435 / 960
15章
朱里と3人のおチビさん
しおりを挟む
朱里が竹で出来た笛をピーッと鳴らしながら、庭で紐を輪にして電車ごっこをしている3人の子供達に「出発進行~」と声を掛ける。
電車はこの世界にはないので、朱里は『馬車ごっこ』と呼んでいる。
ティルナールが先頭で紐を引き、エルシオンとルーシーが後ろで紐を持って歩いて行く。
11ヶ月を過ぎた頃から歩き始め、1歳半を過ぎてからはバラバラに動き回るので『馬車ごっこ』と称してなるべく3人を一緒に同じ方向へ歩かせるようにしている。
「女将亭を出発しましたー。お次は竜の癒し木下~」
馬車ごっこをさせながら朱里が駅員のアナウンスの真似事をして歩いてついていく。
「したー」
「したー」
「したー」
三つ子はトテトテと歩きながら声を揃えていく。
言葉は割りと周りが喋り回るせいで言葉を覚えている為にお喋りで、バラバラに喋る時は統一性は0で誰が何を言っているかは判らないが、こうして統一している時は三つ子だなぁと微笑ましく思う。
「はーい。竜の癒し木下ですー。お降りの方はいらっしゃいませんかー?では、出発進行~お次は大窯ピザですー」
「ぴじゃー」
「ぴっつぁー」
「ぴしゃー」
「おおぅ・・・。なんという発音の良い息子が1人いるのでしょう」
朱里が笑いながら竹の笛を鳴らして3人の子供達の後をまたついて歩く。
ピザ焼き窯の前ではハガネが魚とジャガイモを入れたパイ包み焼きを作っている最中で3人に気付くと着物の懐を漁る。
「ほれ。乗車手形だ。持ってけ」
3人に紐付き飴を渡し、手をグーパーさせながら見送り、朱里にも紐付き飴を渡す。
「あいあとー」
「あいあーと」
「おりあとー」
「ありがとー」
「おう。気ぃつけて行けよー」
ハガネが笑いながら4人を見送り大窯の火を調整する。
「大窯ピザのお次は~竜宿舎裏~少し木陰になっていますのでご乗車の皆様お足元にお気をつけくださーい。その前に一時停止でございまーす」
ピーッピッ
「皆様、飴は紐をお手々にぐるぐるしましょうねー」
朱里が3人の手に紐付き飴の紐をぐるぐると巻きつけて落ちない様にして、再び竹の笛を鳴らす。
「はーい。出発進行~」
ピーッ
「あーい」
「・・・はふ」
「・・・」
「あらま。ティル以外は飴をもう口に入れてるのね。コケない様にティルゆっくり出発してあげてねー」
「あい」
先頭とあってかティルナールは真面目に進むが、後ろの2人は飴に夢中なので気をつけなくてはと朱里が2人を見て歩いているとガサッと茂みに突っ込み、そのまま木の枝に髪留めが引っかかり「ふわぁあ!」と声を上げる。
「ううっ、私が事故を起こしてどうするのよ。ふぇー・・・絡まり過ぎ」
木の枝から無理やり髪を引っ張るとカチンと音がして髪留めが落ちて木の枝から茂みに落ちていく。
「ああん!どうして落ちるかなぁ・・・えーと、どこかなー?あっ、ティル!動かないでねー。一時停止ねー」
「あい」という言葉が聞こえないので茂みから顔を出すと、朱里の後ろで地面にお尻をついて3人共飴を食べるのに夢中になっている。
「あ、うん。よく出来たお子様達です・・・。母上は髪留め探すから、いい子に飴舐めててね」
再び朱里が茂みの中に手を入れて探し始めると、朱里の後ろで声がする。
「母上、何してるの?」
「母上、何かドジったの?」
「髪留めが落ちちゃったの~」
朱里の腰をヒョイとシュトラールが抱き上げて、茂みの中に獣化したリュエールが入り込み髪留めを咥えて獣化を解くと髪留めを清浄魔法で綺麗にして朱里に手渡す。
「ありがとー2人共」
「別にそれくらいは良いけど、母上3人共歩き始めてるよ」
「え?!今まで飴舐めてたのにー!」
「母上、頑張れー」
3人を追って朱里が駆けだし、リュエールとシュトラールが「慌ただしいね」「元気だよね」と笑って見送る。
朱里が3人に追いつくと3人は飴を口に咥えながら、テクテクとドラゴン達の住まいの建物の前を歩いて、木と木の間にハンモックを並べて甲羅干しをしているドラゴン達の下を歩いて行く。
