえかすり傷でも時間を掛けて治療して相手に罪悪感と慰謝料を倍増させるという姑息な策略?!
それなら十分反省したので早く来てくださいっ!!!
リュエールとの二人っきりは空気が重くて凄く嫌なんですけど?!
連れてこられた事務所の応接間はドア1枚で天国と地獄という感じ。
まだ事務所で他の人がワイワイしているのを聞きながら睨みつけられていた方がマシ。
「あのー・・・色々ご迷惑を掛けちゃったのは悪いと思っているんです」
「そう」
「・・・わたし達エルフは森の民で、普通にそこら辺にいる鳥とかを獲る習性があってですね」
「野蛮だね」
「うぐっ・・・」
何とか話をしようとしてもズバズバと言い返され、話は続きもしない。
女の子みたいな顔をしているのに、性格は悪いんじゃないかな?
「何?」
「いえ、なんでもありません」
おう、怖い。
勘のいい男の子かもしれない。
野生の勘・・・かな?獣人はそういうところ鋭いって聞くし。
「えーと、私が間違えて矢を撃っちゃった女の子と似てるけど、兄妹とかだったりー・・・?」
「あの人は僕の母上」
「うぐっ・・・それはとんだご迷惑を・・・」
「本当にね。母上に当たっていたら君は今頃生きてないよ」
ピリピリした空気が余計にピリピリして空気が痛い。
むしろ突き刺さる。でも、あの女の子は母親・・・エルフみたいな長寿の種族なのかな?
コンコンと、ノックの音が響き、ヒョコッと先程会った背の高い方の獣人の少年が顔を出す。
「シュー、何か用?」
「リュー、ピリピリしすぎだよ」
同意見!リュエールはピリピリしすぎだから!!
少年はリュエールの横に座るとわたしを見てニコっと笑う。
リュエールと2人っきりよりかはマシなので歓迎しちゃう!!
「オレ、シュトラール・トリニア。リューの弟。よろしくね」
「わたしはキリンです」
笑顔で手を差し出されて、握手をするとニコニコと笑顔のままシュトラールが手を離さない。
パシッとリュエールが握手していた手を弾いて、シュトラールとわたしの手が離れる。
「リュー、痛いってば」
「シュー、用件は?」
手を振りながらフーッと手に息を吐いてシュトラールがヘラッと笑う。
人懐っこそうな男の子だなって印象が強い。2人は兄弟・・・さっきの女の人が母親なら、あの黒い狼になっていた男性はシュトラールに似ているから父親かな?
「オレの鼻がキリンさんがリューと同じ匂いがしてるって嗅ぎつけたから、確かめに」
「ハァ?」
シュトラールの言葉に露骨に嫌そうな顔をしたリュエールにシュトラールがニコーッとしたら、スパンと頭をリュエールに叩かれていた。
「痛っ!」
「シュー、僕も本気で怒るよ?」
「リュー、キリンさんはリューの番だよ?」
「あのねー、シュー・・・番の匂いなんてこれっぽちもしてないよ?」
リュエールが指で1cmにも満たないと親指と人差し指で輪を作る。
わたしもリュエールから良い香りなんてしないし、この2人ハーブの良い香りはするけど、同じ匂いに思えるしなぁ。
あー、でもネリリスお婆ちゃんが言っていた『黒い獣』が運命の伴侶・・・には2人共当てはまるのかな?
どっちかを選ぶならリュエールよりシュトラールだと声を大にして言いたい。
「えー、リューとキリンさん同じ良い香りがしてるんだけどな?」
フンフンとシュトラールが鼻を鳴らして近付き、顔が近寄り過ぎて息を止めて顔を赤くすると、目が合ったシュトラールも自分のしていた事に気付いたのか、えへへと頬を赤くする。
ガチャッとドアが開くとシュトラールに似た黒狼獣人が入ってくる。
この人が2人の父親で、わたしの運命を左右する人だ。
運命と言っても伴侶の方ではなく、温泉鳥に対するお金の方のである。
「リュエール、待たせて悪かったな。シュトラールも珍しく来ていたのか」
「父上、本当に待ちくたびれました」
「うん。父上、たまにはオレも顔位は出すよ」
リュエールが肩をすくめながらため息を吐くと、対照的にシュトラールは尻尾を振りながらニコニコしていている。なんて性格の違う兄弟なのやら。
「さて、密入国に密猟。そしてオレの番への殺人未遂と随分と大胆な事をしでかすエルフがいたものだ」
「あの、前二つは申し開きもないんですが、最後のは威嚇射撃のつもりで・・・殺人とは・・・」
ギロッと睨まれて身を縮こませる。
怖い。この人本当にリュエールの父親なのは間違いない。
この威圧感は親子ですよねーって感じです・・・。
でも、殺人未遂は本当に違うから、キチンとそれだけは解ってもらわないといけない。
口を開きかけた時に、先に父親の方が口を開く。
「オレの番からの願いで、一族郎党、路頭に迷う事は無い様に采配はしてやろう」
そうは言っても、許す気の無さそうな予感しかしない!!
ああ、本当にネリリスお婆ちゃんのせいでわたしの人生が路頭に迷いそう!!
