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14章
狂った果実8 【魔果の始まり3】
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ある日突然無くなった村。
消えた村人。廃村になり森に埋もれた村。
調べに来た人々が行方不明になる。
そんな不思議な事が起こっている噂を聞いて、好奇心旺盛なドラゴンは2人でその村の上空まで来た。
木竜のケルチャと花竜のケイトの2人は仲の良い兄妹ドラゴンでいつもどこでも2人で世界を飛び回っている。
草木を操る2人は樹人のドリアード族とも交流がある為に、噂を聞いて「調べてくる」と軽い気持ちで出掛けた。
森に埋もれた村の跡地には聖なる樹が1本生えていて、先ずは事情を聖なる樹に聞こうと、聖なる樹の天辺に降りる。
「アタシが聖なる樹の記憶を見るから、アンタは大人しくしてなさいよ?」
「兄さんは心配性ね。見た所ただの森に埋もれた村よ?」
「でも噂があるんだから、迂闊に動いちゃ駄目よ?」
「はーい。兄さん早くこの村で何があったか見て」
植物の見た物を探る能力を持つケルチャが見た可哀想なドリアードの子供の一生。
物悲しいドリアード族のサルにケルチャも少しばかり同情する。
彼の肌が白い理由なんてもっと別の地方に居るドリアード族を尋ねたら解った事。
ドリアード族は『賢者の樹』の若木から生まれた『聖なる樹』から生み出された種族で、賢者の樹が白い樹なのだから、サルの肌の色が白かったのは先祖返りして『賢者の樹』の性質が出ていたからでしかない。
たまにドリアード族に生まれる白い肌の若木は他のドリアード族では先祖の子として大切な扱いを受けるのに、このドリアード族は知識が足りないばかりに祖先の血を心のどこかにある畏怖と尊敬の念の畏怖のみをサルに持ってしまった。
「可哀想で哀れな子ね・・・サル、いえサルターナル」
だからこそ、聖なる樹が哀れんでサルを樹として生まれ返させてしまった。
でも、サルの心はもうその樹には宿っては居ない。
取り込んでしまったフィリーアの夫の心と村人の心が入り混じり、恐ろしい物に変質してしまっている。
「ケイト。この状況がわかったわ」
「本当?で、どうなのよ兄さん」
ケルチャはケイトにドリアード族のサルの話を聞かせ、聖なる樹の下で白く小さな樹がある事を空から確認する。
「近づいたら取り込まれるかもしれないわね」
「兄さんどうするの?」
「可哀想だけど枯らすしかないわね」
「・・・せめて兄さんの力で人を襲わない様にすることは出来ないの?」
「それが出来ればアタシだって苦労しないわよ」
「流石に直接干渉出来る場所に近付かないと無理かぁ・・・兄さん役立たず」
「ちょっと、そういう良い方は失礼よ!もぅ!」
じゃれ合う様にケルチャとケイトが笑い合いながら、聖なる樹に干渉してそこからサルの樹を枯らす様に力を降り注いでいった。
小さなサルの樹の葉がパサパサと落ちていくのを2人は聖なる樹の上から眺めていた。
白く細い枯れ枝になり、ケイトが「可哀想ね」とドリアードの若木を想い呟いた。
ケルチャも「そうね」と生まれた村が悪かったと哀れんだ。
「せめて花でも咲かせてあげましょう」
「そうね。ケイトの咲かせる花は綺麗だからー・・・何ッ?!!」
2人が聖なる樹から降りようと飛び立った瞬間、白い枝が2人に襲い掛かりケルチャは自分に絡みついた枝を枯らし逃げ、ケイトを見ればまるで捕食されるように枝がミシミシとケイトを取り込んでいった。
「ケイト!直ぐに助けるわ!」
「兄さん!兄さん!助けて!!」
白い枝を枯らしても枯らしても次から次へ伸びてケイトを救うどころか、自分に絡みついてくる枝を振り払う事で精一杯になっていくケルチャの見た物は、聖なる樹が変質し、白い樹になる所だった。
「そんな・・・聖なる樹を取り込んでる・・・」
白い樹が真っ赤な花を咲かせ、赤い花粉が霧の様に吐き出されると、周りの木々は枯れ果てケルチャも何かが吸い取られる感覚に慌てて樹から距離を取って逃げる。
「ケイト!無事?このままじゃ不味いわ!」
ケイトの返事が無く、ケルチャが空を旋回しながら様子を見ていたが、森が異質な物に変わっていく速度に自分ではどうにもならないと他のドラゴンに助けを求めるしか無いと空に咆哮を轟かせる。
