黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
上 下
402 / 960
14章

花と白虎 下(番外編)

しおりを挟む

 リリスの手の甲にキスを落として約束をした。
これ以上は手は出さないと、これもその時に約束した。
少しリリスに剥れられたが、流石にこれ以上はさっきのキスで充分限界なので勘弁してほしい。

 リリスを迎える為にも稼ぐぞー!と、意気込んだ矢先に・・・リリスの父親リロノスさんに母親のアリスさん経由で番の事がバレて、リリスは魔国へ留学させられた。

 アリスさんは「うちがポロッと嬉しくて口滑らせたせいでごめんだしー!!!」と、謝罪に来てお詫びの印としてポードレッタイトの腕輪を渡してきた。
「これでうちのリリちゃんと通信できるっしょ?」と、しかもリリスに腕輪を届けに行くように女将に依頼をしたらしい。
流石に買い取ります!と、申し出て渋々承諾させた・・・。
 自分でも高い買い物だとは思ったが、毎日リリスの声が聴けるなら高くは無いと思ってしまった辺り、少し重傷かもしれない。

 あれ以来、借金の為にリリスの為に貯金していたお金は0になってしまったので割りと無茶をして討伐に力を出していたら、冒険者ランクが上がりSランクにまでなっていた。
 討伐したクルフルートの肉を女将達が買い取ってくれた上にお金を色々上乗せしてくれたらしく、今日討伐した魔獣のレア素材を売ったお金で借金もようやく今日で全額返済となる。
 両替したら大量にあったお金がたった3枚の金貨・・・まぁ1枚で一千万の金貨なので失くしたら怖い物がある。


 ありすの家を訪ねるとシノリアが出るが、直ぐさま扉を閉じられる。
相変わらずリリス大好きっ子のシノリアはイルマールを嫌っており、塩対応なのである。

「シノっち!何してるし!まったく、悪い子はお尻ぺんぺんだかんね!・・・って、イルっちお久しぶりだし!」
「お久しぶりです。アリスさん」
「どーしたん?うちのリリちゃんなら帰国は明日っしょ・・・ってヤバッ!今のなーし!!」
「えっと・・・あの・・・」
「リリちゃんに内緒でお願いするし!リリちゃんイルっちを驚かせたいみたいだから・・・ね?」
「はい。わかりました」

 相変わらず口が滑りやすいありすにイルマールが苦笑いしつつ、ありすに大白金貨を3枚渡す。

「ふぉっ!三千万もう用意出来たん?!マジすごい!!」
「またコツコツと貯金しないとですけどね」
「でも凄いっしょ!流石うちのリリちゃんのお婿さんっしょ!リロっちが悔しがるっしょ」

 ありすが口元に手を当てて笑いながら、「返済完了、了承したし!」と笑う。
リロノスいわく「借金返済も出来ない男にはリリスは渡せないからね!返済が終われば認めるさ!」と言っていたのだが・・・こうも早く借金が終わるとは予想外だろうと、ありすがほくそ笑む。

「では、おれは失礼しますね」
「はいはい。明日はリリちゃんを宜しく頼むし!」
「はい。楽しみにしています」

 ありすに頭を下げてイルマールが再び青果通りを歩いていると、ハガネがクロとササマキを連れて歩いていた。

「おっ、イルマール嬉しそうな顔してんな。何か良い事でもあったか?」
「え?そうですか?そうですね、借金が返済し終わりました!」
「おおーっ、お前すげぇな。俺なんか借金まだあんぜ?」

 カカカと白い歯を見せてハガネが笑い、楽しそうに「借金があった方が無駄使いはしなくていいけどな」とイルマールの肩をポンポンと叩く。

「イルマール、これからが大変だぞ。借金の額が額だったからな。それを返せる甲斐性があるって事が判明したら、狙ってくる独身女が出るだろうから、気ぃつけろ」
「おれはリリスにしか惹かれる予定は無いので大丈夫ですよ」
「へぇー、ほぅー、ふぅーん。マジでか?大人の女のが良くねぇか?」
 ニヤニヤとハガネが笑いながら意地悪そうにイルマールに尋ねる。

「子供でも大人でも、リリスならおれはそれだけで好いんですよ」

 少し自分でも惚気かな?とは思うが、番なのだから少しくらいは惚気させてほしくて、ハガネに言い返すと、ハガネが「だってよ?」と、一歩横に動くと、麦わら帽子を握りしめて顔を真っ赤にさせているリリスがハガネの後ろから出てきた。

「リリス?!えっ?帰国は明日じゃなかったのか?」
「1日でも早く帰ってきたくて、1日早く出たの・・・って、ママったらやっぱり口滑らしてる!もぉー!」
「えっと、リリスおかえり」
「うん・・・イル、ただいま・・・えっと、私もイルなら子供でも大人でも、好き、だよ」

 イルマールが顔を赤くしてリリスも顔を赤くしながら、もじもじと手に持った麦わら帽子をぐしゃぐしゃにしている。
それを近距離で見たハガネは「かーっ、甘酸っぺぇーなぁ!」と揶揄う様に言いながら「お邪魔虫は消えるぜー・・・って、聞いてねぇな」と笑ってクロとササマキを連れて産院に姿を消す。

「あの」
「えと」

 同時に喋り、同時に「先にどうぞ」と言い合って、2人で話す事を頭の中で考えながら、結局「プッ」と吹き出してしまい、笑い合う。

「最近、カップアイスが流行ってるから、食べに行こうか?」
「うん。いっぱい話したい事あるの」

 イルマールがリリスに手を差し伸べると、リリスが嬉しそうに手を握り2人で笑いながら歩いて行く。
貯金にかんしては残高0状態なのでしばらくは忙しく冒険者ギルドに出入りしてお金を貯める事になるだろうけど、リリスとの生活を夢見て貯金していくのはきっと楽しそうだと、イルマールは思いながら明日からも頑張らないとなと自分を見上げて笑うリリスに笑う。

 夏の暑さに花の香りが甘く、森の様な香りが包み込む。
お互いに感じている匂いを吸い込みながら、つないだ手は幸せで温かい。 
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する

アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。 しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。 理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で 政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。 そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。