15代目の現当主はわたしが放った矢で背中に傷が出来ているらしく、治療中で来るのが遅くなっているらしい。
掠っただけだと思うのに、何でこんなに何時間も待たされるのか・・・。
あれか・・・たとえかすり傷でも時間を掛けて治療して相手に罪悪感と慰謝料を倍増させるという姑息な策略?!
それなら十分反省したので早く来てくださいっ!!!
リュエールとの二人っきりは空気が重くて凄く嫌なんですけど?!
連れてこられた事務所の応接間はドア1枚で天国と地獄という感じ。
まだ事務所で他の人がワイワイしているのを聞きながら睨みつけられていた方がマシ。
「あのー・・・色々ご迷惑を掛けちゃったのは悪いと思っているんです」
「そう」
「・・・わたし達エルフは森の民で、普通にそこら辺にいる鳥とかを獲る習性があってですね」
「野蛮だね」
「うぐっ・・・」
何とか話をしようとしてもズバズバと言い返され、話は続きもしない。
女の子みたいな顔をしているのに、性格は悪いんじゃないかな?
「何?」
「いえ、なんでもありません」
おう、怖い。
勘のいい男の子かもしれない。
野生の勘・・・かな?獣人はそういうところ鋭いって聞くし。
「えーと、私が間違えて矢を撃っちゃった女の子と似てるけど、兄妹とかだったりー・・・?」
「あの人は僕の母上」
「うぐっ・・・それはとんだご迷惑を・・・」
「本当にね。母上に当たっていたら君は今頃生きてないよ」
ピリピリした空気が余計にピリピリして空気が痛い。
むしろ突き刺さる。でも、あの女の子は母親・・・エルフみたいな長寿の種族なのかな?
コンコンと、ノックの音が響き、ヒョコッと先程会った背の高い方の獣人の少年が顔を出す。
「シュー、何か用?」
「リュー、ピリピリしすぎだよ」
同意見!リュエールはピリピリしすぎだから!!
少年はリュエールの横に座るとわたしを見てニコっと笑う。
リュエールと2人っきりよりかはマシなので歓迎しちゃう!!
「オレ、シュトラール・トリニア。リューの弟。よろしくね」
「わたしはキリンです」
笑顔で手を差し出されて、握手をするとニコニコと笑顔のままシュトラールが手を離さない。
パシッとリュエールが握手していた手を弾いて、シュトラールとわたしの手が離れる。
「リュー、痛いってば」
「シュー、用件は?」
手を振りながらフーッと手に息を吐いてシュトラールがヘラッと笑う。
人懐っこそうな男の子だなって印象が強い。2人は兄弟・・・さっきの女の人が母親なら、あの黒い狼になっていた男性はシュトラールに似ているから父親かな?
「オレの鼻がキリンさんがリューと同じ匂いがしてるって嗅ぎつけたから、確かめに」
「ハァ?」
シュトラールの言葉に露骨に嫌そうな顔をしたリュエールにシュトラールがニコーッとしたら、スパンと頭をリュエールに叩かれていた。
「痛っ!」
「シュー、僕も本気で怒るよ?」
「リュー、キリンさんはリューの番だよ?」
「あのねー、シュー・・・番の匂いなんてこれっぽちもしてないよ?」
リュエールが指で1cmにも満たないと親指と人差し指で輪を作る。
わたしもリュエールから良い香りなんてしないし、この2人ハーブの良い香りはするけど、同じ匂いに思えるしなぁ。
あー、でもネリリスお婆ちゃんが言っていた『黒い獣』が運命の伴侶・・・には2人共当てはまるのかな?
どっちかを選ぶならリュエールよりシュトラールだと声を大にして言いたい。
「えー、リューとキリンさん同じ良い香りがしてるんだけどな?」
フンフンとシュトラールが鼻を鳴らして近付き、顔が近寄り過ぎて息を止めて顔を赤くすると、目が合ったシュトラールも自分のしていた事に気付いたのか、えへへと頬を赤くする。
ガチャッとドアが開くとシュトラールに似た黒狼獣人が入ってくる。
この人が2人の父親で、わたしの運命を左右する人だ。
運命と言っても伴侶の方ではなく、温泉鳥に対するお金の方のである。
「リュエール、待たせて悪かったな。シュトラールも珍しく来ていたのか」
「父上、本当に待ちくたびれました」
「うん。父上、たまにはオレも顔位は出すよ」
リュエールが肩をすくめながらため息を吐くと、対照的にシュトラールは尻尾を振りながらニコニコしていている。なんて性格の違う兄弟なのやら。
「さて、密入国に密猟。そしてオレの番への殺人未遂と随分と大胆な事をしでかすエルフがいたものだ」
「あの、前二つは申し開きもないんですが、最後のは威嚇射撃のつもりで・・・殺人とは・・・」
ギロッと睨まれて身を縮こませる。
怖い。この人本当にリュエールの父親なのは間違いない。
この威圧感は親子ですよねーって感じです・・・。
でも、殺人未遂は本当に違うから、キチンとそれだけは解ってもらわないといけない。
口を開きかけた時に、先に父親の方が口を開く。
「オレの番からの願いで、一族郎党、路頭に迷う事は無い様に采配はしてやろう」
そうは言っても、許す気の無さそうな予感しかしない!!
ああ、本当にネリリスお婆ちゃんのせいでわたしの人生が路頭に迷いそう!!
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