黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
上 下
408 / 960
14章

爆音

しおりを挟む
 正月休みで久々にのんびりと自宅でくつろいでいたルーファスの耳に爆音が聞こえたのは昼食が終わって、二日酔いの頭を治そうと朱里と一緒にリビングでウトウトと微睡んでいた時だった。
眠気はサッと引っ込み、起き上がると、ルーファスに寄り掛かっていた朱里が支えを無くしてソファに転がる。

「わっぷ!・・・って、何ですか?今の音・・・」
「わからん。この近くだから少し見てくる」
「はい。気を付けて」

 ルーファスが飛び出して行くと、朱里はソファから起き上がり、ベビーベッドを覗き込みに行く。
ルーシーはギルがやってきて子供部屋でミルアとナルアと一緒に世話をしている為に、このリビングに居るのはティルナールとエルシオンだけなのだが、ティルナールはベビーベッドで寝ているが、エルシオンの姿が見えなかった。

「あら・・・?シューちゃんかな?」

 ウトウトしていたので記憶が曖昧だが、エルシオンは発熱していたりしていたのでシュトラールがまた面倒を見てくれているのかな?と、朱里が首を傾げる。
ぎこちない動きで歩きながらシュトラールの部屋をノックすると返事はなく、ドアを開けると部屋には誰もおらずもぬけの殻だった。

「あれー?リューちゃん、シューちゃん知りませんか?」

 コンコンとシュトラールの部屋の続き扉になっているドアをノックしてリュエールの部屋を開けるも、そこももぬけの殻だった。
仕方なくリビングに戻り、ティルナールを腕に抱いてソファの上に座っていると、ほんのり焦げくさい匂いがして、ティルナールが小さな手をバタつかせて顔を叩いて「ぇー、ぅー」と泣き始めると、顔に赤みが差し始め火属性アレルギーが出た事に気付く。

 リビングにルーファスとリュエール達が戻り、ギルやミルア達もぞろぞろと入ってくる。
焦げ臭いのは外から帰って来たリュエール達だと気付くと朱里が手でティルナールの顔を覆いながら「近づかないで!」と声を上げる。

「どうしたんだ?アカリ」
「え?何?母上」
「どうかしたの?」
 
 困惑した顔でルーファスやリュエール達が近付くのを朱里がここに居たら危ないと無理やり体を起こして、リビングの奥の応接間へ逃げ込む。

「皆、来ないで!お湯玉で体を洗うなりして!ティルが火属性アレルギー出してる!」

 朱里の言葉にルーファスが巨大なお湯玉で全員を包み込むと乾燥魔法を掛ける。
そのあと清浄魔法を部屋全体に掛けて、応接間の奥に逃げ込んだ朱里に近付こうとするが「まだ安全とは言えないので駄目です!」と接近禁止とばかり距離を置かれてしまう。

「それより、何だったんです?あの音は?」

 ルーファスが1畳分距離を開けて朱里にひざ掛けとお茶を差し入れる。

「さっきの音はアカリの『眠れる賛華』をエルシオンが放った音らしい」
「え?何で・・・というか、何があったの?」
「またエルシオンが魔力の巡りが悪くて発熱し始めたらしくてな。リュー達がどうするか相談していたら、ギル叔父上が魔法を使わせたら発散させられると、言って・・・アカリの『眠れる賛華』は魔法が使えない魔力を持っている人間には扱えるという事で使えるのでは・・・?と、試しに行ったら、あの爆音というわけだ」
「えー・・・あの杖に火魔法なんてありましたか?雷と氷だけだったと思うんだけど」
「それに関しては、うちの従業員達が入れ込んだ物が発動したのだと思う」

 そういえば、従業員が面白がって色々入れていたなぁと朱里が思い出す。
朱里がリュエールとシュトラールを見ると、2人は少し眉を下げて即座に謝る。

「母上ごめん!でも、エルの魔力を発散はさせられたから、当分は熱は出ないと思う」
「母上、勝手に武器持って行ってごめんね。あとティルにもごめん」
「あまり弟に無茶はさせないで?危ないからね」
「はーい。母上」
「はい。母上でもこれでエルにどう対処したらいいか何となく掴めたから次からは安全にやるよ」

 リュエールとシュトラールが「やっぱ魔法は海に向けよう」と話し合っている事からエルシオンの魔力の巡りが悪くなるたびにあの爆音なのかもしれないと朱里が少しため息を吐く。

 朱里の予想通り、1日1回『女将亭』から魔法を放つ音がする様になり、『眠れる賛華』に従業員が入れた魔法が尽きるまで音がとどろく事となった。
なぜこんなに大きな音なのか・・・?と、従業員に後で聞いたところ『女将が使うんなら相手がビビる様な爆音響かせて威嚇になればいいかな?って思ったんですよ』と、いう事だった。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する

アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。 しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。 理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で 政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。 そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた

黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」 幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。