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14章
狂った果実3
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【魔果】の果実が成る木はこの世界の何処にあるかは知られていないが、存在だけは語られていた。
果実が成る時、世界に影響が出てしまう為に厳重に封印されている。極秘扱いに近い【魔果】は誠実であれば誠実な者程、影響が出た時に行う醜態の影響は計り知れない。
身の破滅ともいえる為に【魔果】の影響が出た場合は【魔果】の効果が抜けきるまでは家や檻に閉じ込めて監視しなくてはいけない。
温泉大陸には間欠泉の森の奥に使われていない間欠泉の枯れた洞窟があり、そこは強固な門に閉ざされている。
握力500kgの怪力獣人や竜人でも門を壊すことは出来ない。
そこへ、今回の男が入れられる予定だった。
ニートライ・コブス・オルロはオラウータンの獣人で『番消失』をした人々に自決しないように寄り添って支援をしている人物で、ニートライが何か不祥事を起こせば、ただでさえ『番消失』の人々の弱り切った心は砕かれ自決の道をたどってしまう人々が出るかもしれない。
彼はそれだけ他者への心を優しく包み込む影響力のある人物。
【刻狼亭】がニートライを隔離するのに協力を頼まれたのは、先代のルーファスの父親ルーディニアスがニートライが支援する『番消失』の世話になっていた事と、温泉大陸ならば旅行に来たと見せかけて【魔果】の効果を抜き出すまでは誤魔化せる事、【刻狼亭】の人間ならばニートライが暴れても対応出来るという利点で頼まれた事だった。
「つまり、ニートライさんを訴えたり、ニートライさんの失態を【刻狼亭】の女将である私が言いふらせば【刻狼亭】の信用にも関わるから言えない・・・そういう事を含めて、私で助かったって事だね」
「ああ。旅館で少し休ませてから移動するはずが、従者が少し目を離した隙に居なくなって、この様だ。もう少しオレも警備の者を付けておくべきだった」
ルーファスが手を握りしめて悔しそうな顔をするのを朱里の手がポンポンと叩いて笑う。
「私もティルも大丈夫でしたよ?自分を責めないで下さい」
「アカリを失ったらオレは生きていけない・・・」
「ふふっ。そうなったらニートライさんはルーファスに必要な人だね。しっかり【魔果】が抜けきるまでお世話しないと」
「アカリが生きるという選択肢を一番に抜かないでくれ」
「私は意外としぶといから平気。割りとよく死にかけますけど」
茶化す様に朱里が言ってガッツポーズをすると、ルーファスがガクリと項垂れてウ~ッと唸りながら朱里に手を伸ばすと引き寄せて腕の中に閉じ込める。
「さっさとリュエールに当主を譲ってアカリと一緒に隠居暮らしをして閉じ込めておきたい」
「ふぁー!リューちゃんと私が可哀想ですよ?!」
「アカリは何かしら変な事に巻き込まれるから閉じ込めておくのが一番いい」
「ひえぇぇ。私が可哀想なので監禁は駄目です!」
「監禁・・・そうだな。それが良いかもな」
「ルーファス、危ない考えは駄目ですよ?!」
クククッと笑いながらルーファスが肩を震わせ、朱里もようやくルーファスの気持ちに余裕が出来たかな?と満足して寄り掛かる。
「ニートライさんの他にも影響が出ている人が居るって言っていたけど、その人達は大丈夫なの?」
「大丈夫では無いな。世間的な物は壊滅的に駄目になったと言って良い。ニートライの様に平和に物事を解決しようという平和主義者の有力者が多かったのもあるしな」
「平和主義者だと【魔果】の影響が出やすいんですか?」
「いや。恐らくは封印を解いた奴が果実自体を持ち込んでニートライ達に食わせたのかもしれない」
「ん?果実が出回ってるからこんな風に狂ったんでしょう?」
「それもあるが、本来【魔果】は封印が解けた時点で世界中に微かに影響が出ている。アカリはティル達を身ごもる前辺りから体が感じやすかっただろ?」
「はうっ!なんでそれを・・・」
「それはアカリを抱いてれば判る。その時期から封印は解かれていたとみて良い。アカリは薬物耐性が低い分、影響を受けやすいからな」
顔を赤くして朱里が両手で頬を押さえて「ひぇー」と騒いでルーファスが朱里の頭に顎を乗せながら「媚薬程の影響が出てなくて良かったな」と言うと朱里が「ぎゃにゃああ」と変な声を上げて、随分と前に媚薬で2日間程乱れた時の事を思い出し両手で顔を覆い隠した。
「まぁ、封印が解かれただけで少しの影響は出るが、果実や花といった実物が無ければそれ程の影響は出ないはずなんだが、明らかにニートライ達はおかしくなっていったそうだから、果実か花どちらかを口にしたのだろう」
「おかしくなっていった・・・と、いう事は即効性じゃないの?」
「量にもよるだろうが、徐々におかしくなっていったらしい」
「そんなんじゃ【魔果】だと気付くのが遅れてしまいそうですね?」
「その通りだ。醜態を演じた後で【魔果】が抜けた者達からの証言でようやく事態に気付いた・・・と、言う感じだ」
「その【魔果】がこれ以上出回らないと良いですね・・・」
ブルッと朱里が身を震わせるとルーファスが朱里の旋毛にキスを落としながら「敵が何か分からないのが難点だ」と呟き、耐性の低い朱里にこれ以上の影響が出なければいいが・・・と、少しだけ監禁しておくか悩んだ。
