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14章
氷竜と鬼払いと狼
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お正月休みも終わり、それぞれ仕事始めとなり、ゆっくりと寒い中仕事に勤しみ日常に戻っていく。
休みのまったりとした雰囲気は何処へ行ったのやら?
温泉大陸の場合は毎日人がごった返しては観光だ何だと騒いでいるので、お正月の様な静かなお休みというのは貴重だった。
新しい家族の増えたトリニア家ではたった一人を除いて皆お正月休みの間中、赤ん坊の周りで過ごしていた。
赤ん坊中心の生活はまだ続いてはいるが、皆世話をする事にも慣れ、発熱だ嘔吐だという事にもシュトラールを抜きでも対応出来るようになった。
相変わらず、エルシオンが発熱すると海岸に向かって魔法を打たせて発散させる事は続いているが、そろそろ眠れる散華の中にストックしてある魔法が尽きるので「回復魔法を次はストックさせれば家の周りでもぶっ放せるね!」と、シュトラールが言っているので轟音を立てる事が無いのなら、それに越したことはないね・・・と、いう話で落ち着いている。
早くエルシオンが魔法を自力で使えるようになって魔力のコントロールを覚えればこうした事も無くなるので、早く成長してほしいと願わずにはいられない。
そんな感じで赤ん坊の世話に慣れたと同時に、休みは明けてしまったので皆仕方が無いという感じで仕事に戻り、冬眠に戻りとなっていった。
朱里も悪露という出産後に胎内に残った物が少しずつ出ていく物でこれが出ていったので、医者に大丈夫ですよと、言われ夫婦生活が出来るようになり、ルーファスに夜のお誘いを受ける様にもなった。
今回はシュトラールが回復魔法を掛けてくれたのもあって割りと早い段階で日常に戻る事になった。
『嫁、まだ帰れそうにない・・・』
「そう・・・あのね、あと少しで『鬼払い』ですよ?鬼払いまでに戻って来れる?」
『それは・・・わからん。我も帰りたいが・・・』
「わかった。グリムレインが帰れない事も想定して今回は準備するね」
『我だけ鬼払いで遊べぬのか・・・』
ぐぬぬ・・・とグリムレインが歯噛みしながら『また呼ばれたから我はもう行く』と、魔法通信は切られた。
グリムレインが出掛けて1ヶ月・・・何故か今も帰ることが出来ないらしく、3日に1回こうして連絡が来るものの帰れないままだった。
何をしているのかはよく分からないが、グリムレインでしか対応できない事らしく、捕まってしまったのだ・・・と、グリムレインは言っているが、何に捕まってしまったのかは分からない。
他のドラゴンは冬眠に入ってしまって他のドラゴンからは聞けない。
グリムレインからは通信は来るが、こちらから掛けても忙しくて出る暇が無いのだとか。
「さて、グリムレインが帰って来れないので、今年の鬼払いはどうしましょう?」
朱里が【刻狼亭】の名簿を手にルーファスに話し掛けると、算盤を持っていた手を止めて膝の上の朱里を見る。
【刻狼亭】の料亭の事務所の一角にベビーサークルが出来、そこで朱里が3人の子供と一緒に過ごしている。
ルーファスもたまに朱里を膝に乗せて仕事と愛情を同時進行な時があり、今がその同時進行中の最中である。
「グリムレインはまだ忙しいみたいだな」
「うん。何してるか短い時間でしか話できないみたいだしパッと切っちゃうから聞き出せなくて・・・」
「妬ける。アカリはオレのものなのに・・・」
「ルーファスは幾つになっても嫉妬深いですね?ふふっ」
「番はこういうものだし、狼は元々生涯1人を決めたら1人に寄り添うもので雄でも雌でもつがいの側に他人を近寄らせるのを嫌う種族だ」
「そうなんですか?狼ってハーレムとか作らないんですか?狼って群れで動くイメージですけど」
「狼に限ってはそれはない。他の種族と違って子孫という物に関しては女をとっかえひっかえで産ませて増やす事はしない。群れなのは・・・そうだな親狼が死んでしまった子狼はどうすると思う?」
「えと・・・そのまま死んじゃう?」
「いや、群れの別の狼夫婦が我が子の様に育てていく。そうして狼という種族を残していく」
「へぇー。じゃあギルさんがルーファスを大事にしているのはそういう本能からなのかな?」
「まぁ、そうかもしれないな・・・と、話が逸れたな。鬼払いは参加する従業員達を2チームに分けて、鈴の取り合いでも今回はさせてみるか?」
「あらら。今年は製薬部隊のポーションが飛び交いそうですね?」
「たまには趣向を変えてみるのもいいだろう?」
2人が鬼払いの計画を立てている話を聞き、事務所の事務員たちは「今年は不参加にしよう」とひっそり思う。
今年の鬼払いのルールが決まり、血気盛んな従業員は燃え上がり、事務方の従業員は「クイズが無いなら勝ち目がない」と、意気消沈していた。
鬼払いの開催日、グリムレインの魔法により雪が一切降らなかった温泉大陸に雪が舞い、鬼払いが終わる頃には真っ白な世界で埋め尽くされていた。
「グリムレイン、鬼払い参加したかったんですね・・・」
「そのようだな」
朱里とルーファスが降り積もる雪を見ながらグリムレインの心が荒れているなぁと思いつつ、グリムレインの為に取って来た鈴に紐を通して帰ってきたら渡してあげようと笑う。
休みのまったりとした雰囲気は何処へ行ったのやら?
