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14章
トリニア家の朝風景
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新しい年の2日目は少し飲み過ぎで頭痛を抱えたドラゴンとルーファスがリビングのソファでぐったりとし、1人用の朱里専用のソファでは夜中に診療所に行ったまま帰ってこないシュトラールとエルシオンを心配して眠れなかった朱里がぐったりしていた。
死屍累々としたリビングのソファを見ながら、ハガネが朝食の準備をして朝早くに戻って来たシュトラールに先に朝食を摂らせると眠る様に言い、寝ぼけたままのミルアとナルアに顔を洗ってくるように言うが、2人はうにうにと口を動かすだけでリビングのテーブルにころころと顎を乗せて椅子に座って足をブラブラさせている。
「皆、お正月休みだからってダラッとしない!」
「そうだぞ。まったく、リュー以外は駄目だな」
リュエールが屍達を見ながら片眉を上げて、小さくため息を吐きながらシュトラールにお茶を出す。
「シュー、お疲れ様。エルはどうだったの?」
「魔力が詰まってたみたい。上手く体で巡らせるのが苦手みたいで一ヶ所に魔力が集まって発熱しちゃったみたい。オレよりこれはリューの【破壊】で魔力を砕いて巡らせてあげた方が良いかもしれない」
「そうなんだ。じゃあ、たまにエルに【破壊】使わないと駄目か・・・僕は魔力の加減苦手だから少し練習しないとかな」
「リューって器用なのか不器用なのかわかんないよねー」
「まぁ得手不得手はあるよ。でも流石に弟を木っ端みじんにはしないから安心してよ」
「それは当たり前でしょー」
リュエールとシュトラールの会話に「おいおい」と、周りが思いつつもリュエールなら何とかするだろうと、あえて口出しせずに2人の会話を聞きながらハガネがテーブルに並べていく朝食を待つ。
二日酔いの少し酒臭い大人達にミルアとナルアが「くさーい」と言いながら、ルーシーのベビーベッドを覗き込み、ハガネに頭をガシッと掴まれる。
「ミルア、ナルア。先に顔洗って来いって言っただろ?」
「うーっ、ハガネお湯玉出してー」
「お湯玉でここでパッと洗うからー」
「駄目だ。横着すんな。それに『お姫様』は身支度をちゃんとするもんだぞ」
「「ぶぅー」」
文句を言いながらミルアとナルアが顔を洗いに行くとハガネがルーシーを抱き上げて朱里の所にやってきてルーシーを朱里に渡す。
「ミルア達が戻る前に乳やっとけ。哺乳瓶突っ込まされて玩具にされたら可哀想だからな」
「そうだね。あの子達も加減を知って欲しいんだけどね」
朱里が授乳用のケープを羽織ってルーシーに授乳を始めると、匂いがするのかティルナールとエルシオンもぐずり始める。
獣人故なのか、1人が飲み始めると他の2人もぐずり始める事が多々ある。
「リューちゃん達の時もリリスちゃんが居たから割りと取り合いだったけど、今も今で取り合いが起きちゃうのよね。お乳が3つあったら良かったんだけどね」
「母上、その発想はどうかと思う」
「母上、多分3人まとめては持てないと思うよ」
朱里が「それもそうだねー」と笑いながら、エルシオンも抱いて両胸で授乳させて、最後にティルナールの授乳をさせる。
ティルナールは飲む力が弱い為に、ティルナールを抱きかかえつつ、もう片方の手で胸を揉んで出を良くさせて飲ませている為に、2人同時の授乳は出来ないのでいつも一番最後になってしまう。
「お兄ちゃんが弟妹に先を譲るって感じになってごめんね」
飲んでいるのかいないのか分からない程の吸い付きに、朱里がティルナールを心配そうに見つめながら話し掛け、丈夫な子に育ちます様にと思わずにはいられない。
「あー、ルーシーにもうあげちゃったの?」