その咆哮に答えたのは水竜アクエレイン、雷竜デモスクファー、霧竜ミイ、氷竜グリムレイン、黒竜ネルフィーム、光竜アルビー、緑竜ワグナロック。
「暇だから来てやったぞ」
「何かドジったんでしょ?ウケるー」
「笑い事じゃないでしょ!ふふふ」
集まったドラゴン達は暇つぶしがてらに来たという感じで危機感も無くケラケラと笑って空を飛び回る。
ケルチャが樹の事を説明すると、ドラゴン達は「やっぱドジったんだー」とケラケラ笑う。
「とにかく、ケイトをあの樹から助けて欲しいのよ!お礼に竜の癒し樹を成長させておくから!」
「それって卵孵りしろって言ってる?!」
「ケルチャお礼なのか何なのかわかんないってば」
笑いながらドラゴン達が樹に一斉に攻撃を仕掛けると樹から甘い香りが広がり、ドラゴン達がフラフラとぶつかり合いながら地面に落下していく。
「ケイトの眠り花だわ!皆、匂いを吸わないで!」
「うぐー・・・無茶いわないでよ・・・」
「ケイト取り込まれてんじゃねぇーよ・・・まったく世話のやける兄妹だな」
文句を言いながら、ドラゴン達が気合を入れなおす様に尻尾を地面に叩きつけて飛び立つと、1人姿が見えなくなった。
「あれ?ワグナロックは?」
「あーっ!アイツ寝てる!取り込まれかけてる!!」
「早く助けるぞ!」
ワグナロックを助けようとドラゴン達が動きだし、また攻防が繰り広げられた。
一進一退という感じの状況が続き、埒が明かなくなったドラゴン達はこれ以上、森から栄養を吸い尽くして成長されても困ると、アクエレインの水魔法で樹を包み込み、土を全て取り払って周りの木々から隔離した。
そして根に絡めとられたケイトの姿を目にした。
ケイトを引き剥がせず、ケイトから養分を吸い能力を活性化させる樹を止めるにはケイト事封じるしかなかった。
樹は厳重に人の目につかない場所に封じられたはずだった。
しかし、時が経ち、樹は再びケルチャの前に現れた。
より変質した、人の心を狂わす【魔果】と呼ばれる樹になっていた。
封じられた場所が時を経て人の住む場所になった事と、封じた時に力を貸してくれたドラゴン達が死んだ事も影響していた為に再び封印したが、世界への影響は黒い歴史として歴史には載らない悲惨なものだった。
【魔果】の影響が抜けるまで人々は狂い続けた時代。
【魔果】の成る木は再び人目につかない場所へと封じられた・・・が、再び封印が解かれ、今へと繋がる。
消えた村人。廃村になり森に埋もれた村。
調べに来た人々が行方不明になる。
そんな不思議な事が起こっている噂を聞いて、好奇心旺盛なドラゴンは2人でその村の上空まで来た。
木竜のケルチャと花竜のケイトの2人は仲の良い兄妹ドラゴンでいつもどこでも2人で世界を飛び回っている。
草木を操る2人は樹人のドリアード族とも交流がある為に、噂を聞いて「調べてくる」と軽い気持ちで出掛けた。
森に埋もれた村の跡地には聖なる樹が1本生えていて、先ずは事情を聖なる樹に聞こうと、聖なる樹の天辺に降りる。
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「でも噂があるんだから、迂闊に動いちゃ駄目よ?」
「はーい。兄さん早くこの村で何があったか見て」
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物悲しいドリアード族のサルにケルチャも少しばかり同情する。
彼の肌が白い理由なんてもっと別の地方に居るドリアード族を尋ねたら解った事。
ドリアード族は『賢者の樹』の若木から生まれた『聖なる樹』から生み出された種族で、賢者の樹が白い樹なのだから、サルの肌の色が白かったのは先祖返りして『賢者の樹』の性質が出ていたからでしかない。
たまにドリアード族に生まれる白い肌の若木は他のドリアード族では先祖の子として大切な扱いを受けるのに、このドリアード族は知識が足りないばかりに祖先の血を心のどこかにある畏怖と尊敬の念の畏怖のみをサルに持ってしまった。
「可哀想で哀れな子ね・・・サル、いえサルターナル」
だからこそ、聖なる樹が哀れんでサルを樹として生まれ返させてしまった。
でも、サルの心はもうその樹には宿っては居ない。
取り込んでしまったフィリーアの夫の心と村人の心が入り混じり、恐ろしい物に変質してしまっている。
「ケイト。この状況がわかったわ」
「本当?で、どうなのよ兄さん」