温泉大陸の場合は毎日人がごった返しては観光だ何だと騒いでいるので、お正月の様な静かなお休みというのは貴重だった。
新しい家族の増えたトリニア家ではたった一人を除いて皆お正月休みの間中、赤ん坊の周りで過ごしていた。
赤ん坊中心の生活はまだ続いてはいるが、皆世話をする事にも慣れ、発熱だ嘔吐だという事にもシュトラールを抜きでも対応出来るようになった。
相変わらず、エルシオンが発熱すると海岸に向かって魔法を打たせて発散させる事は続いているが、そろそろ眠れる散華の中にストックしてある魔法が尽きるので「回復魔法を次はストックさせれば家の周りでもぶっ放せるね!」と、シュトラールが言っているので轟音を立てる事が無いのなら、それに越したことはないね・・・と、いう話で落ち着いている。
早くエルシオンが魔法を自力で使えるようになって魔力のコントロールを覚えればこうした事も無くなるので、早く成長してほしいと願わずにはいられない。
そんな感じで赤ん坊の世話に慣れたと同時に、休みは明けてしまったので皆仕方が無いという感じで仕事に戻り、冬眠に戻りとなっていった。
朱里も悪露という出産後に胎内に残った物が少しずつ出ていく物でこれが出ていったので、医者に大丈夫ですよと、言われ夫婦生活が出来るようになり、ルーファスに夜のお誘いを受ける様にもなった。
今回はシュトラールが回復魔法を掛けてくれたのもあって割りと早い段階で日常に戻る事になった。
『嫁、まだ帰れそうにない・・・』
「そう・・・あのね、あと少しで『鬼払い』ですよ?鬼払いまでに戻って来れる?」
『それは・・・わからん。我も帰りたいが・・・』
「わかった。グリムレインが帰れない事も想定して今回は準備するね」
『我だけ鬼払いで遊べぬのか・・・』
ぐぬぬ・・・とグリムレインが歯噛みしながら『また呼ばれたから我はもう行く』と、魔法通信は切られた。
グリムレインが出掛けて1ヶ月・・・何故か今も帰ることが出来ないらしく、3日に1回こうして連絡が来るものの帰れないままだった。
何をしているのかはよく分からないが、グリムレインでしか対応できない事らしく、捕まってしまったのだ・・・と、グリムレインは言っているが、何に捕まってしまったのかは分からない。
他のドラゴンは冬眠に入ってしまって他のドラゴンからは聞けない。
グリムレインからは通信は来るが、こちらから掛けても忙しくて出る暇が無いのだとか。
「さて、グリムレインが帰って来れないので、今年の鬼払いはどうしましょう?」
朱里が【刻狼亭】の名簿を手にルーファスに話し掛けると、算盤を持っていた手を止めて膝の上の朱里を見る。
【刻狼亭】の料亭の事務所の一角にベビーサークルが出来、そこで朱里が3人の子供と一緒に過ごしている。
ルーファスもたまに朱里を膝に乗せて仕事と愛情を同時進行な時があり、今がその同時進行中の最中である。
「グリムレインはまだ忙しいみたいだな」
「うん。何してるか短い時間でしか話できないみたいだしパッと切っちゃうから聞き出せなくて・・・」
「妬ける。アカリはオレのものなのに・・・」
「ルーファスは幾つになっても嫉妬深いですね?ふふっ」
「番はこういうものだし、狼は元々生涯1人を決めたら1人に寄り添うもので雄でも雌でもつがいの側に他人を近寄らせるのを嫌う種族だ」
「そうなんですか?狼ってハーレムとか作らないんですか?狼って群れで動くイメージですけど」
「狼に限ってはそれはない。他の種族と違って子孫という物に関しては女をとっかえひっかえで産ませて増やす事はしない。群れなのは・・・そうだな親狼が死んでしまった子狼はどうすると思う?」
「えと・・・そのまま死んじゃう?」
「いや、群れの別の狼夫婦が我が子の様に育てていく。そうして狼という種族を残していく」
「へぇー。じゃあギルさんがルーファスを大事にしているのはそういう本能からなのかな?」
「まぁ、そうかもしれないな・・・と、話が逸れたな。鬼払いは参加する従業員達を2チームに分けて、鈴の取り合いでも今回はさせてみるか?」
「あらら。今年は製薬部隊のポーションが飛び交いそうですね?」
「たまには趣向を変えてみるのもいいだろう?」
2人が鬼払いの計画を立てている話を聞き、事務所の事務員たちは「今年は不参加にしよう」とひっそり思う。
今年の鬼払いのルールが決まり、血気盛んな従業員は燃え上がり、事務方の従業員は「クイズが無いなら勝ち目がない」と、意気消沈していた。
鬼払いの開催日、グリムレインの魔法により雪が一切降らなかった温泉大陸に雪が舞い、鬼払いが終わる頃には真っ白な世界で埋め尽くされていた。
「グリムレイン、鬼払い参加したかったんですね・・・」
「そのようだな」
朱里とルーファスが降り積もる雪を見ながらグリムレインの心が荒れているなぁと思いつつ、グリムレインの為に取って来た鈴に紐を通して帰ってきたら渡してあげようと笑う。
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