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14章
狂った果実9
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「・・・と、そんな感じだな。我が知っている【魔果】の話は」
グリムレインが氷で作ったドリアードの青年の姿を消すと朱里とルーファスは顔を見合わせる。
「その話だと、ドラゴンが余計な事をしていないか?特にケルチャが」
「樹を枯らそうと手を出さなきゃ良かったんじゃないの?」
2人の意見にグリムレインは半目になる。
「婿も嫁も解っておらんな。あれは放置しておけばケルチャが関わらんでも【魔果】になっておったし、我らドラゴンが関わった事で被害が少なく済んだというものだ。感謝こそされ糾弾される覚えはない」
「しかし、初めの頃はここまで心を狂わす物では無かったんだろ?」
「それに関しては取り込んだドリアード達の心が時間を経て狂って混ざり合ってしまったのと、一度世に解き放たれた時に討伐に乗り出した者達の能力を取り込んだのもあるだろうな」
より凶悪になって人を狂わせる果実を実らせて、今こうしてまた世に影響を表している【魔果】は誰が何のために封印を解き放ったのか、謎が残っている。
人々から信頼も厚い人々ばかりが狙われている所に紐を解くカギがあるとギルが言い今現在調査しているが、これに関してはギルは冒険者の仕事というよりは貴族としての調整の様なものだと言っていた。
ギルへの謎もまた深まるばかりではあるが、【刻狼亭】は今回はあくまで関わるのは隔離場所の提供だけだと決めているので、こうして話し合いだけで終わっている。
「そろそろ冬眠から目覚める頃だろうから、ケルチャが荒まなければいいが」
「ケルチャは誰とも主従契約しておらんから【魔果】に近付く事も出来んからな」
「とりあえずは、私達に出来る事はこのまま何事もなく【魔果】が終息してくれることを待つだけだよね?」
「そうだな。アカリは大人しくしておくことだ」
「嫁は気付くと何かしらやらかしているからな」
「うう・・・っ、私何もしないですってば、何で睨んでるの?!」
ジトっとした目でルーファスとグリムレインに見られて朱里がたじろぎながら首を振ると、「アカリだしなぁ・・・」「嫁だしなぁ・・・」とハァーとため息を吐かれる。
「第一、そんな危ない物が近付いたら私直ぐに耐性低いから変になっちゃいますからね?自分があんな危ない人になるのは嫌です!」
ニートライの変態っぷりに朱里もあんな風に自分がなるのは御免だと鳥肌をブワッと立てる。
それに乳幼児が3人もいる現状で巻き込まれたりしたら、また「母上知らないよ?」状態で忘れ去られるのは辛すぎる。
「アカリは番のオレが居るからそれ程ひどく狂いはしないだろうがな」
「嫁なら押さえつけて捕獲出来るが、婿は大変そうだ」
「うちで危なそうなのはリューちゃんとシューちゃんとケルチャくらいだものね」
番も主君も居ないので【魔果】に狂わされたら目も当てられてない。
特にリュエールとシュトラールは危険過ぎて被害が酷そうだ。
「いや、あの2人なら大丈夫だろう」
「何で?」
「生まれた時からアカリの【聖域】を摂取して育っているからな」
「・・・ルーファス、それって私の【聖域】で【魔果】の効果が消えるって事?」
「・・・ふむ。そうなるな。口にして気付いたな」
ルーファスがスクッと立ち上がるが、直ぐにストンと座る。
「どうしたんです?」
「いや、特殊ポーションをニートライに飲ませるか一瞬思ったが、いずれは体から抜ける物だしな・・・と、今回は隔離提供だけなのに、アカリに関わるなと言っておいてオレが積極的に関わっては本末転倒だろう?」
ルーファスが首を傾げた後で朱里の胸に頭を擦り付けてから、朱里の膝に頭を乗せる。
