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14章
狂った果実19
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煌びやかなパーティー会場に足を踏み入れると、出席した参加者たちが掴み合い殴り合い、用意された酒を浴びる様に飲んだり食べたり、女性を襲う男も居れば、その場で事に及んでいる者も居る。
「カオスだな・・・」
「おいおい。何だよこりゃぁ」
ルーファスとハガネが怪訝な顔で会場を見渡し、ネルフィームと一緒に来ている朱里を見れば、会場の中央で犯人の男と対峙していた。
朱里の手には特殊ポーションが握られ、中身はもう既に飲み終わった後だった。
「ハガネは会場を封鎖する様にギル叔父上に連絡をして、会場から出ていく人間に【聖域の雫】を飲ませる様に言ってくれ!」
「わかった!旦那も気を付けてくれ!」
ハガネが急いで会場の外に出ていくと、ルーファスも朱里の元へ急ぐ。
朱里と犯人の近くにあるテーブルの上にあってはならない物が存在していた。
白く小さな苗木、赤い実は小さいが【魔果】の果実に他ならなかった。
赤い花の蕾が付き今にも咲きそうになっているのを見てルーファスが【聖域の雫】を取り出し近付くと、犯人の男がルーファスに気付き、ニヤリと笑う。
「ほぅら、トリニア夫人。愛しの恋人が来たぞ?金を寄越さなければどうなるかわかっているか?」
特殊ポーションで解毒しても【魔果】の苗木自体が傍にある為に朱里の思考は霧がかったように虚ろいでいく。
ゴクンと唾を飲み込んで、朱里がグッと手を握りしめて足を踏ん張って意識を保とうとする。
「番が居る人間には効き目が薄いが、こうして【魔果】が近くにあれば、あんたも抗えないだろう?」
「・・・お金は渡さないし、あなたなんかの言う事は聞かない!」
ネルフィームが朱里の前に立ち犯人の男に襲い掛かり、白い苗木から白い枝が伸び、ネルフィームが口から黒煙を出して焼き切りながら犯人を取り押さえ、ルーファスがその隙に白い苗木に【聖域の雫】を3本掛けた。
『ぎゃあああああああ!!!!』
白い苗木の悲鳴にルーファスもネルフィームも驚いた顔をする。
「「喋っただと?!」」
ルーファスとネルフィームの声が重なり、目を丸くする。
白い苗木から赤い小さな実が落ち、朱里がそれを拾う。
赤い花の蕾は白く枯れ果て、白い苗木はみるみるうちに白い煙を上げ灰色になり萎れていく。
『【核】がある限り俺は人々をー・・・』
白い苗木に残った3個の実もコロコロと転がり落ち、朱里がそれを拾う。
ルーファスとネルフィームは喋った白い苗木に驚いていて、朱里の行動に気付いた時には遅かった。
「あ、美味しそう」
朱里の言葉にルーファスが「え?」と声を出すと既に朱里は赤い実を口に入れてモグモグと動かしていた。
最後の実を齧った時、白い苗木が声を上げた。
「あ、種だ」
ペッと朱里が砕けた種を吐き出した。
『あああああっ!俺の【核】が!』
「アカリ?!」
ルーファスが朱里の口に手を入れるが、朱里がイヤイヤと首を振り、ぷくーっと頬を膨らませる。
「ルーファス、抱っこ!抱っこしてください!」
「アカリ?」
困惑するルーファスに朱里は両手を伸ばしてピョンピョンと抱っこをせがんでルーファスが朱里を抱き上げると、満足そうに朱里が笑う。
パシューッと音がすると、白い苗木が砂上の砂の城の様に崩れて灰の様な物がテーブルに残る。
すると、周りの人々が我に返ったように悲鳴を上げる。
パニックになる人々にハガネが「【幻惑】」と、幻惑魔法を掛けて大人しくさせ朱里達の元へやってくる。
「旦那、どうなってる!?」
「【魔果】の苗木がそこのテーブルにあったんだが・・・アカリが【核】という実を噛み砕いたら消えた。そして人々も正気に戻った様なんだが・・・」
ルーファスが困った顔でルーファスの頬やおでこにキスを繰り返している朱里の頭を撫でる。
ハガネが眉間にしわを寄せながら「どーなってんだアカリは?」と何とも言えない顔をする。
「【魔果】の実を何個か食べたらしい」
「おいおい。何してんだよアカリ」
「ふふふー。ルーファスは私のなんですよー」
「あー、うん。誰も盗りゃしねぇよ」
自分の主君のアカリの得意げな顔にハガネは特殊ポーションを朱里に渡すが「朱里さんは飲みませーん!」とプイッと顔を背けられて「どーすんだこれ?」とため息を吐く。