「グリムレインが何かしら知っているだろうから、後で聞き出すしかないな」
果実が成る時、世界に影響が出てしまう為に厳重に封印されている。極秘扱いに近い【魔果】は誠実であれば誠実な者程、影響が出た時に行う醜態の影響は計り知れない。
身の破滅ともいえる為に【魔果】の影響が出た場合は【魔果】の効果が抜けきるまでは家や檻に閉じ込めて監視しなくてはいけない。
温泉大陸には間欠泉の森の奥に使われていない間欠泉の枯れた洞窟があり、そこは強固な門に閉ざされている。
握力500kgの怪力獣人や竜人でも門を壊すことは出来ない。
そこへ、今回の男が入れられる予定だった。
ニートライ・コブス・オルロはオラウータンの獣人で『番消失』をした人々に自決しないように寄り添って支援をしている人物で、ニートライが何か不祥事を起こせば、ただでさえ『番消失』の人々の弱り切った心は砕かれ自決の道をたどってしまう人々が出るかもしれない。
彼はそれだけ他者への心を優しく包み込む影響力のある人物。
【刻狼亭】がニートライを隔離するのに協力を頼まれたのは、先代のルーファスの父親ルーディニアスがニートライが支援する『番消失』の世話になっていた事と、温泉大陸ならば旅行に来たと見せかけて【魔果】の効果を抜き出すまでは誤魔化せる事、【刻狼亭】の人間ならばニートライが暴れても対応出来るという利点で頼まれた事だった。
「つまり、ニートライさんを訴えたり、ニートライさんの失態を【刻狼亭】の女将である私が言いふらせば【刻狼亭】の信用にも関わるから言えない・・・そういう事を含めて、私で助かったって事だね」
「ああ。旅館で少し休ませてから移動するはずが、従者が少し目を離した隙に居なくなって、この様だ。もう少しオレも警備の者を付けておくべきだった」
ルーファスが手を握りしめて悔しそうな顔をするのを朱里の手がポンポンと叩いて笑う。
「私もティルも大丈夫でしたよ?自分を責めないで下さい」
「アカリを失ったらオレは生きていけない・・・」
「ふふっ。そうなったらニートライさんはルーファスに必要な人だね。しっかり【魔果】が抜けきるまでお世話しないと」
「アカリが生きるという選択肢を一番に抜かないでくれ」
「私は意外としぶといから平気。割りとよく死にかけますけど」
茶化す様に朱里が言ってガッツポーズをすると、ルーファスがガクリと項垂れてウ~ッと唸りながら朱里に手を伸ばすと引き寄せて腕の中に閉じ込める。
「さっさとリュエールに当主を譲ってアカリと一緒に隠居暮らしをして閉じ込めておきたい」
「ふぁー!リューちゃんと私が可哀想ですよ?!」
「アカリは何かしら変な事に巻き込まれるから閉じ込めておくのが一番いい」
「ひえぇぇ。私が可哀想なので監禁は駄目です!」
「監禁・・・そうだな。それが良いかもな」
「ルーファス、危ない考えは駄目ですよ?!」
クククッと笑いながらルーファスが肩を震わせ、朱里もようやくルーファスの気持ちに余裕が出来たかな?と満足して寄り掛かる。
「ニートライさんの他にも影響が出ている人が居るって言っていたけど、その人達は大丈夫なの?」
「大丈夫では無いな。世間的な物は壊滅的に駄目になったと言って良い。ニートライの様に平和に物事を解決しようという平和主義者の有力者が多かったのもあるしな」
「平和主義者だと【魔果】の影響が出やすいんですか?」
「いや。恐らくは封印を解いた奴が果実自体を持ち込んでニートライ達に食わせたのかもしれない」
「ん?果実が出回ってるからこんな風に狂ったんでしょう?」
「それもあるが、本来【魔果】は封印が解けた時点で世界中に微かに影響が出ている。アカリはティル達を身ごもる前辺りから体が感じやすかっただろ?」
「はうっ!なんでそれを・・・」
「それはアカリを抱いてれば判る。その時期から封印は解かれていたとみて良い。アカリは薬物耐性が低い分、影響を受けやすいからな」
顔を赤くして朱里が両手で頬を押さえて「ひぇー」と騒いでルーファスが朱里の頭に顎を乗せながら「媚薬程の影響が出てなくて良かったな」と言うと朱里が「ぎゃにゃああ」と変な声を上げて、随分と前に媚薬で2日間程乱れた時の事を思い出し両手で顔を覆い隠した。
「まぁ、封印が解かれただけで少しの影響は出るが、果実や花といった実物が無ければそれ程の影響は出ないはずなんだが、明らかにニートライ達はおかしくなっていったそうだから、果実か花どちらかを口にしたのだろう」
「おかしくなっていった・・・と、いう事は即効性じゃないの?」
「量にもよるだろうが、徐々におかしくなっていったらしい」
「そんなんじゃ【魔果】だと気付くのが遅れてしまいそうですね?」
「その通りだ。醜態を演じた後で【魔果】が抜けた者達からの証言でようやく事態に気付いた・・・と、言う感じだ」
「その【魔果】がこれ以上出回らないと良いですね・・・」
ブルッと朱里が身を震わせるとルーファスが朱里の旋毛にキスを落としながら「敵が何か分からないのが難点だ」と呟き、耐性の低い朱里にこれ以上の影響が出なければいいが・・・と、少しだけ監禁しておくか悩んだ。
「グリムレインが何かしら知っているだろうから、後で聞き出すしかないな」
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