パタパタとグリムレインが右へ左へと朱里の前をせわしなく飛び回り、「うむー」と唸り声を上げて自分の顎の下に手を当てながら考える様にしている。
「グリムレイン?」
「うーむー・・・」
「大方、アカリの【聖域】の力を使って【魔果】の成る木をどうにか出来ないかと考えているのだろう?」
「うぐっ・・・うぬぅー・・・」
指摘されてグリムレインが声を出すが、グリムレインも【聖域】でどうにか出来るか分からない上に、逆に【魔果】に【聖域】の能力が加わるだけかもしれないという懸念もある。
しかし、【魔果】の作用を打ち消せるのならば、朱里の【聖域】はまさに何百年も探し求めていた打開策かもしれない。
「しかし、アカリは今授乳しているから血液から特殊ポーションを作るのは無理だな」
「あっ、それなら医療用に輸血瓶がストックしてあるから、それを使えばいいんじゃないかな?」
「ふむ・・・それならばいけるか?」
「待て待て!婿も嫁も話を進めるな!」
グリムレインが慌てて話を進める2人を止めに掛かり、2人は「名案ではないか?」という顔で首を傾げる。
関わらないと言っておいてすぐさま関わろうとする2人にグリムレインは「舌の根も乾かぬうちに」と思う。
「まぁ、うだうだ考えるのは性に合わない。思いついてしまった物は仕方がない!乗りかかった船というやつだ」
「おー、ルーファスそれでこそ【刻狼亭】の当主です!」
「だが、アカリは大人しく家に居る事だ」
「わかってますよ!ティルやエルやルーシーが居るんですから私だって今優先すべきは子供達だって解ってますからね?」
「それならいい。製薬部隊の所に特殊ポーションを造らせに行ってくる」
「はーい。帰る頃に連絡してくださいね?」
「婿!ぬぬぅ・・・我も行ってくる!」
「はーい。気を付けて行ってきてくださいね」
朱里が見送る中、ルーファスとグリムレインが慌ただしくリビングから出ていく。
「まぁ、こんな事になるとは思っていましたよ」
朱里の後ろから声がして振り向くと窓からネルフィームとギルが顔を出していた。
グリムレインが氷で作ったドリアードの青年の姿を消すと朱里とルーファスは顔を見合わせる。
「その話だと、ドラゴンが余計な事をしていないか?特にケルチャが」
「樹を枯らそうと手を出さなきゃ良かったんじゃないの?」
2人の意見にグリムレインは半目になる。
「婿も嫁も解っておらんな。あれは放置しておけばケルチャが関わらんでも【魔果】になっておったし、我らドラゴンが関わった事で被害が少なく済んだというものだ。感謝こそされ糾弾される覚えはない」
「しかし、初めの頃はここまで心を狂わす物では無かったんだろ?」
「それに関しては取り込んだドリアード達の心が時間を経て狂って混ざり合ってしまったのと、一度世に解き放たれた時に討伐に乗り出した者達の能力を取り込んだのもあるだろうな」
より凶悪になって人を狂わせる果実を実らせて、今こうしてまた世に影響を表している【魔果】は誰が何のために封印を解き放ったのか、謎が残っている。
人々から信頼も厚い人々ばかりが狙われている所に紐を解くカギがあるとギルが言い今現在調査しているが、これに関してはギルは冒険者の仕事というよりは貴族としての調整の様なものだと言っていた。
ギルへの謎もまた深まるばかりではあるが、【刻狼亭】は今回はあくまで関わるのは隔離場所の提供だけだと決めているので、こうして話し合いだけで終わっている。
「そろそろ冬眠から目覚める頃だろうから、ケルチャが荒まなければいいが」
「ケルチャは誰とも主従契約しておらんから【魔果】に近付く事も出来んからな」
「とりあえずは、私達に出来る事はこのまま何事もなく【魔果】が終息してくれることを待つだけだよね?」
「そうだな。アカリは大人しくしておくことだ」
