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14章
花と白虎 下(番外編)
しおりを挟むリリスの手の甲にキスを落として約束をした。
これ以上は手は出さないと、これもその時に約束した。
少しリリスに剥れられたが、流石にこれ以上はさっきのキスで充分限界なので勘弁してほしい。
リリスを迎える為にも稼ぐぞー!と、意気込んだ矢先に・・・リリスの父親リロノスさんに母親のアリスさん経由で番の事がバレて、リリスは魔国へ留学させられた。
アリスさんは「うちがポロッと嬉しくて口滑らせたせいでごめんだしー!!!」と、謝罪に来てお詫びの印としてポードレッタイトの腕輪を渡してきた。
「これでうちのリリちゃんと通信できるっしょ?」と、しかもリリスに腕輪を届けに行くように女将に依頼をしたらしい。
流石に買い取ります!と、申し出て渋々承諾させた・・・。
自分でも高い買い物だとは思ったが、毎日リリスの声が聴けるなら高くは無いと思ってしまった辺り、少し重傷かもしれない。
あれ以来、借金の為にリリスの為に貯金していたお金は0になってしまったので割りと無茶をして討伐に力を出していたら、冒険者ランクが上がりSランクにまでなっていた。
討伐したクルフルートの肉を女将達が買い取ってくれた上にお金を色々上乗せしてくれたらしく、今日討伐した魔獣のレア素材を売ったお金で借金もようやく今日で全額返済となる。
両替したら大量にあったお金がたった3枚の金貨・・・まぁ1枚で一千万の金貨なので失くしたら怖い物がある。
ありすの家を訪ねるとシノリアが出るが、直ぐさま扉を閉じられる。
相変わらずリリス大好きっ子のシノリアはイルマールを嫌っており、塩対応なのである。
「シノっち!何してるし!まったく、悪い子はお尻ぺんぺんだかんね!・・・って、イルっちお久しぶりだし!」
「お久しぶりです。アリスさん」
「どーしたん?うちのリリちゃんなら帰国は明日っしょ・・・ってヤバッ!今のなーし!!」
「えっと・・・あの・・・」
「リリちゃんに内緒でお願いするし!リリちゃんイルっちを驚かせたいみたいだから・・・ね?」
「はい。わかりました」
相変わらず口が滑りやすいありすにイルマールが苦笑いしつつ、ありすに大白金貨を3枚渡す。
「ふぉっ!三千万もう用意出来たん?!マジすごい!!」
「またコツコツと貯金しないとですけどね」
「でも凄いっしょ!流石うちのリリちゃんのお婿さんっしょ!リロっちが悔しがるっしょ」
ありすが口元に手を当てて笑いながら、「返済完了、了承したし!」と笑う。
リロノスいわく「借金返済も出来ない男にはリリスは渡せないからね!返済が終われば認めるさ!」と言っていたのだが・・・こうも早く借金が終わるとは予想外だろうと、ありすがほくそ笑む。
「では、おれは失礼しますね」
「はいはい。明日はリリちゃんを宜しく頼むし!」
「はい。楽しみにしています」
ありすに頭を下げてイルマールが再び青果通りを歩いていると、ハガネがクロとササマキを連れて歩いていた。
「おっ、イルマール嬉しそうな顔してんな。何か良い事でもあったか?」
「え?そうですか?そうですね、借金が返済し終わりました!」
「おおーっ、お前すげぇな。俺なんか借金まだあんぜ?」
カカカと白い歯を見せてハガネが笑い、楽しそうに「借金があった方が無駄使いはしなくていいけどな」とイルマールの肩をポンポンと叩く。
「イルマール、これからが大変だぞ。借金の額が額だったからな。それを返せる甲斐性があるって事が判明したら、狙ってくる独身女が出るだろうから、気ぃつけろ」
「おれはリリスにしか惹かれる予定は無いので大丈夫ですよ」
「へぇー、ほぅー、ふぅーん。マジでか?大人の女のが良くねぇか?」
ニヤニヤとハガネが笑いながら意地悪そうにイルマールに尋ねる。
「子供でも大人でも、リリスならおれはそれだけで好いんですよ」
少し自分でも惚気かな?とは思うが、番なのだから少しくらいは惚気させてほしくて、ハガネに言い返すと、ハガネが「だってよ?」と、一歩横に動くと、麦わら帽子を握りしめて顔を真っ赤にさせているリリスがハガネの後ろから出てきた。
「リリス?!えっ?帰国は明日じゃなかったのか?」
「1日でも早く帰ってきたくて、1日早く出たの・・・って、ママったらやっぱり口滑らしてる!もぉー!」
「えっと、リリスおかえり」
「うん・・・イル、ただいま・・・えっと、私もイルなら子供でも大人でも、好き、だよ」
イルマールが顔を赤くしてリリスも顔を赤くしながら、もじもじと手に持った麦わら帽子をぐしゃぐしゃにしている。
それを近距離で見たハガネは「かーっ、甘酸っぺぇーなぁ!」と揶揄う様に言いながら「お邪魔虫は消えるぜー・・・って、聞いてねぇな」と笑ってクロとササマキを連れて産院に姿を消す。
「あの」
「えと」
同時に喋り、同時に「先にどうぞ」と言い合って、2人で話す事を頭の中で考えながら、結局「プッ」と吹き出してしまい、笑い合う。
「最近、カップアイスが流行ってるから、食べに行こうか?」
「うん。いっぱい話したい事あるの」
イルマールがリリスに手を差し伸べると、リリスが嬉しそうに手を握り2人で笑いながら歩いて行く。
貯金にかんしては残高0状態なのでしばらくは忙しく冒険者ギルドに出入りしてお金を貯める事になるだろうけど、リリスとの生活を夢見て貯金していくのはきっと楽しそうだと、イルマールは思いながら明日からも頑張らないとなと自分を見上げて笑うリリスに笑う。
夏の暑さに花の香りが甘く、森の様な香りが包み込む。
お互いに感じている匂いを吸い込みながら、つないだ手は幸せで温かい。
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