「私達、ミルクあげたかったのに」
「ミルアとナルアがグダグダして顔洗いに直ぐ行かなかったからだ。俺はちゃんと顔洗って来いっていっただろ?」
「ハガネの意地悪」
「ハガネは母上より厳しい」
ミルアとナルアがむぅっと膨れてハガネが「ほれ飯食え」と、頭をガシガシ乱暴に撫でて2人が椅子に座って朝食を食べ始めると、ハガネが屍になっているルーファスとドラゴン達にも「飯食え」と声を掛ける。
「頭が重い」
「こう、こめかみ辺りからギリギリガンガンする」
「梅干しちょうだい・・・」
「こーいう時は貝よ。貝のだし汁」
「だから飲み比べは止めておけと言うたんじゃ」
ドラゴン達が動くたびに頭痛を訴えながら席に着いてハガネにしじみ汁を出されて梅粥をご飯代わりに出される。
モソモソとドラゴン達が食べながら「お酒は控えよう」と、何度も聞いたセリフを吐く。
ティルナールをげっぷさせてハガネに手渡し、ハガネがベビーベッドに寝かせると朱里がルーファスを呼ぶ。
「ルーファス、朝ご飯にしましょう?」
「ああ・・・。わかった・・・」
「今回は随分酷く飲んだんだね」
「祝い事だと皆羽目を外すからな・・・付き合いで飲むのも楽じゃないな。普通の酒だけなら良かったんだが、火酒も今回は出回っていてな・・・アレはキツイぞ」
「あらら、ドワーフのお爺さん達も呼びましたからねぇ。ご好意は無下に出来ませんからルーファス大変ですね」
「まぁ、そのおかげかドワーフの工房をこっちにも作ってもらえることになったから良しとするしかないな」
「なら冒険者の人達も防具や武器の整備を温泉に行っている間に出来るから喜びそうですね」
「ああ。これもアカリがドワーフと縁を結んでくれたおかげだからな。アカリはオレにとっての幸運の女神だよ」
「おだてても何も出ませんよ?ふふ」
朱里の横の椅子に座り、おでこと両頬にキスをしてルーファスも朝食に手を付ける。
それらを見た後でハガネがようやく席に着いて自分の朝食を食べ始め、少しもしない間に「おかわり」と茶碗を伸ばしてくる手が出てくるのでハガネの朝は中々に忙しい。
死屍累々としたリビングのソファを見ながら、ハガネが朝食の準備をして朝早くに戻って来たシュトラールに先に朝食を摂らせると眠る様に言い、寝ぼけたままのミルアとナルアに顔を洗ってくるように言うが、2人はうにうにと口を動かすだけでリビングのテーブルにころころと顎を乗せて椅子に座って足をブラブラさせている。
「皆、お正月休みだからってダラッとしない!」
「そうだぞ。まったく、リュー以外は駄目だな」
リュエールが屍達を見ながら片眉を上げて、小さくため息を吐きながらシュトラールにお茶を出す。
「シュー、お疲れ様。エルはどうだったの?」
「魔力が詰まってたみたい。上手く体で巡らせるのが苦手みたいで一ヶ所に魔力が集まって発熱しちゃったみたい。オレよりこれはリューの【破壊】で魔力を砕いて巡らせてあげた方が良いかもしれない」
「そうなんだ。じゃあ、たまにエルに【破壊】使わないと駄目か・・・僕は魔力の加減苦手だから少し練習しないとかな」
「リューって器用なのか不器用なのかわかんないよねー」
「まぁ得手不得手はあるよ。でも流石に弟を木っ端みじんにはしないから安心してよ」
「それは当たり前でしょー」
リュエールとシュトラールの会話に「おいおい」と、周りが思いつつもリュエールなら何とかするだろうと、あえて口出しせずに2人の会話を聞きながらハガネがテーブルに並べていく朝食を待つ。
二日酔いの少し酒臭い大人達にミルアとナルアが「くさーい」と言いながら、ルーシーのベビーベッドを覗き込み、ハガネに頭をガシッと掴まれる。
「ミルア、ナルア。先に顔洗って来いって言っただろ?」
「うーっ、ハガネお湯玉出してー」