風に揺られてハンモックの中で眠るドラゴン達は30cm程の小さな体にサイズを合わせて幸せそうに口をむにむに動かして寝ている。
「皆様~お静かに~シーッですよー」
朱里が指を唇につけて注意しながら歩くと3人は口の中の飴をコロコロと鳴らして返事の代わりに朱里に知らせて来る。
ドラゴン達のハンモックの昼寝場所を過ぎると、洗濯物を干している場所に出る。
洗濯物のシーツの下でミルアとナルアがレジャーシートを敷いてフリウーラの娘シレーヌと一緒に色とりどり刺繍糸でミサンガを作っている。
「はーい。シーツ広場は本日はお祭りの様です。皆さん美女が多いのでよそ見に注意ですよー安全に出発進行~」
朱里のアナウンスにミルアとナルアとシレーヌが笑いながら、ティルナール達に手を振り、ティルナール達も手を振ってテクテク歩いて行く。
「はーい。次は終点、女将亭前ですよー」
朱里と3人がテクテクと馬車ごっこをしながら出発地点の『女将亭』前に行くと、ルーファスが少し屈んで手を広げると朱里が笑顔で口を開く。
「皆様、ご乗車ありがとうございました。終点女将亭前です。本日は歓迎パレードでお出迎えです。お忘れ物の無い様に足元にお気をつけてお降りくださいませ~」
ルーファスに3人が手を広げて飛びつくと3人をまとめて抱き上げてルーファスが笑う。
「アカリ、ただいま。今日は随分と暴れ馬車だった様だな」
「あ、ちょっと木に突っ込んじゃって。事故です。ふふっ、おかえりなさい」
髪を整えて髪留めで髪をまとめると、ルーファスが朱里の頬にキスをして朱里もキスを返す。
子供達の手放した紐を拾って朱里が「さて、お家に入りましょうか」と女将亭のドアを開ける。
「ただいま」
「ふふ。ただいまー」
ふわっと優しい匂いが広がり、2人は顔を合わせて笑う。
電車はこの世界にはないので、朱里は『馬車ごっこ』と呼んでいる。
ティルナールが先頭で紐を引き、エルシオンとルーシーが後ろで紐を持って歩いて行く。
11ヶ月を過ぎた頃から歩き始め、1歳半を過ぎてからはバラバラに動き回るので『馬車ごっこ』と称してなるべく3人を一緒に同じ方向へ歩かせるようにしている。
「女将亭を出発しましたー。お次は竜の癒し木下~」
馬車ごっこをさせながら朱里が駅員のアナウンスの真似事をして歩いてついていく。
「したー」
「したー」
「したー」
三つ子はトテトテと歩きながら声を揃えていく。
言葉は割りと周りが喋り回るせいで言葉を覚えている為にお喋りで、バラバラに喋る時は統一性は0で誰が何を言っているかは判らないが、こうして統一している時は三つ子だなぁと微笑ましく思う。
「はーい。竜の癒し木下ですー。お降りの方はいらっしゃいませんかー?では、出発進行~お次は大窯ピザですー」
「ぴじゃー」
「ぴっつぁー」
「ぴしゃー」
「おおぅ・・・。なんという発音の良い息子が1人いるのでしょう」
朱里が笑いながら竹の笛を鳴らして3人の子供達の後をまたついて歩く。
ピザ焼き窯の前ではハガネが魚とジャガイモを入れたパイ包み焼きを作っている最中で3人に気付くと着物の懐を漁る。
「ほれ。乗車手形だ。持ってけ」
3人に紐付き飴を渡し、手をグーパーさせながら見送り、朱里にも紐付き飴を渡す。
「あいあとー」
「あいあーと」
「おりあとー」
「ありがとー」
「おう。気ぃつけて行けよー」
ハガネが笑いながら4人を見送り大窯の火を調整する。
「大窯ピザのお次は~竜宿舎裏~少し木陰になっていますのでご乗車の皆様お足元にお気をつけくださーい。その前に一時停止でございまーす」
ピーッピッ
「皆様、飴は紐をお手々にぐるぐるしましょうねー」
朱里が3人の手に紐付き飴の紐をぐるぐると巻きつけて落ちない様にして、再び竹の笛を鳴らす。
「はーい。出発進行~」
ピーッ
「あーい」
「・・・はふ」
「・・・」
「あらま。ティル以外は飴をもう口に入れてるのね。コケない様にティルゆっくり出発してあげてねー」
「あい」
先頭とあってかティルナールは真面目に進むが、後ろの2人は飴に夢中なので気をつけなくてはと朱里が2人を見て歩いているとガサッと茂みに突っ込み、そのまま木の枝に髪留めが引っかかり「ふわぁあ!」と声を上げる。
