黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
上 下
407 / 960
14章

トリニア家の朝風景

しおりを挟む
 新しい年の2日目は少し飲み過ぎで頭痛を抱えたドラゴンとルーファスがリビングのソファでぐったりとし、1人用の朱里専用のソファでは夜中に診療所に行ったまま帰ってこないシュトラールとエルシオンを心配して眠れなかった朱里がぐったりしていた。

 死屍累々としたリビングのソファを見ながら、ハガネが朝食の準備をして朝早くに戻って来たシュトラールに先に朝食を摂らせると眠る様に言い、寝ぼけたままのミルアとナルアに顔を洗ってくるように言うが、2人はうにうにと口を動かすだけでリビングのテーブルにころころと顎を乗せて椅子に座って足をブラブラさせている。

「皆、お正月休みだからってダラッとしない!」
「そうだぞ。まったく、リュー以外は駄目だな」

 リュエールが屍達を見ながら片眉を上げて、小さくため息を吐きながらシュトラールにお茶を出す。

「シュー、お疲れ様。エルはどうだったの?」
「魔力が詰まってたみたい。上手く体で巡らせるのが苦手みたいで一ヶ所に魔力が集まって発熱しちゃったみたい。オレよりこれはリューの【破壊】で魔力を砕いて巡らせてあげた方が良いかもしれない」
「そうなんだ。じゃあ、たまにエルに【破壊】使わないと駄目か・・・僕は魔力の加減苦手だから少し練習しないとかな」
「リューって器用なのか不器用なのかわかんないよねー」
「まぁ得手不得手はあるよ。でも流石に弟を木っ端みじんにはしないから安心してよ」
「それは当たり前でしょー」

 リュエールとシュトラールの会話に「おいおい」と、周りが思いつつもリュエールなら何とかするだろうと、あえて口出しせずに2人の会話を聞きながらハガネがテーブルに並べていく朝食を待つ。

 二日酔いの少し酒臭い大人達にミルアとナルアが「くさーい」と言いながら、ルーシーのベビーベッドを覗き込み、ハガネに頭をガシッと掴まれる。

「ミルア、ナルア。先に顔洗って来いって言っただろ?」
「うーっ、ハガネお湯玉出してー」
「お湯玉でここでパッと洗うからー」
「駄目だ。横着すんな。それに『お姫様』は身支度をちゃんとするもんだぞ」
「「ぶぅー」」

 文句を言いながらミルアとナルアが顔を洗いに行くとハガネがルーシーを抱き上げて朱里の所にやってきてルーシーを朱里に渡す。

「ミルア達が戻る前に乳やっとけ。哺乳瓶突っ込まされて玩具にされたら可哀想だからな」
「そうだね。あの子達も加減を知って欲しいんだけどね」

 朱里が授乳用のケープを羽織ってルーシーに授乳を始めると、匂いがするのかティルナールとエルシオンもぐずり始める。
獣人故なのか、1人が飲み始めると他の2人もぐずり始める事が多々ある。

「リューちゃん達の時もリリスちゃんが居たから割りと取り合いだったけど、今も今で取り合いが起きちゃうのよね。お乳が3つあったら良かったんだけどね」
「母上、その発想はどうかと思う」
「母上、多分3人まとめては持てないと思うよ」

 朱里が「それもそうだねー」と笑いながら、エルシオンも抱いて両胸で授乳させて、最後にティルナールの授乳をさせる。
ティルナールは飲む力が弱い為に、ティルナールを抱きかかえつつ、もう片方の手で胸を揉んで出を良くさせて飲ませている為に、2人同時の授乳は出来ないのでいつも一番最後になってしまう。

「お兄ちゃんが弟妹に先を譲るって感じになってごめんね」

 飲んでいるのかいないのか分からない程の吸い付きに、朱里がティルナールを心配そうに見つめながら話し掛け、丈夫な子に育ちます様にと思わずにはいられない。

「あー、ルーシーにもうあげちゃったの?」
「私達、ミルクあげたかったのに」
「ミルアとナルアがグダグダして顔洗いに直ぐ行かなかったからだ。俺はちゃんと顔洗って来いっていっただろ?」
「ハガネの意地悪」
「ハガネは母上より厳しい」

 ミルアとナルアがむぅっと膨れてハガネが「ほれ飯食え」と、頭をガシガシ乱暴に撫でて2人が椅子に座って朝食を食べ始めると、ハガネが屍になっているルーファスとドラゴン達にも「飯食え」と声を掛ける。

「頭が重い」
「こう、こめかみ辺りからギリギリガンガンする」
「梅干しちょうだい・・・」
「こーいう時は貝よ。貝のだし汁」
「だから飲み比べは止めておけと言うたんじゃ」

 ドラゴン達が動くたびに頭痛を訴えながら席に着いてハガネにしじみ汁を出されて梅粥をご飯代わりに出される。
モソモソとドラゴン達が食べながら「お酒は控えよう」と、何度も聞いたセリフを吐く。

 ティルナールをげっぷさせてハガネに手渡し、ハガネがベビーベッドに寝かせると朱里がルーファスを呼ぶ。

「ルーファス、朝ご飯にしましょう?」
「ああ・・・。わかった・・・」
「今回は随分酷く飲んだんだね」
「祝い事だと皆羽目を外すからな・・・付き合いで飲むのも楽じゃないな。普通の酒だけなら良かったんだが、火酒も今回は出回っていてな・・・アレはキツイぞ」
「あらら、ドワーフのお爺さん達も呼びましたからねぇ。ご好意は無下に出来ませんからルーファス大変ですね」
「まぁ、そのおかげかドワーフの工房をこっちにも作ってもらえることになったから良しとするしかないな」
「なら冒険者の人達も防具や武器の整備を温泉に行っている間に出来るから喜びそうですね」
「ああ。これもアカリがドワーフと縁を結んでくれたおかげだからな。アカリはオレにとっての幸運の女神だよ」
「おだてても何も出ませんよ?ふふ」

 朱里の横の椅子に座り、おでこと両頬にキスをしてルーファスも朝食に手を付ける。
それらを見た後でハガネがようやく席に着いて自分の朝食を食べ始め、少しもしない間に「おかわり」と茶碗を伸ばしてくる手が出てくるのでハガネの朝は中々に忙しい。 
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する

アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。 しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。 理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で 政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。 そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた

黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」 幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。