「ルーファス、ハガネ。それより、こいつをどうする?」
犯人の男を取り押さえているネルフィームが男の首根っこを掴んで2人の前に差し出す。
「ネルフィーム。そいつは私に下さい」
会場にのんびりとした足取りでギルが入り、ネルフィームの持っている男を見ながら手をクイクイと動かして「くれ」とジェスチャーする。
「主か。こいつをどうするんだ?」
「尋問して色々聞き出したあとにちゃんと正規の元へ届けますよ」
「主・・・本当だろうな?」
「嫌だなぁ。ネルフィーム。私は素直で正直だよ?」
「主の素直で正直なのは自分に対してだけだろう?」
「まぁ、私に今回は下さいよ。この状態を落ち着けるのが先でしょう?」
「ルーファス、主に渡しても良いか?」
ネルフィームが眉を下げながら男をブランとさせてルーファスに聞けば、好きにしろとルーファスも手で「要らない」とジェスチャーする。
「流石、私の甥っ子です」
「いや、オレは初めから関わる気はなかっただけだしな」
まるでスキップを踏む様にギルが犯人の男をネルフィームから受け取ると「これで当分また冒険に行かなくても良さそうですよー」と声を弾ませた。
男をギルドへ差し出して冒険者稼業をサボる気満々らしいギルはルーシーの周りをうろつくに違いないと、ルーファスは小さくため息を吐く。
「ふふふ。ルーファス一件落着?」
「ああ、そうだな。まだグリムレイン達の方がどうなっているかはわからんがな」
頬をスリ寄せながら朱里が鼻歌をふんふん歌い、会場に居る人々に【聖域の雫】を飲ませて完全に解毒するまでハガネとネルフィームの仕事は続き、ルーファスは【魔果】を取り込み過ぎて正気を失ってふわふわとした状態の朱里に捕まえられていた。
「番が居てこの状態なら、もしオレと番じゃなかったらアカリはどんな事になっていたやらだな」
「ふふふ。私のですよー」
「ああ。オレはアカリのものだから安心しろ。それより、特殊ポーションを飲む気はないのか?」
「朱里さんは飲みません!」
「やれやれ、困った番だ」
ルーファスが小さくため息を吐いて、上機嫌な朱里は会場を出る時にすれ違う人に「私のなんですよー」と自慢しながら出ていった。
朱里がそれを思い出して口をパクパクと金魚の様にするのは数日後の事である。
「カオスだな・・・」
「おいおい。何だよこりゃぁ」
ルーファスとハガネが怪訝な顔で会場を見渡し、ネルフィームと一緒に来ている朱里を見れば、会場の中央で犯人の男と対峙していた。
朱里の手には特殊ポーションが握られ、中身はもう既に飲み終わった後だった。
「ハガネは会場を封鎖する様にギル叔父上に連絡をして、会場から出ていく人間に【聖域の雫】を飲ませる様に言ってくれ!」
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ハガネが急いで会場の外に出ていくと、ルーファスも朱里の元へ急ぐ。
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白く小さな苗木、赤い実は小さいが【魔果】の果実に他ならなかった。
赤い花の蕾が付き今にも咲きそうになっているのを見てルーファスが【聖域の雫】を取り出し近付くと、犯人の男がルーファスに気付き、ニヤリと笑う。
「ほぅら、トリニア夫人。愛しの恋人が来たぞ?金を寄越さなければどうなるかわかっているか?」
特殊ポーションで解毒しても【魔果】の苗木自体が傍にある為に朱里の思考は霧がかったように虚ろいでいく。
ゴクンと唾を飲み込んで、朱里がグッと手を握りしめて足を踏ん張って意識を保とうとする。
「番が居る人間には効き目が薄いが、こうして【魔果】が近くにあれば、あんたも抗えないだろう?」
「・・・お金は渡さないし、あなたなんかの言う事は聞かない!」
ネルフィームが朱里の前に立ち犯人の男に襲い掛かり、白い苗木から白い枝が伸び、ネルフィームが口から黒煙を出して焼き切りながら犯人を取り押さえ、ルーファスがその隙に白い苗木に【聖域の雫】を3本掛けた。
『ぎゃあああああああ!!!!』
白い苗木の悲鳴にルーファスもネルフィームも驚いた顔をする。
「「喋っただと?!」」
ルーファスとネルフィームの声が重なり、目を丸くする。
白い苗木から赤い小さな実が落ち、朱里がそれを拾う。