「ううっ、私が事故を起こしてどうするのよ。ふぇー・・・絡まり過ぎ」
木の枝から無理やり髪を引っ張るとカチンと音がして髪留めが落ちて木の枝から茂みに落ちていく。
「ああん!どうして落ちるかなぁ・・・えーと、どこかなー?あっ、ティル!動かないでねー。一時停止ねー」
「あい」という言葉が聞こえないので茂みから顔を出すと、朱里の後ろで地面にお尻をついて3人共飴を食べるのに夢中になっている。
「あ、うん。よく出来たお子様達です・・・。母上は髪留め探すから、いい子に飴舐めててね」
再び朱里が茂みの中に手を入れて探し始めると、朱里の後ろで声がする。
「母上、何してるの?」
「母上、何かドジったの?」
「髪留めが落ちちゃったの~」
朱里の腰をヒョイとシュトラールが抱き上げて、茂みの中に獣化したリュエールが入り込み髪留めを咥えて獣化を解くと髪留めを清浄魔法で綺麗にして朱里に手渡す。
「ありがとー2人共」
「別にそれくらいは良いけど、母上3人共歩き始めてるよ」
「え?!今まで飴舐めてたのにー!」
「母上、頑張れー」
3人を追って朱里が駆けだし、リュエールとシュトラールが「慌ただしいね」「元気だよね」と笑って見送る。
朱里が3人に追いつくと3人は飴を口に咥えながら、テクテクとドラゴン達の住まいの建物の前を歩いて、木と木の間にハンモックを並べて甲羅干しをしているドラゴン達の下を歩いて行く。
風に揺られてハンモックの中で眠るドラゴン達は30cm程の小さな体にサイズを合わせて幸せそうに口をむにむに動かして寝ている。
「皆様~お静かに~シーッですよー」
朱里が指を唇につけて注意しながら歩くと3人は口の中の飴をコロコロと鳴らして返事の代わりに朱里に知らせて来る。
ドラゴン達のハンモックの昼寝場所を過ぎると、洗濯物を干している場所に出る。
洗濯物のシーツの下でミルアとナルアがレジャーシートを敷いてフリウーラの娘シレーヌと一緒に色とりどり刺繍糸でミサンガを作っている。
「はーい。シーツ広場は本日はお祭りの様です。皆さん美女が多いのでよそ見に注意ですよー安全に出発進行~」
朱里のアナウンスにミルアとナルアとシレーヌが笑いながら、ティルナール達に手を振り、ティルナール達も手を振ってテクテク歩いて行く。
「はーい。次は終点、女将亭前ですよー」
朱里と3人がテクテクと馬車ごっこをしながら出発地点の『女将亭』前に行くと、ルーファスが少し屈んで手を広げると朱里が笑顔で口を開く。
「皆様、ご乗車ありがとうございました。終点女将亭前です。本日は歓迎パレードでお出迎えです。お忘れ物の無い様に足元にお気をつけてお降りくださいませ~」
ルーファスに3人が手を広げて飛びつくと3人をまとめて抱き上げてルーファスが笑う。
「アカリ、ただいま。今日は随分と暴れ馬車だった様だな」
「あ、ちょっと木に突っ込んじゃって。事故です。ふふっ、おかえりなさい」
髪を整えて髪留めで髪をまとめると、ルーファスが朱里の頬にキスをして朱里もキスを返す。
子供達の手放した紐を拾って朱里が「さて、お家に入りましょうか」と女将亭のドアを開ける。
「ただいま」
「ふふ。ただいまー」
ふわっと優しい匂いが広がり、2人は顔を合わせて笑う。
50
お気に入りに追加
4,628
あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する
アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。
しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。
理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で
政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。
そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。