「お湯玉でここでパッと洗うからー」
「駄目だ。横着すんな。それに『お姫様』は身支度をちゃんとするもんだぞ」
「「ぶぅー」」
文句を言いながらミルアとナルアが顔を洗いに行くとハガネがルーシーを抱き上げて朱里の所にやってきてルーシーを朱里に渡す。
「ミルア達が戻る前に乳やっとけ。哺乳瓶突っ込まされて玩具にされたら可哀想だからな」
「そうだね。あの子達も加減を知って欲しいんだけどね」
朱里が授乳用のケープを羽織ってルーシーに授乳を始めると、匂いがするのかティルナールとエルシオンもぐずり始める。
獣人故なのか、1人が飲み始めると他の2人もぐずり始める事が多々ある。
「リューちゃん達の時もリリスちゃんが居たから割りと取り合いだったけど、今も今で取り合いが起きちゃうのよね。お乳が3つあったら良かったんだけどね」
「母上、その発想はどうかと思う」
「母上、多分3人まとめては持てないと思うよ」
朱里が「それもそうだねー」と笑いながら、エルシオンも抱いて両胸で授乳させて、最後にティルナールの授乳をさせる。
ティルナールは飲む力が弱い為に、ティルナールを抱きかかえつつ、もう片方の手で胸を揉んで出を良くさせて飲ませている為に、2人同時の授乳は出来ないのでいつも一番最後になってしまう。
「お兄ちゃんが弟妹に先を譲るって感じになってごめんね」
飲んでいるのかいないのか分からない程の吸い付きに、朱里がティルナールを心配そうに見つめながら話し掛け、丈夫な子に育ちます様にと思わずにはいられない。
「あー、ルーシーにもうあげちゃったの?」
「私達、ミルクあげたかったのに」
「ミルアとナルアがグダグダして顔洗いに直ぐ行かなかったからだ。俺はちゃんと顔洗って来いっていっただろ?」
「ハガネの意地悪」
「ハガネは母上より厳しい」
ミルアとナルアがむぅっと膨れてハガネが「ほれ飯食え」と、頭をガシガシ乱暴に撫でて2人が椅子に座って朝食を食べ始めると、ハガネが屍になっているルーファスとドラゴン達にも「飯食え」と声を掛ける。
「頭が重い」
「こう、こめかみ辺りからギリギリガンガンする」
「梅干しちょうだい・・・」
「こーいう時は貝よ。貝のだし汁」
「だから飲み比べは止めておけと言うたんじゃ」
ドラゴン達が動くたびに頭痛を訴えながら席に着いてハガネにしじみ汁を出されて梅粥をご飯代わりに出される。
モソモソとドラゴン達が食べながら「お酒は控えよう」と、何度も聞いたセリフを吐く。
ティルナールをげっぷさせてハガネに手渡し、ハガネがベビーベッドに寝かせると朱里がルーファスを呼ぶ。
「ルーファス、朝ご飯にしましょう?」
「ああ・・・。わかった・・・」
「今回は随分酷く飲んだんだね」
「祝い事だと皆羽目を外すからな・・・付き合いで飲むのも楽じゃないな。普通の酒だけなら良かったんだが、火酒も今回は出回っていてな・・・アレはキツイぞ」
「あらら、ドワーフのお爺さん達も呼びましたからねぇ。ご好意は無下に出来ませんからルーファス大変ですね」
「まぁ、そのおかげかドワーフの工房をこっちにも作ってもらえることになったから良しとするしかないな」
「なら冒険者の人達も防具や武器の整備を温泉に行っている間に出来るから喜びそうですね」
「ああ。これもアカリがドワーフと縁を結んでくれたおかげだからな。アカリはオレにとっての幸運の女神だよ」
「おだてても何も出ませんよ?ふふ」
朱里の横の椅子に座り、おでこと両頬にキスをしてルーファスも朝食に手を付ける。
それらを見た後でハガネがようやく席に着いて自分の朝食を食べ始め、少しもしない間に「おかわり」と茶碗を伸ばしてくる手が出てくるのでハガネの朝は中々に忙しい。
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