赤い花の蕾は白く枯れ果て、白い苗木はみるみるうちに白い煙を上げ灰色になり萎れていく。
『【核】がある限り俺は人々をー・・・』
白い苗木に残った3個の実もコロコロと転がり落ち、朱里がそれを拾う。
ルーファスとネルフィームは喋った白い苗木に驚いていて、朱里の行動に気付いた時には遅かった。
「あ、美味しそう」
朱里の言葉にルーファスが「え?」と声を出すと既に朱里は赤い実を口に入れてモグモグと動かしていた。
最後の実を齧った時、白い苗木が声を上げた。
「あ、種だ」
ペッと朱里が砕けた種を吐き出した。
『あああああっ!俺の【核】が!』
「アカリ?!」
ルーファスが朱里の口に手を入れるが、朱里がイヤイヤと首を振り、ぷくーっと頬を膨らませる。
「ルーファス、抱っこ!抱っこしてください!」
「アカリ?」
困惑するルーファスに朱里は両手を伸ばしてピョンピョンと抱っこをせがんでルーファスが朱里を抱き上げると、満足そうに朱里が笑う。
パシューッと音がすると、白い苗木が砂上の砂の城の様に崩れて灰の様な物がテーブルに残る。
すると、周りの人々が我に返ったように悲鳴を上げる。
パニックになる人々にハガネが「【幻惑】」と、幻惑魔法を掛けて大人しくさせ朱里達の元へやってくる。
「旦那、どうなってる!?」
「【魔果】の苗木がそこのテーブルにあったんだが・・・アカリが【核】という実を噛み砕いたら消えた。そして人々も正気に戻った様なんだが・・・」
ルーファスが困った顔でルーファスの頬やおでこにキスを繰り返している朱里の頭を撫でる。
ハガネが眉間にしわを寄せながら「どーなってんだアカリは?」と何とも言えない顔をする。
「【魔果】の実を何個か食べたらしい」
「おいおい。何してんだよアカリ」
「ふふふー。ルーファスは私のなんですよー」
「あー、うん。誰も盗りゃしねぇよ」
自分の主君のアカリの得意げな顔にハガネは特殊ポーションを朱里に渡すが「朱里さんは飲みませーん!」とプイッと顔を背けられて「どーすんだこれ?」とため息を吐く。
「ルーファス、ハガネ。それより、こいつをどうする?」
犯人の男を取り押さえているネルフィームが男の首根っこを掴んで2人の前に差し出す。
「ネルフィーム。そいつは私に下さい」
会場にのんびりとした足取りでギルが入り、ネルフィームの持っている男を見ながら手をクイクイと動かして「くれ」とジェスチャーする。
「主か。こいつをどうするんだ?」
「尋問して色々聞き出したあとにちゃんと正規の元へ届けますよ」
「主・・・本当だろうな?」
「嫌だなぁ。ネルフィーム。私は素直で正直だよ?」
「主の素直で正直なのは自分に対してだけだろう?」
「まぁ、私に今回は下さいよ。この状態を落ち着けるのが先でしょう?」
「ルーファス、主に渡しても良いか?」
ネルフィームが眉を下げながら男をブランとさせてルーファスに聞けば、好きにしろとルーファスも手で「要らない」とジェスチャーする。
「流石、私の甥っ子です」
「いや、オレは初めから関わる気はなかっただけだしな」
まるでスキップを踏む様にギルが犯人の男をネルフィームから受け取ると「これで当分また冒険に行かなくても良さそうですよー」と声を弾ませた。
男をギルドへ差し出して冒険者稼業をサボる気満々らしいギルはルーシーの周りをうろつくに違いないと、ルーファスは小さくため息を吐く。
「ふふふ。ルーファス一件落着?」
「ああ、そうだな。まだグリムレイン達の方がどうなっているかはわからんがな」
頬をスリ寄せながら朱里が鼻歌をふんふん歌い、会場に居る人々に【聖域の雫】を飲ませて完全に解毒するまでハガネとネルフィームの仕事は続き、ルーファスは【魔果】を取り込み過ぎて正気を失ってふわふわとした状態の朱里に捕まえられていた。
「番が居てこの状態なら、もしオレと番じゃなかったらアカリはどんな事になっていたやらだな」
「ふふふ。私のですよー」
「ああ。オレはアカリのものだから安心しろ。それより、特殊ポーションを飲む気はないのか?」
「朱里さんは飲みません!」
「やれやれ、困った番だ」
ルーファスが小さくため息を吐いて、上機嫌な朱里は会場を出る時にすれ違う人に「私のなんですよー」と自慢しながら出ていった。
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