ケルチャはケイトにドリアード族のサルの話を聞かせ、聖なる樹の下で白く小さな樹がある事を空から確認する。
「近づいたら取り込まれるかもしれないわね」
「兄さんどうするの?」
「可哀想だけど枯らすしかないわね」
「・・・せめて兄さんの力で人を襲わない様にすることは出来ないの?」
「それが出来ればアタシだって苦労しないわよ」
「流石に直接干渉出来る場所に近付かないと無理かぁ・・・兄さん役立たず」
「ちょっと、そういう良い方は失礼よ!もぅ!」
じゃれ合う様にケルチャとケイトが笑い合いながら、聖なる樹に干渉してそこからサルの樹を枯らす様に力を降り注いでいった。
小さなサルの樹の葉がパサパサと落ちていくのを2人は聖なる樹の上から眺めていた。
白く細い枯れ枝になり、ケイトが「可哀想ね」とドリアードの若木を想い呟いた。
ケルチャも「そうね」と生まれた村が悪かったと哀れんだ。
「せめて花でも咲かせてあげましょう」
「そうね。ケイトの咲かせる花は綺麗だからー・・・何ッ?!!」
2人が聖なる樹から降りようと飛び立った瞬間、白い枝が2人に襲い掛かりケルチャは自分に絡みついた枝を枯らし逃げ、ケイトを見ればまるで捕食されるように枝がミシミシとケイトを取り込んでいった。
「ケイト!直ぐに助けるわ!」
「兄さん!兄さん!助けて!!」
白い枝を枯らしても枯らしても次から次へ伸びてケイトを救うどころか、自分に絡みついてくる枝を振り払う事で精一杯になっていくケルチャの見た物は、聖なる樹が変質し、白い樹になる所だった。
「そんな・・・聖なる樹を取り込んでる・・・」
白い樹が真っ赤な花を咲かせ、赤い花粉が霧の様に吐き出されると、周りの木々は枯れ果てケルチャも何かが吸い取られる感覚に慌てて樹から距離を取って逃げる。
「ケイト!無事?このままじゃ不味いわ!」
ケイトの返事が無く、ケルチャが空を旋回しながら様子を見ていたが、森が異質な物に変わっていく速度に自分ではどうにもならないと他のドラゴンに助けを求めるしか無いと空に咆哮を轟かせる。
その咆哮に答えたのは水竜アクエレイン、雷竜デモスクファー、霧竜ミイ、氷竜グリムレイン、黒竜ネルフィーム、光竜アルビー、緑竜ワグナロック。
「暇だから来てやったぞ」
「何かドジったんでしょ?ウケるー」
「笑い事じゃないでしょ!ふふふ」
集まったドラゴン達は暇つぶしがてらに来たという感じで危機感も無くケラケラと笑って空を飛び回る。
ケルチャが樹の事を説明すると、ドラゴン達は「やっぱドジったんだー」とケラケラ笑う。
「とにかく、ケイトをあの樹から助けて欲しいのよ!お礼に竜の癒し樹を成長させておくから!」
「それって卵孵りしろって言ってる?!」
「ケルチャお礼なのか何なのかわかんないってば」
笑いながらドラゴン達が樹に一斉に攻撃を仕掛けると樹から甘い香りが広がり、ドラゴン達がフラフラとぶつかり合いながら地面に落下していく。
「ケイトの眠り花だわ!皆、匂いを吸わないで!」
「うぐー・・・無茶いわないでよ・・・」
「ケイト取り込まれてんじゃねぇーよ・・・まったく世話のやける兄妹だな」
文句を言いながら、ドラゴン達が気合を入れなおす様に尻尾を地面に叩きつけて飛び立つと、1人姿が見えなくなった。
「あれ?ワグナロックは?」
「あーっ!アイツ寝てる!取り込まれかけてる!!」
「早く助けるぞ!」
ワグナロックを助けようとドラゴン達が動きだし、また攻防が繰り広げられた。
一進一退という感じの状況が続き、埒が明かなくなったドラゴン達はこれ以上、森から栄養を吸い尽くして成長されても困ると、アクエレインの水魔法で樹を包み込み、土を全て取り払って周りの木々から隔離した。
そして根に絡めとられたケイトの姿を目にした。
ケイトを引き剥がせず、ケイトから養分を吸い能力を活性化させる樹を止めるにはケイト事封じるしかなかった。
樹は厳重に人の目につかない場所に封じられたはずだった。
しかし、時が経ち、樹は再びケルチャの前に現れた。
より変質した、人の心を狂わす【魔果】と呼ばれる樹になっていた。
封じられた場所が時を経て人の住む場所になった事と、封じた時に力を貸してくれたドラゴン達が死んだ事も影響していた為に再び封印したが、世界への影響は黒い歴史として歴史には載らない悲惨なものだった。
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