「嫁は気付くと何かしらやらかしているからな」
「うう・・・っ、私何もしないですってば、何で睨んでるの?!」
ジトっとした目でルーファスとグリムレインに見られて朱里がたじろぎながら首を振ると、「アカリだしなぁ・・・」「嫁だしなぁ・・・」とハァーとため息を吐かれる。
「第一、そんな危ない物が近付いたら私直ぐに耐性低いから変になっちゃいますからね?自分があんな危ない人になるのは嫌です!」
ニートライの変態っぷりに朱里もあんな風に自分がなるのは御免だと鳥肌をブワッと立てる。
それに乳幼児が3人もいる現状で巻き込まれたりしたら、また「母上知らないよ?」状態で忘れ去られるのは辛すぎる。
「アカリは番のオレが居るからそれ程ひどく狂いはしないだろうがな」
「嫁なら押さえつけて捕獲出来るが、婿は大変そうだ」
「うちで危なそうなのはリューちゃんとシューちゃんとケルチャくらいだものね」
番も主君も居ないので【魔果】に狂わされたら目も当てられてない。
特にリュエールとシュトラールは危険過ぎて被害が酷そうだ。
「いや、あの2人なら大丈夫だろう」
「何で?」
「生まれた時からアカリの【聖域】を摂取して育っているからな」
「・・・ルーファス、それって私の【聖域】で【魔果】の効果が消えるって事?」
「・・・ふむ。そうなるな。口にして気付いたな」
ルーファスがスクッと立ち上がるが、直ぐにストンと座る。
「どうしたんです?」
「いや、特殊ポーションをニートライに飲ませるか一瞬思ったが、いずれは体から抜ける物だしな・・・と、今回は隔離提供だけなのに、アカリに関わるなと言っておいてオレが積極的に関わっては本末転倒だろう?」
ルーファスが首を傾げた後で朱里の胸に頭を擦り付けてから、朱里の膝に頭を乗せる。
パタパタとグリムレインが右へ左へと朱里の前をせわしなく飛び回り、「うむー」と唸り声を上げて自分の顎の下に手を当てながら考える様にしている。
「グリムレイン?」
「うーむー・・・」
「大方、アカリの【聖域】の力を使って【魔果】の成る木をどうにか出来ないかと考えているのだろう?」
「うぐっ・・・うぬぅー・・・」
指摘されてグリムレインが声を出すが、グリムレインも【聖域】でどうにか出来るか分からない上に、逆に【魔果】に【聖域】の能力が加わるだけかもしれないという懸念もある。
しかし、【魔果】の作用を打ち消せるのならば、朱里の【聖域】はまさに何百年も探し求めていた打開策かもしれない。
「しかし、アカリは今授乳しているから血液から特殊ポーションを作るのは無理だな」
「あっ、それなら医療用に輸血瓶がストックしてあるから、それを使えばいいんじゃないかな?」
「ふむ・・・それならばいけるか?」
「待て待て!婿も嫁も話を進めるな!」
グリムレインが慌てて話を進める2人を止めに掛かり、2人は「名案ではないか?」という顔で首を傾げる。
関わらないと言っておいてすぐさま関わろうとする2人にグリムレインは「舌の根も乾かぬうちに」と思う。
「まぁ、うだうだ考えるのは性に合わない。思いついてしまった物は仕方がない!乗りかかった船というやつだ」
「おー、ルーファスそれでこそ【刻狼亭】の当主です!」
「だが、アカリは大人しく家に居る事だ」
「わかってますよ!ティルやエルやルーシーが居るんですから私だって今優先すべきは子供達だって解ってますからね?」
「それならいい。製薬部隊の所に特殊ポーションを造らせに行ってくる」
「はーい。帰る頃に連絡してくださいね?」
「婿!ぬぬぅ・・・我も行ってくる!」
「はーい。気を付けて行ってきてくださいね」
朱里が見送る中、ルーファスとグリムレインが慌ただしくリビングから出ていく。
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